著者
大久保 賢一
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.127-141, 2015-02-25

本論文では、日本行動分析学会「体罰に反対する声明」を受け、学校場面における「体罰」に依存しない行動問題に対する適正手続きについて解説する。まず、わが国における児童生徒が示す行動問題に対する懲戒や出席停止、あるいは有形力の行使などの適正手続きについて紹介し、「体罰」と懲戒の線引きに関する課題を明らかにする。そして、タスクフォースが声明において何に反対し、何に反対しないのかということをより明確にする。さらに、声明において推奨されているポジティブな行動支援の一例として、米国において普及しつつあるSchool-wide Positive Behavior Support (SWPBS)について紹介し、行動問題に対する予防的で階層的、そしてシステムワイドな支援モデルについて紹介する。米国の「障害のある個人教育法」(individuals with Disabilities Education Act: IDEA)において定められている学校教育における懲戒ルールについて解説し、適切な支援を行うことを前提とした行動問題への適正手続きについて言及する。
著者
丹野 貴行 坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.109-126, 2011-02-02

Herrnstein(1961)のマッチング法則の発見からこれまでの半世紀の間、微視と巨視をめぐる論争は行動分析における重要な課題の1つであると認識されてきた。本稿ではこの微視-巨視論争を3つの論点に分類・整理し、そこからこの論争の今後の展望を探ることを目的とした。1つめの論点は"強化の原理"であった。行動を制御しているのは、行動と強化の間の微視的な接近性だろうか、あるいは反応率と強化率の間の巨視的な相関性だろうか。2つめの論点は"分析レベル"であった。反応-強化間の関数関係を適切に記述するには、単一の反応と単一の強化という微視的な関係を用いるべきだろうか、あるいは反応率と強化率という巨視的な関係を用いるべきだろうか。そして3つめ論点は"行動主義"であった。ここ20年の間にpost-Skinner的な行動主義がいくつか提案されてきたが、本稿ではそれらを機械論とプラグマティズム、あるいは動力因的説明と目的因的説明といった対立軸から、微視的行動主義と巨視的行動主義とに分類・整理した。ここでの問題は、どちらの行動主義がより生産性のある行動の科学を導けるかということである。我々はこれら3つの論点をまとめ、そこから微視-巨視論争の今後の方向性を論じた。
著者
佐藤 美幸 佐藤 寛
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.72-81, 2014-02-14

研究の目的 本研究では、大学生を対象として阻止による弱化を用いて授業中の私語を低減する介入を実施し、その効果を検証すると同時に、介入効果が介入終了後も維持するかどうかを検討することを目的とした。研究計画 介入クラスと統制クラスを設定し、ベースライン、介入、フォローアップからなるAB+フォローアップデザインを用いた。場面 大学の授業場面(同一科目2クラス)において実施した。参加者 介入クラスの学生数は123名(男性35名、女性88名)、統制クラスの学生は121名(男性38名、女性83名)であった。介入 授業協力点を用いた好子出現阻止による弱化を実施した。行動の指標 授業中の私語の有無を記録した。また、従属変数として授業評価アンケートの評価点を用いた。結果 介入クラスにおいてベースライン期よりも介入期に私語が低減していたが、統制クラスでは私語が増加していた。しかし、介入の維持効果は確認できなかった。結論 本研究で実施した介入は私語の低減に一定の効果が見られた。今後の研究において、即時フィードバックの効果について検討する必要があることが示唆された。
著者
庭山 和貴 松見 淳子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.42-50, 2012-07-25

研究の目的 応用行動分析の技法を組み合わせた訓練パッケージが紋付袴の着付けの改善に及ぼす効果を検証した。研究計画 ABCAデザインを用いた。場面 大学の能楽部部室において行われた。参加者 大学能楽部に所属する男子大学生3名であった。介入 正確な紋付袴姿の10条件からなるチェックリストを作成した。ベースライン(A)後の介入1期(B)では正確な紋付袴姿および着付け行動の言語的教示とモデル呈示、身体的ガイダンス、行動リハーサル、フィードバックを行った。介入2期(C)では訓練者によるフィードバックを自己記録へ部分的に移行させた。介入2期の後、ポストテスト(A)を実施した。行動の指標 正確な紋付袴姿の10条件からなるチェックリストの得点率を、正確な紋付袴姿の正確性として定義し、従属変数として用いた。結果 介入の結果、すべての参加者の紋付袴姿の正確性が改善し、第三者による評定においても参加者らの紋付袴姿がよりきれいになったとの評定が得られた。また、介入から約10ヶ月後のフォローアップにおいて介入効果の維持が確認された。考察 応用行動分析の技法を組み合わせた訓練パッケージは和服の着付けの改善に対しても有効であることが示された。今後は本研究で対象とした紋付袴の着付けの正確性の改善だけでなく、流暢性の改善も目指した研究を行うことが考えられる。
著者
望月 要 佐藤 方哉
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.42-54, 2003-04-20

