著者
木田 章義
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.140-141, 2002-01-01
著者
諸星 美智直
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.173-159, 2008-01-01 (Released:2017-07-28)

函館市中央図書館蔵「蠣崎文書」は、松前藩家老将監流蠣崎氏の別家蠣崎伴茂(松涛)に始まる藩士の家に伝わった文書群で、『万古寄抜萃』(万延元年)、無題狂歌写本(『狂歌百人一首闇夜礫』の写本)、『鶏肋録』、『松涛自娯集』など方言音韻の特徴が強く認められる文書が多い。このうち、『万古哥抜萃』・無題狂歌写本には母音のエをイと表記する例が多いが語頭の混同例はまれで、現在の浜ことばとは異なる傾向が指摘できる。母音のイ段をウ段に表記する例が「し」を「す」とする例を中心に見られ、力行・タ行を濁音表記する例も語頭以外で多用されている。文書中には和漢洋に亙る古典籍から実用書に至る様々な文献からの抜書がなされており、『鶏肋録』所収の『徒然草』抄写本の本文にもイとエとの混同、力行・タ行に濁点を付した例が多く拾える。このような音韻表記は、意図的というよりは書写者たる松前藩士の学問が方言音韻の環境の中でなされたことによる無意識的な書記行為に起因する可能性がある。
著者
かりまた しげひさ
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.69-82, 2011-10-01 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
1

琉球方言にひろくみられる助辞=duをふくむ文は、=duに呼応して連体形と同音形式の述語が文末にあらわれることから、おおくの研究者が=duを古代日本語のゾとおなじ係助辞とよび、琉球方言に係り結びがあると主張してきた。琉球方言には=duとおなじ文法的な特徴をもつ=ga、=nu、=kuse:がある。内間(1985)は那覇方言の=gaを、仲宗根(1983)は今帰仁方言の=kuse:と=gaを、平澤(1985)は宮古方言の=nu、=gaを係助辞とみなした。本稿は那覇方言、今帰仁方言、宮古方言、八重山方言の=du、=ga、=kuse:、=nuをふくむ文の通達的なタイプと文末述語を検討し、当該助辞が特定の活用形と必ずしも呼応していないこと、当該助辞の機能が焦点化であることをのべる。
著者
中里 理子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.33-40, 2016-07-01 (Released:2017-03-03)
著者
大島 中正
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.41-48, 2016-07-01 (Released:2017-03-03)
著者
金 愛蘭
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.33-40, 2018-08-01 (Released:2019-01-01)
著者
高橋 淑郎
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.98-99, 2001-09-29

接続詞「で」(以下「で」)の機能や談話で多用される理由は先行研究においてある程度解明されてきたが,独話と対話とでは使用頻度に差が見られることについての明快な説明はまだ得られていないように思われる。そこで本発表では,「で」が談話で多用されるという事実をふまえて「で」の基本的機能のあり方を検討し,なぜ談話,とくに独話で多用されるのかについて,談話のジャンルの性格と関連づけながら考察をおこなった。考察の結果,(1)「で」の基本的機能は「直前の発話行為に一区切りついたことを示す」機能と「前件と後件との間に話し手があらかじめ想定した関係があることを示す」機能という二面からとらえられること,(2)「で」が関係づけの内容を明示するのではなく「何らかの関係づけがなされている」ということだけを示すという点に他の接続詞と異なる独自性があること(この主張の根拠として,接続詞・メタ言語と共起することが多くしかもほとんどの場合それらに先行すること,前件を受ける形式を持たないことなどが挙げられる),(3)「で」のさまざまな用法は,話し手が何を前件とし,後件とどのような関係を想定しているかによって体系的にとらえられること,を指摘した。また,独話で「で」が多用される理由については,談話の「計画性」「即興性」と関連づけて説明できることを示した。一般に,独話があらかじめある程度決まった内容を伝えるという「計画性」を主とし,かつ「即興性」をも有する談話であるのに対し,対話は「即興性」を主とした談話である。(4)「で」における「話し手があらかじめ想定した関係」が「計画性」と対応していると考えれば,「即興性」を主とする対話よりも「計画性」を主とする独話で「で」がより多く用いられるのは当然のことと考えられるのである。
著者
日高 水穂
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.77-92, 2005-07-01 (Released:2017-07-28)

