著者
安藤 哲 河合 岳志 松岡 可苗
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-20, 2008-02-20
参考文献数
18
被引用文献数
1 23

蛾類昆虫の分泌する性フェロモンは,ボンビコールのような末端官能基を有するタイプIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<10>〜C_<18>)と,末端官能基を含まない不飽和炭化水素およびそのエポキシ化物からなるタイプIIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<17>〜C_<23>)に大別される.昆虫の種の多様性を反映しフェロモン成分も多様であり,それは生合成の原料ならびに関与する酵素系の違いに起因する.ボンビコールの生合成研究を踏まえ,シャクガ類が生産するタイプIIの性フェロモンの生合成,ならびに頭部食道下神経節から分泌されるホルモン(性フェロモン生合成活性化神経ペプチド,PBAN)による生合成の制御機構に関して追究した.その結果,エポキシアルケニル性フェロモンの前駆体(トリエン)はフェロモン腺では生産されず,またPBANはフェロモン腺が体液中に存在する前駆体を取込む過程を活性化することが判明し,タイプIの性フェロモンでの知見とはかなり異なることがわかった.さらに,PBANをコードするcDNAを同定し,シャクガのPBANは構造もユニークであることを明らかにした.
著者
宮本 貢 藤原 彰子 田中 仁詞 片木 敏行
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.173-180, 2013-11-20 (Released:2013-11-20)
参考文献数
37
被引用文献数
5

Acute aquatic toxicity of eight major metabolites of the pyrethroid insecticide metofluthrin, potentially formed via oxidation and ester cleavage in the environment, was examined using three representative species, fathead minnow (Pimephales promelas), Daphnia magna and green alga (Pseudokirchneriella subcapitata). All metabolites showed a wide range of toxicity but were more than a hundredfold and tenfold less toxic than metofluthrin to pyrethroid-sensitive (fish and daphnid) and -insensitive (algal) taxa, respectively; 0.44 to >120 mg/L (fish 96-hr LC50), 6.3 to >120 mg/L(daphnid 48-hr EC50), and 2.6 to >110 mg/L (algal 96-hr EyC50). The structural modification via ester cleavage and/or oxidation was found to significantly control the acute aquatic toxicity of the metabolites. The decreased lipophilicity in the metabolites generally resulted in much less acute toxicity, the extent of which was dependent on an introduced functional group such as formyl as a toxicophore and carboxyl causing a higher acidity.
著者
アグロ カネショウ株式会社
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.433-438, 2001-11-20

アセキノシルは新規開発されたナフトキノン骨格の殺ダニ剤で, 各生育ステージのダニに対して速やかに活性を発現する.本剤はミトコンドリアの電子伝達系の酵素阻害により殺ダニ活性を示すが, その作用点が他の薬剤とは異なるため, 薬剤抵抗性ダニにも活性を示すことが確認されている.本剤の原体及び15%フロアブル製剤の安全性試験の結果, アセキノシル及び製剤は急性毒性, 並びに眼及び皮膚に対する刺激性が非常に弱く, 皮膚感作性もないことが確認された.また発がん性, 変異原性及び催奇形性は認められず, 繁殖性への影響もなかった.ラットに本剤を大量に経口投与した場合, 血液凝固時間の延長がみられた.アセキノシルの化学構造がビタミンKと似ていることから, アセキノシルを投与されたラット体内では, アセキノシルがビタミンK依存性血液凝固系に介在し, 血液凝固能の低下が誘発されると推測された.これらの変化はイヌには認められなかった.ここに要約した安全性試験結果に基づき, アセキノシルのADIは0.027mg/kg/dayに設定された.残留農薬基準はなす1ppm, きゅうり(含ガーキン)0.5ppm, すいか0.1ppm, メロン類0.1ppm, みかん0.2ppm, なつみかんの果実全体2ppm, レモン1ppm, その他のかんきつ1ppm, りんご1ppm, 日本なし2ppm, 西洋なし2ppm, すもも(含プルーン)1ppm, おうとう2ppm, ぶどう0.5ppmに設定された.本剤は, 農薬の一般的な安全使用上の注意事項を遵守して使用する限り作業者に対する安全性が高く, 有用な農業資材と考えられる.
著者
三井東圧化学株式会社精密化学品事業部農薬事業開発室
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.505-509, 1989-11-20
被引用文献数
2

