著者
深澤 克朗 沢登 千恵子
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.85-96, 2018

<p> 本稿は,2017年の第25回情報知識学会年次大会において発表した「和歌集における計量分析と機械学習による判別」の続編としての研究報告である.分析対象は,鎌倉時代初期から室町時代中期までの「十三代集」と呼ばれている勅撰和歌集である.前回の発表は「八代集」であり,これで勅撰和歌集「二十一代集」の計測を完了するものである.<br/> 分析手法としては前回の研究と同様の計測を行うものである.具体的には,和歌集間での品詞使用率の統計的な差や,また季節歌と恋歌に関して名詞率とMVRとを調査し,そして同様にNaïve Bayesにより判別を試みた.さらに,この時代は武士政権の時代であるために,「武士歌」もより多く選抜されてきている.その「武士歌」についての特徴について主成分分析法による計測を試みるもので ある.</p>
著者
田辺 和俊 鈴木 孝弘
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.247-267, 2019

<p> 近年のわが国の重大社会問題の一つである自殺には地域差が存在するため,都道府県別の自殺死亡率に有意な影響を与える要因の解明を目的とする実証研究を試みた.47都道府県の男女別年齢調整自殺死亡率を目的変数,それとの関連が推測される健康,経済,社会,自然分野の指標54種を説明変数としてサポートベクター回帰分析を行い,自殺死亡率に対する決定要因を探索し,その相対的影響度を推定した.その結果,男女別にそれぞれ12種の要因が得られ,男性では精神保健福祉士数,家計収入,患者数などの要因,女性では悩み相談,出生率,残業時間などの要因の影響が大きいことを見出した。また,これまで未検証の精神保健福祉士数や残業時間,精神状態が有意の影響を与えるが,自殺率との関係が深いとされてきた失業率や離婚率は決定要因にはならなかった.さらに,自殺率が最も高い秋田県について決定要因の結果に基づき自殺対策の提言を試みた.</p>
著者
前田 侑亮 金 明哲
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.3-22, 2019

<p> 関西都市圏は「私鉄王国」と呼ばれており,関西5私鉄(近鉄・京阪・南海・阪急・阪神)は競って沿線を開発し,関西都市圏の街づくりの一角を担ってきた.本研究では,関西5私鉄の沿線を文化的価値の側面から定量的に分析し,沿線の特徴を明らかにすることを目的とする.分析においては,どの駅勢圏にどの文化施設等が何回出現したかという頻度行列を作成し,そのカウントデータが持つ情報そのものに焦点を当てられるトピックモデルLDAを用いた.分析の結果,関西5私鉄の沿線には6つの特性が潜んでいると分かった.また,これらの特性を整理し各社の主要路線を分類すると,「歴史的な沿線を持ち,地域密着型の商業地域が目立つ路線」,「都心とその間の郊外を結び,良好な生活環境が整備された路線」,「都心と文教地区を走り,通勤通学の足としての性格が強い路線」の3つに分けることができた.</p>
著者
長塚 隆
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.340-343, 2019-11-23 (Released:2019-12-23)
参考文献数
5
被引用文献数
2

近年,郷土史・地方史などの地域資料のデジタル化が進展しているが,具体的にどの程度デジタル化され,公開されているのかを把握するのは難しい.本発表では,国立国会図書館サーチ(NDL Search) やジャパンサーチ(Japan Search)などの検索ポータルを使用してメタデータおよびデジタル資料の搭載調査からデジタル化の進展の程度を推測した.また、郷土史・地方史などの地域資料のメタデータおよびデジタル資料を搭載する県単位の地域ポータルが,全国的なポータルであるNDL SearchやJapan Searchにどの程度収載されているかについても調査し,今後のデジタル化された地域資料のオープン化の課題について検討した.
著者
西澤 正己 孫 媛
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.121-126, 2018

