著者
千葉 滋
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_40-1_54, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)

日本ソフトウェア科学会の論文誌でもあるコンピュータソフトウェア誌の査読・編集作業では,2017 年より編集作業を支援する web アプリケーションを利用している.これは当時,同誌の編集委員長であった著者が作成したものである.本論文は,国際会議用の既存の査読システムでは論文誌の査読支援には不十分であることを述べ,論文誌の査読支援のために開発した web アプリケーションの設計概要を示す.
著者
大西 主紗 志築 文太郎 田中 二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_78-1_90, 2016

大型のタッチ画面を備える携帯情報端末(以降,大端末)を片手にて操作する場合,その大きさゆえに指が届かず,操作が困難な画面領域が存在する.この時ユーザは片手のみを用いて端末の把持姿勢を変えるという煩雑な動作を行う必要があり,不安定な把持及び端末の落下の原因となる.そこで我々は,大端末向けの安定した片手親指操作手法であるTouchOverを示す.TouchOverは画面下部にて発生したタッチイベントを画面上部に転送する.画面上部に対するTouchOverと画面下部に対する直接操作とを使い分けることにより,大端末に対する安定な操作,すなわち片手親指のみを用いた持ち替えを必要としない,画面の全領域に対する操作を実現する.本稿においては,操作の切り替えにホームボタンのダブルタップを用いることにした.この動作の検出のため,我々はAndroid端末におけるホームボタンのダブルタップを検出するウィジェットを作成した.提案手法の評価を行うため,我々はTouchOverのプロトタイプをAndroidアプリケーションとして実装した.本稿ではプロトタイプを用いた使用例及び,性能評価のために行った比較実験の結果を示す.
著者
関 浩之 鯵坂 恒夫
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.3_61-3_69, 2011-07-26 (Released:2011-09-26)

ソフトウェアサイエンスになじみ深い形式言語理論の枠組みであるチョムスキー階層をあらためて探検する.文法の記述の方法および4つの文法クラス間の隙間に注目し,とくに機械と人間(生物)の間を攻めるともいえる弱文脈依存文法についてはやや詳しく解説する.
著者
迫 龍哉 宋 剛秀 番原 睦則 田村 直之 鍋島 英知 井上 克巳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.4_16-4_29, 2016-10-25 (Released:2017-01-14)

近年,命題論理の充足可能性判定(SAT)問題を解くSATソルバーの飛躍的な性能向上を背景に,問題をSATに変換し,SATソルバーを用いて求解するSAT型ソルバーが成功を収めている.しかしながら,最適化問題,解列挙問題などに対しては,SATソルバーを複数回起動する必要があり,求解性能が大きく低下することがある.この問題を解決する方法として,インクリメンタルSAT解法の利用が挙げられる.SATソルバー競技会のひとつであるSAT Race 2015で,このような解法を容易に実現するためのインクリメンタルSAT APIが提案された.本論文では,それを拡張したインクリメンタルSAT APIであるiSATを提案し,その応用について述べる.提案する拡張により,問題を簡潔に記述でき,Javaからの利用も可能になる.また,ショップスケジューリング問題,N-クイーン問題,ハミルトン閉路問題に対する実験結果を通じ,iSAT利用の有効性を示す.
著者
平原 悠喜 鳥海 不二夫 菅原 俊治
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_211-3_221, 2014-07-25 (Released:2014-09-10)

本研究では,公共財ゲームにおける進化ゲームのモデルを用いて,ソーシャルメディアが協調支配的となる状況を調べる.それにより,ソーシャルメディアが流行するメカニズムを明らかにする.協調支配的な状況とは,記事の投稿およびコメント等によるリアクションをする方がしないより得となる場合である.つまり,それは流行している状況と言える.現在流行しているソーシャルメディアが今後も流行し続けるのか,または新しいソーシャルメディアが流行し始めるのかを予想することは難しい.一般にソーシャルメディアが公共財の性質を持つことに注目し,協調支配的な状況を調べた先行研究はあるが,そこではネットワーク構造を完全グラフと仮定している.我々は,完全グラフと比べて現実のネットワークに近いと言われるWSモデルとBAモデルの2つを用いて,シミュレーション実験を行う.実験より,ネットワーク構造の種類によって,ソーシャルメディアの流行のメカニズムに違いが出ることを明らかにした.WSモデルを適用した場合,結果は完全グラフとほぼ同様になった.一方,BAモデルを適用した場合,結果は完全グラフとは異なるものになった.BAモデルのネットワーク構造はソーシャルメディアを流行しやすくする.
著者
一杉 裕志 松岡 聡 米澤 明憲
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.3_225-3_237, 1994-05-16 (Released:2018-11-05)

