著者
孫 昊 金 明哲
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.3-14, 2018
被引用文献数
2

<p> 川端康成の少女小説における代筆問題は昔から指摘されており,中でも『花日記』は中里恒子の代筆という疑いが強い.本研究では計量文体学の方法を用いて,この小説の代筆問題に新たな解決策を提示する.本研究では,文章から抽出した文字・記号のbigram,形態素タグのbigram,文節パターンを特徴量とし,アダブースト(AdaBoost),高次元判別分析(HDDA),ロジスティックモデルツリー (LMT),サポートべクターマシン(SVM)とランダムフォレスト(RF)を用いて判別分析を行った.分析の結果,『花日記』は川端康成と中里恒子の共同執筆という結論に至った.</p>
著者
常川 真央 小野 永貴 岡野 裕行 谷村 順一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.314-317, 2018-12-08 (Released:2018-12-21)
参考文献数
6

文芸同人誌は日本の独自の文芸活動として発展し,作家の揺藍期を研究する格好の資料である.しかし,新興の文芸同人活動である「文学フリマ」の文芸同人誌に関しては,網羅的かつ体系的なデータベースは構築されてこなかった.本研究では日本大学芸術学部文芸学科に寄贈された文芸同人雑誌即売会『文学フリマ』の第3回から現在に至るまでの約一万冊以上におよぶ見本誌に基づき,文芸同人誌に適したデータモデルについて検討した.その結果として,同人誌を対象とする既存のメタデータモデルは,同人誌固有の性質である「委託販売関係」などを扱えない課題を発見した.
著者
前田 侑亮 金 明哲
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2018_027, (Released:2018-10-19)
参考文献数
22

関西都市圏は「私鉄王国」と呼ばれており,関西5私鉄(近鉄・京阪・南海・阪急・阪神)は競って沿線を開発し,関西都市圏の街づくりの一角を担ってきた.本研究では,関西5私鉄の沿線を文化的価値の側面から定量的に分析し,沿線の特徴を明らかにすることを目的とする.分析においては,どの駅勢圏にどの文化施設等が何回出現したかという頻度行列を作成し,そのカウントデータが持つ情報そのものに焦点を当てられるトピックモデルLDAを用いた.分析の結果,関西5私鉄の沿線には6つの特性が潜んでいると分かった.また,これらの特性を整理し各社の主要路線を分類すると,「歴史的な沿線を持ち,地域密着型の商業地域が目立つ路線」,「都心とその間の郊外を結び,良好な生活環境が整備された路線」,「都心と文教地区を走り,通勤通学の足としての性格が強い路線」の3つに分けることができた.
著者
中渡瀬 秀一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-5, 2017-03-10 (Released:2017-05-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本速報では学術における境界領域研究の現況を分析する方法として近年の科研費データに注目し,これを分析した結果を報告する.
著者
登藤 直弥 孫 媛 井上 俊哉
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.180-185, 2015-05-23 (Released:2015-07-11)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

本研究では,教育成果に対する学習環境と教育プログラムの効果について検討するため,医学部を対象に,ロジスティック回帰分析による検討を行った.その結果,教育成果に対して学習環境がほとんど影響を与えておらず,教育プログラムが教育成果に対し正の影響を与えているという,学校効果研究と同様の知見が得られた.
著者
幸野 晶
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.167-173, 2018-05-26 (Released:2018-06-08)
参考文献数
11

本調査は哲学研究の引用行動の把握を試みるために,引用の理由や機能等を分析する引用文脈分析を行なった.引用の理由や機能等を意味するカテゴリを作成し,哲学論文の引用箇所を対象にして他の学問領域との違いを分析した.分析の結果,哲学分野では他分野と比較して他の研究者への批判や否定を行なう目的での引用が行われること,また自身の論旨の展開に関わる研究を説明する目的のために行われる引用行動が多いこと,儀礼的な引用が比較的少ないことなどが明らかとなった.人文科学の下位領域とされる哲学に否定的な引用が多いという点は,先行研究を裏付ける結果となった.
著者
久永 忠範 渕田 孝康
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.127-133, 2018-05-26 (Released:2018-06-08)
参考文献数
4

近年,多くの行政・団体がオープンデータの公開,活用に取り組んでいるが政府の推進する「機械判読可能で人手を多くかけずにデータの2次利用が可能である」というデータ活用までには至っていない.これらのオープンデータを共通の述語を用いて簡易にRDF 形式に変換できれば、データの連携によるオープンデータの活用が促進される。本研究では、オープンデータとして開示されているデータのRDF[1]形式への変換をするためにWord2Vec[2]というアルゴリズムを活用した述語の自動生成の応用を考えた.オープンデータの各データ項目をベクトル化する述語ベクトル法という統計的処理を用いて項目名にあたる述語の共通化を図り、RDF 形式に変換するための述語の推薦手法の提案をおこなう.
著者
高久 雅生 小幡 将司 江草 由佳
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.111-120, 2018-05-26 (Released:2018-06-08)
参考文献数
36

