著者
塚本 浩司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.291-296, 2007
参考文献数
8

マグカップでインスタントコーヒーを溶かしてかき混ぜるときに,ティースプーンとマグカップがぶつかり,音が生じる。この音は,インスタントコーヒーが完全に溶解するまでの間,音程が「くぐもった低い音」から徐々に甲高い音に変化する。周波数特性を行ってこの現象の原因を解明し,その過程を教材化した。この教材は,音波・音響や振動に入門する教材にもなりうるが,それ以上に,科学研究の手法を学び,物理学を身近に感じるために最適の教材となりうる。
著者
中村 聡
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.103-107, 2006
参考文献数
5
被引用文献数
1

電子レンジの加執原理を説明する際に,振動する水の分子同士の摩擦熱を考える場合があるが,真実に反している上,熱の分子運動論や摩擦現象のミクロなイメージの涵養を妨げる。いくらかの調査の結果,摩擦熱の説明はかなり流布していて,生徒もテレビなどを通じて聞き,更に学校教育までも荷担していることが判明した。摩擦熱を考える代わりに,「分子が振動していれば,そのエネルギー自体が熱である」と述べた方か良い。もし分子運動論を避けるのであれば,逆に電子レンシの加熱原理についても触れない方が良いと思われる。
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-305, 2006-12-13 (Released:2017-02-10)
参考文献数
4

水分子の振動と回転スペクトルによる共鳴吸収は赤外域にあるので,電子レンジのマイクロ波の吸収に関与するのは,液体の水の誘電率の異常分散に伴う吸収である。有極性分子は印加電場の方向に統計的に配向して,固体や液体の分極をつくるが,配向分極の生成・消滅には時間的遅れがある。この誘電緩和に関するDebyeの理論によれば,水はマイクロ波の広い周波数範囲で強い吸収を示す。これが水分をもつ物質が電子レンジで加熱される理由である。そして,無極i生分子からなる物質は電子レンジの加熱が弱い。
著者
原 尚志 熊谷 りさ 佐々木 絢奈 法井 美空 鈴木 太朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.6-11, 2018-03-09 (Released:2018-04-03)
参考文献数
10

福島第一原子力発電所事故による放射能汚染は,既に予想よりも大分小さいことが明らかになっているが,事故から6年半経過した現在でも十分に知られてはいない。福島高校スーパーサイエンス部は,2014年に福島県内外で高校生個人線量調査を実施し,福島県内高校生の個人線量は自然放射線量とほぼ同等であることを報告した。今回は2016年の調査結果と,外れ値の分析について報告する。
著者
森 雄兒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.269-272, 1995
参考文献数
12
被引用文献数
3

日用品の素材を組み合わせて,5分ほどで液体窒素の霧箱を作ることができる。この霧箱では,熟練を要せず簡単にα線の飛跡を見ることができる。またアルコールの量を増やすと,β線,陽電子,コンプトン散乱などの飛跡もみることができる。
著者
中村 聡
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.103-107, 2006-06-16 (Released:2017-02-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

電子レンジの加執原理を説明する際に,振動する水の分子同士の摩擦熱を考える場合があるが,真実に反している上,熱の分子運動論や摩擦現象のミクロなイメージの涵養を妨げる。いくらかの調査の結果,摩擦熱の説明はかなり流布していて,生徒もテレビなどを通じて聞き,更に学校教育までも荷担していることが判明した。摩擦熱を考える代わりに,「分子が振動していれば,そのエネルギー自体が熱である」と述べた方か良い。もし分子運動論を避けるのであれば,逆に電子レンシの加熱原理についても触れない方が良いと思われる。
著者
河田 淳一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.305-306, 2002