分散環境で稼働する,リフレクティブな並列オブジェクト指向言語RbClとその実現方法について述べる.RbClの処理系を構成するすべての実行時ルーチンは,言語のユーザが動的に変更・拡張可能である.つまり,並列実行やリフレクションを含むすべての言語機構が,固定された実行時カーネルとしてではなく,ユーザが置き換え可能な形で実現されている.記述言語との言語的共生と,直接実行のリフレクティブタワーという2つの概念によってこのような言語が実現可能になることを示した.
著者
浅井 拓己 大槻 麻衣 柴田 史久 木村 朝子
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.3_32-3_44, 2018-07-25 (Released:2018-09-25)

仮想現実 (Virtual Reality; VR)空間や複合現実 (Mixed Reality; MR)空間のような3次元空間では,仮想データを空間上に提示し,操作することが可能である.しかし,その操作のために必要となるメニューの3次元空間上の表示位置や操作方法についてはしばしば問題となる.既存研究では腕や手など身体上に表示する手法が提案されているが,項目数や配置に制限があった.本研究では,手を開くというジェスチャによって,非利き手に追随するメニューを手掌の前の空間に表示し,それを利き手で操作するというOpenPalmMenuを提案する.表示領域を空間とすることで身体上に表示するよりも多くの項目を様々なレイアウトで表示できるほか,手掌の傍に表示することで空間中の操作しやすい位置への移動や円滑な操作を可能にする.本研究では,実験によって提案メニューの有用性,および設計指針を確認した後,その結果を考慮して設計したメニューをモデリングアプリケーションに導入し,提案メニューの使用感に関する調査を行った.
著者
小山 裕己 坂本 大介 五十嵐 健夫
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_63-1_77, 2016-01-26 (Released:2016-03-26)

視覚的なデジタルコンテンツの編集,例えば写真の色補正などにおいて,パラメタ調整は最も基本的な作業の1つであるが,特に調整すべきパラメタが多数ある場合には,デザイン空間,すなわちパラメタ空間を探索することに多くの時間と労力が必要となる.このようなパラメタ調整に基づく視覚デザインの探索を支援するため,本論文ではまず,パラメタ空間を解析することでデザインの「良し悪し」の空間分布を推定する手法を提案する.この推定はクラウドソーシングを用いたヒューマンコンピュテーションによって生成されるデータをもとに行われ,この推定の結果,ユーザはgoodness functionと呼ばれる,パラメタ空間中の任意のデザインに対してその「良し悪し」の程度を計算する関数を得ることができる.本論文では更に,そのようにして得られるgoodness functionを利用した視覚デザイン探索支援のための2 つの新しいユーザインタフェースを提案する.(1) Smart Suggestion は比較的「良い」デザインを選択的に提示する機能である.(2) VisOpt Slider は「良し悪し」の分布を対話的に可視化(Vis:visualization)する機能を有するスライダであり,更にユーザが値を編集している最中により「良い」パラメタへと対話的に最適化(Opt: optimization)する機能も有する.また,本論文では提案手法を4つの異なるデザイン領域に適用した結果も報告する.
著者
江渡 浩一郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_140-2_157, 2012-04-25 (Released:2012-05-20)

グループによる共同作業を支援するシステムとして,メーリングリストとWikiを統合したコラボレーションシステムqwikWebを実装した.本システムは,人々が一般的に利用する電子メールをコミュニケーションの媒体として用い,そこにコラボレーションのためのシステムとしてWikiを組み合わせることによって,知識の集約・構造化をシームレスに行えるようにした.本論文では,コラボレーションシステムに関わる背景から,設計,実装に係る知見を述べる.
著者
田代 和浩 川村 隆浩 清 雄一 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.3_58-3_69, 2014-07-25 (Released:2014-09-25)