図書館資料を対象とした文献検索における適合度順による検索結果ランキングを改善する手法として,OPAC 利用ログを用いた,A)書誌情報の閲覧回数の重み付けによるリランキング手法,B)同一セッション内で使われたクエリキーワードを加味する検索手法の2 つの手法を提案した.筑波大学附属図書館OPAC における約46 ヶ月間にわたるOPAC 利用ログを用いて,提案手法を適用して評価した.評価にあたっては,春日ラーニングコモンズにおける質問事例を参考にした評価用クエリセット16 件を作り,それぞれの手法による検索結果を人手により適合判定して評価した.結果,手法A とB はいずれもベースライン(書誌項目を用いたBM25F ランキング手法)に比べて高い評価が得られ,さらに,手法A よりは手法B のほうが高い評価が得られることが分かった.
著者
船守 美穂
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.309-322, 2017

<p> 2013年にG8科学大臣会合において研究データのオープン化を確約する共同声明が調印されてから,「オープンサイエンス」という標語による施策が,各国で展開されるようになっている.一方で,その標語の概念が広く曖昧であるためか,アカデミアにおいてこの考え方は十分に浸透していない.大学等学術機関についても,これについてどこまで対応すべきなのかが明確に理解されていない.<br/> ここでは,オープンサイエンスを3の大分類,10の小項目に分け,それぞれの項目についてアカデミアの受容可能性と大学等としての対応を検討し,オープンサイエンスを進めていく上での大学等の役割と課題を考察した.大学等は公的研究資金を得た研究成果の公開や研究不正に対応した研究データ保存といった義務化に対応するだけでなく,オープンサイエンスに関わる啓蒙・普及活動と環境整備を機関内で進め,学術が新たな次元に移行していることへの対応を図ることが肝要と考えられる.</p>
著者
福島 俊一 松田 勝志 高野 元
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会研究報告会講演論文集 情報知識学会 第7回(1999年度)研究報告会講演論文集 (ISSN:24329908)
巻号頁・発行日
pp.77-80, 1999 (Released:2017-09-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

This paper surveys page ranking factors used in the current WWW search engines, such as (1) relevance to query keywords, (2) freshness, (3) popularity, (4) citation rank and (5) page types. The relevance to query keywords have been studied in the traditional information retrieval researches. However, other factors are introduced into the WWW search engines in order to improve their ranking performance, because WWW contents are heterogeneous and changeable large-scale hypermedia. The freshness, the popularity and the citation rank are the factors introduced from a viewpoint of contents reliability. On the other hand, the relevance to query keywords and the page types are the ones corresponding to user's domain and task in problem solving. Selection and combination of these factors must be refined for satisfying user's information needs.
著者
深澤 克朗 沢登 千恵子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.133-143, 2017-05-27 (Released:2017-07-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本稿は,テキストマイニングの一環として,中世を代表する文学である和歌についてアプローチを試みたものである.分析対象は,平安中期から鎌倉時代初期までの「八代集」と呼ばれている勅撰和歌集である.これらの和歌の形態素での計量分析を行い,「八代集」の違いについて考察を行った.分析手法としては和歌集間での品詞使用率の統計的な差や,特に季節歌と恋歌に関して,冨士池優美氏が行っている名詞率とMVRの関係を用いた手法により,和歌集における差を調査した.そして,その結果を用いて,機械学習の手法の一つであるNaïve-Bayesにより判別を試みた.結果は,若干の程度の差はあれ判別をすることは困難であった.しかるに,和歌集の季節歌・恋歌などの部立別データにおいては,特に「後撰集」が高い判別であった.このことより,「後撰集」は「八代集」の中で異質な存在であるのかも知れないと思われる.
著者
西岡 忍 宮本 行庸
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.189-194, 2017-05-27 (Released:2017-07-21)
参考文献数
3

本稿では,ユーザのお気に入りの所有物をインターネット上に公開し,他者との連携を図るソーシャルネットワーキングサービス(SNS)について述べる.現在,多くのSNSが利用されているが,ユーザの所有物に特化した例は存在していない.本サービスでは「モノ」に焦点を当てて同様の嗜好を持つユーザ同士を連携させ,新たなビジネスモデルとしての付加価値を見出す.本サービスを公開し,実際に活用された事例について述べる.
著者
松村 敦 末次 美央 宇陀 則彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.169-176, 2008-05-23 (Released:2008-09-08)
参考文献数
5
被引用文献数
1

