著者
池田 資尚 板村 英典 池信 敬子 森下 伸也
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.19, pp.75-85, 2012-07-21

私たち人間は日常生活を送る中で「笑い」という行為を意識的あるいは無意識的に表出している。このような人間の「笑い」という現象を科学的に考察するためには、それらを客観的に把握する手法を構築することが求められる。本稿では、笑いが発生する際に反応の見られる「顔」、「喉」、「腹」の3つの身体部位に着目し、それらの動きを計測する「3点計測システム」を用いて、笑い発生時の各身体部位の反応の有無を検出することから笑いの客観的な分類を試みるとともに、それらの組み合わせから笑いを論理的に8つのパターンに分けて捉える「笑いの分類モデル」を導出した。「3点計測システム」の視座から人間の笑いを客観的に把握・分類することは、「笑い」の多様性に対して新たな視点を提起することにつながり、日々の生活の中で忘却されがちな私たち人間の笑いのあり方を自覚的に捉えるための契機になると考えられる。
著者
昇 幹夫
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.1, pp.26-30, 1994-07-09
被引用文献数
1
著者
瀬沼 文彰
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.13, pp.62-70, 2006-07-08
著者
浦 和男
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.3-16, 2013-08-31 (Released:2017-07-21)

明治になり、日本に近代の文学が確立する時期に、文壇でいろいろな論争が起こった。そのひとつに、「滑稽文学の不在」論争がある。20年代末、「太陽」の編集をしていた若き高山樗牛が、すでに文豪として高名な坪内逍遥のエッセーに対して、そのユーモア観を批難し論争が始まる。その論争は、「ユーモアとは何か」から「滑稽文学の不在」論争となり、やがて「文学における滑稽の不在」が問われ、それが「笑わない国民」という点にまで達した。執拗な樗牛の批判に逍遥は無視を決めていたが、最後には樗牛は「笑殺」、逍遥は「笑倒」という語を使うまでになった。一年ほどで二人の論争は鎮まるが、論争は飛び火し、地方紙でも「滑稽の不在」に関する記事が掲載され、明治末年まで「笑いのない文学」が論じられた。本稿では、「日本人はユーモアがない、笑わない」という問題の起源ともなる、この論争を考証し、近代ユーモア史の一面を明らかにする。
著者
鵜子 修司 成瀬 翔
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-44, 2021 (Released:2022-03-31)

ユーモアについては、古来より多くの理論が提唱されてきた。しかし現代に至っても、ユーモアに関わる諸現象を統一的に説明する理論は完成していない。しかし近年、ユーモアの統一理論とみなしうる候補が提唱され始めている。無害な逸脱理論(benign violation theory: BVT)も、そうした候補の一つである。BVTは提唱者らによる精力的な研究により、国外では注目を集めているが、本邦での知名度は未だ高くない。またBVTの批判的検討は国内外を問わず現時点では行われていないと思われる。本稿では、主にMcGraw & Warren(2010)およびWarren & McGraw(2016)の論文に基づき、BVTの想定、および関連する実験の概要を紹介した上で、BVTの長所と問題点について検討した。結論として、BVTには多くの長所がある一方で、無視できない問題点もある。従って、BVTは現時点では支持できない理論だとみなされた。
著者
北垣 郁雄
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.71-89, 2022 (Released:2023-02-27)

本ノートでは、笑いを主旨とするイグノーベル賞受賞作品に関し、日本の業績の定性分析と定量分析を行う。その結果を参照しつつ、「笑いを含むイノベーション」を考察することを目的とする。 定性分析については、笑いの諸理論を援用して受賞作品の特徴を抽出する。まず、その諸理論の解釈を行うとともに、理論間の関係を調べる。次に、その中の価値論を取り上げて、価値の構造を図式化する。その構造表現を援用しつつ日本人による受賞作品を解釈する。また、笑いの感情の誘発要件に言及するとともに、その誘発モデルを提案する。 定量分析については、受賞数を国別に求め、日本が先進国の中でも高い業績を有する国であることを述べる。 また、日本のビジネスを中心にして、今後のイノベーションを考察する。多くのイグノーベル賞受賞作品が「イノベーション」を志向していることを述べるとともに、「笑いを含むイノベーション」を図る際の留意点をまとめる。そして、STEM(理工学)の拡張として、「笑い(Laughter)を含むイノベーションSTLEAM」を図ることを事例提案している。
著者
小向 敦子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究
巻号頁・発行日
no.19, pp.97-108, 2012-07-21

「ぽっくり死」や「ぴんぴんころり」は、シニア層を中心に用いられている造語である。同時に彼らにとっては、標語ともなっているようで、近年ぽっくり寺参りが流行し、ピンコロ商品が売り上げを伸ばしている。しかし百寿者が4万人を超える世界第1位の長寿王国である日本で、それこそ百年も長く生きた後に、ぽっくり・ころりと死ぬことが本当に本望なのだろうか。この方向を目指すことが、本当に正解なのだろうか。平均寿命が短い他国で天逝する人であれば、死にたくないのに死ぬのが精いっぱいで、仕方ない。だが「石の上」という名の「老年期」にも30年鎮座し、老いがいを享受した熟練シニアの死は、彼らと一緒にされるべきではない。では一体何がなされるべきなのか。世界王者の宿命でもあろうが、模倣することができるモデルのいない私たちに、手を差し伸べてくれたのは、やはりユーモアであった。ユーモアが逝き方の質を変える、その可能性を模索する。
著者
佐藤 建
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.83-90, 2010-07-10 (Released:2017-07-21)

漫才を面白くしている笑い要素は、漫才固有の要素と、論文“落語の面白さの数値的表現”で整理した笑い誘発要素、およびその派生要素とで構成されている。物語の舞台設計と登場人物が発する笑い要素との相互作用で笑いを取る構成は、基本的に落語と同じであるが、落語比較で物語性がなく、相互作用も弱い。むしろ漫才師の人間特性が台本の主要部を成す傾向が強まっている。漫才の台本に見られる笑い要素を整理して、永続性のある笑いの視点からそれらの要素の時代的推移を論じた。