3 0 0 0 OA 漆と高分子

著者
宮腰 哲雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.608-613, 2007-08-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
47

漆は植物から得られる塗料・接着剤である。漆の接着力を利用して漆の塗りものに金粉をまきつけた蒔絵は繊細で豪華であり,日本独特の漆芸技法でつくられた芸術品である。この蒔絵が16世紀後半にヨーロッパに輸出され王侯貴族を魅了しジャパンと呼ばれた。このような漆工芸品をヨーロッパでもつくるために塗料が開発され模造漆がつくられ,塗装技法についても大きな影響を与えるなど日本とヨーロッパの文化交流があった。
著者
佐藤 尚弘
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.613-622, 2012-11-25 (Released:2012-11-23)
参考文献数
34
被引用文献数
3 5

高分子溶液の粘度は,高分子の分子量や濃度,および鎖の剛直性に強く依存することが知られている.本報では,5種類の剛直性の異なる高分子溶液に対する広い分子量・濃度範囲にわたるゼロずり粘度を,みみず鎖円筒およびファジー円筒モデルに基づいて定式化された粘度式と比較した.この粘度式には,ファジー円筒の縦方向の並進拡散を支配する臨界空孔サイズを特徴づけるパラメータと分子間流体力学的相互作用の強さを表すパラメータが分子論的に決められない調節パラメータとして含まれている.前者については高分子溶液の種類や分子量によらない一定値を,また後者には溶液の種類と高分子の分子量ごとに適当な値を代入すると,粘度式は調べた5種類の高分子溶液系とも広い分子量・濃度範囲にわたって実験結果とよく一致した.
著者
小川 和郎 平井 明日香 山本 浩平 古門 直樹
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.81-85, 2011 (Released:2011-02-25)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

シクロデキストリン(CD)の包接能を利用した吸着材を開発するため,CD をセルロースに導入することによって CD の不溶化を試みた.架橋剤にはエピクロロヒドリン(EP)を用い,CD-セルロース系不溶性共重合体は NaOH 水溶液中で合成した.合成物の評価はメチルオレンジに対する吸着率から行った.吸着効率は EP 添加量の増加とともに向上し,EP 添加量の増加に伴って CD 導入量が増すことがわかった.一方,収率は EP 添加量に関係なく一定であった.また,収率および吸着効果は 40%の NaOH 水溶液中で合成するときに最大となった.NaOH 水溶液量を多量に使用することは効果的でなかったが,少量の水溶液中で合成したときは収率および吸着効果がほぼ一定であった.合成した共重合体は水や有機溶媒に不溶で,CD による吸着特性を示すことから,吸着材として広く利用されることが期待できる.
著者
神戸 博太郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.650-655, 1968-07-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

高分子の熱的性質は高分子の加工に際し,重要な役割をもつと同時に,その熱力学的状態を決定する重要な指標である。熱力学的量である高分子の比容積およびエンタルピー,そしてこれらの温度依存性の係数である熱膨張率と比熱は,高分子の転移を決定するために用いられる。結晶性高分子における融解,無定形高分子におけるガラス転移は,熱力学的には一次および二次の転移とみなされる。またこれらの転移の起こる温度は,高分子を同定する有力な目安となる。これらの転移温度と高分子の構造との関係については多くの研究がなされているが,一般的にいえば,分子鎖の内部回転に対する障害が少なく,屈曲性の大きい高分子ほど,転移温度が低い。逆に剛直な分子構造をもつ高分子は転移温度が高く,軟化しにくい。高分子鎖に芳香環を導入することにより,その耐熱性が向上できる。
著者
山本 隆
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.445-449, 1984-06-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
38
著者
飯野 智絵 櫻木 美菜 増永 啓康 櫻井 和朗
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.84-88, 2012 (Released:2012-02-24)
参考文献数
10

