著者
伊田 政司
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.21-37, 1989-03-31

The voluntary aspect of television watching behavior, which can be measured using conjugate reinforcement method, is a factor which needs to be examined in rating audience of TV programs. This study examined how response rates of TV watching behavior vary as a function of the number of times the subjects watch the same program. It also examined whether the response rates differentiated according to different types of programs. It was found that response rates decreased as a function of the number of repetition and that they differentiated according to the different pro-grams. The method used in this study provides an operational definition of voluntary aspect of TV watching behavior which has not been taken into account in previous surveys.
著者
坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.5-17, 2005-04-25

ヒトを参加者とした研究の倫理基準(American Psychological Association, 1992版)は以下のようにまとめられる。(1)倫理的自己制御とその限界、(2)他者の権利の尊重、(3)より上位の規定や勧告の遵守、(4)強制のない参加の保証、(5)情報操作の禁止、(6)秘密の保持。このうち、はじめの2つのクラスターを除けば、それらは参加者の対抗制御、特に倫理審査機関、説明付き同意(書)、そして倫理的問題の事例の歴史に関するインターネットによる情報の公開を利用した対抗制御と深く関連している。研究参加者による、対抗制御の行使のための環境随伴性の設計が倫理的行動を促進するために必要であるが、ルール支配行動といった、その他の倫理的行動の特性もその設計が計画される際には考慮されなくてはならない。最後に、従来の応用倫理学的なアプローチに対する可能な候補として、行動倫理学を提案することができる。なぜなら、この学は、ルール支配行動と対抗制御についての概念的、実験的、応用的分析を用いることで、倫理的行動の具体的な環境制御を研究することが可能であるからである。
著者
中野 良顯
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-51, 2005-04-25

この論文では、臨床場面でサイエンスに徹し効果の実証された最善の技法を提供することが、行動分析家の倫理であることを主張する。サイコロジストが臨床場面でサイエンスに徹するべきであるという三張は、行動分析の内部より外部で強調された。主役となったのはより大きな時代精神としての「エビデンス・ベースの医学(evidence-based medicine, EBM)」の一環であるアメリカ心理学会第12部会特別委員会による「経験的に支持された治療(empirically supported treatment, EST)」運動だった。委員会の使命は経験的に支持された治療を同定する基準に無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)を含め、それに合格した治療をリスト化し、その情報を普及促進することだった。ESTとして同定された児童版心理療法の数は少なく、自閉症などの領域でのESTは見出されていない。日本に行動分析の倫理を確立する上で考慮すべきEST運動の展望から得られた課題は、マニュアルとRCTを使った臨床研究を拡大すること、内外のEST文献の組織的展望を奨励すること、そして実践家がESTを提供しうるシステムを確立することである。
著者
久保田 新
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.70-79, 1996-08-05

本試論は、随伴性により形成された行動とルールにより統制される行動の関係に関わる形で、一片の情報が「物」と「振る舞い」によって構成されること、また、その構造がその情報にアクセスする他の振る舞いを通じて階層的、ないし再帰的になると仮定することが可能か否かを問う。現代の、文明化されコンピュータ化された人間社会では、大量の情報が、もともとの、そして変化し続ける随伴性から切り離されて<物化>する、即ち、情報のダイナミックな構造が柔軟性を欠いて固着する傾向にある。柔軟な情報へのアクセスが実現できるよう随伴性をよりよくアレンジするためには、もともと情報の持っていたダイナミクス、つまり、もともとの随伴性を、最低限シミュレーンヨン的な環境において再活性化することが重要である。そのために、試論では、三項随伴性が、一見階層的に見え変化し続ける環境とその中で行動を発し結果を受け取る自己との関係を充分に説明できるかをも問うべきだと論じる。同様の再考が、ルールの理解が含まれる現実的な研究・教育システムなどの他の分野でも、従って、理論的な行動分析そのものにおいても要求されていると考える。
著者
菅佐原 洋
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.13-25, 2013

研究の目的 携帯電話を用いた行動分析学用語の学習において、見本合わせ(MTS)教材とリスト教材の有効性の比較を目的とした。研究計画 刺激セット間多層ベースライン法の変法を用いた。場面 筆記試験による評価は、大学の一室で実施し、介入は、各参加者の所有する携帯電話を使用して行われた。参加者 行動分析学の学習に興味をもつ大学院生5名が参加した。介入 介入条件では2つの訓練を行った。訓練Aでは、用語の定義文に対応した正しい用語を選択できるMTS教材が用いられ、訓練Bでは、用語と定義文を同時に閲覧することができるリスト教材が用いられた。行動の指標 用語の定義文に対応した正しい用語を記述する問題の正答率を使用した。結果 プローブ評価、および1ヶ月後、3ヶ月後のフォローアップ評価において、リスト教材よりもMTS教材の平均正答率が高かった。結論 参加者間で平均正答率に変動性が見られたが、MTS教材のほうが、用語の獲得と維持において、有効である可能性が示唆された。
著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.2-12, 2013-07-31

