著者
和田 哲明
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.588-594, 2009-11-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15

耐用寿命の予測及び製造工程での欠陥による初期不良の除去(スクリーニング)のために,短期間で実使用上ストレスを加速する加速信頼性試験が用いられている.この加速試験の考え方と能動部品(半導体),受動部品(実装基板),電池(リチウムイオン電池)での事例を紹介する.加速試験では,加速要因を明確にすると共に,加速限界を十分に注意しなければ誤った信頼性予測となることも示す.
著者
佐藤 孝司 纐纈 伸子 橘 克一 下村 哲司
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.9-17, 2019 (Released:2022-01-13)

近年,お客様の要求に柔軟かつ素早く対応しながらソフトウェア開発を進めるのに適したアジャイル開発が多く導入されている.アジャイル開発では,小さく分割されたソフトウェアの開発要件を重要なものから順に開発することで,実現したいシステムの要求に柔軟かつ迅速に対応可能になる.筆者らの組織では,一部のパッケージソフトウェアの開発を,従来のウォーターフォール開発からアジャイル開発のスクラム手法に切り換えてきた.本稿では,ウォーターフォール開発で長年培ってきた開発プロセスのメトリクスによる定量的管理をスクラム手法にも応用して,スクラム手法のスプリントレビューにおいてメトリクスによる判定を加えた定量的管理の導入事例を紹介するとともに,適用効果を考察する.
著者
杉本 旭 蓬原 弘一 染谷 美枝
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.174-183, 1998-03-10 (Released:2018-03-02)

安全はリスクを許容できる限界まで下げることであり, 最悪の状況を想定した危険性評価(リスク評価)をまず行う。しかし, その評価に基づく防護策は, リスクの低減効果(確率)を求めながらも, 防護策の故障時の防護機能維持, 具体的には故障時機械が停止できることの立証(安全立証)を要求している。ここでは, 安全の確保が, まずリスク評価(確率論)によって危険性を認識するが, 高リスクに適用すべき高安全性が, 防護の構造に対する立証性を求めていることを示し, そのための基本的な論理について説明する。
著者
倉地 亮
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.68-76, 2017 (Released:2019-08-07)

現在販売されている自動車の多くは,安全性が高く設計されている一方で,セキュリティ対策が施さ れておらず,攻撃者に対して脆弱であることが幾つかの研究事例により指摘されている.このため,近 年,自動車のサイバーセキュリティに対して注目が集まっている.自動車のような安全性に関わる制御 システムが攻撃されると,人命や安全に対して様々な危害を加えることが可能である一方,コスト効率 の高い制御システムであるために,情報セキュリティで行われるような対策手法をそのまま適用出来な いことが課題とされている.本論では,これらの自動車のサイバーセキュリティ強化に向けた取り組み を中心に,現状を概説する.
著者
松井 元英
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.162-167, 2016 (Released:2019-07-22)

レールは鉄道の重要部材であるが,その材料劣化要因の一つである転がり疲労のメカニズムは十分に 解明されたとは言い難く,国内外でその解明に向けた取り組みが精力的に実施されている.本稿では, その取り組みの一つとして検討している X 線フーリエ解析について,車輪との繰り返し接触による転が り疲労がレール表層部の金属組織に与える影響と併せて,実物レールに適用した例について紹介する. X 線フーリエ解析は転位密度等の塑性ひずみに関連の深い指標を見積もることが可能である.使用履歴 の異なる実物レールを解析したところ,転がり疲労を受けたそれぞれの金属組織の相違を反映するよう に転がり疲労の影響が小さいと思われるものについてはX線フーリエ解析からも同様の結果が得られた. また,総じて転がり疲労層の最表面から内部に向かって転がり疲労による材料劣化が和らいでいくこと が確認された.このようなことから,レール転がり疲労層の最表面から急激に深さ方向に変化していく 材料劣化状態の定量化への適用が期待される.
著者
山本 正宣
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.144-153, 2009-03-01 (Released:2018-01-31)

システム安全工学について,まずシステムを定義し,その安全性について一般的事項を記述する.システムの安全性を構築するための手順,システムの危険源分析手法のチェックリスト方式,FMEA,HAZOP,FTA及びETA,並びに安全性設計のハードウェア,ソフトウェア,伝送系及び計算機を使用する場合の設計手法,評価手法について解説する.さらに鉄道信号システムを事例とした安全性の構築と評価の概要を記述する.
著者
平本 匡寛 望月 寛 高橋 聖 中村 英夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集 2005_秋季 (ISSN:24242357)
巻号頁・発行日
pp.29-32, 2005-11-18 (Released:2018-01-31)

