著者
鈴木 広隆
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.73-76, 2007

昼光照明は、エネルギー削減や健康性などの観点から、住宅にも積極的に導入が進められるべきものである。頂側窓による採光は、建て詰まった地区における採光経路の問題を解決可能であるが、視点に近い高さにハイライトが発生するため、グレアとなったり、相対的に他の部分が暗くなってしまうなどの問題がある。本研究は、頂側窓により採光が十分に確保された住宅の内部に、カテナリー曲線に沿ってスクリーンとなる布を配置し、これにより昼光の変動による趣きを確保しつつ、住宅内部の各部分に一定量の昼光を導くことを試みるものである。
著者
今間 俊博 斉藤 貴志 井草 拓
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.199-202, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

人間の視感覚には, 「メンタルモーション」のように非線形の要素が存在し, そのためアニメーション映像の制作においては, 物体のパースペクティブや動作のタイミング, 加速度といったアニメーションを構成する各要素が意図的に誇張・変形される場合がある.これらの誇張・変形量については, 感覚的に理解させる事は出来ても, これまで論理的, 数値的に履修させる事は難しかった.本手法では, 既存の2次元アニメーション作品からアニメーションの動きデータを抽出し, その抽出データを用いて3次元アニメーションで同様なシーンを構成し, その比較を行っている.この手法によって, アニメーションの持つ独特な「動きの質感」を理解させるための教育的な試みを紹介する.
著者
佐久田 博司 大吉 大輔 河原 宏俊 矢吹 太朗
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.5-8, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
10

中高年齢の図形認知能力に関する調査は, 被験者の職業や環境による個体差が大きく, 統計的な考察のためには, 同一クラスに属する大学生などの群よりも多くの被験者が必要で, 個別の条件吟味が必要になると思われる.本研究は, 特に理工系の職業で同一部門に勤務している男女のエンジニアを対象に, MCTを実施し, 年齢別の考察を行った.勤務先などで実施するに当たっては, 通常の紙筆の試験が難しいため, モニタ上で行う試験を改良し, データベースを利用するなどによって, 試験環境の制約を極力除くこととした.また, 従来の紙筆によるMCT試験結果と比較するために, 大学生の男女による図学学習の前後の得点比較を行い, 本実験システムによる結果の妥当性を検証した.
著者
蛭子井 博孝
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.3-8, 1995 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

Descartes' oval is defined as mr1 + nr2 = kc by using bipolar coordinates. Where, if m=n, it is ellipse. According to this definition and a number of the properties, it can be said that the Descartes' oval is essential extension of ellipse.This time, the minor axis of oval that has the similar properties to those of the minor axis of ellipse is found. This minor axis is the segment connecting the middle point 0 of the major axis (the axis of symmetry) of oval and the point Np on the oval, which is at the shortest distance from the point 0. The length of this minor axis is expressed by α√1-eLeR, where α is a half of the length of the major axis, and eL and eR are left and right eccentricities, respectively. As for this minor axis, its proof and a number of the properties are discussed.Next, the method of defining ovaloid which is convex, closed curved surface in space by extending the oval on plane is found, therefore, it is reported. This ovaloid has, as the contours of the orthographic projection from three directions, circle, Descartes' oval and a fourth order curve like ellipse. Further, the parametric expression of this ovaloid is derived. In this way, the new properties of oval are able to be added, therefore, it is reported.
著者
ヘイムダール リセロッテ 兼松 祥央 鶴田 直也 茂木 龍太 三上 浩司 近藤 邦雄
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, 2019

ホラー作品において,恐怖の対象となるキャラクターなどをあえてはっきり映さない演出がおこなわれることがある.これは恐怖の対象がはっきりと見える場合と比べ,視聴者に対してより強い恐怖感を与えることができる.また,この「恐怖の対象を隠す演出」をおこなった場合でも,ストーリー上のある時点で恐怖の対象を登場させることで,視聴者の恐怖感をより高めることができる.その際に重要なのは,カメラワークをはじめとする登場のさせ方に関する演出や,登場させるタイミングである.そこで,本研究では視聴者が知覚する恐怖のレベルの影響を明らかにすることを目的とした.そのため,既存作品を用いてホラー作品における恐怖を演出するためのタイミングやカメラワークを分析した.
著者
金子 颯介 辻合 秀一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2-3, pp.11-21, 2014 (Released:2015-09-01)
参考文献数
3

