著者
松浦 博一 内藤 篤 菊地 淳志 植松 清次
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.37-43, 1992
被引用文献数
1 2

千葉県館山市とその近郊の安房郡和田町において,12月中旬に野外と無加温ガラス温室にハスモンヨトウの幼虫と蛹を放飼し,越冬の可能性について検討した。<br>1) 暖冬の1986&sim;1987年と1987&sim;1988年の冬に行った試験では,館山市,和田町ともに放飼した幼虫の一部が3月下旬に生存しているのが確認された。生存率は若齢が中&sim;老齢に比べて高かった。しかし,平年に比べて寒冷であった1985&sim;1986年の冬に行った館山市の試験では,幼虫は3月下旬まで生存できなかった。<br>2) 和田町での幼虫生存率は,館山市のそれに比べて高かった。和田町は北西面が山で囲まれて寒風が遮られ,南東面が開けた日だまりのふところ地である。有効温度が0.9&deg;C以上の日が越冬試験期間の74%を占め,実験から得た有効温度についての越冬可能条件が満たされていた。日最低気温の極値も-3.5&deg;Cで,低温致死温度と考えられる-5&deg;Cに至らなかった。このような地形条件の場所が野外越冬の可能地と考えられる。<br>3) 冬季における大気温の日当り有効温度(<i>X</i>)と幼虫生息場所の日当り有効温度(<i>Y</i>)との間には,<i>Y</i>=0.54+0.68<i>X</i>(<i>r</i><sup>2</sup>=0.7303)の関係式が得られた。<br>4) 無加温ガラス温室に放飼した3, 4齢幼虫は3月下旬までに31%が羽化し,28%が蛹で生存した。冬季の死亡率は41%で生存率は高かった。3月下旬の生存蛹は,その後の加温飼育ですべて正常に羽化した。<br>5) 無加温ガラス温室内に設けたビニールハウスの中へ放飼した3, 4齢幼虫は,無加温ガラス温室へ放飼したそれらに比べて羽化時期が早く,死亡率も低かった。<br>6) 無加温ガラス温室の地中に埋めた蛹は,2月中旬に20&sim;40%生存したが,これらの蛹はその後の加温飼育ですべて奇形成虫となった。
著者
宗林 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-44, 1960-03-30
被引用文献数
7

25属34種のアブラムシについて口針が植物組織にそう入される状態を観察した。その結果の果要は次のとおりである。<br>1) 口針を表皮組織にそう入する際,ほとんどすべての種類では,表皮細胞間または細胞内を貫通するが,あるものは気孔からそう入し,同一種でも一定しない。しかし,カンショワタアブラムシ<i>Ceratovacuna lanigera</i> ZEHNTNER(ススキ)およびマツノハアブラムシ<i>Schizolachnus orientalis</i> TAKAHASHI(アカマツ)の2種は常に気孔からのみそう入する。<br>2) 口針が植物組織内に進入するときには一般に細胞間を通るが,細胞内を貫通することもしばしばあり,結晶体を含む細胞も容易に貫通する。厚膜組織では細胞内を貫通することはまれで,細胞間のみを通るか,あるいはこの組織を避けて柔組織を通る場合が多い。しかしマツノハアブラムシ<i>Schizolachnus orientalis</i> TAKAHASHIでは,常にアカマツ針葉組織細胞内のみを貫通する。<br>3) 口針しょうは細胞間を通過する部分よりも細胞内を貫通した部分に顕著で,また表皮と口ふんの先端との間,あるいは葉しょうと茎との間の空気中にも形成される。口針しょうは口針内の気密を保つためにも役だつものと思われる。<br>4) 口針の先端はほとんど常にし部細胞内,特にし管内にそう入される。皮層細胞内にそう入されたものは見られなかったが,まれに木部あるいは管束しょうにそう入されていた個体も見られた。また口針はそう入部から最も近いし部に達するとはかぎらず,皮層を遠回りし,あるいは髄線を経て髄にはいりし部に達するもの,あるいはし部または木部のみを通過することがある。また口針はし部で同一細胞からのみ吸汁するものではなく,たびたび新しい細胞に刺し変えるため口針こん跡の分枝したものが多数みられた。
著者
河田 党
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.294-295, 1959-12-30
著者
石原 由紀 田上 陽介
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.57-67, 2019-05-25 (Released:2019-06-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