<p>我々はこれまで大学に関連したプレスリリースを調査しており、それが近年大幅に増加し、それに対応して新聞への掲載も増加していることがわかってきた。また、これまでに2012年の大学関連機関から発行されたプレスリリースの元になった学術論文のDOIを特定し、オルトメトリック指標を得ている。ここでは、さらに2013年、2014年のデータを加えて分析を行うが、ここではSTAP細胞に関する過熱報道があり分析に影響を及ぼしている。これらの影響を考慮し、プレスリリースされた原論文のオルトメトリックス指標、新聞掲載状況との関係等について年次変化を含め、分析、考察を行う。</p>
著者
山田 太造
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.315-324, 2015-12-12 (Released:2016-03-11)
参考文献数
8
被引用文献数
2

フィールドノートは調査したフィールドの観察記録,観察したフィールドの場所・日時,その風景に関するスケッチ・写真などで構成されたものである.調査対象であるフィールドについて特定の日時での様子を詳細に理解することができるため,地域研究において非常に重要な研究資源の1つといえる.われわれはこれまでに,地域研究進展のためにフィールドノートを効率的かつ効果的に利用していく手法を模索しており,本研究ではテキストマイニングを用いてフィールドノートから記述されている場面を特徴づけ,かつセマンティックウェブを利用して表現する手法を提案する.
著者
河瀬 彰宏
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.111-115, 2019-05-25 (Released:2019-06-28)
参考文献数
18

本研究では日本民謡の旋律と日本語の音韻の関係解明に向けて,言語研究に用いられているnPVI を日本民謡のリズム分析に適用した.nPVI は拍節の跳躍具合を定量化する指標であり,近年は西洋音楽史におけるリズムの比較分析に用いられている.本研究では日本各地の民謡に対してnPVI 値を比較することで,その跳躍の差異を明らかにした.
著者
山田 康貴 村井 源
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.206-213, 2020-05-23 (Released:2020-06-26)
参考文献数
17

物語分析において,場面が持つ情報に着目した分析はこれまで行われることが少なかった.特に,場面が持つ情報の依存関係に関する分析は物語自動生成において必要不可欠である.そこで,本研究では場面の依存関係が強く出ていると考えられるミステリー小説を題材に,場面の依存関係を分析した.具体的には,実際のミステリー小説の場面から,場面を構成するのに必要と思われる情報を手動で抜き出した.その後,そこから得られたデータを依存関係ごとにまとめた.最後に,そこで得られたデータに対してネットワーク分析を行い,依存関係の解析をした.
著者
吉川 次郎 高久 雅生 芳鐘 冬樹
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2020_033, (Released:2020-07-10)
参考文献数
50
被引用文献数
3

Wikipedia 上での学術文献の参照記述の追加という事象を明らかにするための前提となる方法論として,参照記述の初出時点を特定するための手法を提案し,評価実験を行った.提案手法は,まず,参照記述の参照先を判定し,ページ情報,文献タイトル,識別子を取得する.次に,対象のページの全編集履歴およびページ本文に対して識別子または文献タイトルを用いた手法を適用し,複数の初出時点候補を取得する.最後に,候補から編集日時が最古のものを選択する.英語版のDOI リンクの初出時点データセットを基に評価実験を行った結果,精度は全体で93.3%,22 分野中20 分野で90%以上であり,研究分野を問わず概ね高い精度で参照記述の初出時点を特定できる手法であることが明らかになった.

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著者
根岸 正光
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-5, 2011-02-23 (Released:2011-04-13)
参考文献数
1
著者
村井 源 川島 隆徳 工藤 彰
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.279-284, 2011-05-28
参考文献数
5

評判分析などが自然言語処理技術によって進められているが,対象は主にWeb上のテキストであり,人文学的な批評文はその主たる対象となっていない.本研究では人文的な批評文の具体的批評対象を計量化することで,批評行為のより深い意味分析に向けての基礎固めを行う.本研究では批評文中の人名と作品に絞り,総合的作品である映画と演劇の批評において,誰についてどの作品について中心的に語られる傾向があるのかを計量し,カテゴリー分類と共起分析を行った.結果として演劇批評は集中的であり,映画批評は分散的・個別的であること,また演劇批評は強い芸術的指向性を持つことが明らかになった.
著者
渡邉 英伸 上野 宣 村田 健史
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.291-296, 2014-10-06 (Released:2014-12-31)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1

