著者
藤島 一満
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.168-171, 1990-09-10 (Released:2017-02-10)

重力が作用している場合の衝突については,衝突する時間が短いので重力の影響は無視できるという前提条件がなければ,この場合に運動量保存の法則が適用できるかどうかといったことについて高校生に判断させることは,高校教科書の記述の文脈からいって無理なことではないかと思う。この種の問題が最近の入試に頻出されているが,そのいずれにも「重力の影響は考えなくてもよい」という前提条件が述べられていない。このことについて出題大学あてに送った質問状の回答に「すべて衝突においては,たとえ重力が働いていても,常に運動量保存の法則が成立するというのが初等物理の約束である。だから重力の影響について前提条件は不用である」とあった。これでは,高校教育についての配慮がまったくない,といえるのではないか。
著者
吉村 高男
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.250-255, 2003-12-20 (Released:2017-02-10)
参考文献数
3

21世紀は,人類が宇宙に進出する宇宙時代である。月や火星等の天体上に建造物を造って住むことも考えられるが,それらの天体は,地球とは重力や環境が大きく異なる。地球上と同じ重力が遠心力で容易に得られるスペースコロニーは,人類が移住可能となる宇宙に浮かぶ優れた近未来の人工建造物と言える。その内部での物理現象について議論することは,21世紀の物理教育を語る際に,興味深く有効である。
著者
斎藤 吉彦
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.103-107, 2005
参考文献数
9

2次元三角格子方位磁石集団にはお互いが向きを揃える秩序状態がある。カーアクセサリー用の方位磁石1000個で鮮明な磁区が得られる。磁石で外からこの方位磁石集団をかき乱すと,しばらくして秩序状態が現れて落ち着く。これは強磁性体の高温状態から低温状態への相転移(キュリー温度)に対応する。交換相互作用を知らない初学者にも強磁性体のミクロ構造の学習が可能になった。この秩序状態の出現は「自発的対称性の破れ」の実例でもある。素人から専門家まで,生の自然現象で磁区と「自発的対称性の破れ」を楽しむことができる。
著者
岡田 直之
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.85-90, 2009-06-10 (Released:2017-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

電気パンが焼ける間に流れる電流値は増減を繰り返し,その時間変化のグラフは"二コブ"の形になることを報告する。本報告では,この電流値変化がホットケーキミックスにデンプンが含まれているために生じることを明らかにした。この電流値変化は,デンプンの糊化に伴うパン生地の電気伝導率の変化が原因であると考えられる。
著者
押切 志郎 稲波 悠季 菅原 身奈 木村 真一 平山 訓之 八木 一正
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.252-254, 2006

「見えないものをよりわかりやすく」このことは物理実験を行う上で非常に重要になる。見えないものを視覚化することで,原理というものがより簡単に理解できるようになるからである。本研究室では,「空飛ぶみそラーメン実験装置」などと名付けた風を送るデモ実験装置などを開発してきた。そして,それらを使い,身近にあるスズランテープで風の流れを見やすく工夫をしたところ,これまで見えないはずの様々な空気の流れの様子が簡単に見えてくることがわかった。その研究の概要を紹介する。
著者
大坂 厚志
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
no.16, 1999-08-09

本実験は、カミナリの落雷をイメージした実験である。身近な素材を用いて、高電圧の放電であるファラデーのカゴ実験を体験し、避雷針や静電遮蔽について学習する。
著者
筒井 和幸
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
no.24, pp.12-13, 2007-08-18

日本物理教育学会近畿支部の「新理科教育プログラム創造委員会」では,昨年,小学校・中学校の教員を対象にアンケート調査を行い,教育課程改訂の方向性について分析を行った。また,大阪府高等学校理化教育研究会では,「小・中・高理科教育課程に関する懇談会」を毎年開催し,より望ましい教育課程の在り方について意見交換を行っている。これらの調査結果や懇談会での意見から,次期教育課程に対して教育現場で望まれていることを集約するとともに,最近の様々な動向を踏まえて,今後の教育課程行政の在り方について私見を述べる。
著者
脇島 修 鬼塚 史朗
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.419-422, 1994
参考文献数
6
被引用文献数
1

ケルビンの水滴発電機を定量的に考察して演示効果を高める方法を検討した。試作した発電機では,最大電圧18kv(0.1μA),最大電流1.2mA(1.8V)を得て,赤色発光ダイオードをかなりの明るさで連続点灯させることができた。本発電機の原理は興味あるものであるし,その機構には物理教育上の重要事項が多数含まれている。本発電機は簡単に作れて操作も容易であるので,高校物理の電気分野の導入や発展,課題研究の教材として秀れている。
著者
原 尚志 鈴木 幸太 木谷 美思 小野寺 悠 鈴木 諒 斎藤 美緑
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.87-91, 2015

福島第一原子力発電所事故により,福島県内は放射性物質による汚染が心配されている。福島高校スーパーサイエンス部では,高校生の外部被ばくに注目し,昨年6月福島県内外で個人線量調査を実施した。この結果から,福島県内の高校生の個人線量が特異的に高いわけではないことがわかった。
著者
加藤 尚斗 新谷 和也 吉田 周平 山口 洋平 本田 行佑 山田 健一 長谷川 誠 石田 宏司
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育学会年会物理教育研究大会予稿集
巻号頁・発行日
no.22, pp.132-133, 2005-08-06

