著者
横尾 慶紀 北田 順也 錦織 博貴 山田 裕一 藤井 偉 猪股 慎一郎 工藤 和実 千葉 弘文 白鳥 正典 山田 玄 高橋 弘毅
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.133-137, 2013-10-01 (Released:2014-11-10)
参考文献数
14

症例は54歳,男性.湿性咳嗽,血痰,労作時呼吸困難が出現し,健康診断で胸部X線写真上すりガラス影を指摘され近医を受診した.胸部CTで両側上肺優位に肺野濃度上昇を認めたため,精査目的で当院に入院となった.問診により,幼少時から自宅でレース鳩を飼育していることが判明し,鳥関連過敏性肺炎を疑った.気管支肺胞洗浄ではリンパ球の増加とCD4/8比の低下を認め,経気管支肺生検ではリンパ球浸潤を主体とする胞隔炎を認めた.また,患者が飼育している鳩血清および鳩糞と患者血清との間で行った沈降抗体反応は陽性であった.原因抗原からの隔離により肺病変が改善し,レース鳩を処分したのちに行った飼育小屋での環境誘発試験は陽性であった.以上からレース鳩飼育により急性発症した鳥関連過敏性肺炎と診断した.一般に本症は画像で線維化像を示す慢性型の場合が多い.本症例では,鳩の飼育数の増加によって抗原暴露量が著しく増加したことが急性型の発症を呈した原因と考えられた.
著者
山田 裕一
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.448-455, 2005-12
被引用文献数
1

日本人には,よく知られた低Kmアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)遺伝子の他にも,アルコール脱水素酵素(ADH)のβ-サブユニット蛋白(ADH_2),エタノールを非特異的に酸化するチトクロームP450-2E1(CYP2E1)など,アルコール代謝酵素の遺伝子に多形性が存在する。これらの遺伝子多形が日本人の飲酒行動や飲酒に起因する健康障害へどのように関連するかについて,我々の研究で得られた知見を中心に総括する。不活性型ALDH2(ALDH2*1/2またはALDH2*2/2)の人の飲酒量は小さい。一方,代謝速度が大きいとされるCYP2E1遺伝子のc2アレルの保有者は,ALDH2活性が正常ならばc1アレル保有者よりも飲酒量が大きい。日本人に頻度の高いc2アレルが日本のアルコール消費量の増加に寄与している可能性がある。日本人の問題飲酒者ではADH_2の定型アレル(ADH_2*1)の保有頻度が高い。非定型アレル(ADH_2*2)から生成される代謝活性の高いADHが血中からのエタノールの除去を速めることで,問題飲酒者の発生に抑制的に働いている可能性がある。日本ではアルコール消費量に比してアルコール依存症が少ないと言われるが,このような日本人のアルコール代謝酵素の遺伝的特徴が反映されているのかもしれない。現在,ほぼ確実に不活性型ALDH2が疾患発生リスクを高めると考えられるのは食道がんおよび咽・喉頭がんである。西暦2002年の日本での食道がんの年齢調整死亡率は男性で10万人対10.2,女性ではさらに稀で1.3である。1960年以降,日本のアルコール消費量は増加し続けてきたが,この間,男性での食道がん死亡率はほぼ横ばい,女性では逆に減少し続けている。飲酒と不活性ALDH2が日本人の食道がん発生にある程度は関与しているとしても,その主要な原因とは考えにくい。それゆえ,食道がんリスクの判定のためにALDH2の遺伝子型診断を行うことの予防医学的利益は大きくない。その他のアルコール代謝酵素の遺伝子が特定の疾患発生に関与するという確かな証拠はまだない。
著者
世古口 悟 廣瀬 瞳 池田 佳奈美 山根 慧己 濱田 聖子 堀田 祐馬 山田 展久 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一 松林 宏実
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.184-190, 2020-04-01 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

針刺し事故の現状およびワクチン接種の問題点を検証する目的で,2012年1月から2019年7月までに当院で報告のあった,針刺し切創・皮膚粘膜曝露138症例の検討を行った.職種は看護師52.9%,常勤医師23.9%の順で,事務職は1.4%(2例)であった.経験年数1年未満が23.2%で,汚染に伴う感染例はなかった.曝露時のHBs抗体価が10 mIU/ml未満の割合は23.7%で,HBs抗体の自然低下41.9%,ワクチン接種終了前の曝露35.5%,ワクチン不応9.7%,ワクチン接種非対象者6.5%であった.針刺し事故は,事務職にも発生しており,全ての医療従事者を対象としたワクチン接種が必要である.また就業開始前のワクチン接種による抗体獲得および抗体価の定期的な測定を検討する必要がある.
著者
大阿久 達郎 山田 展久 池田 佳奈美 山根 慧己 竹村 圭祐 堀田 祐馬 世古口 悟 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.117, no.1, pp.72-77, 2020-01-10 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

症例は76歳男性.粘血便を主訴に受診し,下部消化管内視鏡検査および便汁鏡検でアメーバ性大腸炎と診断した.メトロニダゾール静注開始24時間後より手袋靴下型の感覚低下が出現し,投与開始2日後からは足部の疼痛が出現した.同薬中止により徐々に症状は改善し3カ月後には消失した.長期間投与で発症するとされてきたメトロニダゾールによる末梢神経障害が投与開始後早期に発症したまれな症例であり,報告する.
著者
石崎 昌夫 本多 隆文 山田 裕一 中川 秀昭 櫻井 勝 櫻井 勝
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

