著者
中川 覃夫
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.13-27, 1980-03

この論文では、予備ユニットから成り立つシステムの点検方策について議論する。例えば、停電したとき、もし予備発電機が故障していたならば、病院とか大きなビルでは非常に危険な状態を招くであろう。他の例として、敵の攻撃から守るための軍用機器をあげることができる。このように、要求されたとき、そのシステムが故障している状態をできるだけ避けるために、日頃から点検しておくことは重要である。ここでは、予備発電機を例にとって、停電が起るまでの点検方策を考える。すなわち、一定時間間隔古t_0で点検し、もし故障を発見したならば、修理する。修理終了後、点検はまた一定時間問隔t_0で行われ、停電が起ったとき、この過程は終了する。このモデルは有限状態をもつマルコフ再生過程を形成し、再生型方程式を作ることによって、平均点検回数、平均修理回数、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率、を求めることができる。ここでは、とくに、停電が指数分布に従って起ると仮定する。そのとき、ある適当底費用を導入し、前の結果を利用することによって、停電までの期待費用を求め、それを最小にする最適方策を決定する。ある簡単な条件のもとでは最適点検時間が方程式の解として一意的に定まる。更に、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をできるだけ小さくするための点検方策も求める。すなわち、停電が起ったとき、予備発電機が故障している確率をある与えられた小さい値よりも小と底る点検時間を求みる。最初のモデルでは、点検によって発電機は新品同様になると仮定しているが、点検によって故障率は変化しない場合も考えることができる。この場合、停電が起るまでの期待費用と有限な点検時間が存在するための十分条件を与えるが、一般に解析は難しい。しかし、期待費用は点検時間t_0の関数として与えられているので、それを計算することは容易であろう。更に、予備発電機が停電で稼動中のとき故障する場合も考え、前と同様な方法でこの場合の期待費用も求める。数値例として、点検によって予備発電機が新晶同様になる場合と故障率が変化しない場合の最適点検時間を求め、比較する。更に、停電時間をxとしたときの最適時間も求める。
著者
竹村 和久
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.583-590, 2011-10-01

多属性意思決定における心理モデルとその知見および合理的な意思決定についての批判的検討と「よい意思決定」についての考察を行った.まず,規範的分析として,序数効用理論の基本的な枠組を示してこの枠組みを合理性の観点から考察し,次に,序数効用理論を多属性意思決定に拡張した定義を与えることにより,多属性意思決定の合理性をアローの一般可能性定理から再解釈した.本論文で定義した合理的な多属性意思決定は,特定の属性のみに基づく一次元的な意思決定を除いて,達成することが不可能なことをアローの一般可能性定理の再解釈を通じて論じた.次に,人間の多属性意思決定の記述的分析を行い,人間は多属性意思決定問題においても,一次元的な意思決定をしやすいことを,意思決定の心理モデルから説明した.最後に,多属性意思決定の処方的考察を行い,特に重要な意思決定においては,一次元的な意思決定を回避することが重要であり,上記の意味での合理性は満たさないかもしれないにもかかわらず多元的な観点からの意思決定をすることが「よい意思決定」につながるということを論じた.
著者
松井 知己 平賀 智紀
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.219-223, 2013-04-01

本稿では,サッカーチームの強さに対し,Analytic Network Process (ANP)を用いた分析を行う.ANPを用いた分析では,分析に用いる項目間の関係を考慮に入れることにより,項目別の強さの推定が可能となる.提案モデルを実際のスポーツデータに用いた際の結果についても報告を行う.
著者
増田 直紀
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.511-516, 2008-09-01
被引用文献数
1

現実世界に見られるグラフは複雑である.複雑でありながらも,スモールワールド,スケールフリーなどといった特徴が同定されている.そのような複雑ネットワークの研究は1998年ごろから始まった.10年が経過した現在,多くの研究者の参画によって,様々な方向へ研究が発展している.本稿では,複雑ネットワークの代表的なモデルを概観した後に,ネットワーク上の現象論やその応用可能性を述べる.
著者
宇野 裕之
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.308-314, 2012-06-01
参考文献数
29

検索エンジンがウェブページにその重要度を与えるランキングの基礎技術について解説する.とくにウェブページのリンク構造に基づき,現在の高性能な検索エンジンのランキング手法の先駆や原型となっているHITSとPageRankのアイデアを紹介する.そのうえで,いくつかの発展的な話題を取り上げ,ランキング技術の現状を理解する.
著者
中原 孝信 前川 浩基 羽室 行信
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.442-448, 2013-08-01

本研究は,特定のテレビ番組を視聴しながら投稿されたツイートの内容を解析することで,急激に投稿数が増加したときの内容などを検出し,それらを要約する手法を提案する.提案手法では,まず単語の共起関係に基づいたクラスタリングから概念を生成する.そして,バースト時の投稿と番組の台詞に一致した投稿を興味対象のツイートとして考え,それらのツイートをできる限り多く被覆するような少数のクラスタをナップサック制約付き最大被覆問題を用いて抽出する.抽出されたクラスタは,興味対象のツイートから得られたトピックを表していると考え,膨大なツイートから特定の目的に関係する投稿内容を要約することが可能である.計算実験では,テレビアニメーション番組「宇宙兄弟」を対象にして提案手法の有効性を示す.
著者
田中 靖
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.10-16, 2005-01-01

日本人の海外旅行者数は90年代を通じて順調に伸張してきたが,01年の9.11テロや03年のSARS流行で大きく落ち込み回復が遅れている.本稿では20代女性人口の減少,企業の海外進出の増加など,最近の状況変化を踏まえて海外旅行の動向を示すとともに,訪日外客の動向についても言及する.
著者
在間 敬子
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.678-685, 2008-12-01
参考文献数
44
被引用文献数
1

環境問題に対する政策・制度を設計するための社会科学の研究方法として,エージェントベースモデリング(Agent-Based Modelling,以下ABMと略す)の利用が急速に広まっている.環境問題の解決に向けて,なぜABMのアプローチが必要なのか.どのような問題に対して,ABMが適用されてきたのか.その特徴は何か.今後どのような領域の研究が期待されるのか.本稿の目的は,これまでの研究文献のサーベイから,これらの疑問を明らかにすることである.