各種毒性試験を実施し, エトフェンプロックスの安全性を評価した.本剤の急性毒性はきわめて弱く, 眼, 皮膚に対しても刺激性は見られなかった.慢性毒性, 発がん性試験の結果, おもな中毒的変化として高投与群における体重増加の抑制, 肝臓重量の増加, 尿細管の好塩基症および拡張(マウス), または肝臓細胞肥大(ラット)が見られたが, 発がん性は認められなかった.また, 繁殖性に対する影響および催奇形性は認められず, 変異原性もすべて陰性であった.エトフェンプロックスを有効成分とする農薬は, 昭和62年4月13日に農薬登録され, 登録保留基準値を0.1ppm(いも類, 豆類), 0.5ppm(米, 麦, 雑穀, てんさい), 2ppm(果実, ただし, なつみかんの外果皮を除く.野菜)10ppm(なつみかんの外果皮, 茶)と設定された.昭和62年の初上市以来, 有用な殺虫剤として好評を得ている.
著者
謝 肖男 来生 貴也 米山 香織 野村 崇人 秋山 康紀 内田 健一 横田 孝雄 Christopher S. P. McErlean 米山 弘一
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.58-61, 2017-05-20 (Released:2017-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
38

トウモロコシが生産する根寄生雑草種子発芽刺激物質の1つを単離し,その構造を各種機器分析により,methyl (2E,3E)-4-((RS)-3,3-dimethyl-2-(3-methylbut-2-en-2-yl)-5-oxotetrahydrofuran-2-yl)-2-((((R)-4-methyl-5-oxo-2,5-dihydrofran-2-yl)oxy)methylene)but-3-enoate(1)と決定し,ゼアラトン酸メチルと名付けた.ストリゴラクトンの生合成前駆体であるカーラクトンの13C標識体の投与実験から,1はトウモロコシ体内においてカーラクトンから生合成されることを確認した.1は根寄生雑草Striga hermonthicaおよびPhelipanche ramosaの種子に対して強力な発芽刺激活性を示したが,Orobanche minorの種子に対する活性は100倍弱かった.
著者
貞包 眞吾 酒井 智代 林 明子 大川 秀郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.410-413, 1998-11-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
9
被引用文献数
2

カーバメイト系除草剤クロルプロファム (IPC) の免疫化学測定法を確立した. パプテンとしてIPCのカルボン酸誘導体 (IPC-COOH) を合成し, それを牛血清アルブミンに結合させて免疫原を調製し, この免疫原をウサギに免疫して抗血清を得た. 調製した抗血清とマイクロプレート上の抗原 (IPC-COOHとウサギ血清アルブミンの結合体) との結合をIPCは競合的に阻害した. 次いで, プレートに結合した抗体の量を酵素標識抗ウサギIgGヤギ抗体を用いて求める方法によりIPCのELISAを確立した. IPCによる抗原抗体反応の50%阻害および検出限界濃度はそれぞれ140ppbおよび5ppbであった. 得られた抗体のカーバメイト系やウレア系の農薬に対する交差反応性は極めて低かった. この方法はジャガイモ中のIPCの測定に適用することができた. ジャガイモ中のIPCはメタノールにより抽出し, メタノール抽出液を20倍に希釈した後, 測定した. その検出限界濃度は0.3ppmであった.
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.407-414, 1995-08-20 (Released:2010-08-05)
著者
佐伯 学 矢野 哲彦 中屋 潔彦 玉田 佳丈
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.102-106, 2016-08-20 (Released:2016-08-23)
参考文献数
9
被引用文献数
5

