著者
原田 康徳 Yasunori Harada NTT基礎研究所 NTT Basic Research Laboratories
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.271-274, 1996-05-15
参考文献数
3

3回目となったWISS (Workshop on Interactive Software and Systems)は広島県加計町温井スプリングスで開催された.プログラム委員長は,2年間続いたSony CSLの竹内影一氏に代わり,筑波大学の田中二郎先生である.今回の参加者は約90名と,年々増加の傾向にある.古くて新しいテーマであるインタラクティブシステムも,ハードウェアの進歩に伴い,次々と新しいアイデアが産まれているようである.
著者
花田 良子 佐藤 史隆 廣安 知之 三木 光範 鈴木 泰博
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1_91-1_100, 2007 (Released:2007-06-11)
被引用文献数
3

本研究では,ネットワークの特性量を目的関数とした最適化問題として定式化し,ネットワークを設計する.設計されたネットワークの持つ特性と複雑ネットワークの持つ特性とを調査,比較して検証することで,一般的に複雑ネットワークが有する特性は何に起因しているかを探求するアプローチを提案する.本論文では,その基礎的な検討として,最適化手法に遺伝的アルゴリズム (Genetic Algorithms: GA) を用いた場合のネットワーク生成の検討と,設計したネットワークを複雑ネットワークの視点から検討する.本論文で,目的とした特徴は,平均パス長やクラスター係数である.設計したネットワークを検討した結果,これらの目的には一部トレードオフの関係が存在することが明らかとなり,単一目的のGAよりも多目的GAの適用により検討することが適当であることが明らかとなった.
著者
油谷 曉 垣内 正年 香取 啓志 尾久土 正己 猪俣 敦夫 藤川 和利 砂原 秀樹 眞鍋 佳嗣 千原 國宏
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_318-4_332, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

2009年7月22日に日本で皆既日食という天体ショーが起こり,様々な組織が皆既日食映像の伝送実験や多彩なイベントを行った.4K超高精細映像の伝送方法について共同研究を行っている朝日放送株式会社(ABC)では大規模なIPネットワークを使用した全天4K超高精細映像の伝送実験を企画し,奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)も参加協力を行った.この伝送実験では,世界初の試みとして,皆既日食が起こっている場所の臨場感を全天4K超高精細映像を使用して可能な限り伝送するという目的で行われ,無事に実験の目的を達成することができた.本論文では,NAIST独自で非圧縮全天4K超高精細映像のLayer 3ネットワークを用いた伝送実証実験を行い,有効な伝送手法として実験を成功させたことについて報告し考察を与えることとする.
著者
西田 健志 五十嵐 健夫 Takeshi Nishida Takeo Igarashi 東京大学大学院情報理工学系研究科 東京大学大学院情報理工学系研究科:科学技術振興機構さきがけ Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo Graduate School of Information Science and Technology the University of Tokyo:JST PRESTO
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.69-75, 2006-10-26
参考文献数
7
被引用文献数
3

本論文では,参加者間で画像を共有し,それら画像の特定部分に会話を結びつけることのできるチャットシステムLock-on-Chatとその運用により得られた様々な知見をまとめる.文書や画像と会話を結びつけるほかのシステムが,ひとつの文書について深く議論するのに適しているのに対して,我々のシステムは複数の画像に分散した会話をしやすくすることに重きを置いてデザインされている.Lock-on-Chatは学術会議において発表中に聴衆が会話するためのシステムとして運用された.Lock-on-Chatが局面に応じてさまざまな使われ方がされる様子,多くの参加者が活発に議論する様子が観察された.
著者
二木 厚吉 緒方 和博 中村 正樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.2_1-2_13, 2008 (Released:2008-06-30)

CafeOBJ言語システムを用いた形式手法,すなわち形式仕様の作成法と検証法,を全6回にわたり解説する.CafeOBJ言語はOBJ言語を拡張した代数仕様言語であり,振舞仕様,書換仕様,パラメータ化仕様などが記述できる最先端の形式仕様言語である.CafeOBJ言語システムは,等式を書換規則として実行することで等式推論を健全にシミュレートすることができ,対話型検証システムとして利用出来る.第1回の今回は,「待ち行列を用いる相互排除プロトコル」を例題として,言語や検証法の細部に立ち入ることなく,CafeOBJ仕様の作成と検証が全体としてどのように行われるかを説明する.第2回以降では,言語の構文と意味(第2回),等式推論と項書換システム(第3回)について説明し,証明譜を用いた簡約のみに基づくCafeOBJの検証法(第4回)を解説する.さらに,認証プロトコル(第5回)と通信プロトコル(第6回)の2つの典型的な検証例も示すことで検証の技法についても解説する.
著者
辻田 眸 塚田 浩二 椎尾 一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.18-28, 2010-01-26
被引用文献数
1

