著者
伊藤 紫織 Shiori ITO 尚美学園大学芸術情報学部 Shobi University
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.29, pp.1-16, 2018-10

万葉集にも登場する景勝地松川浦(福島県相馬市)を表す「松川十二景和歌色紙帖」(相馬市教育委員会、相馬市指定文化財)は一帯を治めた藩主相馬昌胤(1661 ~ 1728)によって元禄元年(1688)頃に作られた。松川十二景は、瀟湘八景の八景風に場所と季節や天候を組み合わせるのではなく、十二の場所を選んでいる。松川十二景は東山天皇の勅許を得て、公家が和歌を詠むことにより、新名所の権威を高めている。新名所を定め、権威づけることは、兄の急死により新しく藩主となった昌胤の正統性を示すものであった。新名所の権威を高める和歌に合わせて実景図というよりは名所絵風の狩野派の絵が描かれた。十二景は季節の順となる1 松川浦2 水茎山3 梅川4 沖賀島5 松沼浜6 川添森7 長洲磯8 紅葉岡9文字島10 離崎11 飛鳥湊12 鶴巣野が元来の順序とみられる。絵師は狩野常信ら江戸狩野の正統的な顔ぶれであり、絵も新名所、そして新名所を制定する藩主の正統性を補強する。Sōma Masatane (1661–1728), the feudal lord of Sōma Domain (now Fukishima Prefecture),commissioned the album Matsukawa jūni-kei waka-shikishi-chō (Tanka poems and pictures for the Twelve Views of Matsukawa; Sōma Board of Education) around 1688. Matsukawa is a famous place, which we can already find mention of in the Man'yōshū, a collection of poems from the 8th century. The Twelve Views of Matsukawa designates places only, unlike the Eight Views of Xiaoxiang or the Eight Views of Ōmi, which combine places with seasons or particular kinds of weather. The Emperor Higashiyama sanctioned the Twelve Views newly-chosen by Masatane, and twelve court nobles composed tanka to accompany them. In this way, the new Twelve Views of Matsukawa were officially accepted. Masatane, who inherited Sōma Domain due to his brother's sudden death, wanted to represent his legitimacy through this official acceptance. Moreover,the pictures of the Twelve Views were painted by genuine Edo Kano painters, including Kano Tsunenobu, to further legitimize Masatane's authority. These pictures were not painted as real landscape, but as idealized ones with overtones of classical literature. The order of the Twelve Views was originally determined by season, but it is different in the album.
著者
鶴原 勇夫 Isao TSURUHARA 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-120, 2004-12-31

ガブリエル・フォーレは19世紀から20世紀にかけて、フランスで活躍した作曲家である。ロマン主義の時代から現代に至る変化の激しい時代において、彼は、古い権威に頼ることなく、新しい流行に惑わされず、自己に忠実に独自の作風を築いた。彼の音楽の特色は、優美な旋律とユニークな和声進行にある。特に彼の和声進行と転調方法が、当時としてはあまりに斬新だったために、師匠であるサンサーンスが「とうとう彼は気が狂ってしまった」と叫んだくらいである。この研究はそうしたフォーレの作品の中から和声進行と転調の特色を発見することを目的としている。この研究で私が彼の音楽の独創性に少しでも近づくことが出来ていれば幸いである。Gabriel Faure was a French composer who was actively engaged in the musical world in France from the 19th century to the 20th century.In the violent period of changes --from the time of romanticism to the present -- Faure established devotedly his own idiom by excluding the old authority and new fashion of that time. The superb feature of his music is in a graceful melody and a unique progress in harmony. Because his harmony progress and modulation method were extremely unconventional at that time, Saint-Saens, who was Faure's master, shouted, "He at last went mad!" In this paper, I attempt to explore the special feature of Faure's harmony progress and modulation out of his works. I certainly hope that this research could prove to be access to the originality of Faure's music even a bit.
著者
三輪 亜希子
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.26, pp.71-84, 2017-03