Since 2014, some Welsh onion and carrot fields have been damaged by Bradysia sp., dark-winged fungus gnat(Diptera: Sciaridae), in the northern region of Saitama Prefecture, Japan. Bradysia impatiens(Johannsen)are also known as important insect pests in various crops. In the present study, we examined the effects of temperature on the development and reproduction of Bradysia sp. and B. impatiens reared on rice bran at constant temperatures of 11, 16, 20, 25, and 30°C. The developmental periods from egg to adult emergence of Bradysia sp. were longer than those of B. impatiens at all temperatures. In Bradysia sp., 112.8 days and 26.6 days were required for development of adult females at 11°C and 25°C, respectively, in comparison with 93.3 days and 21.4 days for B. impatiens. The intrinsic rates of natural increase at 11, 16, 20, 25, and 30°C of Bradysia sp. were −0.006, 0.023, 0.043, 0.100, and −0.030 and those of B. impatiens were 0.004, 0.058, 0.103, 0.111, and 0.062, respectively. The tolerance of Bradysia sp. to low temperatures and high temperatures is lower than B. impatiens.
著者
城所 隆 藤崎 祐一郎 高野 俊昭
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.306-308, 1982-11-25

The damage caused by the smaller rice leaf miner was severe when rice was transplanted in early May or early June. When rice was transplanted between these periods, the miner caused very little damage. It is suggested that the relation between adult emergence and the time of rice transplanting was the main factor in the occurrence of the outbreaks of the insect.
著者
金井 賢一 松比良 邦彦 上地 奈美 湯川 淳一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.151-154, 2008-08-25
被引用文献数
1 1

マメ科のデイゴ属は約110種を含み、東アフリカからインド、東南アジア、太平洋諸島、ニューギニア島などの熱帯から亜熱帯にかけて広く分布しており、数種は街路樹や生け垣、防風林、観賞用などに利用されている。日本では、デイゴやアメリカデイゴ、サイハイデイゴなどが古くから沖縄県や鹿児島県、宮崎県などに導入され、植栽されている。デイゴヒメコバチ(ハチ目:ヒメコバチ科)はデイゴやなど、デイゴ属の枝や葉柄、葉にゴールを形成し、時には、木を枯らしてしまうことが知られている。近年、本種が香港、中国、アメリ力合衆国ハワイ州、インド、タイ、フィリピン、サモア、グアム、シンガポール、モーリシャス、レユニオン、台湾、ベトナムで発見されている。本稿では、奄美群島における加害調査結果を報告するとともに、侵入の時期やその後の移動・分散、今後の追跡調査の必要性などについて言及した。
著者
白崎 将瑛 山田 雅輝 佐藤 力郎 柳沼 薫 熊倉 正昭 玉木 佳男
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.240-245, 1979
被引用文献数
1 7

A series of field trapping of males of the peach fruit moths was conducted with synthetic pheromonal compounds, (<i>Z</i>)-7-eicosen-11-one (compound A) and (<i>Z</i>)-7-nonadecen-11-one (compound B), in apple and peach orchards in Aomori and Fukushima Prefectures. Polyethylene capsule and polyethylene cap were better than two different rubber septa as dispensers of synthetic pheromonal compounds A and B (20: 1 ratio) at the level of 0.1 to 0.3mg per dispenser, though no difference was observed at the level of 1.0 to 3.0mg per dispenser. Trap catch of male moths increased as the amount increases from 0.1 to 3.0mg per dispenser. Synergistic effect of compound B on trap catch was not observed, and compound A alone was enough as a bait for male peach fruit moths. Additions of (<i>E</i>)-isomers of compounds A and B, and (<i>Z</i>)-and (<i>E</i>)-7-alken-11-ones of carbon number 17, 18, 21, and 23 at the level upto 10% of 20: 1 mixture of compounds A and B showed no effect on the attractiveness.
著者
平野 千里 湯嶋 健
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.174-184, 1969-12-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
11
被引用文献数
1 3

