著者
ONUMA Yukihiko(大沼友貴彦) TAKEUCHI Nozomu(竹内望) TAKEUCHI Yukari(竹内由香里)
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
Bulletin of Glaciological Research (ISSN:13453807)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.21-31, 2016 (Released:2016-09-08)
参考文献数
30
被引用文献数
11

Snow algae are cold-tolerant photosynthetic microbes growing on snow and ice. In order to investigate the factors affecting snow algal growth, the temporal changes in algal abundance on surface snow were studied over four winters in an experimental station in Niigata Prefecture, Japan, where seasonal snow is usually present from late December to early April. Snow algae appeared on the snow surface in February, and the initial algae were likely to be deposited on the snow by winds. The timing of the algal appearance varied among years, from early-February in 2011 to late-February in 2015, and is likely to be determined by a period of no snowfall and air temperatures above the melting point. Algal abundance generally increased until the disappearance of snow. The maximum algal concentration was found in 2011, which corresponds to the year when the period from algal appearance to the disappearance of snow was the longest (80days) among the four winters. The results suggest that snow algae keep growing unless snowfall occurs and air temperature drops to freezing point, and that the algal abundance is likely to be correlated with the duration of algal growth. The algal growth curve in 2011 could be reproduced by a Malthusian model with a growth rate of 0.22 d−1.
著者
亀田 貴雄 高橋 修平 渡邉 興亜 平沢 尚彦 佐藤 秀昭 浜田 始
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.541-554, 2018 (Released:2023-03-01)
参考文献数
27

1991年から現在まで,北海道足寄郡陸別町では雪氷分野での実験・観測として,陸別の寒さに関する観測,深層掘削機開発実験,雪上滑走路造成実験,降雪量比較観測,が実施されてきた.これらの大規模な観測・実験を実施するためには,実験を計画する研究者側の熱意とともにそれを受けとめる地域の協力が極めて重要である.陸別での観測・実験では両者が有機的につながったため,これらの実験・観測を実施することができた.この報告ではこれらの観測・実験の最初の一歩の説明から始まり,それぞれの観測・実験の実施状況,さらに主要な成果を説明する.
著者
ALIMASI Nuerasimuguli 榎本 浩之
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.17-30, 2017 (Released:2023-03-01)
参考文献数
31
被引用文献数
1

温暖化が進む北極圏における雪氷状況の監視は気候研究にとって重要である.北極域の調査・研究活動も活発化している中で,雪氷変化は大気,海洋,陸域など様々な変化に関係するため重要な観測項目になる.また,既に得られた観測データの地域や時期の代表性評価についても,時間的・空間的に連続した長期衛星観測が有効な情報となる.さらに,観測前に広域・長期情報より調査の地域や期間を効果的に選定することにも衛星観測は有効である.本研究では,日射のない極夜でも観測可能で,雲や霧など天候の影響を受けにくいマイクロ波観測データより,積雪期間と融雪期間の推定を行なった.注目した北極域は,日本の観測グループが活動している地域を中心に,北アメリカの高緯度域,シベリア,スカンディナビア周辺域及びスバールバル諸島,グリーンランドである.北アメリカでは南部から北東方向に向かっての融雪域の移動により,7月にはグリーンランド,スバールバルに至る.グリーンランドでは,南部の顕著な融解に対し,北部の内陸高所ではほとんど融解が起きていないが,最高所においてもDAVより融解の可能性を探査できる.ユーラシア大陸ではスカンディナビアなどの西部からシベリア方面の東部への融雪域の移動などが観察され,大陸による違いや南部や東西の傾向の差が観察された.
著者
油川 英明
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.345-351, 2012 (Released:2023-03-01)
参考文献数
7

社会的に話題となっているいわゆる「水の結晶」について実験的に検証を行った.その結果,この結晶は過冷却水滴の凍結過程において形成され,それは,ある条件が満たされた水滴の凍結氷球上に雪結晶状の形態となって形成されるものである.そして,その条件から外れた水滴には結晶が形成されないか,あるいは歪んだ形状の,いわゆる「醜い結晶」ができる.その水滴に関わる条件とは,氷点下で比較的長い冷却時間を経過することであり,加えて,その粒径について適当な大きさのもの(本実験では0.15〜0.52mm)が選択されることである.このように,いわゆる「水の結晶」は当然ながら科学的な成因によるものであり,言葉をかけるとか音楽を聴かせるなどの呪術的な「根拠」は問題外としても,科学的見地から具体的に検証されるべきであり,今回は相応に検証され得たものと考える.
著者
齋藤 錬一
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.6, no.9, pp.213-218, 1944-09-01 (Released:2010-01-20)
著者
福井 篤
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.8-11, 1962 (Released:2009-09-04)