本稿は行動分析学の立場から"パーソナリティ"の概念的分析と実証的研究の展望を試みたものである。従来、人間の個体差を示すパーソナリティ"という概念は、個体の内部にあって、その人間の行動を決定する仮説構成体と考えられてきた。この定義は現在でも広く用いられているが、言うまでもなく、行動の内的原因を排除する行動分析学からは容認できない。しかし、"パーソナリティ"について行動分析学の立場から新たな定義を与えることは不可能ではない。本橋ではパーソナリティ"に対して「特定個人の行動レパートリーの総体」という定義を、まだパーソナリティ特性"に対して「個人において安定している共通の制御変数によって制御されるレスポンデントおよびオペラントのクラス」という行動分析学的な定義を提案し、これに基づいてパーソナリティ特性"の概念的分析を行なうとともに、行動分析学的立場から行なわれた幾つかの実証的研究について展望を試みた。行動分析学は行動を制御する主要な制御変数の探求を完了しつつあり、今後は、制御変数間の相互作用の分析に力を注ぐべき段階にさしかかっている。制御変数の相互作用を解明するとき、同一環境下で発生する行動の個体差は研究の重要な糸口となり、その意味においても行動分析学における個体差研究の意義は大きい。
著者
平澤 紀子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.33-45, 2009-03-30

発達障害者の行動問題は、教育や福祉の制約をもたらしやすい。本研究では、エビデンスに基づく支援によって、こうした課題を解決するために、応用行動分析学がどのように貢献しうるのかについて、米国の動向を基に、わが国の現状を踏まえて検討した。米国においては、公的機関や関係団体が応用行動分析学の支援方法を推奨していた。そのエビデンスとして、シングルケース研究のメタアナリシスは、行動的介入が重度から軽度の知的障害を有する発達障害者の自傷や攻撃、常同行動を中心として、行動問題の低減に一定の効果をもち、機能的アセスメントがその効果に貢献していることを示していた。一方、適応行動の拡大を目指すpositive behavior supportは、エビデンスに先行して、障害のある個人教育法(IDEA)に反映され、急速に拡大していた。その背景には、米国における権利保障の制度的基盤や教育改革において、対象者の権利を保障する実質的な方法論を求める動きがあった。権利保障の基盤が不十分なわが国においては、行動問題に対する支援方法の不備が教育や福祉の制約に直結しうる。したがって、応用行動分析学のエビデンスに基づいて対象者の権利を保障していくことが極めて重要となる。そのためには、教育・福祉現場や行政当局と協働したエビデンスの開発や使用の方向性が考えられた。
著者
望月 昭
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.114-115, 2008-03-31
著者
武藤 崇
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.7-23, 2007-06-30
被引用文献数
1

本稿の目的は、従来からなされてきた特別支援教育に対する行動分析学の寄与を普通教育にまで拡大することの必要性を検討することである。そのため、(1)徹底的行動主義の観点から、現状の特別支援・普通教育に対する新たな問題解決の方向性を明示し、(2)その方向性を支持・示唆する欧米の研究動向を概観し、(3)その概観を踏まえた今後の課題を提示する、という3つの部分から構成されている。その新たな問題解決の方向性とは、(a)学校の構成員全体に関係する社会的随伴性、(b)学級内での一斉指導における教授・マネジメント方法、(C)教育サービスの「質」のマネジメント方法、という3つの事項に関する検討である。
著者
中島 定彦
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.160-176, 1995-06-15
被引用文献数
1

多くの動物(ヒトを含む)研究が見本合わせ手続きまたはその変法を、記憶(想起行動)、注意、概念、刺激等価性の研究法として用いてきた。この論文の前半ではそれらの手続きを、実験者が動物に要求する行動という観点から、選択型見本合わせ、Go/No-Go型見本合わせ、Yes/No型見本合わせの3つに分類した。見本合わせ手続きはまた、第1標準見本刺激と第2テスト比較刺激との対応関係から、同一見本合わせ、象徴見本合わせ、非見本合わせに分類できる。さらに、見本刺激と比較刺激との時間的関係から、同時見本合わせと遅延見本合わせに分類される。論文の後半では、見本合わせ手続きの多くの変法を、この手続き内で生じる出来事の系列に沿って分類した。
著者
サトウ タツヤ 渡邊 芳之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.55-58, 2011-07-25
被引用文献数
1