- 著者
-
竹村 和久
- 出版者
- 公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
- 雑誌
- オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.10, pp.583-590, 2011-10-01
多属性意思決定における心理モデルとその知見および合理的な意思決定についての批判的検討と「よい意思決定」についての考察を行った.まず,規範的分析として,序数効用理論の基本的な枠組を示してこの枠組みを合理性の観点から考察し,次に,序数効用理論を多属性意思決定に拡張した定義を与えることにより,多属性意思決定の合理性をアローの一般可能性定理から再解釈した.本論文で定義した合理的な多属性意思決定は,特定の属性のみに基づく一次元的な意思決定を除いて,達成することが不可能なことをアローの一般可能性定理の再解釈を通じて論じた.次に,人間の多属性意思決定の記述的分析を行い,人間は多属性意思決定問題においても,一次元的な意思決定をしやすいことを,意思決定の心理モデルから説明した.最後に,多属性意思決定の処方的考察を行い,特に重要な意思決定においては,一次元的な意思決定を回避することが重要であり,上記の意味での合理性は満たさないかもしれないにもかかわらず多元的な観点からの意思決定をすることが「よい意思決定」につながるということを論じた.