著者
新屋 良磨
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_119-1_124, 2017-01-25 (Released:2017-02-16)

与えられた言語が非正規であることの証明技法として,ポンピング補題や右同値類の有限性 (Myhill-Nerodeの定理) などの手法が有用であることが広く知られている.本論文ではこれらの手法とは全く異なる新しい非正規性の証明技法を提案する.いくつかの例題を通じて提案手法の新規性・有用性を議論し,さらに提案手法の課題についても具体的に述べる.提案技法は言語の測度に基づくものであり,「与えられた言語Lがほとんど空(測度が0)である」という直観的な性質を非正規性の証明に用いる.
著者
又吉 康綱 中村 聡史
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_55-1_71, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)

大学で開講される初年次必修プログラミング教育では,TAが必要不可欠である.対面講義でもあった積極性を発揮できず質問できない受講生の問題は,COVID-19の影響により大学の講義がオンラインになったことで,より大きな問題となっているといえる.また,それに加え質問の順番待ちや質問対応などの制御や,TAにとって質問に対応できるだろうかという精神的な負荷も大きな問題となりうる.そこで本研究では,受講生の質問へのハードルを下げつつ,TAの精神的負荷も軽減するため,受講生がTAに直接質問をするのではなく,受講生はシステムに対して質問を行い,またTAは質問を事前に確認し,対応可能な場合に呼び出しして入室を促す手法を提案し,実装した.また,実際のオンライン講義で計1600分運用し,受講生およびTAから高い評価を得ることができた.
著者
二村 良彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.343-351, 2004-09-28 (Released:2009-04-27)

インタープリタを用いて形式的に記述されたプログラミング言語のセマンティクスと現実のコンパイラとの関係およびインタープリタからコンパイラを自動的に作成する方法について述べる.この方法は計算過程の部分評価の一種である.この方法を応用してできるコンパイラ・コンパイラと既存のコンパイラ・コンパイラの相違は,プログラミング言語のセマンティクスを記述するさいに,既存のものが翻訳過程を記述しなければならないのに対して,本方式によるものは評価手順を記述すればよいことである.
著者
久野 靖 大木 敦雄 角田 博保 粕川 正充 Yasushi Kuno Atsuo Ohki Hiroyasu Kakuda Masaatsu Kasukawa 筑波大学大学院経営システム科学専攻 筑波大学大学院経営システム科学専攻 電気通信大学情報工学科 お茶の水女子大学情報科学科 Graduate School of Systems Management The University of Tsukuba Tokyo Graduate School of Systems Management The University of Tsukuba Tokyo Department of Computer Science University of Electro-Communications Department of Information Science Ochanomizu University
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.230-240, 1996-05-15
参考文献数
6
被引用文献数
4

図的ユーザインタフェースの一種として,アイコンで様々な対象を表現し操作するWIMP[1]インタフェースがある.WIMPインタフェースでアイコンに対する操作を指示するやり方(操作選択方式)としてメニュー,ドラグ&ドロップ,キー操作などがあるが,これらの間には,操作時間が短いものは柔軟性や分かりやすさに欠け,柔軟で分かりやすいものは操作時間が長いというトレードオフがある.筆者らはドラグ&ドロップの改良版として「アイコン投げ」(ドラグの途中でマウスボタンを離してもアイコンがこれまでの速度と方向で目的地に向かって移動し続ける方式)に注目し,その操作時間について実験と検討を行った.実験の結果,「アイコン投げ」インタフェースはメニュー,パレット,ドラグ&ドロップなどのマウスによる選択方法より有意に高速であり,誤り率も他の方法と比べて遜色ないため,図的インタフェースの基本操作として有望である.
著者
佐藤 健
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_36-3_44, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)
被引用文献数
5

筆者は,論理に基づく人工知能の法学への真の応用を求めて,東大法科大学院に2006年から3年間在学し,そこで法律に関する知見を得た.本稿では,その知見とこれまで20年にわたり研究してきた人工知能における論理の研究を融合させた結果について概観するとともに,今後の有望な研究テーマについて述べる.
著者
小林 隆志 林 晋平
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_13-3_23, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)

本論文では,多量のソフトウェア関連データを用いたソフトウェアの構築・保守支援手法及びそのために必要なデータマイニング技術の動向を,既存の研究を概観しつつ紹介する.
著者
山本 雅基 小林 隆志 宮地 充子 奥野 拓 粂野 文洋 櫻井 浩子 海上 智昭 春名 修介 井上 克郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_213-1_219, 2015-01-26 (Released:2015-02-11)