ATS地上子のQ値管理は、安全性確保のためには必須の要件である。現在、Q値管理は沿線に配置されたATS地上子を定期保全によりQ値測定装置で計測している。また、省力化を目的として車上からATS地上子のQ値を検測することもおこなわれているが、レベル管理が主体であり正確なQ値計測と対応性の点で問題がある。提案する手法は、車上側のアンテナ(車上子)の電流値検測によりQ値を算出するもので、地上子対アンテナ間の距離や相互誘導係数値によらない安定した計測ができる。
著者
土肥 正
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.2-9, 2014-01-01 (Released:2018-01-31)

ソフトウェアエージングと呼ばれる現象は30年程前からその存在が認識されていたが,発生メカニズムや予防策であるソフトウェア若化の研究が盛んに行われるようになったのは2000年頃からである.最近では,ソフトウェアエージングと若化の研究発表が国際ワークショップで定期的に行われるようになり,研究者や実務家のコミュニティも徐々に拡大しつつある.我が国の信頼性研究の拠点でもある日本信頼性学会の学会誌において,「ソフトウェアのエージングと若化」の特集号を企画し,現在の研究動向を各分野のエキスパートに執筆して頂いたことは大変貴重な機会である.特集号の一番バッターでもある本稿では,各種応用領域において展開されているソフトウェアエージングと若化に関する研究の基礎知識として,当該研究分野の歴史的な経緯を概観した後,用語の定義や事例紹介を行い,以降に続く4編の解説記事を理解する助けとしたい.
著者
村岡 哲也 池田 弘明
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.106-115, 2013-03-01 (Released:2018-01-31)
参考文献数
23

最近では,PCの普及によりディスプレイを使わない生活はありえない.しかし,眼の安全性を考慮して,ディスプレイの使用による眼精疲労が及ぼす作業への影響に関しては,自然科学としての観点から行なわれた研究は殆ど見られないようである.そこで,筆者らは眼精疲労に基づく目の焦点調節機能(視機能)の低下と可読性の劣化に焦点を当て,測定法提案や試料測定を行い,更に,可読性劣化の要因である作業効率(仕事率)の低下,誤読文字の増加などを測定・分析し,必要なパラメータをデバイス評価の定量的データとして収集・評価することを試みた.なお,本文では眼精疲労の物理的要因を調べるため,疲労による毛様体筋の温度上昇を測定して,ほぼ1℃程度の温度上昇が疲労に大きな影響を齎すことも明らかにした.試料はCRT,冷陰極管をバックライトとしたTFT-LCD,および白色LEDマトリックスをバックライトとしたTFT-LCDの3種類である.上述の結果を相対評価することにより,ヒューマン・マシン・インターフェースとして良好な特性を持ち,目に安全な型式のディスプレイを選別する方法を明らかにした.
著者
横川 慎二
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.135-147, 2019 (Released:2022-02-03)

複雑な構造を持つシステムにおいては,しばしば“創発性”の発現による障害が観測される.この創発的不具合は, FMEA や FTA などの従来リスク分析手法を用いた記述や評価が難しいとされている.本研究では,自動車のリコール情報に関するテキストマイニングや多変量解析を用いた分析を通じて,システムの創発的不具合の構造と特性について調査する.また,機能共鳴分析法を用いて不具合構造の可視化と数量化を行い,グラフィカルモデリングやクラスタ分析による構造分析と,名義ロジスティック回帰分析による要因分析を実施し,設計時に創発的不具合を抑止する方策について議論する.
著者
小美濃 幸司 舟津 浩二
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.283-286, 2009

従来,鉄道は安全対策として,絶対に事故を起こさないための技術開発を進めてきたが,近年,万一の事故時にも人的被害を最小化するための研究開発,特に鉄道車両の衝突安全性にも関心が高まっている.鉄道車両の衝突安全性を検討するにあたり,車両自体の挙動と乗客・乗務員の衝撃挙動の両面を考慮に入れる必要がある.鉄道車両(特に車体の構造)については,衝突エネルギー吸収による衝撃の緩和と,生存空間確保の両立が課題となる.一方,乗客・乗務員の衝撃挙動については,車内設備や他の乗客等との衝突による傷害を防ぐことが課題となる.これらの課題解決のため,車体構造については破壊試験とコンピューターシミュレーション,乗客の挙動についてはダミー人形の衝撃試験とコンピューターシミュレーションを活用している.実験結果とシミュレーション結果は,相互に比較・検証されている.今後の安全性評価では,車体構造と乗客を連携させた衝撃挙動解析も重要になっていくと考えられる.
著者
河野 翼 廣瀬 英雄
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.41-44, 2012