距離を隔てて暮らす人たちに,相手の存在感や振る舞いなどのアウェアネスを伝えることで,従来の電話やメールを補完もしくは置き換えようとする新しいコミュニケーションシステムが多数提案されている.本研究では,日常生活における行動の偶然の一致が,話題のきっかけ,親近感,連帯感などをもたらすことに着目し,遠隔地にいる人々の行動が偶然一致したことを伝達する,新しいコミュニケーションシステムを提案する.また,ドアの開閉,ソファーへの着席,テレビの視聴などを検出して一致を伝達するシステムを試作し,研究室間での評価実験を行った.さらに2家族間での遠隔実験の結果を示し,今後の展望を述べる.
著者
山本 聡彦 小松 孝紀 生天目 章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_26-1_33, 2011-01-25 (Released:2011-03-25)

近年,様々な分野において,複雑ネットワークに関する研究が進められてきた.そのような中,与えられた目的に適合する特性を持った最適なネットワークとは何か,またそれをどのように設計するかという問題は,未だ解明されていないことが多い.従来の研究は,あるルールの下でネットワークを作成し,そのネットワークの特性を調べていくものが多い.本研究では遺伝的アルゴリズムを用いて最適なネットワーク(厳密には準最適なネットワーク)を生成させる方法を提案する.最適なネットワークを生成するための評価指標としてネットワークを表現する隣接行列の最大固有値とリンク密度の2つの線形結合関数を定義し,遺伝的アルゴリズムによりネットワークを進化させる.また,進化的に生成した準最適なネットワークの構造について解析をする.
著者
石川 拓也 安積 卓也 一場 利幸 柴田 誠也 本田 晋也 高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_158-4_174, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

本論文では,組込み向けコンポーネントシステムであるTECSの仕様に基づいて開発した,LEGO社製MindstormsNXT用ソフトウェアプラットフォームATON(ASP+TECS On NXT)について述べる.ATONは,TECSを用いることにより,未使用デバイスのデバイスドライバの取り外しによるメモリ使用量の削減を可能とし,また,モデルを用いたソフトウェア開発との親和性を高めている.これらを実現するために,タスクやセマフォなどのリアルタイムOSの扱うオブジェクトやNXTに搭載されているデバイスのデバイスドライバをTECS仕様に従ってコンポーネント化している.倒立二輪ライントレースロボットの制御ソフトウェアをATON上に実装する事例によりATONの有用性を示した.
著者
山崎 俊太郎 持丸 正明 金出 武雄
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.4_126-4_136, 2011-10-25 (Released:2011-11-30)

画像ベースレンダリング法を用いて,Webブラウザ上で自由視点画像を合成するシステムを提案する.本システムは,クラウド環境で動作する光線空間モデリングと,Webブラウザ上で動作する自由視点画像レンダリングのソフトウェアで構成される.モデリングには,画像特徴を利用したStructure from Motion法を用い,未校正の画像集合から,自動で光線空間を復元する.レンダリングには,透視変換の近似アルゴリズムを用い,Webブラウザ上で対話的な速度で画像を合成する.我々の手法は,3次元の形状モデルを必要とする既存のWeb3D技術に対して,(1)表示対象の形状モデル復元が不要,(2)合成画像が写実的,(3)標準的な計算機環境で利用可能,という利点がある.作成したモデルは,標準的なHTMLの形式で配布可能であり,単独のコンテンツとして閲覧するほか,既存のWebサイトへ埋め込んで利用できる.これにより,今まで静止画を利用していた様々なWebアプリケーションに,対話的な3Dグラフィクスの機能を追加できる.
著者
神原 啓介 塚田 浩二
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_172-2_182, 2011-04-26 (Released:2011-05-26)

