著者
浅井 隆志 野崎 智義 佐貫 潤一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

Toxoplasma gondiiに特異的と考えられていたジチオスレイトールにより活性化されるヌクレオシド三リン酸加水分解酵素(NTPase)が最近新種として登録された細胞内寄生原虫Neospora caninumにも存在ことを明らかにした。この酵素(NcNTPase)の遺伝子の塩基配列を調べたところ、予想アミノ酸数は626でT.gondiiのそれより2残基少なく、545と546番目のアミノ酸が欠落していること、NcNTPaseには二つ以上のサブタイプがあることが判明した。またNcNTPaseはT.gondiiに二つあるNTPaseアイソザイムのNTPase-IおよびNTPase-IIと約69%のアミノ酸配列が相同であった。また酵素学的性質はNTPase-Iに似ていた。このNcNTPase遺伝子組換体を作製し、ヒトIgG抗体との反応性を酵素抗体法(ELISA)で調べた。健常人のIgG抗体とNcNTPaseは反応せず、色素試験陽性者(T.gondii感染者)のうち一部のIgG抗体だけがNcNTPaseに反応し陽性であったが、しかし殆どのIgG抗体は全く反応しなかった。一部の陽性例は当然N.caninum感染が疑われたが、両虫体の全抗原を用いたウエスタンブロット法による精査の結果、両感染者ともNcNTPase以外のN.caninumのどの抗原とも反応しないが、多数のT.gondii抗原と反応することから、この陽性例のN.caninum感染は否定された。このことから、NcNTPaseはN.caninumのエイズなど免疫不全患者における人体寄生例の検索に有用な抗原であることが示唆された。
著者
竹下 明裕 古牧 宏啓 浅井 隆善 梶原 道子 岩尾 憲明 室井 一男
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.711-717, 2016-12-20 (Released:2017-01-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

近年,若年者の献血人口の減少が問題になっている.将来の献血を担う,高校生の献血に対する意識調査を行うことは献血の将来を考えていく上で重要である.アンケート方式による50項目の意識調査を行い,献血に関する高校生への広報や教育の現状と高校生の意識を調査した.調査は連結不可能の疫学調査として行い,35校中30校から協力が得られ,調査対象16,333人のうち15,521人(95.0%)より回答を得た.男性49.3%,女性は49.8%であった.献血を経験した高校生は1,198人(7.7%)で,未経験者は88.6%であった.疲労感や睡眠不足,ダイエット等は採血の際に注意すべき生活習慣である.献血可能年齢と体重,献血場所,献血に関わるリスク,血液の海外依存度等の献血に関する知識は不十分であった.献血への関心度は献血経験のある高校生で高く,初回献血の重要性が示唆された.高校への出張献血や献血に関する授業は献血を推進していく上で有用である.しかし献血に関する教育手法と普及活動にはさらに工夫が必要であると思われる.
著者
浅井 隆
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.18, pp.263-269, 2011-01

判例評釈(労働法)【評釈判例】【事実関係】【判決の内容】【本件事件を巡る社会的背景と企業実務への影響度】【本件判決の意義】
著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.440-449, 2011 (Released:2011-06-28)
参考文献数
24

過去には気管チューブによる気道粘膜壊死や気管狭窄などの重篤な合併症が起こることが比較的多くあった.現在においても,麻酔導入後の換気困難の最大の原因は繰り返した気管挿管処置であるとされている.また,気道確保が容易な症例においても喉頭損傷などは無視できない頻度で起こっている.これらのことから,気管挿管が困難か困難でないかにかかわらず,侵襲の小さなカフと先端を持つチューブで,挿管成功率の高いものを使用すべき,だと言える.スパイラルチューブ,パーカーチューブ,挿管用ラリンジアルマスク用チューブなどがこれらの条件を満たすと思われるため,これらのチューブを積極的に使用すべきだと思われる.
著者
浅井 隆之 藤田 志歩 塩谷 克典 稲留 陽尉
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.31, pp.92-93, 2015

ニホンザルの農作物被害対策において、農家によって動物の生態についての理解や対策への意識に差があることが、集落ぐるみの取り組みを行う上での障害となっている。しかし、どのような要因が農家の意識に隔差をもたらすかについては科学的な解析がほとんど行われていない。本研究は、ニホンザルによる農作物被害の程度が農家の対策意識や加害動物に対する感情にどのような影響を及ぼすかについて明らかにすることを目的とし、被害農家を対象に聞き取り調査を実施した。まず、対象地区を選定するため、鹿児島県薩摩郡さつま町および伊佐市において農作物被害を出している群れについてラジオテレメトリー調査を行い、その結果から、群れの出没頻度が異なるA、BおよびC地区を対象に選んだ。3つの地区の住民計19人からの回答を用いて、被害の実態やその対策、およびニホンザルに対する感情に関する8つの質問項目について主成分分析を行い、各主成分の得点を地区間で比較した。さらに、各農家の主成分得点と、被害の頻度、量、年数および季節それぞれとの相関を調べた。その結果、ニホンザルの生態についての理解度を表す第1主成分と嫌悪や憎悪の感情の強さを表す第3主成分は、被害がより古くからあり、被害頻度の高いA地区で最も高く、対策意識の高さを表す第2主成分は、被害は古くからあるが、その頻度は小さいB地区で高かった。一方、被害の年数が最も浅く、その季節が限定的なC地区では、第1、第2および第3主成分のいずれも得点が最も低かったが、恐怖の感情の強さを表す第4主成分の得点は最も高かった。また、各農家の主成分得点と被害の程度との関連では、第2主成分と被害の頻度との間にやや高い正の相関がみとめられた(r = 0.70, <i>P</i> < 0.05)。以上より、地区レベルおよび農家レベルのいずれにおいても、ニホンザルによる被害の程度によって農家の意識格差が生じることが示された。
著者
山田 高成 橋本 雄一 浅井 隆 滑川 元希 中川 雅史 古谷 健太
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.447-461, 2021-05-01