20 世紀の舞踊はヨーロッパを中心に展開し、日本にはプロ制度がほとんど無いことからダンサーは海外へと渡っているといっても過言ではない。中でもピナ・バウシュやモーリス・ベジャールといった20 世紀の舞踊史に改革をもたらした「巨匠」の下で直接創造活動を共にした貴重な経験をもつダンサーがいる。本研究では、20 世紀の舞踊の偉大なコレオグラファーの下で、ダンサーとしての第1ステージを体験した日本人ダンサーを対象にした。彼らへのインタビューデータに質的研究による分析手法を当て、ダンサーの心理や感覚を考察する。
著者
竹内 誠
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.18, pp.83-106, 2010-11

ソルフェージュとハーモニーの能力は、音楽を専門とするには不可欠であり、音楽大学の専門科目では根幹となる授業である。従って、ソルフェージュ教育とハーモニー教育の現状と問題点は、音楽大学の現状と問題点をそのまま映し出している。今回の研究ノートは、芸術情報研究第16号に鳴海史生教授が書かれた、"「固定ド・移動ド」をめぐって"への私の回答であり、現在すすめている新規ハーモニーテキスト内容の一部である。また、工学系大学の音楽への取り組みを紹介して、音楽大学の現在置かれている社会的立場を考察する。
著者
江頭 満正
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-16, 2019-03

ミュージックフェスティバルへの参加は、多くの社会の人々にとって重要かつますます一般的な経験となっているが、出席の結果として訪問者が得る利益の種類についてはほとんど知られてない。本研究は、日本の新潟県で開催されるフジロックフェスティバルに参加した人々の特徴と、反応を調べることによって前者の側面に焦点を当て、消費者マーケティングの考察への洞察を提供することを目的としている。音楽フェスティバルへの参加、消費行動、および満足度に影響を与える動機付けの調査を実施した。 調査結果に基づいて、参加者の芸術的、音楽的、社会的および心理的なニーズによりよく応えるために、フェスティバルのデザインを改善し、それによって体験のインパクトと深みを増すために、音楽フェスティバルマネジメントを提案した。
著者
石井 満 門田 幸久
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-16, 2004-03

テレビジョン放送の歌謡番組では、カメラワークとスイッチングの技法を駆使して、歌手などがスタジオにて演奏、歌唱する様子が撮影される。これらの独特な映像表現の機能について楽曲分析を交えた事例研究によって考察した。歌謡番組の撮影は、被写体の変化が少ない中で歌手の顔を良く見せ、音楽の流れにそった形で変化をつけるという繰り返しが基本構造である。この冗長性を緩和するためにも多彩な構図と動きのあるカメラワークや印象的なショットの接続が必要とされる。事例においても音楽の高揚を表現するため、アップショットの提示と近接する動きが多用されていたが、これらの必然的な強調にも音楽の構造に基づく段階がある。限られたカメラ台数によってなされる撮影技法のバリエーションでは適切な表現と冗長性の緩和の両立は難しい。
著者
野地 朱真
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.9, pp.11-23, 2006-03

水流、風といった流体のモーション作成には、一般的にCGアプリケーションが提供するパーティクルダイナミクス(粒子を扱う力学)の手法が用いられている。微小な平面、または物体を対象としてそれらの相互干渉と重力などの外的環境要因を流体力学の近似として動作を算出する。しかし、力学に疎遠なユーザやアーティストにとって、アプリケーションが用意する膨大なパラメータを意図どおりに制御し望むモーションを得るのは至難の技である。また力学シミュレーションゆえの問題点として、時系列に算出した各パーティクルのベクトルデータを蓄積できない、などの欠点もある。本論文は流体状の表現を作成するにあたり、ユーザの負担を軽減し演出意図の要求を容易に満たすことを目的とし、力学の代わりに幾何学計算のみで人工的に微小平面のモーションを制御する手法を提案する。また微小平面のモーションデザインを応用し、2次元と3次元空間を行き来する新しい人工的なモーションデザインの手法を紹介する。
著者
華山 宣胤 定平 誠
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.13, pp.17-26, 2008-03

