著者
笠谷 和比古
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.35, pp.231-274, 2007-05-21

武士道をめぐる研究の中で注意を要することは、新渡戸稲造の『武士道』に対する評価が、専門研究家の間においては意外なほどに低く、同書は近代明治の時代が作り上げた虚像に過ぎないといった類の非難がかなり広範に存在するという事実である。
著者
岩井 茂樹
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.31, pp.69-114, 2005-10-31

現在、能といえばすぐさま「幽玄」という言葉が想起されるほど、両者は固く結びついている。なるほど、世阿弥が残した能楽書には「幽玄」という言葉がたびたび使われている。だが、「幽玄」は、能の世界では長らく忘れ去られていた言葉であった。それでは、能と「幽玄」は、いつから、どのようにして、結びついたのだろうか。本論稿はこの点を明らかにすることを目的とする。
著者
朱 捷
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.15, pp.69-91, 1996-12-27

本稿では、日本人の語感において嗅覚がいかに格別な地位を占めているかを論じる。
著者
北 政巳
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.21, pp.45-63, 2000-03-30

明治日本の近代技術教育の発展において、スコットランド人技術者や教育者が果たした役割がいかに大きかったかについて、わが国では、あまり知られていない。
著者
細川 周平
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

南米移民が開始して既に1世紀以上が経過し、現在では日本語社会は縮小の一歩をたどっている。本研究は日本語活動の重要な拠点である文芸サークルの現在をブラジルとアルゼンチンで観察することを目標とし、数度にわたるフィールドワークを行ってきた。ブラジルではサンパウロとトメアスー(パラ州、アマゾン川流域)のほぼ最後の短詩サークルの句会と接触し、定型詩にこめられた自然描写や郷愁を確認した。アルゼンチンでは唯一の日本語新聞で長く働き、70年代より文芸に携わってきた崎原朝一氏とインタビューし、郊外の日系移民資料館を訪問し、文芸雑誌の所蔵を確認した。
著者
山本 冴里
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.47, pp.171-206, 2013-03-29

日本発ポップカルチャー(以下、JPC)に対する評価や位置づけは、親子間から国家レベルまで様々な次元での争点となった。そして、そのような議論には頻繁にJPCは誰のものか/誰のものであるべきかという線引きの要素が入っていた。本研究が目指したのは、そうした境界の一端を明らかにすることだった。
著者
渡辺 雅子 渡邉 雅子 渡辺 雅子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.573-619, 2007-05

本稿では、日米仏のことばの教育の特徴を比較しつつ、その歴史的淵源を探り、三カ国の「読み書き」教育の背後にある社会的な要因を明らかにしたい。まず日米仏三カ国の国語教育の特徴を概観した後、作文教育に注目し、各国の書き方の基本様式とその教授法を、近年学校教育で養うべき能力とされている「個性」や「創造力」との関係から比較分析したい。その上で、現行の制度と教授法、作文の様式はどのように形作られてきたのか、その革新と継続の歴史的経緯を明らかにする。結語では、独自の発展を遂げてきた各国の国語教育比較から何を学べるのか、日本の国語教育はいかなる選択をすべきかを、「国語」とそれを超えたグローバルな言語能力に言及しながら考えたい。 個性と創造力の視点から作文教育を見ると、日本とアメリカの作文教育における自由と規模の奇妙なパラドックスが浮かび上がり、また時節の議論からは超然としたフランスの教育の姿が現れる。また評価法の三カ国比較からは、言葉のどの側面を重要視し、何をもって言語能力が高いと認めるのかの違いが明確になる。規範となる文章様式とその評価法には、技術としての言語習得を超えた、言葉の社会的機能が最も顕著に現れている。 社会状況に合わせて常に革新を続けるアメリカの表現様式と、大きな転換点から新たな様式を作り出した日本、伝統様式保持に不断の努力を続けるフランス。三カ国の比較から見えてくるのは、表現様式を通した飽く無き「規範作り」のダイナミズムである。
著者
シーコラ ヤン
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.83-94, 1998-09-30

