著者
大田 翔貴 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.301-306, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
5

物語研究は従来,幅広く行われており,物語の一ジャンルである怪談に関する研究も,書籍を対象として実施されてきている.近年,怪談は書籍作品だけではなく,インターネット上に投稿されるWeb作品としても流布されている.そこで本研究では,インターネット上に投稿されている怪談に着目して,物語構造分析を行った.また,先行研究で分析が行われた書籍怪談の物語構造と比較を行うことで,媒体の違いにおける怪談の物語構造の差異を明らかにした.
著者
深澤 克朗 沢登 千恵子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.152-157, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
16

本稿では、中世古典文学の数作品について「係り結び」を構成する係助詞の頻度を計測し、それをベースにテキストマイニングを試みた。統計的手法としては、比率の検定、主成分分析、クラスター分析、判別分析を行った。「係り結び」は鎌倉・室町時代あたりから衰退が起こってきているということが定説であり、本稿の作品群においても、時代を追ってその傾向が見られる[1][2]。さらに、その作品間での差を段単位での係助詞の頻度により調査した。その結果、「宇治拾遺物語」は他の作品とは差があるという傾向が見受けられた。
著者
阿達 藍留 山田 俊幸 大向 一輝
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.406-409, 2022-12-18 (Released:2023-01-27)
参考文献数
4

近年,人文学分野において資料の共有に対する学術的・社会的な要請が高まっている.一方,既存のデジタルアーカイブの構築手法には情報技術の知識,維持のためのコストを前提としたものが多く,データ公開を妨げる要因となってきた.そこで,本研究では資料に関わる当事者が手軽にデジタルアーカイブを提供するための静的サイト生成ツールを提案する.構築されるデジタルアーカイブは閲覧者側のWeb ブラウザでの検索やIIIF を用いた画像ビューア,外部連携用のメタデータの出力機能などを備え,利便性を確保しながらも専用のアプリケーションを必要としない.なお,本ツールはJupyter Notebook 形式で実装しており,クラウド上のPython 実行環境でも動作するため,資料情報を記載した表形式のメタデータと画像を用意するだけで使用することができる.本手法により低コストでのデータ共有が実現され,資料活用の促進が期待される.
著者
西岡 千文 佐藤 翔
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-50, 2021-02-28 (Released:2021-03-26)
参考文献数
64
被引用文献数
3 1

本稿は Unpaywall を利用して日本と世界のオープンアクセス(OA)状況を調査した.日本の調査では Unpaywall と Scopus に収録されている日本の著者による雑誌論文約 200 万件,世界の調査では Unpaywall に収録されている雑誌論文約 8,000 万件を対象とした.結果,日本と世界の OA の割合はそれぞれ 41.83%, 29.77%であることがわかった.日本の割合の高さの要因は,過去に出版された論文の多くがブロンズであ ることである.近年の傾向としてゴールドの割合の上昇が観察された.機関リポジトリで公開されている論 文の割合は 2000 年から 2010 年にかけて増加しているものの,2010 年以降は横ばいで約 5%である.2010 年以降の機関リポジトリのみで OA である論文の割合は約 1.5%である.グリーン OA を効率よく推進するためにも,各機関がそれぞれの OA の状況を継続的に把握できるような仕組みが必要である.
著者
長塚 隆
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.155-162, 2020-05-23 (Released:2020-06-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2 2

近年,地域・自治体資料のデジタル化が進展しているが,どの程度デジタル化・オープン化されているかの把握は難しい.神奈川県の政令指定都市(横浜・川崎・相模原)を対象に,国立国会図書館デジタルコレクションやインターネット資料収集保存事業,および各市ホームページや図書館蔵書検索システムを使用してメタデータおよびデジタル資料を調査し,デジタル化とオープン化の進展を推測し,国立国会図書館と公共図書館との連携のあり方など今後の課題について考察した.
著者
向井 智哉 湯山 祥 綿村 英一郎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.3-19, 2023-02-28 (Released:2023-04-14)
参考文献数
41

AIが社会に膾炙するようになるにつれ,裁判においてAIを用いることの是非を問う議論も増えつつある.このことを背景に,本研究は,(1)裁判においてAIを使用することを市民はどの程度支持するのか,(2)支持はどのような要因によって規定されるのかを検討した.783名を対象に質問紙調査を行いその回答を分析した結果,以下の2点が示された.(1)支持の得点は理論的中点を下回っていたことから,多くの回答者はAI使用を積極的には支持していない.(2)裁判におけるAI使用への支持は,AIは機械的な処理しかできず,人間のような「温かみ」のある判決はできないというイメージ(「非人間的イメージ」)およびAIを用いると裁判過程が不透明になるというイメージ(「不透明イメージ」)と負の関連を示した一方,AIを用いることで人間の裁判官よりも公平かつ偏りのない裁判ができるというイメージ(「公平イメージ」)と正の関連を示した.
著者
時実 象一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.204-208, 2008-05-23 (Released:2008-09-08)
参考文献数
5
被引用文献数
3 2