パンデミックによる感染モデル,ソフトウエアの故障成長モデルとして用いられるコンタクトモデルの確率分布に対して,パンデミック初期,あるいは故障がはじまって間もない時期の観測データを用いて,パンデミック終息時の予測,あるいは故障終息時の予測を行なう際,統計的打ち切りモデル(truncatedモデル)を用いることがある.このとき,終息予測値は低めに見積もられることがあり,このとき災害対策上は危険側に予測されることになる.ここでは,このような推定現象についての考察を行ない,より正確な予測法について考える.故障の背後分布にワイブル分布を仮定した場合について,truncatedモデル,ワイブル微分方程式モデル,SIRモデル間での予測結果の比較を行う.
著者
井原 廣一
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.348-356, 1998
被引用文献数
2

近年の工学技術の急激な革新は、医療機器・システムの研究開発を促進し、最近では、医療の場における診断治療と共に医療機関経営においても、計算機をともなった医療機器・システムなしには高度な診療行為が行われがたいといっても言い過ぎでない。ともすれば、医療機器・システムの性能および機能競争に目を向けがちで、医療利用の観点から、特別に重要である信頼性についての議論が少ないようである。医療機器・システムの特性をもとに、これまでの工学の場での信頼性の本質を再考することにより、信頼性の持つ意味がより深まり、工学医療の接近がより進むと思われる。
著者
猿渡 秀郷
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.23-28, 2017 (Released:2019-08-07)

リチウムイオン電池(LIB: Lithium Ion Battery)は他の電池に比べエネルギー密度が大きいことが最大 の特長であり,その負極には一般的に炭素材料が用いられる.この炭素材料のかわりにチタン酸リチウ ム(LTO)を負極に用いた場合,エネルギー密度は低下するものの,そのほかの特性でユニークな性能 を有する電池とすることができる.本稿では LTO 負極を用いた LIB の安全性と信頼性を中心にその特 長とそれを活かした応用について紹介するとともに,実際に電池を長期使用するために必要なオンサイ ト診断技術について説明する.
著者
岡村 寛之 土肥 正
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-15, 2014-01-01 (Released:2018-01-31)

ソフトウェアエージングおよびソフトウェア若化は,メモリリークなどに代表されるソフトウェアの経年劣化による性能低下や障害発生現象を表す.ソフトウェア若化は信頼性工学でよく知られた予防保全に例えられ,最適なソフトウェア若化方策を決めるためのモデルが数多く提案されている.本稿では,ソフトウェア若化モデルの紹介と,その拡張の方向性について言及し,今後の発展に関する展望を述べる.
著者
氏田 博士
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.529-541, 2004
被引用文献数
2

安全性向上のために組織として技術的に考慮すべき内容は,安全文化や関連する組織過誤また倫理などの管理的思想および深層防護やリスグ概念などの工学的思想とに分けることができる.さらに安全確保には,社会側から組織や技術システムヘ働きかける仕組みが不可欠である.ここでは安全目標設定の考え方,安全に対する法律および規制・規格の機能,再発防止のための事故調査やインシデント分析の仕組み,等について述べる.さらに,組織から社会への視点も大切であり,リスク認知,リスクコミュニケーション,リスク受容について最近動向や個人的見解を述べる.
著者
黒沼 友恵 高橋 聖 中村 英夫 池田 岳雄 森 昌也 今村 覚
出版者
日本信頼性学会
雑誌
信頼性シンポジウム発表報文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.71-74, 2013

システム開発にはプロトタイピングという手法がある。この手法は、最低限の機能や操作画面を実装した試作品(プロトタイプ)の作成を繰り返し行い、ユーザに確認してもらう。これをシステム開発初期のシステム発注側と開発側で共に行う要件定義段階で行うことで、要件の漏れや食い違いを防げる。また、本来システムが完成した後でしか確認できないユーザインタフェースを初期に確認することもできる。この結果、最終段階での手戻りを防げるといった効果が認められている。これに対し本研究では、開発側に仕様を提案する前の仕様検討段階においてプロトタイピング手法を適用した場合の効果を検討した。