我々が生きる現代はコンピュータ技術が日々進歩している.新しい技術に挑戦することは,新しい発見につながることはもちろん,今まで以上にエンターテイメント性を含む作品を制作することができると考えインタラクティブアートにおいて調査していく中で出会ったvvvvという新しいプログラミングツールについてまとめ,初心者向けのマニュアル作成を目指した.そしてその過程で得た知識を用い,vvvvでオリジナルのプログラムを組んでみる.マニュアル作成とオリジナルプログラムの作成、この2点をメインの研究内容とする.
著者
高 三徳 吉田 貞彦 桜井 俊明 五十嵐 三武郎
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.38, no.Supplement1, pp.129-134, 2004 (Released:2010-08-25)
参考文献数
8

複雑な自由曲線・曲面の高品質化デザインのためには, 形状の滑らかさを定量的に正確に評価する手法が不可欠である.本論文では, 自由曲線・曲面の連続性の理論および実際の滑らかな形状の設計条件を述べ, 3次元CADソフトシステムに取り込まれている曲率分布とハイライトによる滑らかさの評価方法について考察を行った.また, 曲率分析法, 環境マッピング法, ゼブラマッピング法などの評価方法をマウスボディーモデリングへの応用を試みた.これらの方法は対話型設計にチェック機能として有効であるが, 設計のプロセスと連動させ, 評価と修正が自動的に行うことによって, 設計作業時間が大幅に短縮されることが期待される.
著者
太田 英一 南 和一郎
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.29-35, 1987 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.42, no.Supplement2, pp.57-62, 2008 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

彫刻とは, 材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.線遠近法が平面に奥行き概念を形成するよりも古くから, 彫刻は立体であり続けている.しかし, 彫刻が3次元であるという自明の事実と, 彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには, 奥行き概念を平面上で獲得する絵画空間の逆説性にも似た, 特異な立体認識の仕組みがある.つまり, 立体概念とは, 単なる知覚以上の内容を意味し, その点では, ある面主観的な認識といえる.だが, それは2次元の平面に投影された線の感覚を必要とし, それは技術的な検証が可能である.ただし, 彫刻における線の感覚は, 物性を伴う実体に対する操作を直接導くもので, そこに彫刻の独自性がある.つまり, 彫刻の立体概念には, 時間, 行為といった形状とは別種の要因が密接に関係しているのである.
著者
友枝 明保 小野 隼 杉原 厚吉
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.3-9, 2016 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18

クレーター錯視やホロウマスク錯視は,知覚する立体の凹凸が反転して見える錯視として有名である.クレーター錯視では,照明がもたらす陰影によって凹凸が反転すること,ホロウマスク錯視では,凹凸の反転に加えて,観察者の視点位置の変化に伴った立体の回転運動が錯視として観察されることが知られている.「矢印の幻惑」(友枝・杉原,2012)は,計算によって得られたくぼんだ構造を持つ矢印型の新しい錯視立体であり,クレーター錯視やホロウマスク錯視と同様の錯視現象が観察される.さらに,「陰影付き矢印の幻惑」(友枝・小野・杉原,2013)は,適切な陰影を与えることで,平面に描かれた矢印と錯視立体を同一のデザインとして見せることに成功している.本稿では,これらの作品を創作する数理的な方法として,くぼみ構造を持つ矢印型の錯視立体を構成する幾何計算,および,凹凸復元の手がかりとなる各面の陰影を計算する方法について解説する.
著者
牧 博司
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement, pp.135-138, 2002 (Released:2010-08-25)
参考文献数
3

教室は密室であってはならないという立場で, 筆者担当の「機械製図II」の科目につき, 機械の分野の図面の採点例を紹介し, 筆者の教育哲学を述べたものである.機械製図の教育がトレーシングや物真似教育である限り, ほとんど同じ作品が提出されるから採点結果に大きな差の付きようがない.すなわち, 学生の到達度の判定が粗くなってしまう.到達度の判定に最適な出題は, 組立図を与えて指定した部品の部品図を描かせることである.あるいは部品図を与えて組立図を描かせることである.本資料は前者の出題につき2001年度の採点例を紹介したもので, 採点基準とその結果を示し, 会員の参考に供するものである.
著者
大塚 礼穂 横山 弥生
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.41, no.Supplement1, pp.41-46, 2007 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

本研究は, 数列をCGにより視覚化し, さらに作品へと展開した例を示すものである.従来, 形態の生成において数列を利用することは稀であったが, 数列を視覚化した結果, その美しさには目をみはるものがあった.数列を形の変化の規則とし, 回転を主としたアフィン変換を用い, 動きを与えることで新しい形を生み出す.また, CGを利用することで複雑な形態や図形のシミュレーションを短時間で行うことができた.さらに, 作品への展開には, リズミカルで変化のある美しい形の生成も可能となった.完成した形態は, 基本図形のイメージとは異なる美しさを持ち, 立体への展開においても予想以上に美しい形態生成の方向性が示唆された.
著者
吉澤 大輔 横澤 肇
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Supplement1, pp.45-48, 2006 (Released:2010-08-25)
参考文献数
4