人文・社会科学系分野の学術雑誌と紀要の発行状況を調査したところ、論文誌とみられるもの 1436 誌、大学紀要が 4156 誌、その他が 2188 誌であった。このうち NII-ELS に電子化されて収録されているものは論文誌が 279 誌、大学紀要が 2236 誌であった。国立国会図書館の WARP からリンクされている電子ジャーナルは論文誌 37 誌、大学紀要が 64 誌であった。
著者
田中 和季 村川 猛彦
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.307-312, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

多くの大学で,プログラミング教育が提供されている.初学者向けに様々なプログラミング学習方法があり,その一つが写経型学習である.和歌山大学システム工学部1年生向け科目では,写経型学習に基づく学習支援システムを提供している.しかし,授業を通じた学習により十分なプログラミング能力が身についたかどうかは分からない.本研究では,プログラミングに関する問題を出題し,学習者に解答してもらうオンラインジャッジシステムをWebアプリケーションとして構築した.解答画面に他のWebサービスの編集画面を埋め込むことで,1画面でプログラム作成,動作確認,答案提出ができるようにした.プログラミング導入科目の最終回において,特定の文字列を10回出力する出題に対し,正答・誤答ともに多様な解答が得られた.また授業の途中回で出題したfor文不要論の賛否との照合を試みた.
著者
石塚 夏実 時実 象一
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.265-272, 2013-05-20 (Released:2013-07-25)
参考文献数
8

子ども新聞とは, 新聞社等が子供向けに発行している新聞である. 日本最初の子ども新聞は, 1876 年創刊の「童蒙新聞」といわれる. 日本新聞博物館の所蔵紙等を調査し, 子ども新聞の歴史を調査した. また日本新聞博物館 (横浜) 所蔵の戦前戦後期の 16 紙 (写真撮影した) と, 独自に収集した現在発行中の子ども新聞 23 紙について, 各記事を, 「ニュース」, 「学校紹介」, 「娯楽」, 「学習」, 「広告」, 「戦争関連 (戦前の新聞のみ)」に分類し, 各記事の割合を調査した. 過去の子ども新聞と現在の子ども新聞を比較してみると, 記事の種類や構成, スタイル, ルビが付いているところなどは基本的に変わっていないが, 現在発行中の新聞については, 学習記事の割合が増加し, 娯楽記事が減少している傾向がある.
著者
西澤 正己 孫 媛
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.159-166, 2021-05-22 (Released:2021-07-03)
参考文献数
12

我々は大学に関連したプレスリリースを調査しており,それは近年大幅に増加し,新聞への掲載も増加している.また,新聞への掲載率が原論文の掲載誌や分野に依存していることも分かってきた.しかし,新聞掲載の要因の分析にはプレスリリースと非対応の学術記事の抽出も必要である.ここではプレスリリースと対応した新聞報道記事を教師データとした機械学習により新聞報道中の学術ニュース記事(速報記事),フィーチャー記事(特集記事)の抽出を試みる.
著者
渡邉 憲二 箕輪 弘嗣
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.204-210, 2021-05-22 (Released:2021-07-03)
参考文献数
9

COVID-19 が蔓延する中で,社会的な変化だけでなく,個人の生活や行動にも影響がみられている.そこで,人々の考えや社会的な反応を俯瞰することを目的として,Twitter のツイート内容から得られる質的データに着目した.Twitter のツイートには,リアルタイム性が強く,様々な情報や意見を含んだ投稿が多い.このツイート内容から得られる質的データを解析することで,COVID-19 の今後の対応や取り組みにも活用が可能となる. 本研究では,Twitter のツイート内容を対象に,テキストマイニングからツイート傾向を確認する.また,新型コロナウイルス感染の拡大によるツイート内容の変化も検討する.
著者
朝岡 誠 林 正治 藤原 一毅 岩井 紀子 船守 美穂 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.168-175, 2020-05-23 (Released:2020-06-26)
参考文献数
18

研究データの再利用を促進するためには,単純な公開だけではなく,条件付き公開(制限公開)に対するニーズを満たしたシステム基盤の整備が不可欠である.本研究では,制限公開データを提供している機関のワークフローを調査し,研究データを提供するフローの類型化を行った.さらに,汎用的なリポジトリシステムWEKO にその機能を実装し,JGSS 研究センターの制限公開ワークフローをシミュレートすることでその運用を検討した.
著者
小林 恭輔 高久 雅生
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.287-293, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
11