1. 32P標識ダイアジノンを含むダイアジノン粒剤を調製し,イネを栽培したコンクリート框水田およびポットに水面施用あるいは土中施用して,標識化合物の灌漑水中への溶出や,イネ体への移行を追跡した。2. 水面施用区では,灌漑水中への放射活性の溶出は急速に進行し,水中濃度は施用後2∼4日で最高となり,以後低下する。一方水中での加水分解も直線的に進行し,灌漑水中の殺虫性成分濃度は施用後3日目にピークを示す。なお土中施用した場合には,放射活性は灌漑水中にはほとんど認められない。3. 水面施用した場合,灌漑水中に溶出した放射性物質は葉鞘部から吸収され,一部は徐々に根部や葉身部へも移行するが,多くは葉鞘部に残る。4. 土中施用区では,放射性物質の吸収は根部でおこなわれる。吸収された放射性物質はすみやかに葉身部へ移行蓄積し,葉鞘部への分布量はあまり多くない。5. イネ体内の放射性物質のうち,殺虫性成分の占める割合は経時的に急速に低下する。その速度は葉鞘部でよりも葉身部ではるかに大きく,葉身部に分布する放射性物質の大部分は殺虫力をもたない分解生成物である。一方葉鞘部では,施用後5日間ぐらいは,全放射活性にたいする殺虫性成分放射活性の比率がかなり高い。6. これらの理由から,ニカメイガ幼虫の加害対象である葉鞘部の殺虫性成分濃度は,土中施用区にくらべて水面施用区ではるかに高い。ダイアジノン粒剤の水面施用により,約1週間にわたり,ニカメイガ幼虫にたいする高い殺虫効果が期待される。なお,効果を大きくするために,施用後数日間は灌漑水の出入を止めることが望ましい。
著者
八谷 和彦
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.51-56, 1989-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
19
被引用文献数
4 5

北海道において水稲の幼穂形成期以前に発生する初期害虫による被害を,切葉処理法によって解析した。処理区は,{第4∼9葉,第4, 5葉,第6, 7葉,第8, 9葉}×{主稈のみ,全茎}×{葉身の1/2,葉身全体}の切除を組み合わせた15区とし,1984, 85年に行った。葉身の切除によって,草丈の抑制,生育の遅延,茎数と穂数の減少が認められ,イネクビボソハムシなどで報告されている従来の知見とほぼ一致したほか,以下の知見が得られた。1) 減収の主要因は,穂数の減少であると考えられた。2) 補償作用として,年次により有効茎歩合,稔実歩合および千粒重の増加が認められた。補償作用の発現程度は気象条件に左右され,平年を上回る気温が続いたときに現れるが,平年並みの気温では発現は弱いものと考えられた。3) 全茎の最上位葉の葉身全体を2葉連続して失うと減収が起こると考えられた。また,低温年にはこれ以下の被害量でも減収が起こることが予想された。
著者
小林 尚
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.185-190, 1978-08-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
5
被引用文献数
3 4

ナガメの成・幼虫をナタネの乾燥種子と水で簡易に大量飼育する方法を明らかにした。1. プラスチック容器内に,ナタネの乾燥種子をガムテープに付着した給餌テープをつるすと共に,ガラス瓶に蒸溜水を入れて濾過綿片を挿入した給水装置を装着して飼育セットを作製した。2. 飼育条件は25°C,16時間照明ぐらいが適当であろうと考えられた。3. 採卵飼育には,飼育セットに採卵紙と採卵紐を入れて成虫を入れる。雌成虫の密度は径8.4cm,高さ11cmの飼育セットに10頭,性比は0.59程度が適当と考えられた。採卵間隔は正常な新成虫が得られる密度である約200卵をあまり越えないよう,産卵開始後第4週までは5日,それ以後は7日が適当であろうと考えられた。4. 新成虫を得るための育成飼育には,飼育セットに産卵された採卵資材を入れる。正常な新成虫を得るためには,上記飼育セットに入れる卵数は約200卵が適当であると考えられた。5. 上記飼育条件において,卵期間は6.5日,第1令期間は4.0日,第2令期間は約6.5日,第3令期間は約4.5日,第4令期間は約6.0日,第5令期間は,約9.5日,全発育期間は約37.0日であった。6. 卵のふ化率は産卵開始直後は約95.8%であったが,産卵が進むに従って漸次低下し,産卵開始後第13週目には48.8%となった。7. 幼虫期における死亡率は,飼育密度によって著しく異なり,約200卵の飼育では約3.2%,約300卵の飼育では約38.8%であった。8. 新成虫の卵からの羽化率は,約200卵の飼育では約92.4%,約300卵の飼育では約58.5%であった。
著者
菖蒲 信一郎 御厨 初子 山口 純一郎 松崎 正文 松村 正哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.135-143, 2002 (Released:2003-04-25)
参考文献数
29
被引用文献数
14 18