徳川時代は、ヨーロッパで経済学が独立した学問として登場してきた思想的な激動期に対応している。西洋の思想のある分野――とりわけ自然科学思想――は日本学者に研究され普及してきたが、しかし西洋の政治・経済思想が日本に紹介されることは多かれ少なかれ制約されていた。一方、同時に日本の経済・社会がますます複雑になり、貨幣経済が進展していくにつれて、ヨーロッパの経済学者が考察を深めていったのとよく似た経済現象が形成されていた。
著者
輪島 裕介
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度も、前年度に引き続いて第二次世界大戦後の日本の大衆文化の歴史的展開を研究し、とりわけそこにおける音楽の位置について主題的に検討した。昨年度は主に1970年代以降の「若者文化」の形成と変容を主題的に扱ったが、本年度は戦後初期からの、「大衆文化」および「大衆音楽」に関する言説の変遷に着目した。1950年代の『思想の科学』グループや、1960年代の「朝日ジャーナル」や「話の特集」に代表される対抗文化的ジャーナリズムにおける歌謡曲/流行歌へのまなざしのありようを通時的に研究し、旧来支配的であった「洋楽」(西洋芸術音楽)を範型とする教養主義的な語りや、大衆の啓蒙を目指す既成左翼的な文化の語りのなかでは蔑視されてきた歌謡曲/流行歌に、「日本の民衆的/民族的な土着性」という意味が投影されることによって真正性が付与されてゆく過程を明らかにした。その成果の一部は早稲田大学オープン教育センター講座「感性の現在への問い」のゲスト・スピーカーとして『「艶歌」の誕生:流行歌が「日本の心」になるとき』と題して口頭発表した(2005年6月23日)。また、1990年代以降の民族音楽学およびポピュラー音楽研究に関する学説史的な概観を行い、その知見に基づき事典の項目執筆を行った。担当項目は「ワールドミュージック」(約1万字)、「ライブ」(約1000字)(『音の百科事典』丸善、2006)「1989年以降の民族音楽学」、「日本のワールドミュージック」、「カーニバル文化の政治性」(各約5000字)(『世界音楽の本』(岩波書店近刊)である。
著者
坪内 玲子
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.22, pp.111-129, 2000-10-31

日本の伝統的な家族制度の下では、長男による家督の継承が原則であり、この原則は武士階級において遵守されていたと考えられている。実際には、人口学的な状況のために、長男による継承は必ず行われたわけではなく、長男早世のため弟が継承する場合があった。さらには、高い死亡率や低い出生率を背景に、婿養子や養子による継承が顕著な場合があった。筆者は、さまざまな藩における藩士の家譜に記載された継承の事例を集めて分析を行ってきたが、ここでは、萩藩における結果を示す。
著者
鈴木 堅弘
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-51, 2008-09

本論は、春画として最も有名な北斎画の「蛸と海女」を取り上げ、この画図を中心に春画・艶本表現における図像分析を試みた。まず具体的な図像分析に先駆けて、同種のモチーフが「あぶな絵」や「浮世絵」にも描かれている背景を追うことで、近世期の絵画表現史における「蛸と海女」の画系譜を作成した。そしてその画系譜を踏まえて、北斎画を中心とした春画・艶本「蛸と海女」の図像表現のなかに、同時代の歌舞伎、浄瑠璃、戯作などに用いられた「世界」と「趣向」という表現構造を見出すことにより、春画・艶本分野においても同種の演出技法が用いられていたことを発見するに至った。また、こうした図像分析を通じて、北斎画を中心とした春画・艶本「蛸と海女」の表現構造が、太古より連綿と続く「海女の珠取物語」の伝承要素や、江戸時代の巷間に流布した奇談・怪談の要素で構成されていることを読み解いたといえよう。 なお、これらの考察により、春画・艶本の性表現のみに注視しない、新たな見方を提示することができたに違いない。
著者
原 秀成
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.21, pp.213-252, 2000-03-31

本稿では一九二〇年代からのデモクラシーを求める活動から、第二次世界大戦後へのいくつかの系譜をたどった。
著者
今谷 明
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 (ISSN:09150900)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.201-214, 2007-05

アメリカ、フランス、オランダ、ドイツ各国に於ける日本史研究の現状と特色をスケッチしたもの。研究者数、研究機関(大学など)とも圧倒的にアメリカが多い。ここ十年余の期間の顕著な特色は、各国の研究水準が大幅にアップし、殆どの研究者が、翻訳資料でなく、日本語のナマの資料を用いて研究を行い、論文を作成していることで、日本人の研究者と比して遜色ないのみか、医史学など一部の分野では日本の研究レベルを凌駕しているところもある。このための調査旅行として、二〇〇六年八~十月の期間、アメリカのハーバード大学、南カリフォルニア大学、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校、およびオランダのライデン大学を訪問し、ハーバード大学歴史学部長ゴードン氏以下、幾人かの日本史研究者と面談し、第一線の研究状況を直接に聴取することができた。なお、アメリカについては、日文研バクスター教授の研究を参考とし、フランスは総研大院生ハイエク君の調査を、ドイツについては日文研リュッターマン助教授の助力を仰いだことを付け加えておく。
著者
西村 大志
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究 : 国際日本文化研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.27, pp.183-200, 2003-03-31

