著者
小林 秀紹 小澤 治夫 樽谷 将志
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.113-118, 2006

本研究の目的は小学生(高学年児童)の体格・体力に関連する要因として栄養、運動および休養に関する生活状況を取り上げ、さらに運動・スポーツに対する意識を考慮したモデルによる諸要因の関連を明らかにすることであった。首都圏の小学校に通学する高学年児童(小学4〜6年生男女232名)を対象に体格・体力の測定および生活状況・意識等の調査を行った。体格・体力に関与する栄養、運動、休養および運動・スポーツに対する意識等の要因を明らかにするために、探索的因子分析ならびに構造方程式モデルを適用し、包括的な関係を検討した。本研究が対象とした首都圏の高学年児童の体格および体力は標準的で歩数の点から比較的活動的な集団であった。体格・体力の構成概念は「体格・基礎体力」と「体力」に分離され、体格と体力の未分化が窺えた。運動・スポーツに対する意識は「積極性」と「消極性」に大別され、多くのものは積極的な意識を運動あるいはスポーツに対して抱いていた。子どもの生活状況と体力構成要素との関係において、睡眠を中心とした休養に関する生活状況と歩数に代表される運動量が体格・基礎体力を形成することが明らかとなった。また、体力の水準に応じた運動・スポーツに対する意識のあり方を検討する必要があると考えられた。
著者
河島 淳子 高橋 知恵子 山本 康子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-22, 1998-02-10

トモニ療育センターでは,会員に対し月1回の自閉症児個人セッションと,月3回の母親学習会,年2回の父親懇談会,随時の電話相談家庭療育指導を行っている。本論では,強いパニック行動をもった自閉症幼児R子に,資料「自閉症児とともに」にのべたような指導を行った結果,顕著な改善を示したので報告する。第1部は母親の記録,第2部はトモニ療育センターの記録である。
著者
松川 有美子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.67-70, 1989-03-11

本論は,音楽好きのダウン症の青年Mと計23回,4ヵ月半にわたって音楽活動を共にしてきた記録である。一緒に音楽を通して楽しみながら,音楽性と人間関係を広げていくことを主なねらいとした。明確に先を見通した具体的な計画を立てることはしないで,Mの実態と筆者がどのようなかかわりをもちうるか探りながら,状況に応じてそのつど,最もよいと思われる方向を決めていくという方法をとった。 23回のかかわりは,第1期-出会い,第2期-歌によるアプローチ,第3期-手拍子によるアプローチ,第4期-打楽器によるアプローチに分けられるが,その間,音楽面では体全体で音楽を感じ,体でうたう様子をみせ,オルガンのみに固執していたものが打楽器活動へと広がりを見せた。また対人面では,当初,筆者とのかかわりをもとうとしなかったのであるが,次第に筆者の手をひいて歩いたり,筆者の姿を見てうれしそうに笑うようになっていった。 この出会いをとおして,Mも筆者も一人だけの音楽から二人の音楽の世界をもつこと,つまり合奏を楽しみ,呼吸をあわせることができるようになった。そしてこれらから得たことは「「心の声」「体と心の叫び声」である音楽は声を出して「うたう」ことのみではなく,体全体を使って,手をうって,楽器を演奏してなど,うたい,音楽を楽しむことにある。」ということである。
著者
鳴川 啓子 外山 慎一 吉本 豊
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.143-154, 1997-02-07

平成8年3月の卒業式に,登校拒否学級の4人の卒業生全員が堂々と参加できた。登校刺激を控えなければならない"不安などの情緒的混乱の型"の子供たちであった。しかし,私たちは教育の営みを輪切りにして一喜一憂するのではなく,辛抱強くトータルなものとして捉えることに賭けた結果であった。終わってからT子が職員室へやってきて笑みを浮かべながら『校長先生来れ!』と差し出したリボン結びの置物。自分の乏しい小遣いで買い求めた『心』のこもったプレゼントだった。遠く離れて物陰から見守る母親の姿があった。登校拒否学級の子供の多くは,積年にわたって心因性や内因性に関わるあつれきや障害を深めて入級しており,医心領域の賢明な取組においても"途険し"の状況にあるようである。この1年の実践において,一人一人の確かな"心の成長"の軌跡が登校拒否学級の成果として示されたように思う。担任による子供の生涯をおもんばかった『人間育成』の教育の営みと,それを支援してきた本校教職員の姿勢に大きな誇りを感じるのである。(学校長吉本豊)
著者
小田切 正
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.207-218, 1999-02-10