科学データのオープン化に対する取り組みが進められる中で,Web アプリケーションの脆弱性は避けて通れない問題である.NICTサイエンスクラウドでも,Web アプリケーションの公開を希望するクラウド利用者の技術的スキルや専門知識を問わず,高水準のセキュアなWeb アプリケーションの開発が可能な仕組みや体制が要求されるようになった.本論文では,一般競争入札方式を想定し,NICTサイエンスクラウド利用者のWeb アプリケーション開発の技術的スキルや専門知識が乏しい場合においても,セキュアなWeb アプリケーションを開発するための開発協力手法を提案する.
著者
茂田 健 久枝 嵩 高橋 翔太 高橋 幸雄
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.337-339, 2019-11-23 (Released:2019-12-23)
参考文献数
13

オンラインゲームにおいて状況に応じて勝利するためのスキルを獲得することは初心者にとって難しい作業である.オンラインゲーム上達のためには長い時間練習をして攻略のコツを習得したり,コーチの指導を受けて学んだりするということが考えられるがこれらにはコストがかかるという問題がある.本研究はオンラインゲームのプレイログを抽出し,勝敗に寄与する特徴がユーザスキルによって異なるのかを分析 した.分析の結果,ユーザスキルによって勝敗に寄与する特徴が異なることが分かった.
著者
後藤 真
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.309-314, 2019-11-23 (Released:2019-12-23)
参考文献数
3

本報告においては、特に地域歴史資料のデータ化とオープン化について検討を行う。特に、地域歴史資料をどのように長期的に保存し、未来に長く伝えていくのか。それを支える情報技術について検討を行うとともに、デジタルデータそのものの長期的な維持と実物の関係について、実際のシステムに言及しつつ検討する。 歴史資料の危機的な状況に対応すべく、いくつかのプロジェクトが並行して進みつつあるが、これらのプロジェクトの鍵の一つと目されているのが、いくつかの情報技術である。とりわけ、地域資料のデータプラットフォームの構築とその活用は、歴史資料の現状把握と緊急時対応、そして地域における資料活用への可能性という観点からの期待が大きい。本発表では、これらの事例について報告を行うとともに、歴史資料とそのデータを長期的に維持し、活用するための見通しを述べることとした
著者
佐藤 翔 石橋 柚香 南谷 涼香 奥田 麻友 保志 育世 吉田 光男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
2019

<p> 本研究では非専門家にとっての論文タイトルの「面白さ」を得点化し,Twitterからの言及数が多い論文と言及されたことのない論文でこの得点に差があるかを検証した.Twitterからの言及数データはCeek.jp Altmetricsから収集し,2008年に出版された論文の中でTwitterからの言及回数が特に多い論文103本と,言及回数が0の論文の中からランダムに選択した100本を分析対象とした.4名の非専門家が各論文タイトルの「面白さ」を7段階で評価し,その点数の合計を「面白さ」得点と定義した.分析の結果,Twitterからの言及数が多い論文グループと,言及数が0の論文グループで「面白さ」得点には有意な差が存在し,Twitterからの言及数が多い論文の方がタイトルが「面白い」傾向が確認された.さらに,この差は分野別に分析しても確認された.</p>
著者
三浦 泰 舛本 和輝 佐藤 圭 大槻 明
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.174-179, 2016-05-14 (Released:2016-07-15)
参考文献数
19

