著者
新屋 良磨 光成 滋生 佐々 政孝
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_191-2_206, 2013-04-25 (Released:2013-08-25)

正規表現によるパターンマッチングは広く用いられており,これまで様々なマッチング手法が研究されてきた.正規表現をDFAに変換してマッチングを行う手法もその1つである.本論文では2つの高速化手法を提案する.1つ目の手法は,マッチングの並列化である.マッチング対象となる文字列を複数に分割してデータ並列にマッチング可能な,同時状態有限オートマトン(Simultaneous Finite Automata, SFA)をオートマトン理論の自然な拡張によって定義した.2つ目は,DFA・SFAから,ネイティブコードを実行時に最適化して生成する手法である.コード生成によって,既存実装に比べてマッチング時のスループットの向上が見込め,また特定の正規表現における最適化も可能となる.最終的に,これらの手法を実装し,マルチコアマシン上での評価を基にその有用性を確認した.
著者
細部 博史
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.437-444, 2002-11-26 (Released:2012-01-10)

制約は,多様な問題解決のための有力な手段であり,ユーザインタフェース(UI)を含む様々な分野で広く利用されている.UI分野における制約の最大の用途はグラフィカルレイアウトであり,制約によってレイアウトの維持が自動化されて容易になるという利点がある.制約によるUIの構築を実現するための基盤システムとして,これまでに様々な制約解消系が研究開発されている.本研究では,優先度を伴った線形等式および不等式制約からなる系(制約階層)を処理するための制約解消系を構築する.そして実験により,この制約解消系が,制約が1,000個を超える状況でもUIを実現するのに十分な効率を持っていることを示す.
著者
滝本 宗宏 佐々 政孝
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1_30-1_46, 2008 (Released:2008-03-31)

コンパイラでは,機械語の目的コードを生成するに際して,実行させたときにその目的コードが効率良く実行できるように,様々な変換を行う.これを「最適化」という.最適化の方法としては,従来はデータフロー解析と呼ばれる方法が使われていたが,最近は静的単一代入形式というものを用いた最適化の方法が注目を浴びている.静的単一代入形式(SSA形式)は,すべての変数の使用に対して,その値を定義(代入)している場所がテキスト上1箇所しかないように変数の名前替えをした中間表現の形式である.この性質を利用することにより,いろいろな最適化が見通し良く,容易にできるようになる.これを静的単一代入形式最適化と呼ぶ.本稿(発展編)では,静的単一代入形式最適化のあらましについて,解説する.
著者
井垣 宏 武元 貴一 上田 悠貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1_54-1_66, 2018-01-25 (Released:2018-03-26)

IoT技術の普及に伴い,基礎的な素養を備え,他者と協調してIoTシステム開発が行えるIoT人材を効率よく教育することが求められている.そのため,多くの教育機関において,手順書などにもとづいて,実際にIoTシステムの開発を行うような演習形式の授業が実施されている.特にチームでの開発経験を重視する場合,PBL(Project-based Learning)形式を採用し,チーム開発プロセスやコミュニケーションスキルとIoT技術についての基礎教育を行うことも多い.本論文では,事前に決められたIoTシステムをPBLで開発するIoT基礎教育を前提とし,学生間のスキル差やタスク割り当ての偏りといったPBL授業で発生しがちな課題への対応を目的とした手法を提案する.実際にPBLを実施した結果,チーム間でスキル差は存在したが,全学生に多様なIoT技術及びチーム開発の経験を積ませたうえで,IoTシステムを開発させることができた.
著者
石田 芳文 山本 仁志 岡田 勇 太田 敏澄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1_70-1_80, 2007 (Released:2007-06-11)

相互作用関係がスケールフリーネットワークである繰返し囚人のジレンマにおいて,協調は安定的に維持されるのであろうか? また,協調を安定的に維持するためにはどのような方策が望ましいだろうか.我々は,エージェントの相互作用関係がスケールフリーであるネットワークに対し,協調の進化と崩壊の動的なメカニズムを明らかにするために,エージェントベースドシミュレーションをおこなった.我々の成果は,以下の通りである.(1) スケールフリーネットワーク上の囚人のジレンマにおいて,協調は達成されるが脆弱であり崩壊しやすい.(2) ネットワークの接続次数の高いエージェントが寛容になることが協調の崩壊を招き,また厳格になることで協調は最も高いレベルで維持される.(3) ネットワークの接続次数の高いエージェントが,一定の確率で裏切り行為をとることで,集団全体の寛容性を抑制し,裏切り戦略の侵入を防ぐ効果がある.
著者
桑原 寛明 國枝 義敏
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.4_39-4_45, 2019-10-25 (Released:2019-12-25)

本論文では,情報流解析における制約付き機密度パラメータを提案する.機密度パラメータを用いることで,各データの具体的な機密度を指定することなくクラスや関数を定義することができる.しかし,機密度パラメータに対して具体的な機密度をどのように割り当てても非干渉性を満たすことが要求される.制約付き機密度パラメータはこの強い制約を緩和する.本論文では,手続き型言語を対象として制約付き機密度パラメータに対応した情報流解析のための型システムを定義し,簡単な適用例を示す.
著者
中島 震
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.499-528, 2001 (Released:2002-07-13)
参考文献数
157
被引用文献数
1
著者
石川 孝 澤井 秀文 栗原 聡
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_21-1_25, 2011-01-25 (Released:2011-03-25)

