著者
田中 健一
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.164-169, 2010-03-01

本稿では,都市における施設サービスへのアクセスを時間軸を導入して記述するモデルを構成し,首都圏鉄道網と駅間移動データを用いて各駅の立ち寄り易さを分析する.具体的には,退社後の帰宅途中に一定時間サービスにアクセスし決められた時刻までに帰宅可能な人数をサービス利用可能者数と捉え,サービスの提供場所と開始時刻の双方が利用可能者数に与える影響を分析する.分析結果から,JR山手線の各駅は時空間的な立ち寄り易さが際立って高いことが明らかになる.このモデルを基礎として,時空間領域における配置問題として一般化する方向性を示し,今後の展望について記述する.
著者
牧本 直樹
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.418-421, 2004-07-01
被引用文献数
2

水稲では、保険リスク評価の基本モデルとして知られるCramer〜Lundbergモデルと待ち行列モデルの関連について解説する.Cram6r-Lundbergモデルにおける破産確率は,支払請求の発生間隔と請求額をそれぞれ到着間隔とサービス時間に対応させることで,待ち行列モデルの待ち時間分布として表現できる.そのため、待ち行列理論における種々の結果からこのモデルのリスク評価を行うことが可能どなる.また,破産時点など破産確率以外の評価指標や,マルコフ環境への拡張、請求額分布がファットテールを持つ場合など、双方のモデルにおける最近の話題についても概説する.
著者
臼田 光一 吉澤 睦博
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.664-667, 2009-11-01

平成21年8月11日駿河湾の地震で,静岡県内の東名高速道路が被災を受け,交通車両が迂回を余儀なくされ渋滞による物流の遅延が発生していたことは記憶に新しい.本システムは従来技術である地震発生による建物(製造拠点・物流拠点)の被害予測に加えて,周辺のライフライン(道路等)の被害予測を行い,地震発生時の製造から物流にいたるSC(サプライチェーン)に対するBCP(事業継続計画)策定を支援するシステムとして開発をした.
著者
須永 照雄 近藤 英二 ビスワス シャマン・カンティ
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.29-44, 1978-03

待ち行列問題に対し、理論と応用のギャップを埋めるため、いくつかの近似手法が発表されている。ラッシュアワー問題など、長い待ち行列を有するシステムに対し、連続モデルを利用する方法がすでに試みられている。こゝでは必ずしも長い待ち行列を有しないいくつかの典型的な問題に対し、連続モデルを利用する手法を提案し、厳密解と近似解の比較よりその有効さを示した。まづ、単一窓口待ち行列問題を扱っている。到着率をλその分散を△iとし、サービス率をμその分散を△_0とするとき、入力を平均入分散△iの正規確率過程と考え、出力を平均μ分散△_0の正規確率過程と考える。次に系内客数Xの確率密度関数f(X)に関する拡散方程式を立て、指数型の解を得る。系内平均客数Lの近似式はf(x)の平均で与えられることは知られているが、これは待ち行列が充分長くシステムが殆んど空にならないことが前提となっている。一方、厳密解の特性としてL=ρ≡λ/μ(ρ<<1)が知られている。そこで近似式に補正項を加え前記の特性を持たせた。すなわち[numerical formula]なる式を提案している。M/G/1(∞)の場合、近似式はヒンチン・ポラチェックの式と一致している。他の数値例としてE_2/E_2/1(∞)およびE_<10>/M/1(∞)を扱っている。単一窓口で系内客数に制限mが課せられているとき、系内平均客数はL≒∫^m_0 xf(x)dxで与えられる。この場合も厳郁解の特性L=ρ(ρ≪1)およびL=m(ρ≫1)をもつように、適当な補正項の追加と積分の上限mの変更を行っている。複数窓口を有する待ち行列問題に対しては、上記のような厳密解の特性を利用することができないので次の手法を用いた。入力として平均μ分散△iの正規確率過程を考え、出力として、系内客数Xが窓口数sより小のとき、平均xμ分散x△_0なる正規確率過程を考える。このときの拡散方程式の解をf_1(x)とする。xがsより大なるとき、出力は平均sμ分散s△_0となり、拡散方程式の解をf_2(x)とする。解f_1(x)とf_2(x)はx=sで連続的に接続させ、これを用い待ち行列の長さL_qは、[numerical formula]と計算される。数値計算例としては、M/M/S(∞)、M/D/S(∞)、D/M/S(∞)およびE2/E2/S(∞)を扱った。また、この方法は単一窓口(S=1)の場合にも有効なことを示した。
著者
寺野 隆雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 = [O]perations research as a management science [r]esearch (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.661-666, 2008-12-01
参考文献数
23
被引用文献数
1

