著者
三門 正吾
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.121-122, 2012

福島の原発事故で放出されたセシウム137と134の放射能強度比は約1と推定される。毎日10Bqの放射性セシウムを含む食品を食べ続けると,Cs-137の場合,体内放射能の平衡値はおよそ1400Bqになる。これによる年間内部被ばく量はおよそ0.076mSvで,カリウム40による内部被ばくの半分弱である。内部被ばくの計算は,本来はICRPのモデルやデータに基づいて行うべきだが,放射線のエネルギーを用いた物理的考察によりシンプルな計算を行ってみた結果,妥当な値が得られた。
著者
北村 貴文 谷口 和成
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.98-103, 2015

アクティブ・ラーニング型授業が,学習者にどのような変化プロセスを経て学習者の物理概念理解・定着を達成させるのか明らかにするために,学習者の動機づけに着目した検討を行った。理科教員を目指す初年次の大学生を対象に,アクティブ・ラーニング型授業のひとつ,Interactive Lecture Demonstrations(ILDs)を実施し,FMCEによる物理概念調査,動機づけに関する質問紙とインタビュー調査,学習観に関する記述分析と授業記録分析を行った。その結果,継続的なILDsは学習者の動機づけを上昇させ,それが望ましい学習行動につながることにより,概念理解が達成されるというプロセスが明らかになった。
著者
山崎 敏昭 井上 賢 谷口 和成 内村 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.101-107, 2011
被引用文献数
2

多くの問題点が指摘されている日本の高校物理における実験について,2006年に,約2,500名の大学新入生を対象とした大規模な高校物理実験の実施状況に関する実態調査を実施した。その結果,生徒実験,演示実験とも回数が少ないだけでなく,実験を数多く実施している学校とそうでない学校の間に大きな差があること,それが全国的に共通していることがわかった。今回2009年に,約3,800名を対象とした同様の調査を実施して3年間の変化をみるとともに,「高等学校理科教員実態調査」との比較も行い,物理実験を取り巻く状況を総合的に分析し,今後のあり方についての検討を行った。
著者
長谷川 大和 勝田 仁之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.137-140, 2013

高等学校物理では,力学的エネルギー保存則を学んだ後に運動量保存則を学ぶ。これらを学習後に取り組む典型的な問題として,動くことのできる斜面台上での物体の運動がある。このような問題では,台と物体で及ぼし合う垂直抗力がそれぞれ仕事をすることになり,これらがちようど打ち消し合うことを説明しなければ,力学的エネルギーの和が保存されることに対して生徒は違和感を持つ可能性が生じる。この問題の高等学校での取り扱いについて考察する。
著者
濱本 悟志
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.175-179, 2001

現在,本校では中学3年生を対象に,「テーマ学習」という名称で,「既存の教科では必ずしも包摂できない分野や内容をも含めた諸領域での学習活動」および「自らが選択したテーマを少人数で主体的に探求する学習活動」を実施している。約120名の生徒に対して約10のテーマが提示され,生徒は興味と関心を抱いたテーマを選択し,半年間にわたって教師の指導のもと,探求的に取り組んでいく。「楽器の魅力とその解明」は,98・99年度に実施された物理と音楽の合科型のテーマ学習である。
著者
田崎 晴明
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.215-219, 2006

さる2006年3月に愛媛大学・松山大学で開催された第六十一回物理学会年次大会において,「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」というテーマのシンポジウムが開かれた。不穏な天候にもかかわらず,ジャーナリストや人文系研究者などの非会員を含む三百数十人が参加し,定員が三百人弱という会場を埋め尽くす大盛況だった。また,シンポジウムの最後の討論では,幅広い参加者たちが活発に発言し,予定時刻を大幅に延長して熱い議論が続いた。物理と社会にかかわる問題について大学院生を含む一般の会員が真摯に議論しあえる機会がもてたことは,きわめて有意義だった。以下では,このシンポジウムの基調になる考えを説明し,また,シンポジウムでの講演や討論などを通じて浮かび上がってきたいくつかの論点を整理したい。より具体的な「ニセ科学」の実例や,「ニセ科学」批判の実際については,菊池,天羽の寄稿を参照されたい。
著者
村尾 美明
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.268-270, 1992

