著者
市川 俊英 岡本 秀俊 藤本 能弘 川西 良雄 壼井 洋一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.6-16, 1987-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1 7

1982年4月から1983年5月にかけて,研究室内とオリーブ樹を取り囲む野外網室(3×3×3m)を中心とする野外のオリーブ植栽地でオリーブアナアキゾウムシ成虫の存在場所と行動について調査した。この間に確認された成虫の行動を不活動,静止,歩行,摂食,マウント,交尾および産卵状態に大別した。野外網室での調査によると,長命な成虫の活動期は概略4月から10月までで,おもに夜間オリーブ樹上で活動し,日中には大部分が不活動状態で発見された。ただし,晴天の日中には大部分の成虫が枯草で被覆したオリーブ樹根元周辺の地面(被覆地)で発見され,マウントや交尾を繰り返していた雌雄や根元で産卵中の雌も少数ながら認められた。また,曇天の日中には夜間から引き続きオリーブ樹上にとどまっている個体と裸地で発見される個体が多かった。成虫は野外網室内で越冬可能であることが確認され,11月から3月までの越冬期の成虫は全般に不活発で,被覆地に潜伏する個体が日中,夜間を通じて多かった。しかし,成虫の活動が完全に停止したわけではなく,地面を移動する個体がかなり多く,越冬期の初期と後期にはオリーブ樹に登る個体もかなり多かった。
著者
西東 力 鈴木 誠
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.232-236, 1982-11-25
被引用文献数
2 9

1980∼1981年に静岡県伊豆地方でツバキシギゾウムシの生活史を調査した。成虫は5月下旬から7月下旬まで観察され,6月にツバキ種子内に産卵した。ふ化幼虫は種子を摂食し,約1ヵ月で4齢まで発育した。7月下旬から老熟幼虫は果実に穴をあけて脱出し,ツバキ樹下の土中で幼虫越冬した。<br>本種は伊豆半島の東部と南部で多発生していた。<br>幼虫は昆虫病原糸状菌<i>Metarhizium anisopliae</i>および<i>Beauveria tenella</i>に対して高い感受性を示した。土壌殺菌の有無は菌の病原性に影響を及ぼさず,いずれの菌も土中で増殖することが示唆された。以上のことから,これらの菌を土壌施用することによってツバキシギゾウムシの微生物的防除ができるものと考えられる。
著者
小野 知洋 高木 百合香
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.325-330, 2006-11-25
被引用文献数
12

オカダンゴムシは交替性転向反応を示すことが知られている.この反応の機構として,左右の脚にかかる負荷を均等にするというBALM仮説が知られている.しかし,直線歩行路とジグザグ歩行路を歩かせると,直線歩行路においてより早く方向転換や脱出が見られることから,生得的な行動パターンとして存在することを示していると思われた.一方,走触性にもとづく歩行においては,壁面からの離脱はいつでもできる状況でありながら,かなり壁面に沿った歩行を行うことが示された.このような行動パターンの適応的な意味について,T字路が連続する歩行路を用いて,自発的歩行と逃避的歩行で比較したところ,逃避的な歩行において,交替性転向反応を示す比率が高いことがわかった.また,逃避的歩行の場合には歩行速度が迷いことがわかった.これらの事実から,交替性転向反応は天敵などからの逃避の際に有効な行動であることが示唆された.
著者
秋野 順治 山岡 亮平
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.265-271, 1996-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
7
被引用文献数
8 17

クロヤマアリFormica japonicaでは同巣仲間の死体を巣外へ運び出す行動が認められるが,このような搬出行動は,死体体表面に含まれるオレイン酸によって引き起こされ,死後48時間以上経過した死体に対して顕著に認められた。オレイン酸は,生きた働きアリの体表面および体液中には殆ど含まれないが,その含有量は死後の時間経過に伴って変化し,死後48時間で急激に増加した。一方,体液中に含まれるトリグリセリドの含有量は,死後48時間で急激に減少し,その構成脂肪酸はオレイン酸であった。また,死亡直後に電子線を照射した場合には,体液中および体表面におけるオレイン酸の増加,および体液中のトリグリセリドの減少のいずれも認められない。これらの結果から,クロヤマアリの死体認識シグナルとして作用するオレイン酸は,働きアリの死後,体液中に含まれるトリグリセリドの酵素的加水分解反応によって生じるものと考えられる。
著者
高木 正見
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.157-163, 1976-09-25
被引用文献数
1 8

アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きを説明するため,野外調査といくつかの室内実験を行なった。野外調査は,福岡市東区箱崎にある温州ミカンほ場で,1972年と1974年に行なった。<br>1. アゲハの蛹化は毎年5月から11月にかけて連続的にみられ,アオムシコバチもこの期間中ずっと活動していた。アゲハ蛹密度は8月中旬以降急に高くなった。アオムシコバチは,少しの遅れはあったがこれにすぐ反応し,高い寄生率を示した。しかし,その後他の天敵による死亡が増加してアオムシコバチの寄生率は低下した。<br>2. このアオムシコバチの寄生率が低下した時期でも,アオムシコバチのアゲハ蛹攻撃率は低下しなかった。またこの時期には,アオムシコバチが攻撃した蛹から他の寄生者が脱出してきたり,その蛹がアリに捕食されるのを観察した。<br>3. 野外で採集したアゲハ蛹1頭から,平均156.2頭,最高337頭のアオムシコバチが羽化してきた。<br>4. 野外百葉箱でのアオムシコバチ雌成虫の寿命は,8, 9月に羽化したもので平均1ヵ月であった。10, 11月に羽化したものは,3ヵ月の寿命のものが多く,寄主体内で越冬したアオムシコバチが翌春羽化してきた時期まで生存していたものもあった。<br>5. 野外ではアゲハの5令幼虫や前蛹の上に乗っているアオムシコバチが観察されたが,アオムシコバチが寄生可能なアゲハのステージは蛹期のみで,5令幼虫期・前蛹期のアゲハには寄生不可能であった。<br>6. アゲハを寄主としたときのアオムシコバチの発育零点は12.2°Cで,卵から羽化までに要する有効積算温量は213.7°C日であった。この値をもとに計算した福岡地方でのアオムシコバチの年間世代数は9世代であった。<br>7. 卵巣成熟はsynovigenicな型を示し,給蜜することにより,平均約140の成熟卵を保有した。<br>8. 無給蜜の場合,1雌当り産仔数は平均189.3,最高311で,この資料をもとに計算したこの蜂の内的自然増加率は日当り0.28であった。<br>9. 以上の結果をもとに,アゲハ蛹期の天敵としてのアオムシコバチの働きについて考察した。
著者
Yamazaki Kazuo Imai Chobei Natuhara Yoshihiro
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
Applied entomology and zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.215-223, 2000-05-25
参考文献数
30
被引用文献数
5 44

An exotic leaf beetle, Ophraella communa, originating from the Nearctic region, is a multivoltine oligophagous herbivore and was discovered in Japan in 1996. The host-use of the leaf beetle in the field with adult feeding choice and larval performance on some asteraceous plants in the laboratory were surveyed. O. communa showed a hierarchy of food-plant use: The leaf beetle first used Ambrosia artemisiifolia, on which adults preferred to feed and larvae developed well, and its population increased markedly until defoliating this food-plant. Then, the leaf beetle migrated to Am. trifida and Xanthium spp. In the laboratory, Am. trifida was not as preferred by adults as Am. artemisiifolia, although larval performance on Am. trifida was superior. Xanthium was inadequate both in terms of adult feeding choice and larval performance. Neither eggs nor larvae were found on the plant species on which no larvae completed their growth in the laboratory. These findings suggest that the exotic beetle has great mobility and host-discriminating ability. The finding, that Am. trifida was less used than Am. artemisiifolia despite Am. trifida being suitable for larvae, may be attributable to the fact that adutls tend to oviposit on Am. trifida subsequently to feeding.
著者
鷲塚 靖 山岡 正佳 鈴木 竜矢
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.240-246, 1987-08-25
被引用文献数
1

阿蘇山のミヤマキリシマ群落(第1地点),ミヤマキリシマ,アセビ群落(第2地点),スギ単純林とクロマツ,ヒノキ,スギ,アセビ,ノリウツギ混交林(第3地点)で,P, N, K, Ca, Mg, NaとBHCの分布を調査した。検体は,L, F, H層,植物,ミミズ類,昆虫類,ネズミ類などであった。そのおもな結果はつぎのとおりである。<br>1) 第3地点のF層と第2,第3地点のH層に含まれる6元素の順位はCa>Mg>Na>K>N>Pであった。<br>2) 草本類のそれらの順位はK>N>Ca>Mg>Na>Pの順であり,樹木類のそれは,N>Ca>K>Mg>Na>Pであった。<br>3) 昆虫類のそれは,N>K>P>Na>Mg=Caであった。<br>4) ミミズ類のそれは,N>Ca>K>Na>Mg>Pで,アカネズミでは,N>K>Ca=P>Na>Mgの順であった。<br>5) 草本類におけるN, P, Mgの含量は,火口に近づくにしたがって高くなった。<br>6) Ca, Naの移動と分布は,食物連鎖による移動と考えられ,前者が緑色植物,後者が食植性昆虫までその含量が減少し,その後の移動でこれらは増加した。<br>7) BHCは,L層が最も高く,ついでF層,H層の順になり,樹木類に含まれるそれは,火口に近づくにしたがって,その含量が減少した。
著者
Shin-ya Ohba
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
Applied Entomology and Zoology (ISSN:00036862)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.447-453, 2009-08-25 (Released:2009-12-16)
参考文献数
29
被引用文献数
8 24 8

A number of descriptive reports suggest that Cybister larvae feed on tadpoles, fish, and aquatic insects; however, no quantitative study on their feeding habits has been reported. In order to elucidate the feeding ecology of C. brevis larvae, field observations and laboratory experiments were carried out. In the field, all C. brevis larvae fed on invertebrates, such as insects and isopoda, but did not eat vertebrates, such as fish and anuran larvae. A rearing experiment demonstrated that all C. brevis larvae provided with tadpoles died. Larvae provided with Odonata nymphs had a longer total body length than larvae reared with a mixture of tadpoles and Odonata nymphs. In addition, larvae of C. brevis could search for and eat motionless Odonata nymphs, but all larvae died from starvation when they were supplied with motionless tadpoles. These results suggested that C. brevis larvae mainly preyed upon invertebrate animals and did not eat vertebrate animals, such as tadpoles and fish.
著者
立川 周二
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.74-75, 2007-02-25