遺伝子送達のための輸送媒体(ベクター)として,一級アミンを有する芳香族カチオン性脂質と,zwitter 型の中性脂質である DLPC(2-Dilauroyl-sn-glycero-3-phosphocoline)を混合して脂質ミセルを準備した.この脂質と 3 量体から 20 量体までの異なる塩基数をもつ一本鎖 DNA を混合して DNA/脂質複合体(リポプレックス)を作製した.これらリポプレックスの構造解析を小角 X 線散乱にて行った.DNA 添加前の脂質ミセルは球状であり,DNA と複合化させると層状のラメラ構造へと変化した.dA と dT でラメラ構造が形成され始める塩基数が異なり,塩基数が多い場合の層間隔にも違いがあった.また円偏光二色性測定よりリポプレックス中の DNA のコンフォメーションが異なり,dA は水中におけるコンフォメーションが変化することなくリポプレックス中に存在しており,dT は水中でのコンフォメーションが維持できず,カウンターイオンや水分子との配位または水素結合が優先され,分子内でのスタッキングが難しく新たな規則性が生まれていることが示唆された.
著者
佐々木 茂貴
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.187-190, 2007-04-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
13

近年,高次構造を有するRNAやDNAが触媒活性や調節機能を担う例が多く見いだされている。これらは細胞の置かれた時空間に依存して遺伝子発現の調節に重要な役割を果たしており,ゲノム情報の多面性が明らかになっている。したがって情報の最上流に位置するDNAに特異的に結合する分子は,バイオツールとしてさらには医薬リードとしての発展性がある。本稿では,二本鎖DNA配列認識を目指した三本鎖DNA形成分子の開発に向けた筆者らの研究成果について紹介する。
著者
大井 龍夫
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.943-950, 1970-11-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
35

タンパク質は生命現象を研究するうえでの要石的存在であるが,近年科学技術の進歩によってその分子構造,複雑な立体構造までわかってきた.この巨大分子が,タンパク質によってきめられたアミノ酸配列順序に従って生合成された後いつしか独特の機能をもつ立体構造をとるのは,いくつかの試験管内実験結果から,熱力学的に安定な方向にすすむからと推定されている.一方合成ポリペプチド鎖は棒状のα-ヘリックスとなることがわかっているが,これもまた高分子のもつ自由エネルギーの大小に関係した問題として取り扱えるのである.そこでタンパク質や合成ポリペプチド鎖のコンフォメーションと, 自由エネルギーの一部である構成原子間の相互作用エネルギーとの関係を現在わかっている段階まで記述し,この方向の研究の状況を読者に紹介したいと思う.

3 0 0 0 OA 防ぐ

著者
宮崎 能久
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.300-301, 1982-04-01 (Released:2011-10-11)
参考文献数
5
著者
鯨井 忠五
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.412-417, 1962-05-20 (Released:2011-09-21)
参考文献数
53
著者
松下 貢
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.676-680, 1997-09-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

散逸構造は熱平衡状態から遠く離れた非線形・非平衡・解放系で自己組織的に生じる時空パターンである.系の制御パラメータを増していくと分岐現象として次々に質的に異なった散逸構造が現れる.散逸構造は物理,化学系に限らず普遍的に存在することを,いくつかの具体例を示しながら強調する.

3 0 0 0 OA 酸素富化膜

著者
山路 禎三
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.187-192, 1981-03-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
34
被引用文献数
1 2
著者
阿部 幸浩 原田 正志 渡辺 直樹 水戸岡 靖子 久保田 冬彦 大田 康雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
ポリマー材料フォーラム講演要旨集 第15回ポリマー材料フォーラム
巻号頁・発行日
pp.145, 2006 (Released:2008-03-11)

ポリインジゴは、その化学構造から還元するとロイコ体になり、また、空気酸化により容易に元のインジゴ構造に戻ることが予想され、このことはポリインジゴ繊維はリサイクル可能であることを示唆する。また、分子軌道計算より理想的に紡糸できれば、p-アラミド繊維の約2倍の弾性率を示す可能性が示された。我々は、この繊維の開発を目指して原料合成ルートの探索を行い、ポリインジゴ重合の検討を行った。
著者
市川 結 谷口 彬雄
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.750-753, 2003-10-01 (Released:2011-10-14)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

有機発光ダイオード(LED)の高性能化により,次世代デバイスである電流励起により発振する有機固体レーザー,すなわち有機半導体レーザーに関する研究開発が活発化してきている。本稿では,ユビキタス情報社会の新たな光通信光源として期待される有機半導体レーザーの研究開発動向を概観し,今後の方向性について言及した。