東北方言に広く用いられる文法形式のうち,移動の方向・着点を表す格助詞サ,目的語を表示する格助詞コト・トコ類,退去時制を表すテアッタ・タッタ形を取り上げ,その文法化の方向性と地理的分布の関係を考察した。これらの形式の文法化による変化の方向性を見ると,共通に,東北地方の日本海側の方言では,文法形式の機能を大幅に変質させる文法化が生じているのに対し,東北地方の太平洋側の方言では,本来の意味用法を維持する範囲での文法化が生じている。こうした文法化の方向性に見られる地域差を,言語地図による伝統方言の分布調査,若年層を対象とした多人数調査,方言による語りを文字化した昔話資料の用例調査などによって検証した。
著者
伊豆山 敦子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.155-170, 2005-07-01 (Released:2017-07-28)

文字資料がなくても、方言比較研究により、文法化の過程を知ることができる。文字資料がある日本語上代との比較により、日本語の文法化事例を加えることができる。琉球語の語彙項目^*i-(自動詞する)の文法化過程をたどる。八重山・石垣市宮良(みやら)方言の動詞語形変化の型は、日本語と異なる。5段活用対応型が、更に、1段活用対応型の活用語尾-i-(r-)と同じ形態素を持ち、同じ活用型を持つ。八重山・与那国方言の「する」を意味する自動詞i-(r-)と比較することにより、嘗て、語彙項目だった^*i-(r-)の文法化であることが推定される。その際、日本語連用形相当の形が最も基本的な形であること、その機能的意味が、話し手認識の関与しない、事象生起であることが注目される。
著者
彦坂 佳宣
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.110-124, 2010-10-01 (Released:2017-07-28)

『方言文法全国地図』第38図「寒いけれども〜」を逆接確定条件の代表とし、言語地理学的、文献方言学的解釈を試みた。新古の点は、日本の外輪に(1)バッテ(ン)類と(2)ドモ類、中輪に(3)ガ類、中央に(4)ケレド(モ)類の分布から、(4)(3)(2)の新古順とした。(1)は、分布様態と、古く仮定条件でその後の確定化の経緯から(2)に遅れて局地的な発生と考えた。接続法では、もと已然形承接の(1)(2)が終止形承接となったが、この類は「旧・已然形+バ」の主要仮定条件類の周辺分布域とほぼ一致し、この承接法が仮定用法化した時期に承接法を変えたと考えた。伝播面では、古い(1)(2)(3)は近畿中央から全国に、新しい(4)は上方で盛行し江戸に伝播した2極放射で、圧迫されたガは東西ごとの周辺分布となり、中国地方では理由ケーニと同音衝突もあって残存したと見た。近世方言文献からは、今日への途上、ないしほぼ現況に近い模様が出来ていたと推測した。
著者
澤村 美幸
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-32, 2007-01-01 (Released:2017-07-28)

本稿では,いわゆる〈弟〉を表す伝統的方言の「シャテー(舎弟)」を事例とし,地方の文化,とりわけ社会構造が語の伝播にどのように関わってくるのかを考察した。「シャテー」は京畿地方を中心とした中央語史上では武士階級の位相語として定着するが,近世後期以降,東日本では庶民語化して広範囲に伝播するのに対し,西日本では武士階級の位相語としてとどまり続けるという東西差が生まれてくる。この背景には,社会構造の東西差があり,長子単独相続的傾向の強い東日本の社会構造が,「『イエ』にとっての序列関係」を反映した語を必要としたため,「シャテー」の庶民語化や伝播が起こったと考えられる。この事例から,語の伝播は,中央の文化的威光の高さのみが原動力となって起こるのではなく,地方側の文化にも中央語を受容する必然性が生じた際に起こる場合があることが明らかとなった。
著者
常盤 智子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.18-33, 2018-04-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
11

本稿では、明治期に翻訳から生じたとされる「N(Nは名詞の意)の多く」という類の直訳に注目し、数量の多いことを表す英語の表現「~ of N」がどのような日本語と対応しているのかについて、当該期の日英対訳会話書約150点を対象に横断的な調査を行った。その結果、日本人の手になる会話書にも英米人の手になる会話書にも副詞等を伴う意訳が多くみられることがわかった。また、日本人の会話書の中には英米人の会話書ではみられない「Nの多く」類の直訳が一定数みられた。これは後に一般化する同種の表現の早い例とみることができた。当該期において日本人の外国語理解の方法には訓読という背景があり、書きことばを無視できなかったことに対し、英米人は当時の話しことばの習得に重点をおいていたということが、今回の調査結果に反映していることを論じた。