インターネットの高速化とコンピュータの処理能力の向上に伴い、ウェブサイトの動画コンテンツ配信のあり方が注目されている。Webラーニングにおいても、Webとインターネットをプラットホームとする動画コンテンツの有効活用を試行している。しかし、動画配信を中心とするカルチャー教育のWebラーニングについて調査すると、講座には興味を示す人が多いにもかかわらず、実際に利用している受講者は極めて少ないのが現状である。それは、制作者側が単に講座の種類と数を増やすことに腐心し、講座の有効なプロモーション活動を怠っているためである。そこで、本研究では、カルチャー教育を動画配信している「ネット塾」の各種の講座についてのイメージ調査を行い、そのデータ分析から、動画配信講座の有効なプロモーション方法を考究する。今回の研究は、この研究調査の予備調査の結果を中心に報告する。
著者
高城 詠輝
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.31-43, 2018-10

新藤兼人の監督作品を、その映像を中心に考察し、新藤の長年の創作活動を支えてきた、彼の映画演出の技術を明らかにする。新藤兼人は多作な脚本家であるが、映画監督としての作品には、自らや周りの人間の実体験を作品化するといった共通点がある。そして、その作劇術は、近代劇から着想を得た映画冒頭からのドラマの展開、シチュエーションの繰り返しと差異等が挙げられる。それは同一アングルの繰り返しとして表れ、最後の作品である『一枚のハガキ』にも見られる。また、『一枚のハガキ』で登場人物と共にもう一つの主役としてクローズアップされるのが家そのものである。そして『裸の島』にもつながる天秤棒で水を運ぶラストシーンでは、大地が強調される。それは新藤自身の幼少期の記憶から再現されているならば、私小説的な映画と考えられる。
著者
鈴木 常恭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.11-33, 2005-12

現実あるいは架空の出来事や事態を時系列および因果関係に従って、一定のまとまりをもって記していくものが「物語」である。ドキュメンタリーも出来事を時系列、因果関係を意味づけ、解釈し、解明するという点では「物語」である。しかし、ドキュメンタリーの「物語」に対し「反物語」が突きつけられた。本稿は、環境化したテレビにおいて「ドキュメンタリー」が、どのように「物語るドキュメンタリー」として生成され、どのように「物語らないドキュメンタリー」へ変容していくかを考察する。考察の中心となるのは、テレビ草創期の1950年代半ばから変容が顕在化てくる1960年代後半までである。テレビド・ドキュメンタリーが、他の番組と同じように演出的変容は、当然演出家の問題として顕在化する。が、機器の開発・導入によっても演出に変容をうながし顕在化させる。本稿では、この点についても言及する。
著者
岩佐 靖夫
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.8, pp.69-80, 2005-12

ウラディーミル・ホロヴィッツは、20世紀を代表するピアニストとして、晩年に数本のビデオ録画を通し、自己の演奏以外に、一般の聴衆に自己の演奏表現形式、価値観、人生などについて語る機会があった。小稿では、そうしたホロヴィッツの直接の言より、演奏表現形式について述べられているものを中心に、現場教育でそれを実践した場合にどのような方法が考えられるかを、日本語教授法と日本語教育の科目を事例にとり具体的に考察する。
著者
鳴海 史生
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.29-36, 2017-10-31

アメリカのチェンバリスト、ブレドリ・リーマンが2005 年に『アーリー・ミュージック』誌で発表した論文は、斯界に大きなセンセーションを巻き起こした。バッハがいかなるやり方で鍵盤楽器を調律していたのかは長らく不明であったが、われわれが頻繁に目にする《平均律クラヴィーア曲集》第1 巻の序文に記された渦巻模様こそ、その方法を示すものだ、というのである。加えてリーマンは、三種類の渦巻が5度の調整の度合いを具体的に表わすとし、「バッハ調律」の姿をきわめて鮮明に描き出した。こんにち、いわゆる古楽の世界では、それが定説となっている感がある。しかし、実際に「バッハ/ リーマン調律」で演奏してみると、多少なりとも違和感を覚えない人はいないであろう。本論は、それを再検討し、三種類の渦巻が示すであろう5度の調整の度合いを修正することによって、より快適な「バッハ調律」を提案するものである。
著者
河野 元昭
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.12, pp.9-21, 2007-11

