著者
上田 剛士
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.750-752, 2020-06-15

患者さんからのふとした質問に答えられないことはないでしょうか? 素朴な疑問ほど回答が難しいものはないですが、新たな気づきをもたらす良問も多いのではないでしょうか? 本連載では素朴な疑問に、文献的根拠を提示しながらお答えします!
著者
小森 香 小森 正博 菅沼 成文
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.451-455, 2020-05-10

●妊婦への言葉の暴力は,胎児への虐待である. ●パートナーからの暴言の頻度が増えると,暴言を受けていなかった母親から生まれた新生児と比べて,新生児聴覚スクリーニング検査の要再検(リファー)率が1.44倍高くなる. ●暴言による聴覚神経のダメージは避けることのできるものである.
著者
渡部 欣忍 新井 通浩 竹中 信之 松下 隆
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.993-996, 2013-10-25

大規模コホート研究を含む臨床研究の結果では,低出力超音波パルス(LIPUS)照射による遷延癒合・偽関節の治癒率は67~90%と報告されている.しかし,①偽関節が萎縮型である,②骨折部に不安定性がある,③主骨片間の間げきが8~9mm以上である,という特徴をもつ遷延癒合・偽関節にはLIPUSの効果が低い.これに該当する遷延癒合・偽関節に対しては,LIPUSは偽関節手術後の補助療法として使用するのがよいと考えている. 現行の健康保険制度では,骨切り術や骨延長術に対してはLIPUSを術直後から使用することができない.ランダム化比較臨床試験の結果では,LIPUS照射により延長仮骨の成熟が促進されることが証明されている.骨延長術の術後早期からLIPUSが保険適用されることを期待する.

1 0 0 0 TMA法

著者
前田 平生
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.194, 1997-06-15

核酸増幅法の1つであるTMA(transcription mediated amplification)法は,1細胞に1個のDNAの遺伝子よりも数千コピー存在するリボソームRNAの遺伝子をターゲットにすることにより,感度を必要とする感染症などの検出系において開発,実用化されたRNA増幅法である.現在では,このTMA法は,DNA依存性DNA合成酵素活性を持つ逆転写酵素とRNAポリメラーゼを利用することにより,DNAをターゲットとしたRNA増幅法として改良が加えられ,HLAクラスⅡ遺伝子のタイピングに応用されている.白血球より抽出したDNAは相補的水素結合で二本鎖を形成しているが,熱変性により一本鎖DNAにする.次に温度を下げ,プロモータープライマーとアニーリング後,DNA依存性DNA合成酵素活性を持つ逆転写酵素を加え,プライマー伸長反応による二本鎖DNAを合成する.再び熱変性を行い,温度を下げ,第2プライマーのアニーリング後,さらに逆転写酵素とRNAポリメラーゼにより第1プライマーの配列が導入された二本鎖DNAが産生され,この二本鎖DNAを鋳型にしてRNAポリメラーゼが働き,最終産物として相補的な一本鎖RNAが多量に合成される.
著者
鈴木 基広 永野 柾巨 泰江 輝雄 福島 明 佐藤 功一 小勝 薫 三浦 妙太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1103-1106, 1985-09-25

坐骨神経に発生した巨大な孤立性神経鞘腫の一例を経験したので報告した.症例は48歳男性.約10年前,左大腿後面に無自覚性の小結節を生じ,漸次増大した.来院時,腫瘤は24cm×25cm,弾性硬で圧痛があった.術前検査により悪性新生物を考えて手術を行った.腫瘤は大腿二頭筋の深部に存在し,被膜に包まれ,坐骨神経本幹に連続していた.大きさは19cm×13cm×12cm,重さ1,852gと巨大な腫瘍であった.割面は充実性で,肉眼的には黄白色で一部に出血巣が認められた.病理組織はAntoni A型とAntoni B型の混合型の神経鞘腫であった.坐骨神経に発生する腫瘍には悪性のものが多く,神経鞘腫で,本症例のごとく巨大なものは,今日まで報告がなされていない.症例は術後5年間の経過観察をするも,再発の徴候なく,元気に社会生活を送っている.
著者
亀山 美知子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.13-16, 1995-01-25

