著者
三上 修 森本 元 上野 裕介
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

「電柱(腕金)」と「道路標識(固定式視線誘導柱)」という大量にある人工構造物に、鳥類が営巣することが知られている。北海道全体で、これらの構造物に鳥類がどれだけ営巣しているのか、逆に言えば人間はそれらの人工構造物を作ることで、鳥類にどれくらいの営巣場所を提供しているのかを明らかにすることを目的とする。
著者
大坂 克之
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.169-182, 1998-02-10

筆者と中学1年の女の子,晴華ちゃんとのかかわりは,約10年に達しようとしている。この間,本人だけでなく,お兄ちゃんやお姉ちゃんとも英語の指導というかかわりを数年間もつことができた。2・3年前ぐらいから,「晴華ちゃんは大坂先生のコピーだ」と家族内では言われているとのこと。楽しく明るく,大声で笑い歌い,うるさいぐらいに口数が多く,口調や雰囲気が似ているらしい。筆者の提唱する「ミュージック・ムーブメント」の活動そのものが筆者自身であり,筆者の弾く音楽は筆者自身であるので,そのことは,当然といえば当然のことである。が,かかわった者として「喜び」と同時に「恐ろしさ」を感じるこの頃である。ミュージック・ムーブメントを通しての晴華ちゃんとのかかわりの10年間め概要を報告する。
著者
橋本 忠和
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.321-332, 2020-02

本研究は筆者の「ごっこ遊び」と社会情動的スキルとの関連性に基づく研究を基礎に,幼児教育現場で様々な機会に活用され,幼児の豊かな想像性や言語に関する感覚等を育成する手立てとして位置づけられている「絵本」に着目し,保護者と連携した「絵本」の読み聞かせの実践が5歳児の社会情動的スキルを育む上でどのような可能性を有しているのか考察することを目的としている。研究手法としては,絵本「ないた:中川 ひろたか:作」を教材として使用し,主人公の顔を見て母親が涙を流す理由を幼児と保護者が対話を通して考える場面の幼児の発言及び保護者,保育者の反応等を「社会情動的スキル(目標の達成・他者との協働・情動の抑制)」の分類を観点として分析し,絵本の読み聞かせと社会情動的スキルとの接点を考察した。すると,絵本の読み聞かせが幼児の社会情動的スキルの分類の各要素を育成する可能性を見出すことができた。
著者
渡部 謙一
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.315-325, 2020-08

現代日本において吹奏楽という音楽ジャンルは,数十年前「ブラスバンド」と呼ばれていた時代から比べ隔世の感を禁じ得ないほど発展し,一文化として定着していると言っても過言ではないと思われる。全日本吹奏楽連盟の加盟団体数は14000団体を超え,学校部活動を始め,生涯教育としても非常に数多くの人々によって愛好されている。また様々な楽譜や音源・映像等の出版物も流布されて多彩な活動が展開されている。しかしながら,演奏のためのメソードにおいて,多くの教則本が出されてはいるがそのほとんどは,観念的でイメージを優先した著述のものばかりで,必ずしもプリンシプルとして根源的な論述まで至っているものは,残念ながら,無い。中には科学的な根拠の不確かな「言い伝え」にも似たものも多く,学術的科学的根拠に基づいたものを見つけるのが難しいという現状である。本研究は,そういった楽器演奏のためのメソード,特に金管楽器の技術的根本に目を当て,演奏者の主観やイメージといったものが介在する以前の,どんな演奏者にとっても普遍的で重要な基本的な諸要素〜発音原理や呼吸法〜について論じるものである。
著者
林 美都子
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.25-32, 2020-08

国際化やIT化が推進される現代社会においては,西暦の利便性が高く,元号の不自由さが強調されることもあるが,元号にどのような心理的機能があるのかについては十分な検討が行われていない。本研究では,林(2020)にて平成生まれの大学生64名を対象に行ったのと同じ,大正,昭和,平成,令和の元号イメージに関する調査を,昭和生まれの社会人24名を対象に,潜在的な好感度を測定するIATと人名に関する好感度アンケートとを用いて行った。本調査の結果,昭和生まれの社会人においても平成生まれの大学生同様(林,2020),自分の生まれた元号は内心特別に好まれ,また,元号によって主観的に「時代」に意味づけやイメージづけがなされており,元号の心理的機能は昭和世代においても健在であることが示唆された。さらに,調査時点で最新の元号である令和に対するIAT値がもっとも高かったことから,「元号には,赤子が生まれたときに名前をつけ,その健やかな成長と未来を願うのと類似の心理的な機能が含まれている」(林,2020)ことがより明確に支持されたと考えられる。
著者
中山 雅茂
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.199-205, 2020-02