平成16年度採択の文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」に基づくプロジェクトとして、学生グループが考案・開発した「空の青さと夕焼け」と題する実験授業の内容及びそこで使用した実験教材を紹介する。アクリル板を組み合わせて製作した簡易水槽の中に様々な水溶液を入れ、これにLED単色光や懐中電灯の光をあてて、色による到達距離の違い(散乱度合いの差)や液体の色の見え方の変化を観察し、それらを通じて日中の空が青く見える理由や夕焼けが赤く見える理由を小学生に理解してもらうことを目的としている。これらは、小学5・6年生の総合的な学書の時間で、実際に演示した。実験に使用する水溶液としては、日常生活の中で箇単に入手可能なものを使用することで、再現実験が容易に実施できるようにした。また、実験の効果を増す目的で、きれいな夕焼け色を実現するために適した水溶液濃度と水槽長さとの関係を調べた。
著者
宇田川 茂雄 山崎 松吾 伊東 香 川角 博 小室 孝志 野口 禎久 谷田貝 秀雄 藤原 博伸 藤川 清一 岡戸 靖一 田原 輝夫 井上 健 高橋 仁 野坂 正史 山下 一郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.196-209, 2001

専門委員の勤務校は,都立,国立,私立,全日制,定時制,普通科,工業科,男女共学,男子校,女子校,中学校併設などさまざまである。しかし,生徒のつまづきどころには,共通点があるように思われた。実際にそう言えるのか,またそれが事実ならばこの共通のつまづきの原因は何であるのか。その原因が分かれば,物理の理解を深めるのに役立つに違いない。また,陥りやすい過ちがはっきりしているならば,それをテーマにして実験をさせれば,新鮮な驚きを生み出し,「いつの間にか,物理現象について考えはじめてしまう」授業を創ることができるのではないかと考えた。今回は,力学に絞ってアンケート形式の調査間題をつくり,区立中学も含めてさまざまな学校学年での調査を行った。データを立体的に分析するために,個々人の1問1問の回答をデータベース化することにした。しかし,調査データは膨大であるので,個々人のデータベース化は全調査の一部約630名分である。後術の項目3に示すグラフは,このデータベースから抽出したデータに未入力データを一部追加したものに基づいている。項目4以降については,さらに未入力の追加データを利用していることもある。このため,分析対象によって総計などに違いもありうる。
著者
桜井 康雄
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.14-15, 1989

回転板上でミニカーをばねで回転中心につなぐ.質量mのミニカーの回転半径を求めるために,2つの発光ダイオードA,Bを用いる.Aは,回転板上5cmくらいの高さで回転板に平行に固定された支持捧の回転中心からrの位置に固定する.ミニカー上には水銀電池で発光するBがある.ダイオードA,Bが同じ位置にくるようにしたときのばねの張力Fをもとめる.つぎに回転板を直流モーターで回転させ,回転数を調節して,ダイオードA,Bが同じ位置にくるようにする.このときの角速度をωとすると,質量mのミニカーが半径r,角速度ωで回転しているとき中心向きにFの力を受けていることになる.F,m,r,ωのすべてのデータがわかるので,向心力の式F=mrω^2が成り立つことを確かめることができる.
著者
福山 豊
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.30-33, 1988

ニュートン力学は,アリストテレス的世界観から新しい世界観への転換を示してくれた体系であり,その考え方を是非とも学生たちに理解させておきたい,そのために花火の運動を考察することによってニュートン力学の特徴を理解させることを試みている.このとき花火の運動を三段跳び(ホップ,ステップ,ジャンプ)にたとえて,慣性の運動,重力による自由落下の運動,空気の抵抗(速度に比例)の3段階でとらえ,その役割と特徴をあきらかにする.花火のかけら(星)の形は,どの段階でもつねに円(球)となって落下することが導けるので意外性があり印象的である.
著者
伊東 正人
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.22-26, 2019-03-08 (Released:2019-05-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1

ランベルトのW関数は,指数関数を含む超越方程式を解析的に表現するときに使う.大学物理の授業において,ランベルトのW関数が適用できる演習問題をいくつか示し,数理的な要素を含んだ授業ができることを紹介する.特に理系学生が,最初に微積分と出会う「粘性抵抗を受ける質点運動」の問題において,ランベルトのW関数は有効となる.また,懸垂線の導出で有名な「ぶら下げた鎖の形状」の問題において,ランベルトのW関数を使うと鎖のたるみの長さが計算できる.
著者
森 雄兒
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.20-25, 2017-03-16 (Released:2017-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
3

計量法の改正に伴い全面SI化が導入され,商品売買に使用される単位が,重力単位系からSI単位系にシフトされた。そして「重さ,重量」の単位による商品売買が使用禁止され「質量」の使用が義務づけられた。このときを前後して経産省は,「重さ,重量」=「質量(mass)」というSI単位系に反する用語法を容認する方針を採用した。このため,物理の学習者を中心に「重さ,重量,質量」について混乱や誤解を及ぼしつづけている。