ブログやSNS,ソーシャルブックマークなどのソーシャルウェブサイトの利用が進み,Web上で人とつながりを持ちコミュニケーションをすることが増えた.Web上での人とのつながりやコミュニケーションが増えると,優先的に見たい人の発言が他の人の発言に埋もれてしまう問題や,複数のウェブサイトに発言が分散してしまう問題,タイムラインのようなリストでは特定の人物を見つけにくいといった問題が起こる.そこで本研究では複数のソーシャルウェブサイトを横断しながら,優先的に見たい人がタイムラインに埋もれてしまうことなく,特定の人物を一目で見つけることのできるインタフェース「ソーシャル顔アイコン」を提案・試作した.ソーシャルウェブサイトの中にいる人をアイコンとしてデスクトップに置くことで人に対してより直接的にアクセスできるインタフェースを備えており,使い慣れたアイコンと同じように操作できる点や,発言の新鮮度や発言頻度といった時間軸情報を視覚的に分かりやすく表示する点が特徴である.
著者
上間 裕二 古川 正紘 常盤 拓司 杉本 麻樹 稲見 昌彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.2_153-2_161, 2011-04-26 (Released:2011-05-26)

猫やチンパンジーなどはコミュニケーション方法の1つとして,毛を逆立てて威嚇行動をとることが知られている.この毛を逆立てるという行動は,動物ならではのコミュニケーションの中でも,人に対してわかり易い表現手法といえる.つまり同手法を工学的に再現することで,毛皮がもつ視覚的な審美性を損なうことなく,毛を逆立てるという機能をもちながらも,身につけたり撫でたりすることが可能な出力インタフェースの実現が期待できる.そこで本稿では,本表現手法をユーザインタフェースへ適用するための技術要素として,簡便な機構で実装可能な毛並み制御手法の提案を目的とする.実験の結果,毛皮に対して振動を印加することで瞬時に毛を逆立てることが可能であることが確認された.また,ユーザスタディにより毛を逆立てることが人に対して驚きを与えたことから,十分な視覚的変化を実現できたことが確認された.以上のことから,本提案手法は動物的な表現手法の工学的な実装として有効であり,動物的な表現を用いた出力インタフェースへと応用可能であることが示された.
著者
池田 光生 Teruo Ikeda (財)新世代コンピュータ技術開発機構
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.536-545, 1991-11-15

多くの生成システムでは,プランニング部と表層文生成部との間で中間構造を介して情報の伝達を行う.生成処理が多様化するにつれて複雑になる中間構造を,簡潔に記述するために,五つの階層からなる意味表現を導入した.各階層は文の統語的な階層構造を反映したものであり,統語的な制約を自然な形で意味の階層の中に埋め込むことにより,統語的な制約と意味的,文脈的な制約を統合している.意味表現の階層を用いることにより,多様な従属節の接続表現の違いや提題の「は」の役割を,記述する階層の違いとして自然に明示することができる.
著者
Nicolas MARTI Reynald AFFELDT
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_135-3_147, 2008-07-25 (Released:2008-09-07)

Separation logic is an extension of Hoare logic to verify imperative programs with pointers and mutable data-structures. Although there exist several implementations of verifiers for separation logic, none of them has actually been itself verified. In this paper, we present a verifier for a fragment of separation logic that is verified inside the Coq proof assistant. This verifier is implemented as a Coq tactic by reflection to verify separation logic triples. Thanks to the extraction facility to OCaml, we can also derive a certified, stand-alone and efficient verifier for separation logic.
著者
上田 和紀 細部 博史 石井 大輔
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1_306-1_311, 2011-01-25 (Released:2011-02-18)

時間の経過に伴って状態が連続変化したり,状態や方程式系自体が離散変化したりする系をハイブリッドシステムと呼ぶ.我々は,不確実値の扱い,シミュレーションと検証の統合などの観点から,制約概念に基づくハイブリッドシステムモデリング言語HydLaの設計と実装を進めてきた.HydLaは,制約階層概念の採用によって制約条件を過不足なく与えることを容易にした点を特徴とするが,種々の言語機能の相互作用のためにその意味論の定式化は自明ではない.本論文では,HydLaの宣言的意味論を定式化して考察を加えるとともに,宣言的意味論から導かれる性質や帰結を具体例を用いつつ論じる.
著者
鈴木 貢 藤波 順久
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1_65-1_81, 2008 (Released:2008-03-31)

最近公表されるマイクロプロセッサの殆どが具備するようになったメディア処理向けSIMD拡張命令セットは,ベクタ命令セットの特別な場合と考えられるが,従来のベクタ命令にはない特徴や制約があり,そのための最適化技術をそのまま流用するだけでは潜在能力を引き出すことができない.COINSプロジェクトではSIMD拡張命令セット向け最適化を,ベクタ化を軸としたソースコードレベルで可能な最適化と,そのような変換を施されたプログラムに対して適切なSIMD命令を生成する最適化の2段階に分割し,我々が「SIMD並列化」と呼ぶ後者を中心に研究を行った.本稿では,COINSにおけるSIMD並列化について報告する.