日本文人画誕生の秘密を解くためには、岡倉天心が『東洋の理想--特に日本美術について--』において指摘したような日本文化の本質的な性格を知らなければならない。その表層だけを眺めてはならない。これは日本文化について考察する際、つねに忘れてはならないことだが、日本文人画の場合には、とくに心に留めておく必要がある。それは中国絵画との関係がきわめて密接だからである。その基本的様式が中国絵画によって規定されているからである。そして日本文人画家の中国憧憬が誰よりも強かったからである。本論は『芥子園画伝』など中国画譜の学習と、荻生徂徠が重視した唐話学を改めて取り上げることによって、日本文人画誕生における中国憧憬の重要性を指摘したものである。
著者
鳴海 史生 Fumio NARUMI 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.27, pp.29-36, 2017-10

アメリカのチェンバリスト、ブレドリ・リーマンが2005 年に『アーリー・ミュージック』誌で発表した論文は、斯界に大きなセンセーションを巻き起こした。バッハがいかなるやり方で鍵盤楽器を調律していたのかは長らく不明であったが、われわれが頻繁に目にする《平均律クラヴィーア曲集》第1 巻の序文に記された渦巻模様こそ、その方法を示すものだ、というのである。加えてリーマンは、三種類の渦巻が5度の調整の度合いを具体的に表わすとし、「バッハ調律」の姿をきわめて鮮明に描き出した。こんにち、いわゆる古楽の世界では、それが定説となっている感がある。しかし、実際に「バッハ/ リーマン調律」で演奏してみると、多少なりとも違和感を覚えない人はいないであろう。本論は、それを再検討し、三種類の渦巻が示すであろう5度の調整の度合いを修正することによって、より快適な「バッハ調律」を提案するものである。Bradley Lehman's article in the "Early Music" (2005) made huge waves internationally in the world of music, especially of harpsichord and pipe organ. The exact temperament used by J. S. Bach has been unclear for a long time. Lehman claims that the key to the mystery has been hidden in the spiral diagram at the title page of "Das wohltemperierte Clavier" manuscript (1722). He regards three different kinds of spiral diagrams as intervals of narrowed 5ths: it could clear the tuning system used by Bach. Sadly, Bach/Lehman temperament is not comfortable. This paper aims to reconsider the temperament, and to propose the more comfortable keybord tuning for Bach's music.
著者
八木 慶太郎 KEITARO YAGI 尚美学園大学総合政策学部総合政策学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.28, pp.47-52, 2018-03

筆者は2015年度から主に音楽応用学科と情報表現学科の英語教育を担当しているが、音楽応用学科では音楽ビジネス、情報表現学科ではゲームビジネスに関わる世界的に著名な人物をそれぞれ1人取り上げ、これまでの人生や仕事、リアルタイムの活動状況について、1年間じっくり英語で学ぶ機会を提供することを試みている。本稿では、音楽応用学科における英語教育について述べる。音楽ビジネスに関わる人物としてテイラー・スウィフトを取り上げることの意義について考究した。学生と年齢が近く、また日本人のファンも数多く存在するテイラー・スウィフトを題材とすることで、学生の動機付けに資することが期待できるだけでなく、音楽応用学科での教育・研究の一領域である音楽ビジネスについて英語で学ぶ機会も同時に提供できるのではないだろうか。このような考えから、テイラー・スウィフトを通して、音楽応用学科ならではの英語教育をどのように構想・展開できるかということについての私見を提示した。I have considered the significance of using Taylor Swift as a subject for English-language education at the Department of Music Business Development. Because of her proximity in age to students, and her large number of Japanese fans, studying the music of Taylor Swift could increase students'motivation. It would also offer the opportunity for them to learn,in English, about the music business, one of the education and research areas covered at the Department of Music Business Development. Based on this idea, I have offered some observations on how Taylor Swift could be used as a subject to conceive and develop English-language education in a way that is unique to the Department of Music Business Development.
著者
茂出木 敏雄 Toshio MODEGI 尚美学園大学芸術情報学部情報表現学科非常勤
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of informatics for arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.26, pp.85-104, 2017-03