日本の近代において,ナイチンゲールとジャンヌ・ダルクほど称揚された女性は少ない.とりわけ,ナイチンゲールについては,明治の初頭に紹介され始め,現代に至っても一定の評価を受け続けている.それは女性の事業家であり,政治手腕を発揮した女性であり,何よりも「博愛」の象徴としての看護に携わった女性としてであろう. だが,フェミニズムの立場からフロレンス・ナイチンゲールの足跡を評価する論文等は,日本において比較的少ない.本稿では,ナイチンゲールをフェミニズムの観点で,再評価しようと思う.
著者
藤沼 康樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.453-456, 2002-05-15

◆ポイント◆ 1)継続性とは,単に長期にわたって繰り返し診察すること(longitudinal continuity)ではなく,患者が担当医を自分の健康にとって重要なリソースだと認識していること(personal continuity)を含む. 2)真に継続性のあるケアを展開するためには,単なる慢性疾患管理にとどまらない,人生に寄り添い支援するという,家庭医らしい診療姿勢が必要である.
著者
川合 謙介
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.331-346, 2011-04-01

はじめに 迷走神経刺激療法(vagus nerve stimulation:VNS)は,てんかんに対する非薬剤治療の1つであり,抗てんかん薬に抵抗する難治性てんかん発作を減少,軽減する緩和的治療である。植込型の電気刺激装置により,左迷走神経を間歇的かつ慢性的に刺激する(Fig.1)。難治性てんかんに対する緩和的な電気刺激療法としては最初に臨床応用されたもので,欧米へ導入されてからおよそ15年が経過した。難治性てんかん発作に対する抑制効果は根治的ではないものの,無作為化二重盲検試験で確認された信頼度の高いものであり1,2),1999年の米国神経学会指針でクラス1エビデンス認定を受けている3)。欧米では,既に長らく薬剤抵抗性で開頭手術の適応もない難治性てんかん発作に対する緩和的治療の重要な選択肢となっている4)。 したがってVNSは,必ずしも新しい治療と呼ぶにはふさわしくないのだが,日本でも2010年1月に薬事承認,7月に保険適応が得られ,ようやく臨床場面での通常使用が可能となった。本稿では,わが国でのこのようなタイミングを踏まえて,VNSの歴史,関連する解剖および生理学的知識,作用機序,治療適応と臨床効果,安全性と副作用,実際に治療を行う場合の注意点などについて概説する。
著者
増田 亜希子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.771-775, 2013-09-01

はじめに 形質細胞はBリンパ球がさらに分化した細胞であり,免疫グロブリン〔IgG(immunoglobulin G),IgA(immunoglobulin A),IgD(immunoglobulin D),IgE(immunoglobulin E)〕を産生する.形質細胞が単クローン性に増殖したのが形質細胞腫瘍であり,多発性骨髄腫(multiple myeloma,MM),意義不明の単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance,MGUS),原発性アミロイドーシス〔AL(amyloid light chain)アミロイドーシス〕などが含まれる(表1)1,2). 免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比(free light chain κ/λ ratio,rFLC)はネフェロメトリー法によって血清中の遊離κ鎖およびλ鎖を測定し,κ/λ比を算出する検査であり,2011年9月に保険収載された.MMなどの形質細胞腫瘍の場合,遊離κ鎖もしくはλ鎖のどちらか一方が増加するため,κ/λ鎖比が大きく変化する.一方,感染症や自己免疫疾患などの場合,κ/λ鎖比はほとんど変化せず基準値内に収まる.rFLC測定は,従来から用いられている免疫固定法(immunofixation electrophoresis,IFE)に比べて高感度のM蛋白検出法であり,形質細胞腫瘍の診断,予後予測,治療効果判定などに用いられる.特に,非分泌型骨髄腫(non-secretory myeloma)や軽鎖型骨髄腫〔Bence Jones蛋白(Bence Jones protein,BJP)型骨髄腫〕の診断に有用である. 本稿では,遊離軽鎖(free light chain,FLC)検査の測定原理や臨床的意義について概説する.
著者
加藤 聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.136-141, 2007-10-30