本稿では,エージェント指向の社会シミュレーションの新しい手法として,複雑二重ネットワークモデルの概念を紹介する.複雑二重ネットワークモデルでは,個々の個体のもつ知識をエージェント内のネットワークで表現し,個体間の関係を社会ネットワークで表現する.これによって,社会ネットワーク上のエージェント間のインタラクションから生ずる個々のエージェント内の知識の変化ならびに社会ネットワークそのものの変化を動的に分析し,新しい知見を得ようとする.本稿では,最近の研究成果の例として貨幣概念の創発メカニズムの分析を述べるとともに,このような研究アプローチの今後について考察する.
著者
木俣 昇
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.59-87, 1987-03
被引用文献数
1

われわれは、大震時避難計画のための情報システムとして、浜田らの経験的な延焼速度式に基礎を置く火災の延焼シミュレーション・システムの開発を行ってきた。このシステムは、メッシュ型の視覚的なシミュレーションであり、同時出火を取り扱うことができる。本論文では、このシステムの計画情報システムとしての検証を行っている。まず第一に、その実火災に対する再現性の検討を行い、福光大火の場合にも、酒田大火の場合にも、延焼の形状、延焼の速度ともに比較的良好な再現在を示すことを明らかにしている。第二に、本システムの出力を規定している要因の影響について検討している。要因としては、WD(風向)、WV(風速)、R(建ペイ率)。P(本造建物混成比)、β(防火木造率)、およびM(メッシュ・マップ)の6個とし、それぞれに2水準を設定し、直交表L_<16>(2^<15>)によるシミュレーション実験を実施し、分散分析を行っている。そして、木造建物混成比が最も重要な要因で、その寄与率は48。5%で、第二にはメッシュ・マップがきて、その寄与率は41。6%となっていること、風速は第三位の要因で、6。1%の寄与率をもつが、しかし、5%の水準でのみ有意となっていること、風向、建ペイ率、防火木造率は、5%水準でも有意とはなっていないことを明らかにしている。
著者
山下 英明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.430-433, 2004-07-01

生産システムの搬送手段の中で,柔軟性の高いものにAGV(Automated Guided Vehicle ; 自動搬送車)がある.AGVはコンベヤなどと比べ柔軟性は高いが搬送量が少ないので,搬送要求が発生してから搬送が開始されるまでの搬送待ち時間が増加し、工程での仕掛品不足やリードタイム増加の原因となる場合もある.本橋では、待ち行列モデルを用いたアプローチを用いて,搬送待ち時間を削減する搬送要求の処理順序やAGVの割当て規則を検討する.
著者
竹中 毅 相澤 祐一 鈴木 晋太郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.570-575, 2009-09-01

音楽の設計は,他の人工物の設計と比べて,環境条件や目的を明示化することが極めて困難である.そのため,音楽の設計理論に対する科学的,工学的なアプローチは少なく,作曲行為は人間の暗黙知に大きく依存している.一方で,既存の音楽には時代や地域を超えた共通性が見られることから,音楽的秩序には人間の認知的・身体的特性に基づく必然性があると思われる.筆者らは,人間の認知的特性に基づいて,創発的に楽曲断片を生成することで,音楽の発生学的な根拠を理解することを目的としてきた.本稿では,筆者らの研究例を紹介するとともに,新たな音楽設計理論の可能性について議論したい.
著者
辺見 和晃
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.749-755, 2009-12-01

100年近くも前に考案されたモンテカルロ・シミュレーションは元々物理学で用いられた手法であったが,その後,金融,品質管理,経営判断など様々なビジネス分野にも応用されてきた.特にオフィスにコンピュータが普及した今日では,確率分布を含む計算を極めて手軽に行えることから,ビジネス上の確率を伴った事象である"リスク"の計量に一役買っている.本稿では,商社をはじめとする多くの国内企業において行われている,モンテカルロ・シミュレーションを用いた不確実性下の事業投資評価について紹介する.
著者
田村 隆善
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.101-113, 1987-03

性能の異なるm台の機械の段取りを1人の作業者が担当しているシステムにおいて、段取りの優先規則を操作して実現できる最大生産率の領域が、どのような性質を持つかについて検討する。最大生産率は、一部もしくは全ての機械でのジョブの待ち行列長さが無限のときのジョブのアウトプット・レイトと考えられるが、ここでは特に、全ての機械での待ち行列長さが無限のときに限定して解析を行う。この場合の生産率は、機械毎に故障率と修理率の異なる故障・修理モデルにおける単位時間当たり修理回数と見なすことができる。ここでは、加工時間と段取り時間は各々独立な指数分布で、それらは機械毎に異なった平均を持ち、割り込み優先は認めないと仮定される。本稿の主な目的は、優先規則を操作して実現できる生産率の領域が生産率ベクトル空間上の凸多面体となり、その頂点が確定的規則によるときの生産率からなること、ならびにその稜線が隣接した確定的規則を用いたときの生産率を結ぶ線分によって構成されること、を示すことである。
著者
中田 和秀 梅谷 俊治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.504-505, 2009-08-01