既開発の音響信号からMIDI 符号に自動変換するツール「オート符」は、一般化調和解析に基づく周波数解析を採用することにより倍音を含む和音を高精度に解析できるという特徴があり、楽器音に限らずボーカルなど、標準的なMIDI 音源で近似的に原音響信号を再現可能なMIDI データを生成できる。このソフトウェアは、1996 年にWin32 アプリケーションとしてWindows NT/95 上で開発に着手し、2001 年より一般財団法人デジタルコンテンツ協会のホームページより約14 年間無償配布を行いながら、改良を重ねてきた。その間、Microsoft のWindows OS は数々のアップグレードがなされてきたが、本ツールはそれらの影響を受けず、最新OS のWindows 10/64bits 版まで問題無く稼働し続けてきた。しかし、2016 年夏に行われた"Windows10 Anniversary Update" により、MIDI 再生系に不具合が生じるようになった。これに対し、アプリケーション側に改良を加え、従来通り安定に稼働するように復旧させることができた。本稿では、本問題の調査結果と回避策について報告する。Our previously developed audio to MIDI-event converter tool "Auto-F" has a feature of highprecision harmonic tone analysis functions based on the Generalized Harmonic Analysis algorithm. Applying this tool, from given vocal acoustic signals we can create MIDI data, which enable to playback voice-like signals with a standard MIDI synthesizer. We began developing this software as a Win32 application on the Windows NT/95 platform in 1996. Since 2001, we have distributed this software tool for free at the Website of the Digital Content Association Japan for about 14 years, with several improvements added. In these years, Microsoft has released several upgraded Windows Operating Systems, and our developed tool could catch up with these updates and continue running on newer platforms until the latest Windows 10/64bits. However, the "Windows 10 Anniversary Update" released in the last summer, has influenced on the MIDI sequencer function of this tool. Then, we have improved this tool and we could successfully make its execution stable on this newest platform. In this report, we present results of our tracking of this software defect and our adopted technique for avoiding it.
著者
久保田 葉子 Yoko KUBOTA 尚美学園大学芸術情報学部
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 = Journal of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.33-44, 2008-11-01

Johannes Brahms(1833-1897)は自作の交響曲、ピアノ協奏曲、声楽を含むオーケストラ作品、セレナーデ、序曲、ほとんどの室内楽作品をピアノ・デュオの編成にアレンジして残している。また、同時代の他の作曲家も次々とブラームスの作品を編曲し、彼の作品は当時、様々な編成で世に広まっていった。ここでは19世紀の編曲のあり方、作曲家と出版社の関係、ブラームスの作品がどのように市民に享受されたかを考えたい。Johannes Brahms (1833-1897) arranged most of his orchestral- and chamber music for piano duo. Many contemporaries of Brahms also arranged his works in various instrumental combination. The common practice in 19th century realized, that more people would have opportunity to play and know his music. In this report, I study arrangements not by Brahms, about arrangers who worked with piano music of Brahms, and how the publishers dealt with works of Brahms.
著者
皆川 弘至 Hiroshi MINAGAWA 尚美学園大学芸術情報学部音楽表現学科
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Informatics for Arts, Shobi University (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.71-164, 2004-09-30