本論文では,協働教育の教育効果を測定するための新しい手法について提案して,実証評価する.分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワークenPiTでは,全国の大学院生に対して,情報技術の実践力を高める教育を実施している.実践力の育成を目的とする教育協働における教育効果の測定には,2つの課題が挙げられる.第一に,実践力は専門知識の定着を問うテストでは測定困難である.第二に,履修カリキュラムが異なる受講生を共通の指標で評価することも困難である.本論文では,学習経験を問う質問紙と行動特性を計測するテストを併用することにより,履修カリキュラムが異なる受講生の実践力を統一の基準で評価する手法を提案し,enPiTで実証評価した.
著者
川俣 楓河 寺内 多智弘
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.2_19-2_48, 2023-04-21 (Released:2023-06-21)

代数的エフェクトとハンドラとは,プログラム中のエフェクトの発生を抽象化してその動作をハンドラで定義するものであり,実装が分離されることでエフェクトを含むプログラムを見通し良く書くことができる.トレースエフェクトとは,プログラムの実行中に生じるイベントの発生順の列を静的に見積もったものであり,プログラムの時間的な性質の検証を可能にする.本論文では,代数的エフェクトハンドラとトレースエフェクトを共に備えることで,代数的エフェクトハンドラのエフェクト実装分離の利便性を享受しつつプログラムの時間的な性質を捉えることのできる型・エフェクトシステムを提案する.また,この体系の型安全性,すなわち正しく型付けされた項の評価は行き詰まらず,かつ型付けで得られたトレースエフェクトはその項の評価で発生し得るエフェクト列を保守的に見積もることを示し,さらにこの体系に対する健全性を満足する型推論を構築する.
著者
伊奈 林太郎 五十嵐 淳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2_18-2_40, 2009-04-24 (Released:2009-06-24)

静的型システムと動的型システムの両者の利点を活かす枠組みとして,SiekとTahaは漸進的型付けを提唱している.漸進的型付けでは,型宣言された部分のみ静的型検査が行なわれ,残りの部分については実行時検査が行なわれる.これにより,当初型を付けずに書いたプログラムに型宣言を徐々に付加し,静的型付けされたプログラムを完成させることができる.本研究では,漸進的型付けをクラスに基づくオブジェクト指向言語で実現する理論的基盤として,Igarashi, Pierce, Wadlerらの計算体系Featherweight Java (FJ)に動的型を導入した体系FJ?を定義し,型付け規則を与える.さらにFJ?からFJにリフレクションを加えた体系への変換を定義することで意味論を与え,静的に検査した部分の安全性が保証されることを示す.
著者
栗原 一貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_293-4_304, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

本論文では動画を高速に鑑賞する技術について検討する.映画DVDなどで一般的である字幕付きの動画を対象として,字幕のない箇所は高速再生し,字幕のある箇所については字幕を読むことが可能なように再生することで,鑑賞の娯楽的価値を保ちつつ鑑賞時間を通常よりも短時間にすることを可能にする.さらに高速鑑賞時の負荷軽減のための字幕表示インタフェースとしてセンタリング,フェーディングを実装する.また再生速度,文字読み速度,総鑑賞時間の指定により動画を出力でき,モバイル機器などの一般的な動画プレイヤーで再生可能なフォーマットに変換可能な汎用性の高いエンコーダを実装および公開し,評価実験により有効性を示した.
著者
伊藤 孝行
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.4_20-4_32, 2008-10-28 (Released:2008-12-31)

計算論的メカニズムデザインは,分散された個人情報を持つ自律的意思決定主体(エージェント)の社会的決定と,計算量や通信コストといった計算機科学の概念を同時に扱う新しい分野である.ミクロ経済学やゲーム理論の概念及び知識と,マルチエージェントシステムや計算機科学の概念及び知識が必要となる.さらに,計算論的メカニズムデザインは,理論からダイレクトに応用が可能な分野の一つである.本解説では,古典的メカニズムデザインの基本概念を概説した後,組合せオークションなどの計算論的メカニズムデザインの基本問題を解説する.その後,現在,計算論的メカニズムデザインの分野で注目されている課題やテーマについて紹介する.