著者
金澤 裕之
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.133-140, 2015-04-01 (Released:2017-07-28)

近代語研究の進展に貢献し得る比較的新しい資料に、いわゆるSP(平円盤)レコードを音源とする各種の録音資料がある。しかしこの資料に関しては、言語(特に、話しことば)の研究にとって重要な要素である「音声」を有しているという事実があるにも拘わらず、その活用という点では、必ずしも十分な成果がもたらされていないというのが、客観的に見た現在の状況である。そこで本稿では、録音資料に関するこれまでの経過、並びに、最新のニュースや試みの実態を詳しく伝えるとともに、録音資料のこれからの可能性について言及する。
著者
李 芝賢
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.32-46, 2010-10-01 (Released:2017-07-28)

[便]を対象に個別語の使用増加が複数の字音を持つ漢字の字音と意味の関係に与える影響について考察する。現代日本語における[便]はビンが<通信手段>に,ベンが<都合>に集中した用例を持つ。<都合>はビン/ベンに共通するが,ベンに傾いている。このような使用様相は明治期における「郵便」「便利」などの個別語の使用拡大により形成されたと思われる。<たより>に連なる<通信手段>は「郵便」のような「-ビン」構造の語が通信・運輸において使用されたことにより定着する。<都合>は「便利」「不便」「便」のような<都合>に近い語義を持つベンの例の使用拡大によりベンに傾く。
著者
内間 直仁
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.32-44, 2004-04

琉球宮古・八重山方言では, 古代日本語のワ行子音が[b]となる顕著な音韻現象がある。これは奄美諸島の一部, 沖縄本島北端の一部の方言にもみられる。この[b]について, 従来記述的な研究報告はなされていても, その成立についての考察はほとんどなされていない。この[b]の成立は, 宮古・八重山方言においては五母音>三母音, 奄美・沖縄方言においては五母音>三母音>五母音(新[o][e]の成立に伴う)という母音変化と密接に関わっていることを明らかにした。すなわちこれらの母音変化と連動して, 古代日本語のワ行子音も宮古・八重山では[w]>[b], 奄美・沖縄では[w]>[b][gw][g]>[w]の変化を起こしていることを, [b]の音声学的特徴や琉球方言における[b]とその変種音の分布状況及び[b]のあらわれる音環境も分析しながら明らかにした。
著者
小倉 肇
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.195, pp.*42-55,47-46, 1998
著者
小木曽 智信
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.49-62, 2013-10-01 (Released:2017-07-28)

古典語研究の精密化・高度化のためには単語の情報が付いたコーパスが必要とされる。そうしたコーパスの構築のためにはコンピューターによる古典語の形態素解析(自動品詞分解)が必要だが,従来,古典語の形態素解析は困難であるとされていた。こうした中で,筆者らは,既存の解析器と組み合わせて実用的な解析を可能にする電子辞書「中古和文UniDic」を新たに開発した。この辞書は,統計的機械学習の手法に基づき,電子化辞書UniDicの見出し語を拡充し,手本となる単語情報つきの古典語コーパスを作成することで開発された。これにより,平安時代の仮名文学作品について約97%(辞書への未登録語が存在する場合は約96%)の精度で正しく解析することが可能になった。この辞書による解析結果を用いることで,従来は不可能だった用例検索や統計的手法にもとづく新しい古典語研究が可能になった。UniDicは短単位という揺れの少ない斉一な単位を採用しているため,作品や時代を超えて解析結果を比較することができる。中古和文UniDicは無償で一般公開されており,国語研究所の「日本語歴史コーパス 平安時代編」の構築に利用されている。
著者
久保薗 愛
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.18-34, 2016

<p>18世紀前半の鹿児島方言を反映するロシア資料には,過去否定を表すヂャッタという形式が見られる。この形式と,19世紀以降の過去否定形式を比較したところ,ヂャッタからンジャッタへという変化が認められた。近世半ば以降,本方言では否定とそれ以外の要素を分けて表現する方向に変化したものと思われる。また,表記に使用されるキリル文字の音価及び日本語表記の様相を分析した結果,この形式は否定の連用中止形デ(ヂ)+アッタに由来する可能性が高いことを論じた。</p>
著者
鈴木 功眞
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.85-72, 2004-04-01

『倭玉篇』諸本の中で現存最古の『延徳本』(延徳三年<一四九一>写)に就いては、既に部首排列が『大広益会玉篇』と、注のうち万葉仮名のものは『世尊寺本字鏡』・『音訓篇立』との関連性が有り、かつ、巻末に増補されている「倭玉」とする独自の九部首は、『音訓篇立』・『第四類本』との関連性が認められる八部首と、典拠不明の「曽」部から成るとされている。この先行研究に対し、本稿では、『延徳本』の部首排列が『会玉篇』と対応する部分の掲出字排列は『会玉篇』諸本の中でも内閣文庫蔵十二行本の元版による事、注は殆どが、『音訓篇立』・『第四類本』に典拠を有する事、かつ、典拠不明とされた巻末「曽」部も、掲出字排列と注の点で『第四類本』の「弟」部と関連性が認められる事を論証する。そして、『会玉篇』・『音訓篇立』・『第四類本』の部首排列・掲出字排列の体系に基準を置くと、『延徳本』はそれらの一部しか採録しない不完全な字書である事を述べる。
著者
貞苅 伊徳
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
no.23, 1955-12