1790年から今日に至る凡そ200年余の間に、我が国を訪れた外国人音楽家の公演歴を包括した調査資料は無いに等しい。特に、明治時代以前(1868年以前)、明治時代(1868-1912)、大正時代(1912-1926)の記録は、本稿巻末の参考資料に示した通り、わずかに記録として残されている程度であり、現在は絶版で入手不可能でもある。そこで本稿では、外来クラシック演奏家公演に限定し、新聞記事、刊行物、当時の公演プログラム等を渉猟し、調査・整理・分析・統合を加え、(1)明治時代以前 (2)明治時代 (3)大正時代 (4)昭和時代I<第2次世界大戦前> (5)昭和時代II<戦後> (6)平成元年から現在、の6つに分類した。その主脈を時系列的に概観することにより浮き彫りとなる諸点の中から、特に世界的に著名なオーケストラ14団体の来日公演に絞り、入場料金の推移を、厚生労働省調査による「大卒者初任給額及び対前年増減率の推移」及び総務省調査による「消費者物価総合指数」、「持家の帰属家賃を除く消費者物価総合指数(全国)」と対比し、更にアート・マネージメントの視点から考察を加えた。In the slightly more than 200 years from 1790 until the present day, research documents covering the history of performances of foreign musicians who have visited Japan are virtually non-existent. In particular, as shown in the reference material at the end of this document, records of the Pre-Meiji Era (before 1868), the Meiji Era (1868-1912), and the Taisho Era (1912-1926) barely remain, and furthermore are currently out of print and unobtainable.In light of the above, in this document, newspaper articles, printed publications, contemporary performance programs, etc. relating to the performances of visiting foreign musicians have been extensively read, organized, analyzed, and consolidated, and have in addition been classified into six categories: (1) Pre-Meiji Era; (2) Meiji Era; (3) Taisho Era; (4) Showa EraI (pre-World WarII); (5) Showa EraII (post-war); and (6) Heisei Era through the present.In addition, from among the points which come into focus as a result of taking a broad overview of the main currents therein, and in particular drawing from the performances in Japan of 14 eminent orchestras, an examination of admission prices is provided from the perspective of arts management, in correlation with "Transitions in Year-on-Year Differences in University Graduate Starting Salaries" from a survey by the Ministry of Health, Labor, and Welfare, and with "General Consumer Price Index" and "General Consumer Price Index Excluding Rent of Homeowners (for entire country)" from surveys by the Ministry of General Affairs.
著者
橋本 慶隆
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報学部紀要 (ISSN:13471023)
巻号頁・発行日
no.5, pp.29-44, 2004-12

映像記録メディアの変遷を振り返り、今後の課題について考察する。情報を記録する技術は、筆記技術から印刷技術を経て信号記録技術へと変化してきた。さらに、信号記録技術はアナログ方式からディジタル方式へと変化し、マルチメディア時代となった。この流れに沿って、まず映像記録メディアの歴史を概観する。次に、筆者が初期の開発に携わったディジタルVTRを例として、映像記録メディアがアナログからディジタルへ変遷していく過程とディジタル化の意義について述べる。最後に、映像記録メディアに対する課題と期待について述べる。今後も、映像記録メディアの高速・大容量化という目標に向けた技術開発が進められることは疑う余地が無い。一方、長期保存媒体としての性能向上を目指した技術開発も推進されるべきである。文化財保護の意味からも、映像記録メディアを中心とするディジタルアーカイブの今後の発展が期待される。
著者
定平 誠 斎藤 忍 松浦 克樹
出版者
尚美学園大学芸術情報学部
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-16, 2012-03

埼玉県には他県に引けを取らない魅力あるコンテンツ(歴史遺産、文化、工芸、自然など)が数多く点在する。しかし、これらのコンテンツの魅力を十分に情報発信しきれていないため、埼玉県の全国的な認知度は低いという現状がある。そこで、本研究は埼玉県の魅力あるコンテンツの認知度を高めるべく、コンテンツの演出効果の向上をめざした新たなネットワーク連動型のプラットフォームとなるウェブサイトを構築する。このサイト上で紹介されるコンテンツ情報はYouTubeを始め、Twitter、Facebook、Google+などのソーシャルメディアとの連携を図り、バズマーケッティングへと発展させる。そして、これらの結果を踏まえ、埼玉県のコンテンツの発信能力をいかに強化していけるか、埼玉県のブランド創出につなげていけるか、また、地域能力の向上に貢献することができるかについて考究する。