今,日本では首都圏と地方との間で地域格差が広がっている.内閣に「まち・ひと・しごと創生本部」が設置され,様々な取り組みが行われていることからもこの問題の重要性がうかがえる.地域格差を分析する際にはジニ係数がよく用いられるが,この係数は,国民の所得に焦点をあてたものが多い.そこで我々は公共インフラの観点から地域格差を分析するために,公共施設数に焦点をあてた新たなジニ係数モデルを開発した.そして本モデルを用いて,47 都道府県の主要駅周辺の公共施設数データを元に分析を行った結果,主要駅周辺の公共インフラという観点では地域格差がないことが明らかとなった.
著者
小町 祐史
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.323-333, 2008-11-29 (Released:2009-01-27)
参考文献数
13

ISO がSGML を制定することにより,マーク付け言語が国際的な舞台に登場した.HTML の構文としてSGMLが採用されてからSGML はインターネット上での圧倒的な利用者を獲得して,それはXML の開発に繋がった.XML の公表と共にXML 関連規定が充実し,マーク付け言語の第二世代が始まる.ここにDTD に代わるスキーマ言語の開発競争が激化し,この分野での日本のリーダシップが表面化すると共に,DSDL の国際標準化が進んだ.これらの議論を紹介し,今後の展望に言及する.
著者
岡本 一志 丸茂 里江 佐野 悠
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.227-244, 2017 (Released:2017-11-24)
参考文献数
13

RFID システムを用いた資料の図書館内利用調査を2 年間実施し,資料が書架から持ち出された回数およびその利用時間に関するデータ分析法を提案する.分析結果より,館外貸出に比べ3 倍程度の持ち出しが起きていること,利用時間のピークは2~4 分であり立ち読み的利用が中心であること,持ち出し回数と利用時間のピークは一致せず時期によって資料の利用形態が異なること,大半の資料が持ち出された回数はごく数回にとどまっていること,といった従来の貸出統計などには現れなかった利用傾向が確認された.得られたデータや分析結果を踏まえ,RFID システムを用いた資料利用調査の実施における検討事項についても議論する.
著者
河合 美穂
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.291-297, 2012-11-04 (Released:2012-12-31)

東日本大震災の地震・津波災害,原子力災害の記録・教訓等を誰もがアクセス可能な一元的に活用できる仕組みを実現するために,国立国会図書館では,国立国会図書館東日本大震災アーカイブ構築プロジェクトを開始した.プロジェクトの活動として,震災の記録等の収集,統合検索等のアーカイブシステムの構築について紹介する.
著者
岩本 崇
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.452-455, 2011-10-29

弊社がリリースしたばかりの新しい制作ツール「Adobe Digital Publishing Suite」を中心にプレゼン致します。 新しいAdobe Digital Publishing Suiteはクラウドサービスで提供をする、旧来とは異なる製品です。但しコンテンツを作成するツールは、多くの出版社様や印刷会社様で採用していただいているInDesignを中心です。旧来の紙ベースのワークフローを大きく崩すことなく、従来から制作やデザインに準じている方々にも容易に作成できるように開発をしました。実際どの様に使い、どうコンテンツを作成するのかを実機でのデモを交えながらご紹介していきます。 またフォーマットとして、PDF,Flash,EPUB,FolioといくつかのフォーマットをInDesignでは作成が可能ですが、ユーザーはどのフォーマットで作成するのかを悩むことになるでしょう。でもどんなゴールを目指すのかで答えは見えてきます。それはそれぞれに得意不得意があるからです。 弊社は電子出版という広い言葉では「EPUBとFolio」をベースに考えております。電子書籍では「EPUB」が、リッチコンテンツでは「Folio」を活用していただきたいと考えております。あまり馴染みの「Folio」は上記のAdobe Digital Publishing Suiteで作成ができるフォーマットで、既に世界中で採用していただいており、700近いコンテンツがリリースされています。アメリカなどの電子出版の先進国だけでなく、ワールドワイドでコンテンツが生まれております。日本の出版社さんでも採用していただいている会社が複数有り、どんなコンテンツに向いているのか、そしてどんなモノが作れるのか、日本の事例も多く紹介したいと思います。