辞書を読み物として活用することを目的として,語の関連性に着目した辞書リーディングシステムを構築した.本システムは,1 つの語を引くと,同音異義語,反義語,有名フレーズに共起する語など7 種類の関連語を提示する.これによって,利用者は興味を持つ語をたどることが可能となり,辞書を読み進めることができる.実際にシステムを利用してもらい,アンケートを実施したところ,辞書を面白く読み進めるためには,未知の語・未知の関連の発見が重要であることが示された.
著者
国沢 隆
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.58-61, 2008-02-19 (Released:2008-02-28)
参考文献数
7
被引用文献数
2 11

National Institutes of Health (NIH) の資金によって得られた研究成果を査読付き論文として発表する場合には、研究者は最終原稿電子版を論文が公表されてから1年以内にNIHに送付することが義務付けられることになった.このNIHの方針が生まれた背景を解説するとともに、公的資金を受けた研究論文のレポジトリー・データベース化を目指すための必要事項を検討した.
著者
天野 晃 和田 匡路
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.97-101, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
13

近年、クラスタリングはさらに重要な技術として多くの場面で使われるようになり、そのアルゴリズムはより複雑で高度なものとなっている。一方で、クラスタリングは一種の最適化問題であるため、その評価関数が決定されれば、評価関数の最大化(または最小化)問題となる。このような評価関数による指標は、Cluster validity index(CVI)と呼ばれる。CVIに関する研究は、クラスタリングそのものに関する研究よりも少なく、また、体系化についても十分議論されていない。そこで、本発表では、CVIの歴史をまとめ、CVIの特性を整理し、既存の指標の体系化を試みる。
著者
堀井 洋 堀井 美里 上田 啓未 林 正治 高田 良宏 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.357-361, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
7

科学実験機器資料など学術資料に対しては,組織・機関を越えた横断的な情報共有と,広く社会に向けた公開および活用が求められている.著者らは,これまで明治・大正期の科学実験機器資料や教育掛図資料に関する資料情報についてサブジェクトリポジトリを構築し,大学や自治体博物館に所蔵されている約800 点の資料情報を公開している.さらに,それらに対してデジタルオブジェクト識別子(DOI: Digital Object Identifier)を付与する試みを実施してきた.本発表では,“科学実験機器サブジェクトリポジトリ”の概要について報告するとともに,広く社会おいて資料情報を公開・活用する試みとして,SNS への資料情報の掲載や博物グッズとの連携などについて紹介する.
著者
根本 しおみ 高田 良宏 堀井 洋 堀井 美里 飯野 孝浩 林 正治
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.347-352, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
2

天文学研究資料は機器や乾板,設計図等多岐にわたっており,我が国の天文学や自然科学の発展を記録した重要な資料である.また,これら資料群は国内の大学や研究機関に広く保管・収蔵されている.資料の種類や機関を横断した資料情報の整理の手法として,我々はデジタルオブジェクト識別子(DOI)を用いた「サブジェクトリポジトリ」の構築を目指している.その嚆矢として,国立天文台岡山天体物理観測所の資料群を対象にサブジェクトリポジトリの構築を試みた.天文学分野では,常に最新の科学技術が研究・観測に適用され,かつ観測プロジェクト単位で観測機器を独自に製作・運用する,いわゆる一品物の観測機器等が多いことから,観測データを再利用するには併せて観測機器やその図面,マニュアル等の関連資料についてもリポジトリ化・オープン化することが求められる.本稿では天文学研究資料の分類,サブジェクトリポジトリの構築,および,DOI による観測機器を中心とした資料間の関連付けの検討について報告する.
著者
森 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.323-328, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
6

本稿では, Institutional Researchの実務的見地に立ち,オープンサイエンスがどのような観点で大学経営に資することができるか,その期待について述べる.まず,Institutional Researchの意義と目的を示し,最近のIRの動向について簡単に紹介する.次に,大学が研究機関として何をするべきかを検討するため,研究機関に対する評価(経営判断)のフレームについて私見を述べる.それに沿って,オープンサイエンスの取り組みがどのように大学経営と関わるかを述べる.
著者
堀井 洋
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.305-308, 2017-12-02 (Released:2018-02-09)
参考文献数
3

地域に現存する博物資料に関する情報のオープン化は,大学・自体における情報公開の流れの中で 急速に進んでいる.今後,インバウンド観光の推進や地域学習の普及などによって,さらにこの動きは発展することが予想されるが,古文書や標本・考古遺物など多様な地域の資料をオープン化するためには,資料の存在肯定から整理・保管・デジタル化までを一体的に考える必要がある.本発表では,事例を通して現状や課題を整理・考察する.