著者
近藤 正夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.215-219, 1986

『わかる』ためには,「原体験」と「積極的精神活動」が大事な二要素だと私は考えていますが,何故そうなるかの理由らしきものを3段階に分けておはなしさせていただきます.多分に独断的きらいがありますが,色々の反論をいただければ幸でございます.最後に実例のいくつかを時間調整のために付加するつもりです.
著者
小林 幸夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.326-331, 2005
参考文献数
31
被引用文献数
1

測定とは,対象の量が単位量の何倍かを求める操作である。この立場から,物理化学では物理量=数値×単位量の表現を採用する。しかし,物理教育では,単位が量ではないという誤解が生じている。このため,数値と単位量の積の意味が物理教育の中で正しく普及していない。単位が量だからこそ物理量の四則演算が成り立つ。量計算は,高校数学のベクトル算法と同じしくみの計算である。この事情を線型代数の基礎を踏まえて解説する。
著者
斎藤 吉彦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.209-212, 2012

本誌の企画「変位電流とは何か」で,3編の論文が「変位電流は磁場を創らない」の議論を与えている。これらは,時間変化をする球対称電場の存在の正否が要となっている。本稿は,この電場がマクスウェル方程式と矛盾することを根拠に,設定されたモデルを否定する。さらに,モデルが仮定する荷電粒子の運動が非物理的であることを具体的に示す。本編の議論は電磁場の相対論的理解が背景にあり,教育者にとって電磁気学の相対論的理解の必要性を主張する。
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.218-223, 2012

高校物理の電磁気分野は難解である。電気の正体は明らかでないし,物理用語にも定義不明語は多い。それらが電磁気を暗記学習の域にとどめている。しかし,昨今の科学の進歩はかつての仮説や試論にも定説化と教材化をうながす。マクスウェル理論はニュートン力学の正統性を継承するもので,その手法は多くの科学理論の模範となった。変位電流は当理論を公理論として確立するための要であり,その検証は電磁波の確認にゆだねられた。本論考ではその意味を歴史的,教育的に考察する。ファラデーとマクスウェルの共同研究には数理研究と実験研究の共軛作用がみえる。
著者
菅野 礼司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.213-217, 2012

本誌Vol.60, No.1の特集「変位電流とは何か」で「変位電流は磁場をつくらない」と主張した2論文(鈴木・兵頭)に対して以下の問題を取りあげてコメントする。(1)変位電流は閉回路にも必要であること,(2)物理法則を表す式の因果関係にかんする解釈への疑問,そして磁場変化と誘導電流,および変位電流と磁場との因果関係,(3)電場・磁場の源と電磁波の関係について,(4)真空偏極と変位電流の実在性について。
著者
勝木 渥 石井 廣湖
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.114-126, 1995
被引用文献数
2

平成5年度センター試験「物理」の試験結果は,決して難問ではないと思われるのに,平均点が低く,また,その得点分布は"平坦"でガウス分布から大いに隔っていた。われわれは,この試験の解答分析の資料に基づいて,個々の設問にわたる解答状況を調べ,受験生の物理に対する理解の傾向と問題点を探った。
著者
竹中 功
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.278-281, 1996

「放射能・放射線」の学習は,目に見えない現象を扱うので,実験を取り入れた教授方法をとらなければ,本質的な理解は得られない。近年,この分野の教材研究が進展し,放射線測定器の自作方法や教材用放射線源の工夫が示され,実験が容易に実施できるようになった。しかし,放射性物質を使った製品を,製造目的を越えて利用することや,漏洩X線による被曝の問題が指摘されており,実験にあたっての指針を明確にする必要がある。
著者
伊東 正人
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.229-230, 2009
被引用文献数
1
著者
鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.385-388, 1988
被引用文献数
2

昨今,物理教育の危機をうったえる声は多い.昭和57年の学習指導要領改訂が高校物理を従来の必修教科目から選択科目へ移行させると,その履習者は激減した.物理教育は,将来不要のものになるのであろうか.このような状況は,アメリカにおいてはより深刻である.本稿では日本の物理教育の現状をアメリカの状況と対比させながら,その意義を(i)技術をささえる物理教育,(ii)科学の基礎としての物理教育,(iii)物理学をささえる物理教育,の3点から考察して,高等学校学習指導要領のなかでの物理の位置づけを検討する.
著者
室谷 心 水谷 雅志
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-20, 2008

学生に物理が実生活に"使える"道具であり、人間の体も当然物理法則に従うものであるということを理解させるための教材として、食事、代謝、体脂肪燃焼といった事柄をエネルギーの視点から整理する。
著者
飯田 洋治
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.26-29, 2017-03-16 (Released:2017-04-10)
参考文献数
16
被引用文献数
1

電気伝導モデルに関して,「金属中の自由電子が電場によって加速されるとき,どの電子も一定時間ごとに衝突をくり返すものと仮定する。このとき,衝突から衝突までの電子の平均速度増分は衝突直前の最大速度増分の1/2になる」と記述する書籍等がいくつかみられる。運動量と力積の関係から求めたドリフト速度には係数1/2はつかない。衝突間の時間の2乗平均から求めても係数1/2はつかない。この仮定は物理的に見て本当に妥当な仮定かどうかを検討する。
著者
村田 次郎 塩田 将基
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.95-100, 2023-06-06 (Released:2023-06-10)
参考文献数
7

「重い人ほどすべり台を速く滑るのは何故か」という疑問を動機とした,すべり台の摩擦に関する大学生の探究学習の実践例を報告する。一様重力場中の落下加速度は質量によらず一定であり,これは動摩擦がはたらく状況でも同じであると学習するが,これと生活経験が矛盾する事から生じる疑問である。物体が滑る加速度を実測し,空気抵抗の寄与,動摩擦係数の質量依存性,速度依存性を調べた。ローラー式すべり台では動摩擦係数が一定ではない事が示された一方,金属板式すべり台では一定値からずれる有意な結果は得られなかった。
著者
笹川 民雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.201-208, 2009-09-01 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

クントの実験において,管内の粒子にはたらく力について考察し,運動方程式をルンゲ・クッタ法で数値計算して粒子の運動を調べた。その結果,空気抵抗力や音の放射圧を受けることにより,粒子は密度や大きさの違いで変位の節または,腹に集まることがわかった。また,粒子の音波浮揚の安定性を力学的に考察した。さらに,クントの実験で生じる縞状の模様は非線形効果で励起される倍音の放射圧により形成されることを明らかにした。