樹木は, 樹種によって異なる遺伝的形質とその樹木が存在する周囲の生育環境によって生長が決定され, 生育環境に適した樹形を形作る.樹木の生長要因には, 光, 重力, 風, 温度, 水, 地質などが挙げられる.本研究では, その中で光環境が樹木に与える影響に注目して生長シミュレーションを行うことにより, 生育環境に適応して生長する樹形の多様性を表現する.特に, 樹木の経年変化と下枝の枯れ上がり, そして, 複数本の樹木が密集した条件における, 樹木間の相互作用による特徴ある樹形の形成を表現する.
著者
井堰 絵里佳 伏見 清香
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.9-16, 2017 (Released:2018-06-01)
参考文献数
12

スマートフォンのディスプレイ上において,「視認性」と「理解度」の高いピクトグラムを用いた解説支援Webサイトを制作する.そのために第一の目的として,スマートフォン上でのピクトグラムの使用サイズにおいて,「視認性」と「理解度」が高くなる「図の細かさ,精細さ」を明らかにする.第二の目的として,その結果を反映したピクトグラムを用いたスマートフォン用解説支援Webサイトを制作し,その有効性を明らかにするために,博物館において評価実験を行う.その結果,「視認性」と「理解度」が高くなる「図の細かさ,精細さ」は,「図」が細い方に偏る傾向があることが明らかになった.
著者
太田 高志 藤堂 英樹 加納 徹
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, 2019
被引用文献数
1

本研究はデジタル画像から多色刷り版画を作成することを試みたものである. セルフィーやプリクラなど自分自身の画像を工夫して撮ることの流行とクールジャパンと呼ばれるような日本文化への注目に触発されて,筆者らは自身の画像が浮世絵風に変換されると面白いのではないかと考えた.また,実際に多色刷りの版画として紙に印刷することができればさらに面白く教育的な体験を与えることができるのではないかと考えた.実現にあたって,基となる写真を画像処理により浮世絵風な画像に変換し,さらに色別に分解することによって版木の3 Dデータを用意した.これを3 Dプリンターによって印刷して版木を作成することができる.作成した版木を使って実際に多色刷りの作品を紙に印刷することができたことから,こうしたアプローチが可能であることを確認することができた.
著者
近藤 邦雄 岡崎 真知子 土井 章男 松田 浩一
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.35, no.Supplement, pp.29-34, 2001 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9

モーションキャプデータは、人の動きをそのまま測定するため、リアルな動作データが得られるが、冗長な情報を含んでいる場合が多く、動作の修正や変更には多くの手間と時間が掛かる。本研究では、測定した動きの特徴をそのまま生かし、冗長な情報を削減する手法を提案し、モーションキャプチャデータをユーザーにとって扱い易いものとすることを目的とする。そこで、モーションデータのxyz軸の角度データに対し制御点削減を行なう手法を提案する。この手法を用いて削減したモーションキャプチャデータの動作の比較や検討をしたした結果、提案手法を用いて削減されたモーションキャプチャデータは削減前と比較するとほぼ同等の動きをすることが確認された。また、特徴となる動きのみを抽出するため、動作強調法に対し有効であることが確認できた。この削減手法の特徴は以下の通りである。 (1) 測定した動きの特徴を生かした削減が可能である。 (2) 削減の割合をユーザがコントロールできる。 (3) データ量の削減が実現できるので大量の動きのデータベース構築に有効である。 (4) データ量を削減することによって、動きの修正が容易に行なうことができる。 (5) 削減したデータは動作強調法に対し有効である。提案手法により、元の動きの特徴を保持しながらデータ量は約50%に抑えることが可能となった。
著者
福江 良純
出版者
日本図学会
雑誌
図学研究 (ISSN:03875512)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-12, 2010 (Released:2017-08-01)
参考文献数
6

彫刻とは,材料の素材が持つ3次元の立体性を本質的な形式とする芸術である.しかし,彫刻が3次元であるという自明の事実と,彫刻を立体として捉えるということは同一ではない.そこには,平面において奥行き概念を獲得する絵画空間にも似た,立体認識の特異な仕組みがある.ただし,立体概念とは単なる知覚以上の内容を意味し,感性上の現象であるという点で主観的な認識と言える.だが,それは2次元の平面に投影された線の認識を必要とし,それを手掛かりにとすることで技術的に検証が可能である.ただし,彫刻における線の意味は,所与の実体である材料に対する操作を直接導く理念の現れでもあり,そこに彫刻の独自性がある.つまり,彫刻の立体概念には,単なる形状とは別種の,制作過程,素材の物性といった複合的要因が密接に関係しているのである.