研究の目的 発達障害のある生徒が在籍する高等学校の学級において、学業達成を支援するために、相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入を実施し、その効果、ならびに介入受容性を検討した。研究計画 ベースライン条件、相互依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件、非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件によるABCデザインを2クラスで実施した参加者間マルチベースラインデザイン。場面 定時制高校の授業内で行われた漢字テストの場面。参加者 高校1年生の2クラスとそこに在籍する発達障害のある生徒4名。独立変数の操作 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入。パフォーマンス指標 学級全体の強化基準への達成率、漢字テストの得点、および介入受容性尺度得点。結果 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件は、学級全体のテスト得点の増加に影響を与えたことが考えられた。各介入条件の介入受容性得点も高得点を示した。結論 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件により、発達障害のある高校生を含んだ学級全体の学業達成を促進した。また、この介入条件の社会的妥当性も示された。
著者
村中 智彦 藤原 義博 伊藤 さと子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.58-75, 2007-07-30
被引用文献数
1

研究の目的 知的障害児の個別指導において、逸脱反応の生起を防ぎ課題遂行反応を高める最適な試行間間隔(ITI)の設定を検討することを目的とした。研究計画 ITIの量的な相違が従属変数に及ぼす効果を検討するために反転計画法(B-A1-B-A2-Bデザイン)を適用した。場面 大学での机上課題を行う個別指導。対象児 2名の知的障害男児で、S1は10歳、S2は8歳であった。独立変数の操作 見本合わせの難度が異なる絵カード課題と単語カード課題の遂行事態で、ITIを0秒として教示を遅延しない(ND)条件、5カウントの間隔で教示を遅延する(5D)条件、3カウントの間隔で教示を遅延する(3D)条件を実施した。行動の指標 (1)課題遂行反応(絵や単語カードを取る、台版に置く)の潜時2秒以内の反応数の割合、(2)逸脱反応(離席、絵や単語カードを口に入れる)の割合であった。結果 (1)S1のカードを取る課題遂行反応の潜時2秒以内の反応数の割合は、両課題に共通してND条件で高く5D条件と3D条件で低下した。S2のカードを取る反応は、絵カード課題ではND条件で高く5Dと3D条件で低下し、単語カード課題ではNDと3D条件で高く5D条件で低下した。S2のカードを台版に置く反応は、両課題に共通して実験後半のND条件で5Dと3D条件よりも高かった。(2)S1、S2ともに、カードや指を口に入れる・折る逸脱反応が、両課題に共通して実験後半の5Dと3D条件でND条件よりも高かった。結論 対象児がいつでも課題遂行できるようにITIを0秒として教示を遅延しない設定が最適であることが確認された。
著者
小笠原 恵 氏森 英亜
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-56, 1990-09-30

本研究では、重度の精神発達遅滞児の要求言語形成のために、機会利用型指導法にマンド・モデル法を付け加えた指導法を導入した。本児のマンド発現を促すために、強い強化機能をもつと推測される遊具を導入し、その効果を検討した。また、指導者からの言語的手掛りや言語モデルを除去していく手続きの検討を加えることを目的とした。そのために本児がベースライン期に最も長い時間遊んでいたことから、強化機能が強いと推測されるブランコを本児が一人では乗ることの出来ない高さまで上げた。そのうえで、本児がブランコに触った時に、指導者は「なーに」という言語的手掛りを与え、反応が無いときには「やって」という言語モデルを示した。介入期1では言語モデルを、介入期2では言語的手掛りを固定遅延呈示し、介入期2で言語モデルを、フォローアップ期で言語的手掛りを除去した。その結果、介入期1では、マンド・モデル法を導入することにより、反応型を形成できた。介入期2では言語的手掛りに反応するという日常場面でよくみられる自然な形での反応へと移行した。さらに、言語的手掛りも除去し、ブランコという物理的刺激および指導者の存在という対人的刺激のみにしたフォローアップ期でも、一定水準の要求語の自発がみられた。