著者
野尻 美保子 清水 康弘 CHEN Chuan-ren SHU Jing
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

LHC におけるハードプロセスに伴うジェットや、重い粒子の崩壊からくるジェットの内部構造など、 QCD プロセスに関わる性質に着目し、 LHC での新粒子の発見を確実にする方法を提案した。 特に縮退した新粒子を LHC で発見するために 制動放出を利用する方法や、ジェットの部分構造を利用して,トップの偏極を測定する方法を開発した。またこの方法をもちいて、スカラートップの混合の測定や、暗黒物質の探索可能性について解析をおこなった。
著者
新井 康夫 坪山 透 原 和彦 三好 敏喜 海野 義信 一宮 亮
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、Silicon-On-Insulator (SOI)技術を用い、50 ミクロン程度まで薄くでき、100 万以上の画素数を持つピクセル放射線検出器(SOIPIX)を開発した。またこの検出器を用いて、実際に加速器ビームを照射し、数ミクロンオーダの位置精度が得られる事を実証した。さらに、荷電粒子やガンマ線を用いた放射線耐性試験を行い詳細なデータを得ると共に、シミュレーションによりそのメカニズムを解明し、放射線耐性の向上の為にプロセスの改良を行った。
著者
井上 栄二 仲吉 一男
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

DAQ(Data Acquisition)ミドルウェアを使ったCC/NET用データ収集システムにワークフローの技術を導入した枠組みを作った。DAQミドルウェアはRT(RobotTechnology)ミドルウェアという国際規格のロボット技術をベースにしたネットワーク分散型のデータ収集システムのフレームワークである。DAQミドルウェアとDAQワークフロー処理を一つGUI上で操作ができるようにしたことで、分散型DAQの利点を活かすことが可能になった。
著者
川合 將義 渡辺 精一 粉川 博之 川崎 亮 長谷川 晃 栗下 裕明 菊地 賢司 義家 敏正 神山 崇 原 信義 山村 力 二川 正敏 深堀 智生 斎藤 滋 前川 克廣 伊藤 高啓 後藤 琢也 佐藤 紘一 橋本 敏 寺澤 倫孝 渡辺 幸信 徐 超男 石野 栞 柴山 環樹 坂口 紀史 島川 聡司 直江 崇 岩瀬 宏 兼子 佳久 岸田 逸平 竹中 信幸 仲井 清眞
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

高エネルギー高強度陽子ビーム場の材料は、強烈な熱衝撃や放射線によって損傷を受ける。衝撃損傷過程と影響を実験的に調べ、その緩和法を導いた。また放射線損傷を理論的に評価するコードを開発した。さらに、損傷に強い材料として従来の材料に比べて強度の4倍高く室温で延性を持つタングステン材と耐食性が4倍高いステンレス鋼を開発した。衝撃実験における応力発光材を用いた定量的な方法を考案し、実用化の目処を得た。
著者
川崎 政人 若槻 壮市 加藤 龍一 五十嵐 教之 平木 雅彦 松垣 直宏 山田 悠介 鈴木 喜大 RAHIGHI Simin ROHAIM Ahmed
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

NF-κBは、免疫、炎症、抗アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を活性化する転写因子であり、NEMOにより活性化される。NEMOはLys63結合ユビキチン鎖と結合すると報告されていたが、意外なことにユビキチンが直列につながったタンデムユビキチン鎖により強く結合してNF-κBを活性化することが判明した。タンデムユビキチンとNEMOの複合体の結晶構造解析の結果、NEMOはコイルドコイル二量体の両面で2分子のタンデムユビキチンを対称的に結合しており、NEMOによるユビキチン鎖の選択的認識機構が明らかになった。
著者
豊田 晃久
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