月の満ち欠けに関する学習は小学校第6学年と中学校第3学年で扱われ,小学校では地球視点,中学校では宇宙視点で月と太陽,地球の位置の違いと月の満ち欠けの関係を学習する。本報は,月の満ち欠けのモデル実験において,地球視点から宇宙視点への視点移動を容易にすることを目的として開発した実験装置を詳細に報告する。一つの実験装置で,地球視点と宇宙視点について同時に学習できる実験装置であり,中学校の学習において地球視点と宇宙視点での思考を支援する教材として提案する。また,日食・月食・金星の満ち欠けの実験も行える実験装置としての使用方法を示すことで,中学校で扱う月と金星の満ち欠けの学習全体で活用できる実験装置として提案する。
著者
竹内 久美子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.109-112, 1989-03-11

緘黙児の理解と治療的アプローチに関する研究の中で,近年内面へのアプローチの重要性が指摘されている。 筆者は緘黙児のより深い理解と治療の手がかりのために,緘黙児の自己意識を明らかにしようとした。その方法は,(1)全道の児童相談所に依頼し得た緘黙児26名についての横断的分析,(2)自己意識に関する資料(SCT・その他)の分析(3)K中学校の協力により参加観察が可能となった一名の事例研究の3つを採用した。その結果明らかになったことは,1)発症時期が3歳〜7歳に集中している。2)症状に多様性があり,しかもそれらは相互に移行的である。3)緘黙に由来する学業不振がある。4)乳幼児期における親との接触経験が少なく,現在の家庭に対する評価がnegativeである。5)内気・自信欠如・孤独・神経質・攻撃的・過敏・頑固ということが彼らの性格特徴としてまとめられる。6)外界の知覚に歪曲や遮断の傾向が認められる。7)緘黙児は現実世界に適応したいという切なる願いをもっていながら,自己実現への努力を放棄せざるを得ない状態にあるため,自己意識に限局や歪みが認められる。一般に人は自己の理想とするところに少しでも近づくために何らかの現実的手段を用いて日々努力するが,緘黙児にそれは認められないことがある。自己実現という観点から緘黙の症状をみると,夢・空想によって自己を実現する段階から,攻撃的な行為・イタズラ・幼児返りにより自己実現しようとする段階,そして表現活動がおさえられ身体反応まで限局されている,というような三つの段階があることを仮設的に提示した。
著者
阿部 二郎 レティホンヴァン
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-16, 2021-02

本稿は日本語とベトナム語に見られる謝罪表現及び謝罪言語行動を対照し,その特徴を明らかにすること,およびその応用としてベトナム人日本語学習者に対する謝罪の指導法を考案することを目的とする。日本人とベトナム人を対象とした調査から,日本人は相手によらず謝罪表現を使用する傾向があるのに対し,ベトナム人は相手によって謝罪表現の使用率やストラテジーが大きく異なるという結果が得られた。この結果に対しポライトネス理論の枠組みから,日本人が相手のフェイスを優先するのに対し,ベトナム人は相手との関係に応じて自分と相手いずれのフェイスを優先するかが変化するという説明をおこなった。さらに,このような両言語の特徴を学習者が意識化できるような日本語の授業案を作成した。
著者
百瀬 響
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 人文科学・社会科学編 (ISSN:13442562)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.93-108, 2020-08

本稿は,近代以前にアイヌ-和人間に行われていた様々な物資の交換に関し,余市場所を例に検討したものである。資料は『余市町史』資料編1収録の「林家文書」の解読済み文書を用い,特に1857(安政4)年におけるアイヌ-和人間の交換レートについて分析した。さらに,アイヌによる漁場労働に対し,威信財を含む「物々交換」として支払われる対価を試算したほか,和人が和人に対し売却した価格と比較した。その結果,対アイヌ,対和人間の各交換レートには,大きな相違はほぼ見られなかったものの,アイヌ-和人間交易において,対価として支払われた食料(米)と嗜好品(煙草)との交換レートに,いわゆる二重レートが存在する可能性が判明した。この二重レートの存在と運用実態は今後解明する必要があるが,このような近世の商習慣を通して,近世末から近代初期にかけてアイヌ-和人間で行われた交換の実態とその関係性を明確化しようと試みた。