欠勤日数・回数は低職位群が高職位群より多く、この職位による傾斜は強固なものであった。また、短期間欠勤はその内容によってはストレスコーピングの役割を果たしていると思われた。自己評価による仕事パフォーマンスは職位よりも仕事要求度といった職場環境に強く影響されると考えられる。
著者
山田 裕一 宮崎 康支
出版者
松本短期大学
雑誌
松本短期大学研究紀要 (ISSN:09107746)
巻号頁・発行日
no.32, pp.49-60, 2022-03

幼児教育・保育者向け指南本(いわゆる「ハウツー本」)のテクスト分析を通して、障害児教育・保育における環境づくり、言葉がけ、そして人間関係についての射程を明らかにした。一般の幼稚園・保育園において障害児や医療的ケア児等の受入を一般化しようという社会的潮流と、それに伴う制度的変遷などを受け、保育所・幼稚園の保育者においては障害児保育等に関する学習やスキル向上の必要性に駆られている。研修以外の有力な学習方法の選択肢として指南本があり、その分析を通して伝達されうるメッセージを検討した。特に国が示すあるべき保育のあり方や障害者権利条約および障害者差別解消法施行に伴う、障害の社会モデルの考え方がどのように反映されているのかについて、2冊各2版の指南本において環境づくり・言葉がけ・人間関係に関する論点について分析・検討した。その結果、指南本における指導の射程として保育の多様性や子どもの理解、そしてユニバーサルデザイン等の理念を掲げて伝達されていた。一方で、個別の言語・図像表現と全体的な内容が子どもの医学的・個人的理解に傾斜しているように読み取れた。これはイラストや図を用い、わかりやすさや手に取りやすさを重視した指南本の限界である可能性がある。今後の研究課題としては、こうした指南本に幼児教育・保育の政策がどのようにして言語・図像において表現され、それが如何にして読者に解釈されうるか、また指南本では伝わりにくい子どもの多様性を大切にする保育のあり方や社会モデルの哲学・理念をどう伝えていくかという点になる。(著者抄録)
著者
山田 裕一 Yong CHOI Ki Joong KIM Ja Wook KOO Il Soo HA 後藤 治子 小笠原 信明
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
プリン・ピリミジン代謝 (ISSN:09162836)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 1995 (Released:2012-11-27)
参考文献数
19

Hypoxanthine guanine phosphoribosyltransferase(HPRT)が先天的にほぼ完全に欠損するとLesch-Nyhan症候群となる.Lesch-Nyhan症候群韓国人5家系におけるHPRT変異遺伝子を,ゲノムDNAの分析とRT-PCRによるmRNAの分析の2面から解析し,2例の新しい変異(533-9T→A,631delA)と3例のすでに報告のある変異(310insG,Q109X,289delGT)を同定した.また,Q109X,289delGTにおいては,すでに報告のある異常mRNAのほかにスプライシング異常から生じるエクソンスキップのある異常mRNAの存在を確認した.すべての家系において保因者診断を,2家系においては変異遺伝子の出生前診断を行なった.
著者
磯崎 豊 鈴木 建太朗 松山 竜三 松本 尚之 長尾 泰考 石川 剛 原田 明子 松本 貴弘 谷 知子 辰巳 嘉英 今本 栄子 安藤 貴志 小山田 裕一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1707-1713, 2009 (Released:2012-07-26)
参考文献数
13

クラミジア直腸炎を3例経験した.全例無症状で,便潜血反応陽性の精査の際に直腸の均一な半球状小隆起の集簇像という特徴的な内視鏡所見と直腸擦過診のChlamydia trachomatis抗原検索によって診断された.治療としてazithromycin hydrateを投与した.クラミジア直腸炎は自覚症状の乏しい症例も多く,画像所見から本疾患を疑い,適切な検査で診断・治療することが必要である.
著者
孫田 信一 小野 教夫 武藤 宣博 山田 裕一
出版者
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

均衡型染色体構造異常を有し、同時に遺伝性疾患を含む各種疾患、器官形成異常や発生異常などを示すマウスを系統的に作製し、切断点を指標にして各異常に関する遺伝子探索システムの確立を目指した。チャイニーズハムスターによる予備実験に基く方法にしたがって実施した。マウスを用いて4シーベルトのX線照射した雄との交配で26.9%の子獣に染色体構造異常をもつ65系統が得られ、これらのうちホモ接合体(一部ヘテロ接合体)で何らかの症状を示すものが得た(8.6%)。発育障害を含む諸症状、行動異常、不妊、発生及び器官形成異常などを発現する動物・系統を分離した。また構造異常のホモ接合体で能を含む器官形成異常、着床後早期の発生異常、2〜8細胞期における発生異常や発生停止などを示すものもかなり多いことが判明した。また、ゲノム解析を進めるため近交系マウスおよびチャイニーズハムスター(CH)のgenomic DNAを用いて定法によりゲノムライブラリーを作製した。これまでCHについては500以上のコスミドクローンをFISH法で染色体上にマッピングし、マウスでも同様にライブラリーを作製した。染色体2p23と4q19の相互転座を有し、ホモ接合体で侏儒症と学習記憶障害を示すCH系統と特定の発生異常、器官形成異常を示す転座2系統の動物を用いて切断点の遺伝子解析を実施した。前者の切断点近傍に成長ホルモン受容体遺伝子GHRが存在しその発現異常を認めたが、切断点とは一致しない。発生障害を示す他の2系統の遺伝子を含めその領域をかなり狭い範囲に決定したが、まだ遺伝子を特定するには至っていない。本研究システムを用いて各種疾患や発生異常に関わる遺伝子が多数発見され、それぞれの構造・機能が解明されれば、異種遺伝子間の相同性を利用して同一機能のヒト遺伝子が解析できる。