白内障 1.病態,疫学 糖尿病下で高血糖状態が続くと,血液房水柵を通って房水中のグルコース濃度が上昇し,水晶体内にも自由に移行する。糖尿病状態では,本来の解糖系が働かずポリオール代謝系が使用され,グルコースの多くはソルビトールに変化し,水晶体内でソルビトールが増加する。水晶体膜は生体膜としてソルビトールの通過を阻止する一方,ソルビトールは水と親和性が高いので細胞外の水分を細胞内に引き込む。そのため,水晶体細胞が浮腫に陥り,細胞自体が膨化し,水晶体線維を中心とした構造は破壊され,白濁すると考えられている(浸透圧説)。浸透圧説が白内障の成因に関与することは疑いがないが,それだけでは説明がつかないところもあり,他の因子も白内障の成因に加味されていると考えられる。 糖尿病に合併する白内障には,真性糖尿病白内障と仮性糖尿病白内障がある。真性糖尿病白内障は,40歳以下の1型糖尿病患者にみられ,両眼性で急速な進行を呈する。一方,仮性糖尿病白内障は,老人性白内障との鑑別が難しいため頻度の報告についてはばらつきが大きく17.4~89.0%1~4)とされているが,明らかに糖尿病による白内障は25%程度,糖尿病患者に白内障が合併しているものが67%程度と報告されている4)。
著者
大谷 和之 中井 修 黒佐 義郎 進藤 重雄 安部 理寛 北原 建彰 山浦 伊裟吉
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.413-418, 1997-04-25

抄録:脊椎手術後の髄液漏の自然経過を明らかにする目的で,術後7日以上漏出が続いた14例,偽性髄膜瘤を形成した9例,胸腔内に髄液が貯留した8例の合計31例を調査した.発生率は脊椎手術1408例中2.2%で,平均漏出日数は19.4日(7日~57日)であった.全例が硬膜修復やくも膜下ドレナージを要することなく治癒した.偽性髄膜瘤や胸腔内貯留も数カ月以内に自然吸収された.感染は2例あり,1例は髄膜炎,1例は表在感染であった.長期化する髄液漏はすべて頚胸部での発症例であり,腰仙部で7日以上漏出が続いた症例はなかった.前方手術後の髄液漏は後方のものと比べ早期に閉鎖し偽性髄膜瘤を形成する傾向があった.治癒過程において漏出部とクモ膜下腔との圧の差が大きな役割を果たすためと考えられる.術後髄液漏は自然治癒傾向があり特に処置を施さなくとも問題となることは少ないが,その病態と治癒機序を考慮し体位による治療を行えば漏出期間の短縮が可能であろう.
著者
野溝 崇史 和足 孝之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.501-502, 2020-03-10

患者 85歳,女性主訴 嘔気/食思不振,頻尿
著者
和田 圭壮
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.196-201, 2020-03-25

はじめに 私は、福岡教育大学(以下、本学)の美術教育ユニットで、書写・書道教育学を専門として教えています。本学では、「板書指導」という授業を開講しています。この授業は、小学校教員養成向けの授業で、90分15回の授業のうち、書写・書道の教員が手書き文字の良さを知るための講義やチョークによる美しく整った文字の書き方の実技を7回行っています。残りの8回で国語・算数・理科・社会・道徳の板書計画を、それぞれの専門の教員に指導していただいています。教員6名によるリレー式の授業となっています。
著者
田辺 けい子 水尾 智佐子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.402-410, 2020-06-25

助産師は正常分娩のエキスパートと称されますが,分娩の医療化の最たる無痛分娩の下では,専門性を発揮することができないのでしょうか。時代と共に女性の出産観が変わってきている今,本対談では,無痛分娩を通して「助産」の本質を考えてみます。
著者
弟子丸 元紀 宮川 太平 鈴木 高秋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-790, 1977-07-01

I.はじめに 頭部外傷後遺症による性格変化に関しては,すでに多数の報告がなされている。しかし,長期経過例の病理組織学的検討を行つた報告は少ない3,5,13,21)。特に性格変化との関係についての検討は非常に少ない5)。 本例は受傷後,7年4カ月を経過し,性格変化として躁うつ的状態を示し,死後剖検により病理所見は,前頭葉眼窩面に限局した皮質挫傷巣のみであつた。そこで本稿では,性格変化と病理所見との関連性について考察を行つた。
著者
高橋 良
出版者
医学書院
雑誌
耳鼻咽喉科 (ISSN:03869679)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.182-186, 1951-05
著者
和田 裕子 末長 敏彦 橋本 修治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.147-151, 2003-02-01