人工知能が生物の知能を理解するための手段であるように,シミュレーションは複雑ネットワークを理解するための有用な手段の1つである.この解説は,複雑ネットワーク研究におけるシミュレーション手法について主要な文献に沿って概説し,その研究の流れが模倣から創造へと向かっていることを紹介する.
著者
李 奕驍 松原 豊 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.4_91-4_115, 2017-10-25 (Released:2017-11-03)

EV3RT is, to our knowledge, the first RTOS-based software platform for LEGO Mindstorms EV3 robotics kit. It is faster and more suitable for developing applications with real-time requirements than other existing software platforms. In practice, EV3RT has been selected as one of the officially supported platforms of ET Robocon, a popular robot competition in Japan, since 2015 and used by many participating teams to make their robots accomplish the assigned tasks more stably and precisely. In this paper, the usage and architecture of EV3RT are firstly introduced. We then explain TOPPERS/HRP2 kernel, the RTOS of EV3RT, and how to use its protection functionalities to build a reliable platform. A mechanism to support dynamic module loading in a static RTOS is proposed to implement the application loader for EV3RT. Implementation techniques like approach to reusing Linux device drivers are also described. Finally, the advantages of EV3RT are shown by evaluating and comparing its performance with other platforms.
著者
門田 暁人 伊原 彰紀 松本 健一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_52-2_65, 2013-04-25 (Released:2013-08-25)

ソフトウェアリポジトリマイニング(MSR)は,研究テーマの宝庫であり,大変魅力のある研究分野である.「ソフトウェアリポジトリ」という鉱山から,マイニング(宝探し)をすることで,新しい研究目的を見つけ出すことが研究の醍醐味となっている.特に,オープンソースソフトウェア(OSS)のリポジトリを対象とした研究が盛んであり,OSS開発の広がりとともにMSRの分野は発展してきた.本稿では,MSR研究の魅力,主な研究テーマ,マイニングの具体例,MSR分野の今後の発展について述べる.
著者
長谷川 隆三 藤田 博 越村 三幸
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_2-3_10, 2008-07-25 (Released:2008-09-30)

1980年代の第5世代コンピュータプロジェクトの主要な成果の一つとして,定理証明システムMGTPがある.MGTPは,並列推論マシン(PIM)上での高効率証明系の実装に最適なモデル生成法に基づいている.本稿は,MGTPの改善や拡張および応用と最近の研究について概観する.
著者
金箱 淳一 藤田 ハミド
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
日本ソフトウェア科学会大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.22, pp.256-262, 2005

本研究では、色の要素(色相)と造形物の配色パターンに注目することで、楽曲作成の支援システムの構築を目標としている。ここでは、楽曲を感情表現と捉え、同様にブロック遊びにおいて構築された物の配色も一種の感情表現と捉える。これら両者と表現された感情との対応関係により、上記システムの実現にアプローチする。ここでは主に、色相と感情間の関係をアンケートにより抽出し、前者の関係と研究事例を利用して楽曲におけるドラムパターンの生成を行う。
著者
山本 成一 中村 遼 上野 幸杜 堀場 勝広 関谷 勇司
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.3_46-3_57, 2015-07-24 (Released:2015-09-24)

インターネット接続が普及し,さまざまな場面でネットワーク技術が利用されるようになった.しかしながら,その運用形態は進化していない.機器毎の固有の設定を個別に実施する旧来からの手法にとどまっている.研究レベルでは,いくつかの提案がされているが,現在のネットワーク利用に対し,実用的な運用レベルの要求を満たすものではない.本研究では,新しい運用管理アーキテクチャGINEW (General Integrated Network EngineeringWorkbox)を提案した.そのプロトタイプ実装の適用結果を報告する.
著者
舘 伸幸 香山 瑞恵
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.24-29, 2019-01-25 (Released:2019-03-26)

「実践力」.昨今,情報技術に関連する教育課程でよく目にする言葉である.ソフトウェア開発分野において,はたしてこの「実践力」とは,具体的にどのような力だろうか.特に,新卒生や社会人若年層は,実際の開発現場でなにができたら実践力を発揮していると言えるのだろうか.本研究では,ソフトウェア開発分野における実践力について調査し,得られた結果から仮説を導き,実際に教材を試作試行して,効率よく実践力を学ぶための方法を提案することを目的としている.我々は社会で実践力を発揮して活躍している人々へのインタビューによる調査を進めており,現在のところ開発の現場で求められている実践力とは,一般的に言われるジェネリックスキルではなく,技術的問題を解決するための技術力であるという圧倒的意見を得ている.本稿では,その調査結果と,今後の展望について報告する.
著者
グリュック ロバート 横山 哲郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.3_108-3_128, 2016-07-25 (Released:2016-08-10)

A linear-time reversible self-interpreter in an r-Turing complete reversible imperative language is presented. The proposed imperative language has reversible structured control flow operators and symbolic tree-structured data (S-expressions). The latter data structures are dynamically allocated and enable reversible simulation of programs of arbitrary size and space consumption. As self-interpreters are used to show a number of fundamental properties in classic computability and complexity theory, the present study of an efficient reversible self-interpreter is intended as a basis for future work on reversible computability and complexity theory as well as programming language theory for reversible computing. Although the proposed reversible interpreter consumes superlinear space, the restriction of the number of variables in the source language leads to linear-time reversible simulation.