近年,多数のアイドルグループが人気を博しており,知名度や社会での影響力が大きくなっている.それに伴い,これらのアイドルの画像をポーズごとに分類し,鑑賞したいというニーズがアイドルファン内で高まっている.本研究は,アイドルのポーズを分析し,ユーザーに代わって分類してくれるエージェントを提案する.提案手法は大きくポーズ推定とポーズ分類の2つの処理に分かれている.ポーズ推定によって取得できる画像内人物の体のパーツ位置情報を特徴ベクトルとし,ポーズ分類によって8つのクラスへと画像を分類する.ポーズ分類の際,分類精度をより高めるため,Human Pose Guide Ontology(HPGO)を提案する.HPGOは人体構造に関する制約条件を内包し,ポーズ推定で得られた体のパーツ位置情報に補正を加えることで,分類精度を高める働きをする.評価実験により,提案手法の有用性を示し,実験結果について考察を行う.
著者
吉見 真聡 中村 涼 三木 光範 廣安 知之
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.4_244-4_250, 2012-10-25 (Released:2012-11-25)

近年,画像処理用のハードウェアとして用いられてきたGPUが汎用計算へと利用されるようになり,GPUを用いた多くのソフトウェアの開発や研究が盛んに行われるようになってきている.しかし,対象となるアルゴリズムをGPUを用いた並列計算で実現するには,メモリ構造などGPU特有の専門知識が必要となる.また,最近では高性能なGPUを提供するホスティングサービスが増えていることから,ネットワーク上の複数のノードのGPUを利用するための枠組みが強く求められている.そこで我々は,GPGPUによる並列プログラミングを容易に実現するため,Rubyを用いたフレームワーク『ParaRuby』を開発した.ParaRubyにより,Rubyプログラム中からGPU向けのプログラムを呼び出し,リモートノード上にて処理を行うことが可能になる.このフレームワークを利用して2つのアプリケーションの実装を行い,フレームワークの性能を評価した.
著者
篠埜 功 大堀 淳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_193-2_203, 2012-04-25 (Released:2012-05-20)

SML#はCとの高い相互運用性を持っており,インポート構文により,Cの関数をSML#から整数型などを変換することなく呼び出すことができる.本論文では,SML#プログラム中にCプログラムを直接書けるようにSML#言語の拡張を行う.Cプログラムの埋め込み用の特別な構文をSML#の宣言部分に追加し,その構文内にCプログラムを埋め込めるようにする.この拡張により,Cのプログラムを,トップレベルのみでなく,let式の宣言部分,structure,functor,local宣言等の宣言部分に書くことができるようになる.さらに,埋め込まれたCからSML#プログラム中の変数の値を参照する機能を追加する.
著者
楠本 真二 肥後 芳樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_29-3_38, 2012-07-25 (Released:2012-09-25)

本稿は,実証的アプローチに関するチュートリアルシリーズの一部として,ソフトウェアメトリクスの研究・実務における応用,特に研究成果の評価や組織におけるプロセス改善の評価での利用方法を中心に述べる.具体的には,評価目標に対してメトリクスを対応させるための枠組みの1つであるGQMパラダイム,評価対象のコンテキスト,著者等が過去に行った評価事例について紹介する.
著者
伏田 享平 飯田 元
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_61-1_74, 2012-01-26 (Released:2012-03-26)

ソフトウェア開発プロセスのモデリング(ソフトウェア開発に関する諸作業の実施に関する約束事等を明示的に記述すること)は,プロセス実行中の定量的なプロジェクト管理や,CMMI等に代表される定性的プロセス評価の枠組みにとって,とても重要である.本稿ではソフトウェアプロセスに関する最新の研究動向を踏まえつつ,ソフトウェアプロセスのモデリングと,プロジェクト管理やプロセス改善への応用について解説する.また,ライフサイクルプロセスやプロセスの評価・改善に関連する主要な標準規格や参照モデルについても紹介する.