著者
小井田 久実 園山 繁樹 竹内 康二
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.120-130, 2004-06-30

PECS(The Picture Exchange Communication System)は、自閉性障害児や発達障害児に対して、自分から始発する機能的なコミュニケーション行動を比較的短期間で教える訓練方法であり、FrostとBondyにより開発された。PECSは拡大・代替コミュニケーションの領域で確立され、その理論的背景には応用行動分析学の原理が組み込まれている。PECSトレーニングマニュアルの初版が1994年に、改訂版が2002年に出版された。PECSでは最初に、欲しい物を表す絵カードを聞き手に手渡して、欲しい物の実物を受け取ることから教え、最終的には、絵カードを用いて文を作ることや、要求行動の一部として色や形などの属性の理解と表現を促すこと、簡単な質問に答えることなどを教える。PECSは、叙述言語行動としての機能よりも先に要求言語行動としての機能を発達させることを強調する。本論文では、PECSの特徴、その具体的手続き、PECSによるコミュニケーション訓練の効果、今後の課題について述べた。
著者
下山 真衣 園山 繁樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.30-41, 2010-09-23

研究の目的 激しい自傷行動を示す自閉性障害児を対象にカリキュラム修正と前兆行動を利用した代替行動の形成を行い、自傷行動の軽減に対する効果を検討した。研究計画 フェイズ1と2のみ場面間多層ベースラインデザインを用いた。場面 大学相談室及び小学校の特別支援学級で行った。参加者 特別支援学級に在籍する9歳の自閉性障害男児1名が参加した。介入 フェイズ1では学習課題に対象児の好きな物を取り入れ、課題の順序を選択できる内容に変更した。前兆行動が生起したときに、フェイズ2では対象児に前兆行動が生起したことを担任が知らせてから休憩をとらせ、フェイズ3では対象児が休憩要請をした場合に休憩をとらせ、フェイズ4では対象児が軽く机を叩くようにした。行動の指標 問題行動と代替行動の生起頻度についてデータを収集した。結果 フェイズ2までで激しい自傷行動は減少し、フェイズ3とフェイズ4では休憩要請行動が増加し、自傷行動はほとんど生起しなくなった。結論 カリキュラム修正を行い、前兆行動を利用することで激しい自傷行動を減らし、代替行動を促進する可能性が示された。
著者
望月 要
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-36, 1996-05-25

PsycLITによる心理学文献検索の結果を評価するプログラムを製作した。PsycLITはCD-ROMで供給される心理学文献データベースで、近年大学図書館などに普及している。この検索結果をダウンロードし、個々の文献について検索者が自分の検索意図に合致したか否か判断しマークしたファイルをもとに、DEAPは、デスクリプタ(検索のキーワード)の種類と出現頻度を分析する。DEAPを使うことで、検索者は検索意図に合致した文献に付されていたデスクリプタと、合致しなかった文献に付されていたデスクリプタの種類と頻度、重複しているデスクリプタを知ることができ、次回の検索のために、検索方略を洗練させるための情報として活用することができる。DEAPはjperlで書かれMS-DOS及びUnixを搭載したコンピュータ上で利用可能である。
著者
根木 俊一 島宗 理
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.59-65, 2010-01-30

目的合気道の技の一つである"座技呼吸法"の指導における行動的コーチングの有効性について検討した。研究計画参加者間の多層ベースライン法を用いた。場面大学内の道場にて訓練セッションを行った。参加者合気道部の女子学生3名が初心者として参加した。介入課題分析により"座技呼吸法"を5つの下位技能として定義し、モデリング、順行連鎖化、言語賞賛による分化強化の組み合わせにより指導した。行動の指標各試行において5つの下位技能それぞれの生起/非生起を記録し、0-5点で得点化した。社会的妥当性を検討するために参加者に聞取り調査を実施した。また外的妥当性を検討するため、第三者に訓練前後の参加者の技を観察し、評定してもらった。結果訓練により、全参加者において得点が上昇した。社会的妥当性、外的妥当性についても確認できた。結論これまで球技や水泳などで確認されていた行動的コーチングの有効性が合気道という武道においても示された。

2 0 0 0 罰なき社会

著者
B.F スキナー
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.87-106, 1991-03-31
被引用文献数
2
著者
遠藤 佑一 大久保 賢一 五味 洋一 野口 美幸 高橋 尚美 竹井 清香 高橋 恵美 野呂 文行
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-30, 2008-03-30

研究の目的 本研究では、小学校の清掃場面において相互依存型集団随伴性マネージメントによる介入を行い、学級全体の清掃行動に及ぼす影響について検討することを目的とした。研究計画 ABABデザイン、ABデザイン、そして多層ベースラインデザインを組み合わせて用いた。場面 公立小学校の通常の学級において本研究を実施した。参加者 小学5年生の2つの学級の児童が本研究に参加した。2つの学級の児童数はそれぞれ23名、24名であった。介入 それぞれの清掃場所において、担当している児童を2つのグループに分け、残されていたゴミの数や大きさについて相互に評価を行った。評価得点の高いグループから好きな場所を次の清掃場所として選択することができ、順位に応じてシールが与えられた。さらに、学級全体の獲得得点が基準を超えた場合は、学級全体に対してバックアップ強化子が与えられた。行動の指標 清掃行動に従事していた人数の率、清掃場所の「きれい度」、そしてグループのメンバーが集合するまでの所要時間を測定した。結果 介入条件において清掃行動の従事率が増加し、「きれい度」が高まり、集合するまでの時間が短縮された。また、児童と教師の両方からプログラムに対する肯定的な評価が得られた。結論 通常学級における行動マネージメントに、相互依存型集団随伴性の適用が有効であった。また、手続きの社会的妥当性も示された。
著者
Chambless D. L. Ollendick T. H. 西村 美佳
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.81-105, 2005-04-25

アメリカ合衆国における、証拠に基づく心理療法(evidence-based psychology)の実践を増加させようとする努力の結果、経験的に支持された心理的介入についての情報を明らかにし、同定し、普及させるための特別委員会が組織されるに至った。この論文ではアメリカ合衆国やイギリスなどにおける、経験的に支持された処遇(empirically supported treatment, EST)を展望した特別委員会や他のグループの活動成果と、ESTとして同定された処遇のリストを要約して示すことにする。研究方法論や、外的妥当性や、研究の有用性、そしてEST展望過程の信頼性と透明性を含めた、ESTの同定と普及をめぐる論争についても、展望することにする。
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
友永 雅己
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-57, 1991-09-30
被引用文献数
1

条件性弁別訓練の経験を持つ1頭のチンパンジーを被験体として、すでに条件性弁別を獲得・維持している刺激を用いて、選択反応に随伴する各クラスに特異的な視覚刺激(条件性分化結果、条件性分化結果)を付加した。さらに、条件性弁別訓練の経験のない新奇刺激(漢字)の同一見本合わせにおいても同じ条件性分化結果を付加することによって、新奇刺激が共通の条件性分化結果を持つ刺激クラスの成員として機能するようになるかを検討した。すでに訓練で用いられていた刺激と漢字を用いたテストプローブの結果、特定の見本-比較刺激間関係について、共通の条件性分化結果が随伴していた比較刺激を有意に選択する傾向が示された。この結果は、Sidman(1986)のいう4項随伴性の結果(outcome)の項がクラス間で分化し、さらに、その分化した結果と共通の結果をもたらす新奇刺激が導入されたならば、それらは既存の刺激クラスに包含されるという可能性を示唆している。