菅季治(1917-1950)は,若くして逝った北海道が生んだ哲学者であり,教師である。本稿は,ひきつづき菅の戦中における生活・思想・哲学のもつ意義をあきらかにすることである。とくに今回は,アミエル(H-F Amiel 1846-1881)について再度とりあげ,菅にとってアミエルとはなにか,について検証を行なった。キエルケゴールが,魂へのふかい洞察をもたらしたことについては,これまでみてきたが,アミエルの自然・人間観,社会観,自由論があたえた影響も深刻だと考えられたからである。(戦争について-読者には戦争下のなかであった-,あらゆる真理を解体するもの,誤謬たいして誤謬をたたかわせるもの,醜悪そのもの,と指摘したのも,アミエルだったことが忘れられない。岩波文庫(四)1879年3月3日参照のこと)こうして,到達した菅の思想・哲学の結節点である主体-主体関係論(前回,「相互承認論としてとりあげたが)について考察するとともに,両者がともに生きるために構想された,「場」とはなにかについてもふれ,その将来展望について,検討を行なっている。
著者
篠崎 麻利子 古川 宇一
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.27-34, 1993-03-17
被引用文献数
1

発達に障害をもつ子供たちの中には,思春期になると問題行動が重篤化する者がいるという。親は思春期に非常に大きな不安を持っている。だが,実態はよく掴まえられていない。本研究は,思春期の問題行動の実態,具体的な対応の仕方や親の悩み,要望などを明らかにすることを目的に,親への質問紙法による調査を行った。その結果,(1)問題行動別に年代による推移をみると,多動,偏食,奇声は年代とともに減少傾向が大きいこと。他傷行為,睡眠障害,パニックにも減少傾向が見られること。(2)逆に,過食,異食,チック,自慰等性的問題行動は思春期以降に増加傾向を示すこと。(3)自傷行為,強迫的こだわりは,年齢に関わらず,どの年代にも一定数見られること。(4)問題行動が減少していく事例をみると,幼児期に障害児と特別扱いしないで叱る時は厳しく叱る躾方をし,いろいろな趣味を持ち日々を楽しく過ごしている様子が伺えること。また,思春期以降重篤化する事例は中卒者38名中4名にすぎないことなどがあげられた。
著者
奥田 惠孝
出版者
北海道教育大学
雑誌
學藝 : 北海道學藝大學機關誌
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.175-177, 1950-12
著者
三島 利紀 小澤 治夫 佐藤 毅 樽谷 将志 西山 幸代
出版者
北海道教育大学
雑誌
釧路論集 : 北海道教育大学釧路分校研究報告 (ISSN:02878216)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.139-144, 2006

高校生の生活と貧血の実態がいかなるものかを明らかにする事を目的として本調査を行った。調査対象は、北海道内のK校に通う602名(男子510名、女子92名)、関西圏のY校に通う338名(男子207名、女子131名)である。調査は、K校が食事・睡眠・運動など生活や健康についてのアンケートと血色素量の測定、Y校は血色素量の測定のみで、単純集計した。K校においては、生活・健康アンケートと血色素量の関係をみることとし、Y高校に関しては、K校との血色素量比較をすることとした。結果、1.K校の22.0%、女子19.6%、Y校男子55.1%、女子45.0%に基準血色素量を下回る者が見られた。2.両校とも女子より男子に多かった。3.K校において、手の冷たい学生が貧血傾向を示した。4.K校の寮・下宿・アパートに生活する学生に貧血傾向が見られた。5.K校において、睡眠不足・運動不足傾向の学生が多く、そうした生活習慣が貧血に影響している傾向が見られた。一般的に女子に多いといわれる貧血であるが、運動・食事等が充実していた男性に多くなってきたことは、大きな問題であり、睡眠・食事・運動といった生活習慣の見直しが男女問わず求められることが示唆された。