Fluctuations in the wing-form ratio of the brown planthopper (BPH), Nilaparvata lugens, were examined by collecting fifth-instar nymphs from rice fields. Two peaks of brachypterous females were observed at 40–50 days after transplanting (DAT) and 75–85 DAT (5 days before heading–10 days after heading). After 75–85 DAT, the percentage of brachypterous females decreased with an increase in BPH density. However, the BPH density was still low after 40–50 DAT when the first decrease in the percentage of brachypterous females occurred. Thus, not only population density of BPH, but also the rice plant stage seems to affect the fluctuations in female wing-form ratio. The SPAD readings of rice leaf, which are associated with leaf nitrogen content, fluctuated with rice plant stage and showed two peaks at 30–50 DAT and 65–80 DAT. The fluctuation pattern of the SPAD readings was similar to that of the percentage of brachypterous females. This suggests that the percentage of brachypterous females fluctuated in accordance with a decrease in nitrogen content of rice plants.
著者
久保 敬雄 安藤 喜一
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.231-237, 1989-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
13
被引用文献数
4 3

広食性昆虫ウリハムシモドキにシロツメクサ,セイヨウタンポポ,エゾノギシギシおよびカモガヤを与えて食物選択実験を行い,次の結果を得た。1) 幼虫・成虫は,ともに放された場所から任意の方向に移動し,食草に対して定位運動は示さなかった。2) ふ化幼虫は食草の種類にかかわらず,最初に到達したものに定着し摂食する傾向が強い。3) 2齢以後は発育が進むにつれて到達した食草が好適でない場合には,他の食草に移動するようになった。4) 3齢幼虫や成虫の食草選好度を食痕から判定すると,セイヨウタンポポ,シロツメクサ,エゾノギシギシの順となり,カモガヤは全く摂食されなかった。5) どの食草でもふ化から羽化まで発育できたが,選好度の高い食草で飼育したときほど,発育が早く,羽化率が高く,成虫の体重が重かった。
著者
石島 力 今村 太郎 Visarathanonth Porntip 宮ノ下 明大
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.143-145, 2005
被引用文献数
1 1

The impact of two predatory bugs, <i>Xylocoris flavipes</i> and <i>Joppeicus paradoxus</i>, on the stored-product insect, <i>Tribolium confusum</i>, was examined. Five pairs of adult <i>T. confusum</i> were placed in a plastic container (dia. 15 cm, height 8 cm) containing 10 g of whole-wheat flour. After 3 d, the following four experimental groups were set up: Control (no predator release), <i>X. flavipes</i> (four pairs of adult <i>X. flavipes</i> released), <i>J. paradoxus</i> (four pairs of adult <i>J. paradoxus</i> released), and <i>X. flavipes</i>+<i>J. paradoxus</i> (two pairs each of <i>X. flavipes</i> and <i>J. paradoxus</i> released). Twenty-five days after the release of the predatory insects, we counted the number of living <i>T. confusum</i>, <i>X. flavipes</i>, and <i>J. paradoxus</i>. The number of <i>T. confusum</i> in the <i>X. flavipes-</i>treated and <i>J. paradoxus</i>-treated groups was 3 and 33% of the control, respectively. On the other hand, the suppressive effect of <i>X. flavipes</i>+<i>J. paradoxus</i> treatment was lower than that of the above two treatments, probably due to intraguild predation between <i>X. flavipes</i> and <i>J. paradoxus</i>.
著者
永井 一哉
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-274, 1991
被引用文献数
7 26

室内実験において,露地栽培ナスの主要な害虫であるミナミキイロアザミウマ,カンザワハダニおよびワタアブラムシに対するハナカメムシの捕食量および餌選択を調べた。<br>1) ハナカメムシ雌成虫はミナミキイロアザミウマ成幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ幼虫を捕食したが,ミナミキイロアザミウマの卵は捕食しなかった。ミナミキイロアザミウマ2齢幼虫を与えた場合,ハナカメムシ1齢幼虫,3齢幼虫,5齢幼虫および雌成虫の25&deg;C, 16L-8Dにおける24時間当りの捕食量はそれぞれ3, 11, 13および22匹であり,ミナミキイロアザミウマ成虫を与えた場合,ハナカメムシ雌成虫の捕食量は26匹であった。<br>2) 同じ条件下で,ハナカメムシ雌成虫はカンザワハダニ雌成虫を21匹,ワタアブラムシ1齢幼虫を12匹,4齢幼虫を6匹捕食した。<br>3) 孵化直後からカンザワハダニで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫とカンザワハダニ雌成虫とを同時に与えた場合はミナミキイロアザミウマが,カンザワハダニ雌成虫とワタアブラムシ4齢幼虫とを同時に与えた場合はカンザワハダニが先に捕食される確率が高かった。<br>ワタアブラムシで飼育したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ4齢幼虫およびミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,ワタアブラムシ1&sim;2齢幼虫を2種ずつ同時に与えた場合では,最初に捕食される確率はどちらもミナミキイロアザミウマが高かった。<br>野外から採集したハナカメムシ雌成虫にミナミキイロアザミウマ2齢幼虫,カンザワハダニ雌成虫およびワタアブラムシ4齢幼虫を2種ずつ同時に与え餌選択を調べた結果,最初に捕食される確率はミナミキイロアザミウマが最も高く,次いでカンザワハダニとなり,ワタアブラムシが最も低かった。
著者
石井 象二郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.334-337, 1964-12-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
9
被引用文献数
3 6