ここ数年のカードブームはただ事ではない。集英社の「遊戯王」は東京ドームでイベントを開催するほど盛り上がり,小学生向けの講談社の雑誌「コミックボンボン」では「ミラクルVマスター」,小学館の「コロコロコミック」では「デュエルマスターズ」と新作が後を絶たない状況である。過去にはカード欲しさにスナック菓子を捨てると問題になった仮面ライダーさえも今年はカードを使って変身するうえ,海外では相変わらず「ポケモンカード」が大入気である。なぜここまでカードが流行するのか,そして子供たちを夢中にさせるものはなんなのか?集める,ダブる,交換する。ルールの中で戦う(決闘:デュエル)。これは子供世界のコミュニケーションの手段である。
著者
塚本 浩司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.291-296, 2007-12-14 (Released:2017-02-10)
参考文献数
8

マグカップでインスタントコーヒーを溶かしてかき混ぜるときに,ティースプーンとマグカップがぶつかり,音が生じる。この音は,インスタントコーヒーが完全に溶解するまでの間,音程が「くぐもった低い音」から徐々に甲高い音に変化する。周波数特性を行ってこの現象の原因を解明し,その過程を教材化した。この教材は,音波・音響や振動に入門する教材にもなりうるが,それ以上に,科学研究の手法を学び,物理学を身近に感じるために最適の教材となりうる。
著者
兵頭 俊夫
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.44-51, 2012-03-08 (Released:2017-02-10)
参考文献数
14
被引用文献数
4

マクスウェル方程式の変位電流と磁場の関係について,様々な観点から検討する。まず,式中の変位電流(密度)の項を因果関係的にとらえることはできないことを示す。続いて,クーロン電場の変位電流(密度)は磁場を作らないことを直接示す。さらに,電磁波の波動方程式の電場は誘導電場であることを示す。しかし,誘導電場の変位電流(密度)も,それが原因となって磁場を作ると言える根拠は,ここでの考察からは見いだせなかった。
著者
菅野 礼司 南原 律子
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.258-269, 2014-12-05 (Released:2017-02-10)

物理学は,自然科学の中で扇の要の位置にある。物理学の理論体系の構造と論理を,諸分野の相互関係を通して詳しく考察することは,自然科学を深く理解することに役立つであろう。本稿では,自然界の階層構造をふまえて,物理学諸分野を三系列に分類し,それらの相互連関を考察した。また,物理学の研究方法,理論体系の特徴,理論の完備性などについても考察した。さらに,自然科学の特性をまとめ,理論転換(科学革命)についてその論理と展開を追った。
著者
霜田 光一
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.113-116, 1977-08-20 (Released:2017-02-03)
被引用文献数
1

ローレンツ力の反作用は,高校程度の電磁気学の中には見出されない場合がある.それがどこにどのように働くかを考察し,「変位電流(電束電流)もローレンツ力を受ける」と考えられるという結論が得られた.この結論は,変位電流の概念をより具体的にするだけでなく,電気振動などから電磁波が放出される機構を物理的に説明する根拠にもなるだろう.
著者
原 尚志 鈴木 幸太 木谷 美思 小野寺 悠 鈴木 諒 斎藤 美緑
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.87-91, 2015-06-03 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

福島第一原子力発電所事故により,福島県内は放射性物質による汚染が心配されている。福島高校スーパーサイエンス部では,高校生の外部被ばくに注目し,昨年6月福島県内外で個人線量調査を実施した。この結果から,福島県内の高校生の個人線量が特異的に高いわけではないことがわかった。
著者
塚本 浩司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-9, 2008-03-10 (Released:2017-02-10)
参考文献数
29

今日の科学史研究の成果によれば,運動方程式ma=Fを発見したのはニュートンではないし,古典力学を完成させたのもニュートンではない。いわゆる"ニュートンカ学"の体系とは,『プリンキピア』以降,200年ほどの科学研究と科学教育の営みの中で形成されてきたものである。本論文では,"ニュートンカ学"的な教科書の古典とされるトムソン=テイト『自然哲学論』(1867)以前の英語圈の教科書における古典力学の記述を追い,『自然哲学論』以前に先駆的な役割を果たした教科書の存在を明らかにする。