要旨 ジアゼパムやクロナゼパム治療に抵抗性のgeneralized spasmによるのけ反り発作に対して,ヒト免疫グロブリン(IVIG)静注療法が奏効した抗GAD抗体陽性のstiff-person症候群の男性例を報告した。本例は58歳時に右下肢と腰背部の筋硬直で発症し,ジアゼパム6mg内服で軽快していた。63歳時に再び,両下肢と腰部の筋硬直,のけ反り発作,左下肢に限局したpainful spasmが出現した。ジアゼパム18mg/日とクロナゼパム2.0mg/日の内服でpainful spasmは消失し,筋硬直も軽度改善したが,のけ反り発作に対しては無効であった。IVIG療法開始3日目にはのけ反り発作は消失し,つづいて筋硬直も改善し,10日目には階段昇降が可能になった。本例のように難治性ののけ反り発作を有する例に対してもIVIG療法は有用であると考えた。
著者
上田 敏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.515-521, 1980-07-10

はじめに 障害の受容(acceptance of disability)はリハビリテーションにおける「問題解決の鍵となる概念(キイ・コンセプト,key concept)」の一つである.客観的(外形的)にはリハビリテーションのゴールが達成されていながら,障害者(患者)本人の障害の受容が達成されていないために結局リハビリテーションが完結しないという場合が少なくない.リハビリテーション・カンファレンスの場でも「最大の問題は本人による障害の受容だ」という所までは全員の意見が一致しても,「では一体だれが,どのようにして障害の受容を援助するのか」という実際の方法論となると,いくら話し合っても結論がでず,結局「もう少しPT・OTを続けて様子を見よう」というところに落着いてしまうこともしばしばである. このように重要な障害の受容であるが,これを正面からとりあげた論文は内外ともに意外に少く,部分的に触れているものを含めても,筆者が直接に接することができたのは20篇のみであった1~20).これらの中で理論的にもっとも詳しく包括的なのはWright2)の古典的な名著の策5章“Value Changes in Acceptance of Disability”であり,教科書的によくまとまったものとしてはHerman5),高瀬10),古牧17)などがある.また最近の中司15),松田他19),蕪木他20)はこの問題への実証的なアプローチとして価値高いものである. 筆者は心理学または精神医学の専門家ではないが,リハビリテーション医としてこれまで多くの身体障害をもつ患者・障害者に接し,障害の受容に到る苦痛に満ちた過程に触れ,また可能な限りその過程を促進し,援助しようとつとめてきたし,その過程で持った感想を述べたこともある11,14).また昨年,筆者の所属する東大リハビリテーション部の全職員の参加する勉強会のテーマに障害の受容を選び,数ヵ月にわたって,いくつかの症例の検討を通じて,障害の受容にいたる心理的ダイナミックスの法則を理解することと,その援助の上でリハビリテーション・スタッフの果たすべき役割と注意について議論を重ね,得るところが大きかった.特に長期にわたる抑鬱から短期間のうちに劇的な立直りを示し,障害の受容のめざましい成功例だと担当者たちは考えていた一症例が,角度を変えて見直してみると,実は抑鬱期にある患者に自立を「強要」し,それが十分達成されないことに対して,批難がましい感情をもつことによって一歩誤まれば非常な危険な瀬戸際まで患者を追いつめていた可能性があり,我々にもう少し深い洞察力と患者の苦しみに対する共感力とがあれば抑鬱の期間をはるかに短かく切り上げて,数か月も早く受容に到達させ得ていたかもしれないということの認識(と反省)に到達しえたことは我々にとって一つの啓示といってもよいものであった. 本論文では文献的考察にそのような経験や反省をもまじえつつ,障害の受容の問題をよりよく理解し,よりよく対処することを目的として種々の角度からの考察を試みたい.
著者
梶村 政司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.152-158, 1996-03-15

1.はじめに 「アジア競技大会広島1994」(以下アジア大会)は,記録的な猛暑と異常渇水の状況のなかで開催される運びとなった.漕艇やカヌーの会場へも渇水の影響が現れ,一時「競技は不可能か」と思わせる低水位の川やダムの現状があった.しかし,これまでの準備と願いの甲斐あって,首都以外の地方都市で初めて開催されることとなった.地方での開催であるが故に,国内はもとよりアジア諸国関係者からも多くの注目を集めていた.また,わが国においては昭和33年の東京大会に次いで2度目の開催である. 今回,診療所医務班が参考にしたのは,1985年神戸で行われたユニバーシアード大会であった.これまで多くの国際スポーツ大会が開催されていたが,いずれも理学療法士の参加は非公式なものであった.