北海道宗谷本線の問寒別 (といかんべっ) と雄信内 (おのつぶない) との間に, 天塩川の屈曲にそってかなり長い鉄橋がある。下平陸橋と呼ばれ, 全長約140m, 河を越えているわけでないから陸橋と呼ばれている。この鉄橋が昨年 (昭和36年) 1月26日なだれのため一瞬にして破壊された記憶はまだ新しい。このときのなだれの状況や事故の経過については, 本誌のVol.23.No.2に旭川鉄道管理局保線課長の福山氏が詳しく報告されている。
著者
平沢 尚彦 本山 秀明 山田 恭平 杉浦 幸之助 栗田 直幸
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.67-77, 2021 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19

超音波積雪深計を搭載したAWS(Automatic Weather Station)を,2016 年1 月から2019 年10 月 にかけて4 つの地点に新設した.それらの地点は,海岸域のH128,カタバ風が発達する大陸斜面域 のMD78,大陸斜面上部の内陸高地域のNRP,氷床頂上部のNDF である.この観測システムの目的 は,広域にわたる南極氷床の地域特性を把握しながら,総観規模擾乱や日変化による堆積の時間変化 を明らかにすることである.本論文はこれらの4地点で観測された雪面レベルの時間変動について調 べた.その結果以下のことが分かった.1)雪面レベルの時間変化には階段状の変動とパルス状の変 動がある.雪面レベルの上昇は主に階段状の上昇によりもたらされる.2)H128 及びNRP の比較に よって広域に同時に雪面レベルの変動が表れた4 つの事例が見いだされた.これらの事例では総観規 模擾乱に伴う雲域が氷床上に侵入していたことがNOAA の赤外画像から示唆された.3)雪面レベル の比較的大きな変動は異なる地点で同じ日に起こっていないことの方が圧倒的に多い.4)NRP 以外 の3地点において,暖候期にゆっくりとした雪面レベルの低下が観測された.
著者
勝島 隆史 安達 聖 南光 一樹 竹内 由香里
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.101-114, 2023-03-15 (Released:2023-04-09)
参考文献数
26

強風を伴った湿雪の樹木への着雪により,樹木に作用する荷重が増加することで,幹折れや根返りなどの樹木の破壊が生じる.このような樹木の破壊を予測するためには,着雪と風により樹木に生じる荷重を考慮した構造解析が用いられる.しかし,樹木に生じる風荷重の測定例は少なく,風荷重の推定に必要な樹木の抗力係数への着雪の影響は不明である.本研究では,国内の主要な林業種であるスギにおける,抗力係数に及ぼす着雪の影響を明らかにするために,風洞実験を実施した.風洞装置内に実物のスギの枝葉を材料に用いたスギの枝葉のモデルを設置し,送風しながら湿雪を供給することにより人為的に着雪を生じさせた.そして,風速や着雪量などの実験条件に対する,スギ枝葉の抗力係数の変化を測定した.その結果,枝葉への着雪は,(1)着雪の発達により風向に対する垂直面への投影面積である垂直投影面積を増加させる効果,(2)流体抵抗を減じる効果,(3)風の作用により枝葉が湾曲することで生じる垂直投影面積の減少を阻害する効果をもたらすことが示唆された.これらの効果により,着雪前の無風時の受風面積を用いて求めたスギ枝葉の抗力係数は,着雪量により変化した.
著者
木田 真人
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.319-327, 2017 (Released:2023-03-01)
参考文献数
50

天然ガスハイドレートは,海底堆積物中や永久凍土環境などにおいて,膨大な量の炭化水素をトラップしていることが知られており,新たな天然ガス資源としても期待されている.本解説では,主に,炭化水素を包接したガスハイドレートを対象とした核磁気共鳴法による定性・定量分析法について解説し,その天然試料への適用例を紹介する.
著者
竹内 望 角川 咲江 武藤 恭子
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.271-279, 2011 (Released:2022-09-03)
参考文献数
13

雪氷藻類とは,雪や氷の表面で繁殖する光合成微生物である.2005 年から2010年にかけて, 滋賀県の伊吹山の山頂(標高1377 m) 付近の残雪で,雪氷藻類の調査を行った.藻類の大繁殖を示す赤雪や緑雪のような肉眼で見える着色雪はみられなかったが, 残雪表面から採取した積雪の顕微鏡観察の結果, 形態の異なる主に2 つのタイプの雪氷藻類細胞を確認した. この藻類は, 日本をふくめ世界各地で報告されているChloromonas nivalis に形態がほぼ一致し, 二つのタイプはこの種のそれぞれ発達段階の異なる休眠胞子と考えられる. 観測を行った各年4 月下旬の残雪には, ほぼすべてにこの藻類細胞が含まれていたことから, 毎年この時期に残雪上に現れるものと考えられる. 藻類バイオマスおよびクロロフィル量の測定の結果, それぞれ他の地域で報告されている赤雪等の着色雪と比べ低い値を示した.2007 年4 月に二回の調査を行った結果, この藻類の繁殖時期は, 3 月中旬から5 月上旬までの1ヶ月半の融雪期間のうち, 消雪直前のわずか1-2週間であることがわかった.
著者
竹内 政夫
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.307-315, 2021 (Released:2021-12-17)
参考文献数
24