前年度に実施したプロトタイプOTR検出器のビーム試験において、OTR光を無事観測することはできたものの、二点の問題の存在が明らかになった。一つはレンズおよびカメラの耐放射線性であり、もう一つは点状に分布するバックグラウンドの存在である。これを受けて、我々が今回考案したのが、放射線耐性に限界があるカメラ系をビームラインから遠ざける方法である。カメラ系における放射線場をできる限り下げることで上記の問題を同時に解決することができると期待される。また遠ざける方法として、イメージファイバーを用いてOTR光を伝送する方法を考案した。続いてイメージファイバーの選定を行った。要求されるプロファイル観測範囲は100mmx100mmと大きく、典型的なイメージファイバーの直径(1mm以下)にフォーカスすることは容易ではない。もちろん対物レンズを遠ざければ倍率は稼げるものの、低ガンマ値のビームからのOTR光は大きく広がっていくため、収量的に厳しくなる。イメージファイバーの種類、収束光学パラメータ、スクリーンからの距離の3つの要素のバランスを取ることで、最低照度を確保しつつイメージ範囲も確保できるようなシステムを設計することに成功した。以上に基づいてプロトタイプのイメージファイバー光学を持つOTR検出器を製作し、KEK12GeV陽子加速器においてビーム試験を行った。ビーム強度、垂直および水平ビーム位置、垂直および水平ビーム幅を変えつつ既存のモニターと比較し、収量は若干少ないものの無事OTR光を観測することに成功した。また、ビームからカメラまでの距離およびビームから対物レンズまでの距離を変えつつバックグラウンド量を測定し、チェレンコフ光が主な原因であることを結論付けた。以上の結果を国内外の学会にて発表した。
著者
藤井 恵介 岡田 安弘 兼村 晋哉 高橋 徹 山本 均 山下 了 松本 重貴
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、LHCの結果を踏まえ、テラスケールの物理の全容解明のため電子・陽電子リニアコライダー(ILC)が果たすべき役割を明確化しILCが取るべき具体的物理研究戦略を確立、もってILC計画早期実現に供することにある。本研究によって、ILCでは、3つの主要プローブ:ヒッグス、トップ、新粒子直接探索により、LHCから得られる知見を質的に新しい段階へと押し上げる重要な情報を提供する研究が可能となることが明らかになった。本研究で得られた成果は、ILC技術設計書物理の巻の中核をなし、欧州戦略、米国戦略(スノーマス研究)の策定のための入力として重要な役割を果たし、ILC計画実現に向け大きく貢献した。
著者
樋口 岳雄
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究の最終目標は、B_s中間子のJ/ψ中間子とΦ中間子とへの崩壊を利用し、時間に依存した解析手法によってΔГs/ГsやCP非対称パラメータを決定することである。データサンプルが高統計になった場合の検出器の応答のモデル化が非常な難題であることが判明し、研究計画期間内に最終目標に至ることはできなかったが、研究過程で検出器の応答の精密なモデル化に成功した。時間に依存した解析手法の研究では、B中間子の崩壊点の決定結果とその誤差をどう解釈するかが精密測定の要である。これは検出器の応答が正規分布を示さないため、誤差自体も信頼性の低い値となるからである。本研究において、崩壊点の決定結果に付随するX^2パラメータを修正した物理量の考案と導入によって、B_d中間子の崩壊モードによらずに崩壊点の決定誤差を訂正できるモデルを発見した。これは分岐比の小さい崩壊モードの検出器応答を、任意の崩壊モードを用いて決定できるメリットを意味する。このほか、B_d中間子の二次崩壊粒子のうち有限の寿命をもつ粒子が与える崩壊点決定への影響の新しい評価方法の提案や、ΔzからΔtを求める場合の運動学的により正しい計算方法の発見など、種々の新しい成功をおさめた。そのうえで、ここれらのモデル化と改良によって、Belle実験が収集した全Y(4S)共鳴のデータを用い、CP非対称パラメータをS=+0.668±0.023士0.013、A=+0.007±0.016±0.013とこれまでの最高精度で決定することに成功した(本結果は現在出版準備中である)。本研究のここまでの成果を基に、引き続き研究を続行する。
著者
菅井 勲 高木 昭 武田 泰弘 入江 吉郎
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究代表者らが開発した制御型直流アーク放電法を用いて厚さ300-400.ug/cm^2のHBC-フォイルを作成し東工大の3.2MeVのDCネオンビーム、KEKの650KeVのDC負水素イオンビーム、それに米国ロスアラモス研究所の800MeVのパルス負水素イオンビームを用いて照射性能試験を行った。結果はいずれの場合でも1800K-2300Kの高温環境下に加熱されたHBC-フォイルは市販のフォイルの250倍、ナノダイヤモンドフォイルの100倍以上の寿命を示した。
著者
海野 義信
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

「国際的研究開発プログラム」SLHCに向けたふたつの国際協力、シリコンマイクロストリップセンサー開発とプラナーピクセルセンサー開発に参加。6月およびll月に欧州原子核研究機構(CERN)での研究集会にて、ストリップセンサーセッションの座長を勤め、またセンサー開発状況・日本での放射線損傷試験・ハイブリッド開発について発表。プラナープラナーピクセルセンサーセッションではピクセルセンサーの日本での製造状況について発表。先端の研究状況を相互に理解するとともに開発の競争・協力関係を築いている。「p型シリコンマイクロストリップセンサーの放射線損傷と耐放射線性の高度化」ホットエレクトロン装置によりマイクロディスチャージ発生点を同定、TCADシミュレーションプログラムにより発生電圧の構造依存性を評価。結果として、p型シリコン基材を使用するn一ストリップ読み出しセンサーの10cm角の大型シリコンマイクロストリップセンサーにおいても、空乏化電圧1kVまでマイクロディスチャージを発生しないセンサーを開発した。1kVの空乏化電圧はSLHCで予想されるストリップセンサー領域で予想される空乏化電圧であり、この大型センサーの完成によりSLHCでのストリップセンサーに目処が立ったと言える。「シリコン半導体飛跡測定器の構造及び熱設計の手法の確立」ヒータやダミーシリコンを用いた熱評価モジュールを評価し、限要素法と良い一致結果を得ている。ダミーハイブリッドによるワイヤー本ディングの評価から、ASIC+4層ラミネートハイブリッド+カーボン材の裏打ち構造の強度評価・最小厚を決定。実機センサーと実機ハイブリッドを組合せた実機モジュールの強度評価・熱設計と有限要素法との一致度を評価中。最終評価を得るにはもうしばらく時間が必要。
著者
海野 義信 寺田 進 池上 陽一 高力 孝 原 和彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

高度耐放射線性を持つp型シリコン半導体位置測定器の基本技術を完成させた。シリコンマイクロストリップセンサーは平方センチ当り10**15個の積分通過粒子数の高度耐放射線性を、更にシリコンピクセルセンサー技術では10**16レベルまでを評価。各種構造や信号収集の放射線量依存性を明らかにし、ホットエレクトロン解析・TCAD解析による細部構造最適化により、照射前で耐電圧1kVを達成する設計を完成。新開発の高集積・高熱伝導・低質量のハイブリッドを設計し両面読み出しモジュールを完成、熱および電気特性等の性能を評価した。