「全身状態が悪いので局所麻酔で手術してみたのですが,結局うまくいかなかったので,麻酔科管理でお願いします!」外科医からこう依頼されると気持ちは複雑だ。麻酔科医冥利に尽きる機会に間違いないと思う反面,よほど状態の悪い患者に違いない。聞けばこれまでに術後抜管困難で気管切開したことがあるとか。しかも腎移植後で,血管閉塞の手術をしたいとのことである。今回は気管切開せずに済むかな…,大事な腎臓も守り切れるか…。あれ,頸から何か入っている! ミニトラックだ! 抜いていいのか? こんな時は…そうだ,LiSAの症例カンファレンスで全国の麻酔科医に相談しよう! というわけで,先生方,お力をお貸しください!
著者
松本 早苗 浅井 隆 新宮 興
出版者
克誠堂出版
雑誌
麻酔 (ISSN:00214892)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.213-217, 2007-02
著者
浅井 隆
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.608-612, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1

麻酔導入後にマスク換気が困難で,下顎挙上によっても上気道閉塞が十分に解除できない場合には,適切なエアウェイを挿入する.エアウェイには経口と経鼻があるが,マスク換気困難な場合,侵襲の少ない経口エアウェイを選択する.しかしエアウェイ挿入によっても換気困難な場合,声門上器具の挿入を試みる.声門上器具は,マスク換気が困難なときの“レスキュー”器具として役立つ可能性がある.“挿管不能,換気不能”という緊急時には,挿入が容易で,換気の成功率が高い声門上器具を使うとあらかじめ決めておくのがよい.そしてすべての医療従事者は,いざというときにこれらの器具を確実に挿入できる能力を普段から身につけておく必要があろう.
著者
横田 朗 深沢 元晴 中世古 知昭 石井 昭広 池上 智康 木暮 勝広 西村 美樹 松浦 康弘 森尾 聡子 中村 博敏 王 伯銘 比留間 潔 浅井 隆善 田辺 恵美子
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-39, 1996 (Released:2009-04-28)
参考文献数
12

症例は36歳男性。12歳時より尋常性乾癬を発症し,ステロイド外用剤およびPUVA療法を行ったが,改善は軽度であった。1987年再生不良性貧血を発症。各種治療が無効のため,1993年同種骨髄移植を行った。移植前処置はtotal lymphoid irradiation 7.5 Gyとcyclophosphamide 200 mg/kgで行い,GVHD予防はcyclosporin A + short term methotrexateで行った。移植前の乾癬の活動性は高く,全身性に融合傾向の強い紅斑が多発し,著しい爪の変形も認められた。移植後十分な造血の回復とともに,皮疹は消失し,爪の変形も改善した。乾癬の発症には免疫学的機序の関与が知られているが,同種骨髄移植による細胞性免疫の再構築により乾癬の消失が得られたと考えられた。難治性の免疫異常による疾患に対して,同種骨髄移植が一つの治療法となり得ることが示唆された。
著者
藤井 康彦 松崎 道男 宮田 茂樹 東谷 孝徳 稲葉 頌一 浅井 隆善 星 順隆 稲田 英一 河原 和夫 高松 純樹 高橋 孝喜 佐川 公矯
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.374-382, 2007-06-20 (Released:2008-10-31)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

輸血過誤によるABO型不適合輸血は, 最も重要な輸血副作用である. 輸血学会は, 300床以下の施設を含む1,355病院を対象とし, 匿名で, 調査を行った. 全血, 赤血球製剤, 凍結血漿, 血小板製剤を対象とし, 2000年1月から2004年12月の5年間に, 発生したABO型不適合輸血の解析を行った. 1,355病院中829病院 (61.2%) から回答があり, ABO型不適合輸血60件が報告された. 原因となった製剤は, 赤血球製剤 (Major Mismatch 22件, Minor Mismatch 9件), 凍結血漿19件, 血小板製剤8件, 不明2件であった. 原因別では, 輸血実施時の患者・製剤の照合間違いが27件 (45%), 血液型検体採血間違いが2件 (3%), 主治医の輸血依頼伝票の記入間違いが8件 (13%), 医師による輸血検査の間違いが10件 (17%), 検査技師による輸血業務の間違いが10件 (17%), その他3件 (5%) が報告された. 赤血球製剤 (Major Mismatch) の不適合輸血により8例の死亡例の報告があった. 4例では死亡の原因は原疾患による可能性があるとのコメントがあった. 依然として「輸血実施時の患者・製剤の照合間違い」がABO型不適合輸血の最大の原因であった.