視界が白一色になり交通に危険をもたらす視界ゼロのホワイトアウトが日常的に使われるようになった.しかしホワイトアウトの定義も実体も曖昧であり,人により受ける語意やイメージの違いは大きい.ホワイトアウトの実体を理解しやすくするため,同じ様に視界が白一色に見える極地で発生するWhiteout と比較した.この二つには気象用語の視程がゼロの共通イメージがある.しかしホワイトアウトは視程が小さくなると発生するが,Whiteout は視程100m 以上でも発生し視程は比較の物差しにはならない.物理的には空中浮遊物の有無という発生メカニズムに違いがある.また吹雪時のホワイトアウトでは雪粒子が可視大であることため,同じ粒径や形状でも眼の近くにあるほど残像の影響も大きくなり視程を低下させてもいる.共通する部分では光と雪粒子の相互作用や広い雪原などの周辺環境が人間の感じ方に影響して発生するなどがある.ホワイトアウトと視程の観測例から,視程計で測定して得られる視程(以下,計測視程とする)は100m を超えても,肉眼で見える最も近い地物までの距離である見かけの視程が0m のホワイトアウトになることがある.ホワイトアウトと感ずるのは人間であり,生理や心理,経験などの個人差を含めたヒューマンファクター,発生状況や環境も影響する.Whiteout もホワイトアウトも,「視界は白一色で見かけの視程(顕在視程)は0m」という点で共通している.
著者
川田 邦夫
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.131-136, 2009 (Released:2021-04-09)
参考文献数
14

高度1000 m 以上の山岳地では一般に風も強く, 地吹雪や降雪時には吹雪となることが多い. その結果として山岳地での積雪は再配分によることが多い.尾根状の地形の所での積雪は風上側が削られ,風下側に多く溜まる.また窪地には雪が多く堆積して,元の地形と大きく異なった表面形態となる. 標高が高い分だけ気温も低く, 強い風速下で積雪は変態と地吹雪によるパッキング, 及び深い積雪による荷重を受けて平地では見られない程硬い雪へと変質する. 山稜部に見られる雪庇というのは本来吹き溜まりの一種と考えられるが, ここに積雪地形という概念を用いて, 雪庇の形成過程を説明した. 風下側の元の地形が急崖であれば, 庇状に伸びた小さな雪庇ができ, 風下側の斜面が緩い場合には最初は吹き溜まり状の形態から前面が次第に急になり, 段差を持つ大型の雪庇を形成する. 巨大に成長する雪庇について, その形成過程を述べた.
著者
藤本 明宏 河島 克久 渡部 俊 村田 晴彦
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.507-522, 2021 (Released:2022-02-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究では,大雪時のスタック発生メカニズムの解明を目的に,大雪による車両滞留時の路面圧雪調査および圧雪路面での停車試験,タイヤ空転試験および車両発進試験を実施した. 路面圧雪調査では,大雪による車両滞留時の圧雪路面に窪みや波打つような凹凸の発生を確認した.停車試験およびタイヤ空転試験より,タイヤの輪荷重,熱および回転は圧雪を融解や圧密させ,タイヤを圧雪に沈ませると同時に,タイヤ直下のすべり摩擦係数を低下させることが分かった.車両発進試験より,輪荷重が大きいほどスタックは発生し難いことが分かった. 上記の研究より,車両のスタックは以下のメカニズムで発生することを明らかにした.大雪時には車両の走行性が低下し,停車時間や発進回数が増える.停車時間や発進回数の増大は,圧雪路面の窪みの発生やすべり摩擦係数の低下を誘発する.これらがタイヤの空転を助長し,それが圧雪路面の窪みの拡大やすべり摩擦係数のさらなる低下を引き起こす負の循環を生じさせ,スタック車両の発生に至る.本論文では,このメカニズムを踏まえて,タイヤが圧雪窪みに嵌った状態からスタックに陥る場合とスタックを回避する場合のフローチャートを示した.

1 0 0 0 OA 雪と国鉄

著者
小竹 豊
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.9-15, 1959 (Released:2009-07-23)