本稿は、落語を比較文化論的視座とコミュニケーション論的視座から研究するものである。落語には江戸落語と上方落語という二つのスタイルがある。本稿では特に上方落語の『無いもの買い』という作品を中心に研究する。その際に速記本などの文字化された資料ではなく、録音されたものを用い分析する。純粋芸術化してしまった怪談噺・人情噺のような落語ではなく、大衆芸術として笑いの作品を対象とする。
著者
安田 喜徳 中川 毅 高橋 学 佐藤 洋一郎 北川 浩之 福澤 仁之 外山 秀一 徐 朝龍
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
COE形成基礎研究費
巻号頁・発行日
1997

平成13年度はプロジェクトの最終年度にあたり、主として研究成果のとりまとめと、補足調査ならびに研究成果の発表を実施した。平成13年度「長江文明の探求」の成果として特筆すべきことがらは、1)世界最古の焼成レンガの発見、2)中国最古の祭政殿の発見、3)中国最古の王宮の発見、4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見、5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、6)城頭山遺跡の住人が苗族であった可能性が高いこと、7)長江文明と日本文明の関係の解明、8)国際シンポジウムの実施し、9)研究成果報告書の刊行、10)記者発表による研究成果の公開などである。1)世界最古の焼成レンガの発見湖南省城頭山遺跡から出土した紅焼土とこれまでよばれてきたものの焼成過程を詳細に分析した結果、それが火事などで偶然できたものではなく、焼成レンガであることが判明した。焼成温度は摂氏600度以上の高温で、均質に焼かれており、かつそれらを大量に生産するシステムが存在したことが判明した。14C年代測定の結果その焼成レンガはすでに6400年前に作られていたことがあきらかとなり、世界最古の焼成レンガであることが判明した。2)中国最古の祭政殿の発見大渓文化の土廣墓の上にこの焼成レンガを敷き詰め、その上に屈家嶺文化早期の正殿・前殿・脇殿の構造をもった建築物が発見された。これは中国最古の祭政殿とみなされる。3)中国最古の王宮の発見祭政殿の西側に焼成レンガの上にさらに40cmほど版築をした上に、列柱回廊を持つ大型の建物が発見されんた。内部には御簾を支えたとみなされる列柱も発見され、これが王宮であった可能性がきわめて高いことが判明した。4)大型の木柱をもった貯蔵庫の発見東門の背後から直径1m以上の木柱をもつ大型の建物跡が発見され、その周辺から大量のイネの籾殻のプラントオパールが集中して発見された。このことから、この大型の木造家屋はイネ籾の貯蔵庫であった可能性が指摘できる。5)城頭山遺跡の城壁が3重構造を持つことの発見、城頭山遺跡の修景保存のための発掘調査の結果、城頭山遺跡の城壁は3回にわたって築造が内側から外側へと城壁が拡大築造されていることが判明した。6)城頭山遺跡の住人が苗族であった城頭山遺跡から出土した木材片の分析の結果、大半がフウの木であることが判明し、城頭山遺跡の住人はフウの木を愛用し崇拝していた可能性が高いことが判明した。現在フウの木を崇拝し愛用しているのは少数民族の苗族であり、城頭山遺跡の住人が苗族である可能性が高いことが指摘された。7)長江文明と日本文明の関係の解明城頭山遺跡周辺では水陸未分化の稲が栽培され、畑作雑穀も栽培されていた城頭山遺跡から出土した大型種子の分析の結果、水田雑草の種子とともに大量の畑作雑草の種子が検出され、遺跡周辺での稲作は水陸未分化の稲であったことが指摘できる。これは縄文時代晩期の唐津市菜畑遺跡の分析結果とよく似ており、稲作の日本への伝播経路が長江下流域から直接東シナ海を渡って日本に伝播した可能性が高いことが明らかとなった。8)国際シンポジウムの開催平成13年11月に長江文明の興亡と環境変動についてて世界の古代文明の研究者を招聘して、国際シンポジウムを実施した。その結果4200年前の気候悪化が長江文明の崩壊に決定的な意味を持ったことが明らかとなった。9)研究成果の報告書の刊行英文1冊、中文2冊の研究成果の報告書を刊行した。英文の報告書は「Origins of Pottery and Agriculture」(Lusre Press Roli Book)384pp.中文の報告書は「神話・祭祀和長江文明」文物出版社200頁と「長江流域乃青銅器」科学出版社200頁である。さらに現在中文の報告書「城頭山遺跡」を編集中であり、平成14年12月までには刊行できる見通しである、予定頁数は1000頁を越える膨大な報告書が出る予定である。10)記者発表平成13年11月2日に記者発表を行い、研究成果の公開を行った。

1 0 0 0 OA 日本アニメ考

著者
井上 章一
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
Cairo Conference on Japanese Studies
巻号頁・発行日
pp.125-130, 2007-12-20

Cairo Conference on Japanese Studies, カイロ大学, 2006年11月5日-6日