本研究は効果的なブラウジング探索を通した楽曲の発見を促すことを目的としている. その手法として,楽曲間の関連関係を表現する類似楽曲の提示方法を提案する. これを実現するにあたり, Spotify のAPI が提供する楽曲データの一部を利用してユークリッド距離による類似度計算を行った. 探索の始点となる楽曲と上位の類似楽曲を取り出し, グラフレイアウトの力学モデルによるネットワークの可視化を行った.
著者
相田 満
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.208-213, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
6

1879年の建議から36年の歳月を費やし編纂まれた『古事類苑』は今なお日本最大の百科全書の地位を占める.発表者は協力者と共に,当該書の全文データベース化を進めてきたが,同時に『古事類苑』自体を意義ある研究対象とするための分析と工夫も重ねてきた.具体的には,入力・校正方法の効率化,分類体系の利用,引用の原本の同定,データの共有化のために,支援ツールの豊富な青空文庫形式を採用したことなどである.
著者
保田 洋 木村 弘子 中野 久美子 堀田 浩之 永藤 清子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.236-239, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
5

近年,推し進められている高等教育改革において,学習成果の可視化は重要なキーワードであり,そしてその可視化が多くの高等教育機関において精力的に取り組まれている.しかし,多くの大学で実施されている方法は,ディプロマ・ポリシーに対応するような評価であるとは言い難い.そこで,甲子園短期大学ではディプロマ・ポリシーの内容に基づき,卒業までに学生が身につける12の能力を抽出し,その12の能力をカリキュラムマップと対応させた学習成果の可視化方法について検討を行ったので報告する.
著者
天野 晃 大波 純一 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.229-235, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
12

研究データ共有の活発化や研究評価再検討の動きから,学術情報検索サービスへの需要は高まりつつあるが,その構成要素となる機能は明らかではない.そのため,本研究では,国内外の59の学術情報検索サービスを対象として画面機能に注目,これを抽出・項目化し,比較分析を行った.項目化では31の項目が得られ,該当する機能の有無による0/1ベクトルとして現した.報告では,項目のベクトルに基づく計量的な分析,および各サービスを観察して得られた特徴について述べる.
著者
池谷 瑠絵 大波 純⼀ 金沢 輝⼀ 高久 雅生 山地 ⼀禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.218-228, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
38

論文や引用等の独自DBを持ち,研究評価指標等の情報を提供するサービスにWeb of Science (WoS)やScopusがある.これらの基盤にオープンアクセスの研究成果物を集約する学術情報基盤を加えた海外主要4基盤のダッシュボードを比較分析した.提供される指標を分類して各基盤の特徴を可視化した結果,商用系は研究IR,学術系はオープンサイエンスに関わる指標に特徴があり,新たな指標を採用する例も観察された.
著者
松田 雛乃 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.289-296, 2020-05-23 (Released:2020-06-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究では日記の重要性に着目し,書き手の属性による文体特徴の差異の分析を行った.ブログから文章を収集し,文体特徴を示す単語を抽出した.tf-idfを用いて作成した単語ベクトルで因子分析を行い,老年男性・老年女性・若年男性・若年女性の4カテゴリの文体特徴を分析した.その結果,属性による文体の差異が判明した.また,全カテゴリ共通の文体特徴などが見られた.
著者
渡上 将治 村川 猛彦 宇都宮 啓吾 中川 優
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.189-194, 2010-05-15
参考文献数
6
被引用文献数
1

筆者らがこれまでに構築してきた聖教書誌情報全文検索システムは,サーバに接続して使用する必要があるため,山奥などでは利用できないという問題点があった.そこで,インターネット環境に依存しない,1台のノートPC上のみで動作するスタンドアロンのシステムの構築を行った.サーバ部のOSをLinuxからWindowsに変更したが,対象データと全文検索エンジンは同じものを使用し,従来のシステムに存在した機能に加えて,新たなデータの追加や,各聖教に対するコメントを残すことができる機能を実装した.本システムと従来のシステムとで検索結果が同じであり,検索時間に関しても2秒以内で結果が表示されることを確認した.
著者
松平 拓也 笠原 禎也 高田 良宏 濵 貴幸 蟹屋敷 祐介
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.486-492, 2021-12-18 (Released:2022-02-19)
参考文献数
16

金沢大学は,令和2年度「先端研究基盤共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)」の採択を受けた.本事業の柱の一つとして,本学研究者に対する研究データマネジメント(RDM)基盤のインフラ提供を掲げており,我々は本学研究者に対するRDM基盤のシステム構築を進めてきた.本学におけるRDM基盤は,国立情報学研究所が提供する研究データ管理サービスであるGakuNin RDMを利用することとし,データを保管するストレージは外部クラウドサービスと学内ストレージのハイブリッド形式とした.本報告では,我々が構築したRDM基盤について説明するとともに,今後の展望についても述べる.