マタタビにヨツボシクサカゲロウChrysopa septenpunctata WESMAELの雄が強く誘引されることは古くから観察されていたが,その誘引物質は不明であった。マタタビの実およびその虫えいから有効物質の抽出分離を試みた結果,その物質はエーテル可溶物の中性分画に含まれ,水蒸気蒸溜により溜出される。溜出物をカラムクロマトグラフで分離を繰返し,有効成分を含む分画を赤外吸収スペクトルで調べた。水蒸気蒸溜溜出物中に含まれるラクトンを分解除去しても,なお誘引性を示した。イソイリドミルメシンには誘引性はない。誘引物質は一種のアルコールと考えられる。本物質の感覚受器は雄の触角に分布している。雌が誘引されないのは,雌の個体数が特に少ないためではない。
著者
安田 弘法
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.217-222, 1984
被引用文献数
3 13

愛知県北設楽郡の放牧地において,1982年5月下旬より11月上旬まで,設置後1, 2, 3日と経過したふん内に見られる食ふん性コガネムシ類成虫の種数および個体数を調査した。<br>1) 採集個体数は2科4属51,225個体であり,個体数の多い種はフチケマグソコガネ(46.3%),マグソコガネ(22.1%),カドマルエンマコガネ(21.7%)の順で以上の3種で全採集個体の約90%を占めた。<br>2) 種により主としてふんの直下の地中に生息する種とふん内に生息する種とがあったが,両種とも6月中旬から7月中旬にかけて出現のピークがみられた。この出現ピーク時に,地中で生息する種ではふん設置後の経過日数とともに個体数の減少傾向がみられたが,ふん内で生息する種ではこのような傾向はなかった。<br>3) 比較的個体数の多い12種について,成虫の出現パターンをWHITTAKER (1952)のpercentage similarityを用いて調べたところ<i>PS</i>=0.65で三つのパターンにわけられた。また,<i>PS</i>=0.5ではあるが春と秋に出現し,出現パターンの等しいオオフタホシマグソコガネとマグソコガネを一つのグループとすると次の四つのパターンにわけることができた。<br>春・秋出現型(マグソコガネ,オオフタホシマグソコガネ),初夏出現型(コマグソコガネ,オオマグソコガネ),春から秋にかけて出現・秋ピーク型(フトカドエンマコガネ,クロマルエンマコガネ),夏出現型(フチケマグソコガネ,オビマグソコガネ,コスジマグソコガネ,ウスイロマグソコガネ,ツノコガネ,カドマルエンマコガネ)<br>4) 個体数の多いフチケマグソコガネ,マグソコガネ,カドマルエンマコガネ,オオマグソコガネでは成虫出現のピークが異なっていた。
著者
近藤 章 田中 福三郎
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.211-216, 1989-11-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
12
被引用文献数
5 4

実験室内においてスクミリンゴガイを餌として与えた場合のヘイケボタル幼虫の発育と捕食能力,および寄主選択性について検討した。1) スクミリンゴガイで飼育した場合のヘイケボタルの飼育開始79日後における供試卵数に対する全幼虫数の割合は63.4%で,カワニナの場合(86.3%)よりやや劣るものの,幼虫はスクミリンゴガイで比較的良好に発育した。2) ヘイケボタル幼虫は全明・全暗条件にかかわらず,どの齢においてもスクミリンゴガイとカワニナを同程度に選択した。3) スクミリンゴガイの密度に対するヘイケボタル幼虫の捕食反応を,幼虫の齢と貝の大きさを変えて調べたところ,大部分の組合せで飽和型曲線を示した。幼虫の1頭1日当り最大捕食貝数は,ふ化数日後の貝では2齢幼虫で0.7頭,3齢で2.3頭,4齢で3.2頭であった。4) 貝の大きさと4齢幼虫の最大捕食量との間には直線関係が認められ,捕食可能な貝の最大殻高は1.1cmと推定された。