厚さが変化する薄膜の干渉色は青〜赤のスペクトル順ではなく薄青,白,茶,青,黄,となっている。この干渉色の見え方を計算で求め,実際にパソコンの画面上で表示して現実の干渉色に一致することを確かめた。また,虹が出たとき,主虹の下と副虹の上が白っぽく見えるがこれもパソコンシュミレーションで示すことができた。色の見え方の指導にはパソコン画面での色の重ね合わせが有効である。
著者
恵下 斂 西島 真一 岩切 康治 木村 英二
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.10-13, 1996
被引用文献数
1

小学校あるいは中学校における理科の教材として活用することを目的に,身のまわりにあって簡単に手に入る文房具などの小道具を使って安価で高感度な天秤を組立てた。そしてそれらを用いて,円周率πとやはり無理数である√2の値を測定し,それぞれ真の値と比較した。さらに,質量に関して基準となるものを利用して活用範囲を広げる一例を示した。
著者
大杉 功 小島 勉 西田 勲夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-17, 1983

半導体や金属の伝導現象を解析するためには,フェルミ・ディラック積分を計算しなければならない.従来この計算は極端な近似のもとで実行されてきたため,ウィルソン・モデルに基づく説明の一貫性が失われていた.そこで,パーソナルコンピュータを使用してフェルミ・ディラック積分を計算するプログラムを提案する.このプログラムを使用すれば,半導体や金属の伝導現象を一貫して解析することができ,高専の高学年の学生でも十分その内容を理解させることができる.
著者
遠山 武
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.282-285, 1978

ヤングの光の干渉実験では,単スリットと,ダブルスリットを用いる.その単スリットの幅があまり広すぎると干渉縞はあらわれない.定性的にこの限界を述べた文献はあるが,定量的なものがないので私が考察してみた.
著者
小河原 康夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.138-140, 2007
被引用文献数
2

海外の研究会に参加してみると,日本では見かけたことのない教材,教具や実験を目にすることがあり,新鮮な驚きを覚える。ここでは,American Association of Physics Teachersの夏季大会で見た実験を,日本で入手できる材料を使って再現し,さらに測定値と理論値の比較を試みた概略について報告する。
著者
青野 修
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.300-301, 1984
著者
長谷川 大和 小佐野 隆治 門田 和雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.14-18, 2006
被引用文献数
1

文部科学省スーパーサイエンスハイスクール研究開発において,科目「科学技術」を開発した。本科目は,理科と工業科とを連携させ,工業科の教員と理科の教員等によるティームティーチング体制をとり,理論と実験実習とを結びつけた科目である。特に,機械科2年生には教科・工業における科目「原動機」をベースとした「科学技術(機械)」を実践した。そこでは年度の前半では,流体力学や流体機械といった流体分野に関する理論と実験・ものつくりを通した体験的な学習を行い,後半においては流体分野に関する探究活動を行った。
著者
市川 定夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.428-431, 1996

放射線が生物に与える影響については,「古くからよく知られている」とされ,それゆえ,原子力利用や放射線利用に際しては,他の公害物質とは異なり,「安全確保のための手段があらかじめ講じられている」といった説明がよくなされてきた。現在でも,「微量なら安全である」とか,「微量なら影響は無視できる」といった説明が加えられる場合が多い。しかし,本当にそうなのであろうか。ここでは.微量放射線の影響が解明されてきた過程を振り返りながら,特に問題となる遺伝子の本体DNA(デオキシリボ核酸)に対する影響に重点を置いて,個の問題を論じてみたい。
著者
川勝 博
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.278-279, 2004

[科学のための科学]を基盤にした[社会のための科学]に向けた新世紀の科学教育と題するシンポジウムが,2004年3月16日,学術会議第4部科学教育研究連絡委員会の主催で東京・乃木坂の学術会議会議室で開催された。司会は,波田野彰氏(帝京平成大学)と川上昭吾氏(愛知教育大学)が担当された。