第23回企業事例交流会は,平成21年春期研究発表会初日の3月17日に筑波大学春日キャンパスで開催された.今回の企業事例交流会では3件の発表があり,座長は日本アイ・ビー・エム(株)の米沢隆氏が務められた.この企業事例交流会は,OR学会において大学の理論コミュニティと企業の実務家コミュニティが融合する貴重な場であるが,発表の後の熱心な質疑応答を拝見し,その主旨が十分に果たされていると感じた.また,筆者も今回の企業事例交流会に参加したことで,今後の研究や大学でのOR教育を実践していくにあたり,非常によい経験となったというのが率直な感想である.以下では,3件の発表についてまとめる.
著者
枇々木 規雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.740-745, 2005-11-01

研究発表会において「金融/ファイナンス/金融工学」セッションは1990年に初めて登場した.本稿ではこの15年間を振り返り, 発表件数や内容を分野, 方法論別に分類し, 時系列推移の特徴も調べた.全体的にはポートフォリオ理論の研究および数理計画法の利用が多いが, 最近はオプション理論の研究が増加するなど, 傾向は変化している.また, 発表回数分布から常連が少ないことも分かった.これらの点は参加していて感じていたことだが, 実際のデータからも明らかになった.後半では, ORにおける金融研究の役割と位置付けについて説明し, 研究発表会に参加する目的や金融工学の研究に必要なことも述べた.
著者
河原 靖
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-98, 1982-06

ある市場において、競合する2つの会社が製品の広告を実施するにあたり、広告計画期問(たとえば1年)中の各期(たとえば各月)にどのように広告予算を配分するかの問題を2人零和ゲームとして取扱い、その解を求めた。ところで、ある期に配分された広告費の効果は、その期のみにあらわれるのではなく、その期が過ぎた後の期にも存続する。いわゆる繰越効果が存在するので、上の問題を解く際にこの効果を考慮に入れた。ただし、繰越効果の型としては次のようなものに限定した。すなわち、ある期に配分された広告費の大きさをaとしたとき、その期よりk期経過後の繰越効果はar^k(0≦r≦1)の大きさの広告費の効果に相当する。
著者
福原 正大
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.631-636, 2009-10-01

100年に1度ともいわれる今回の金融危機の一因として,ヘッジ・ファンドが挙げられている.本稿は,この「ヘッジ・ファンドと金融危機」について考察することを目的とし,そのためにヘッジ・ファンドとは何か,どのような発展を辿ってきたか,なぜ発展できたのかを明らかにし,その後ヘッジ・ファンドが金融危機に与えた影響を探ることとする.この際,金融工学がヘッジ・ファンドに果たした役割についても簡単にふれる.最後に,金融危機後のヘッジ・ファンド業界の展望を述べることとしたい.
著者
小野 潔
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
シンポジウム
巻号頁・発行日
no.55, pp.13-22, 2006-03-13

1.日本の金融業ではこの10年間でデータマイニングが広く使われるようになった。金融業がデータマイニングを適用する分野は,与信審査,リスク解析,CRMの3分野である。特にモデル与信の分野ではデータマイニングが不可欠な存在になった。2.日本の中小企業はおよそ500万社存在するが,企業情報ベンダーが提供する格付やスコアは最大120万件,予測倒産率に至っては高々42万件にすぎない。評点は,調査員の主観も部分的に入る相対的な指標であるため,統計に基づく与信やポートフォリオ管理に利用しにくい。3.本研究は,企業情報ベンダーが提供する約42万件の予測倒産率から,倒産モデルを再構築(Re-Construct)することである。企業情報ベンダーの倒産モデルは未公開のため,モデルを再構築し,構造を推定することは中小企業の与信フレームを考えるうえで重要なことである。4.再構築(Re-Construct)アプローチによるモデル開発は,企業情報ベンダーから提供された倒産率を目的変数に,企業情報を説明変数とし,モデル構造を推定する方法である。ターゲットは予測倒産率χ%以上を負事例,χ%未満を正事例にする。再構築モデルを安定化するために,バギング学習により複数の決定木の平均値を予測倒産率とした。5.再構築モデルはCap50値が70%前後,倒産格付とのスピアマン相関が0.70であり,ビジネス利用に可能な精度を有した。この再構築モデルに企業情報を当てはめることで,中小企業約120万社の予測倒産率が得られた。今後は,中小企業の信用リスクの統計的コントロールへの応用が期待できる。
著者
川村 秀憲 大内 東
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.48-65, 2005-12
被引用文献数
6

本論文では, ネットワーク外部性の働く製品市場のモデル化とプレゼント戦略の評価を行う.エージェントベースモデルを用いることにより, 消費者間の相互作用ネットワークを明示的にモデルに取り込むことが可能である.本モデルは, 消費者間のネットワークの構造とネットワーク外部性の効果の関係について明らかにすることが出来る点に特徴がある.シミュレーションでは, 企業の視点に立つことにより, 競争が重要な意味を持つネットワーク外部性を有する製品の市場において, 企業が独立に操作可能なマーケティング変数であるプレゼント戦略を導入し, その有効性の検証を行う.実験結果より, ネットワークの構造と有効なプレゼント戦略には密接な関係があり, 同じ数のプレゼントを行っても構造に応じて効果的な戦略が存在することを示す.