著者
原 俊雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.364-370, 2006

粒子加速器は,素粒子物理学・原子核物理学の基礎研究のみならず,物性科学・生命科学そして粒子線医療等,広い分野で利用されている。荷電粒子の加速技術と軌道制御技術は,高校物理の電気学と磁気学で学ぶ内容に密接に繋がっている。高校物理と荷電粒子の加速および軌道制御技術との繋がりを明確にし,高校物理教育の教材として粒子加速器技術を活かす試みを行ったので報告する。
著者
広井 禎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.161-162, 1999

1999年3月に2003年から高校で実施される学習指導要領が告示された。本稿では,その内容についての検討は一切せずに,そのつくられ方についてだけ検討する。仮に教育課程を建売住宅に例えてみる。従来,建売住宅に住む人・住みたい人の立場から論じられることが多かった。この玄関の位置は良い(悪い)とか,この間取りは住みやすい(住みにくい)とか,ここに戸棚があるのは使いやすい(使いにくい)など。本稿では,この視点を転じて,大工さんの立場から検討してみたいのである。建築資材や,大工さんの数,工事期間などにあたることの検討を試みることにする。
著者
矢野 淳滋
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.439-441, 1993
被引用文献数
1

平賀源内が作った摩擦発電機「エレキテル」はよほど乾燥していなければ発電しない。そこで瓶と摩擦材料を高絶縁で吸湿性のない新素材に置き換え,又は新素材で支え,構造も合理的に改善して製作してみたところ,特に高湿度でなければ,手回しで10kV以上の電圧が得られ,教材用として十分使用できることが分かった。更にこのエレキテルで発生した電圧を測定する静電電圧計や,その電力で運転する静電モーターも作った。
著者
笠 耐
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.421-428, 2002
被引用文献数
4

物理教育学会誌の創刊号から最近号までを主な資料として,国際物理教育委員会(ICPE)主催の会議と本学会との関係を中心に物理教育の国際交流について歴史的に述べている。1960年にパリで開催された最初の物理教育国際会議に本学会は代表を派遣して積極的に国際交流に努めた。本学会がICPEと共催した1986年東京会議と,その後に開催された3回の日中米物理教育会議は,参加者に新しい物理教育のアイデアを与えると共に,高校教師の国際的な交流の道を開いた。また,国内における高校と大学の連携を強めることにも役立った。
著者
田中 文男
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.117-120, 1977

盲人が電子式卓上計算機を利用することができるようなアダプターを開発した.その原理は,デジタルICを用いて電卓の7セグメント数字表示を点字に変換し,点字の凹凸を音の高低で表現し順次ケタを追って読み上げることである.電卓の表示部から信号を取り出すので,電卓の内部機能の複雑な関数電卓でも単純な機能の電卓同様に利用することができる.これを用いることにより,盲人を,多ケタ計算や数表検索の大きな労力から解放することができ,盲人の物理教育の充実にある程度貢献することができるものと思う.
著者
米田 隆恒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.90-92, 2003

超音波の実験はさまざまな利点がある。しかし,超音波の発生方法は難しく,また,耳に聞こえないので観測が抽象的であるという難点がある。ところで,超音波のうなりの振動数が可聴音の領域にあると,うなりを耳で聞くことができる。このうなりを超音波の観測方法として利用し,ハウリングによる超音波発振機1)と組み合わせて,直感的にわかりやすい超音波実験装置を開発した。また,この装置を使って,干渉やドップラー効果などの生徒実験を行った。
著者
鈴木 三男 増田 健二
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-5, 2000
参考文献数
5

二重振り子の複雑な運動は,カオス的な振舞の例として良く取り上げられている。しかし,多くは講義または演示実験などで,興味をひく観察だけで終わっている。そこで,我々はデジタルビデオカメラとコンピュータを利用し,二重振り子の複雑な運動を詳しく調べ,運動の解析を試みた。また,二重振り子のコンピュータシミュレーションを行い,実際の測定結果との比較検討も行った。
著者
寺島 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.289-292, 1992
被引用文献数
1

有効数字は最下位の桁に誤差を含む数値である。したがって,有効数字の決め方を指導するためには誤差の求め方を教えなければならない。標準誤差(Standard Error)の意味と計算法を講義によって説明し,演習をまじえて有効数字の決め方を実地に指導する。このような指導の内容と方法を述べる。
著者
小森田 精子
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.281-284, 1998
参考文献数
5

化学教育における実験の意義を論考するために,まず,近代・現代化学における実験の目的と性格を合成実験を中心に,化学的実験と物理的実験の関係も含めて論述する。次に,化学教育の目的を明らかにし,学習実験の意義と性格について述べる。ここでは,特に化学の基本概念と基本法則を理解することの重要性を指摘するとともに,その歴史的成立過程を実験と理論の役割を中心に概観する。最後に,学習実験の方法について二つの視点から論考し具体的な提案をする。
著者
古屋 東一郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.209-217, 1984

実習しやすく生徒が喜ぶ物理実験教材の研究を通し,これらの実験に必要な材料を,コンパクトなケースに納めた「パック詰めにされた手軽にできる生徒実験」なるものを開発した.この研究には,高校での物理の教師としての経験,および理大の「実験講義」の手伝いなどを通して約10年の歳月をかけて作り上げた.特にこの2〜3年間でその内容が研究発表できるような充実したものにした.これらの実験はすべて短時間で手軽にできるため,生徒には普通の理論的な授業の中に,ほんの少しの時間をさいて実験させることもできる.さらにこのパックによる実験によって,ひじょうに興味深い現象が見られるため,生徒は物理を身近なものとして捕えることができる.よって生徒に興味をもたせながら授業を進める手段として,この方法は非常に有効である.
著者
林 正一 佐藤 久志 秋山 敏弘
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.67-70, 1977

水平台にある金具によって保持されている回転軸の周りに棒が鉛直面内で回転できる装置を用いて実験した.鉛直線と約60°の角度に傾けられた棒が倒れる状況の加多重写真(25〜30c/s)を撮って,棒倒しの運動を観察した.棒の写真上の像の位置の変化からその運動を解析して,それは等角加速度の運動であることを知った.写真レンズの等角写像の特性によって,実像の棒は等角加速度運動で表現される動きを呈していると考えられた.他方,初めの傾き角が60°を超えると,棒の運動は上記の振舞を示すそれで近似されることが運動方程式を用いて確かめられた.また,この場合,棒が倒れるまでに要した時間が意外に短いことにも言及した.