Metazosulfuron is a novel sulfonylurea herbicide discovered and developed by Nissan Chemical Industries, Ltd., which exhibits excellent herbicidal activity against Echinochloa spp., annual and perennial weeds including sulfonylurea resistant biotypes in paddy fields at 60–120 g a.i./ha with good crop safety to rice. In addition, it has favorable toxicological, ecotoxicological and environmental profile. Metazosulfuron (trade name; Altair®) was registered and launched in Japan in 2013, and has been also introduced in Korea and China as of 2016. This paper describes a history of discovery, syntheses, herbicidal characteristics and crop safety of metazosulfuron.
著者
丸茂 晋吾
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.143-144, 1989-02-20
著者
三浦 友三 馬渕 勉 東村 稔
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.219-240, 2003-05

ピラフルフェンエチル(pyraflufen-ethyl)は日本農薬(株)によって創製され、実用化されたプロトポルフィリノーゲン酸化酵素(Protox)阻害型除草剤である。本化合物はコムギに対して高い安全性を示すと共に広範囲の広葉雑草に対して10g a.i./ha前後の低薬量で極めて高い除草活性を示す。特にコムギ栽培における難防除雑草の一つであるヤエムグラ(Galium aparine)に卓効を示す。ピラフルフェンエチルは日本ではムギ用除草剤として、エコパートフロアブルの商品名で1999年に農薬登録の許可を得て販売を開始した。また同時に果樹園の下草防除や非農耕地の非選択性除草剤として、グリホサートトリメシウム塩との混合剤であるサンダーボルトの販売も開始した。さらに、2001年バレイショ枯凋剤として、デシカン乳剤の販売を開始した。これらは海外においても14か国で登録・上市され、数か国で開発途上にある。本稿では、ピラフルフェンエチルの創出の経緯、工業的製造法、構造活性相関、除草活性、作用機構、各種毒性試験結果について概要を述べる。
著者
謝 肖男
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.175-180, 2016-11-20 (Released:2016-11-20)
参考文献数
57
被引用文献数
59

Strigolactones (SLs) are plant secondary metabolites that were first identified as germination stimulants for the root parasitic weeds witchweeds (Striga spp.) and broomrapes (Orobanche and Phelipanche spp.). In the rhizosphere, SLs also promote root colonization by arbuscular mycorrhizal fungi. In plants, SLs as a novel class of plant hormones regulate various aspects of plant growth and development. Herein I discuss structural diversity of naturally occurring SLs and their distribution in the plant kingdom.
著者
Said Salama Moselhy 浅見 忠男 Khalid Omer Abualnaja Abdulrahman Labeed Al-Malki 山野 博之 穐山 忠大 和田 隆之介 山岸 卓矢 彦坂 政志 岩川 純也 岡田 憲典 森 昌樹 Taha Abduallah Kumosani
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.79-82, 2016-08-20 (Released:2016-08-23)
参考文献数
25
被引用文献数
10

ポリアミンは,生長,分化や形態形成といった生体内の基本的な生理過程のみならず様々な環境ストレスへの抵抗性にも関与していることが報告されている.本論文では,ポリアミンの一種であるスペルミジンのイネいもち病に対する抵抗性を高める効果について報告している.まずイネへのスペルミジン処理がイネいもち病への抵抗性を付与することを,続いてサリチル酸シグナル経由の病害抵抗性マーカー遺伝子であるPR1bとPBZ1やファイトアレキシン生合成遺伝子であるCPS4やNOMTの発現を上昇させることを明らかにした.本論文はイネ病害抵抗性におけるスペルミジンの関与を初めて示した点に意義がある.
著者
高野 仁孝 小栗 幸男 加藤 寿郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.575-582, 1983-11-20

S-3308の抗菌作用機作について, トウモロコシ裸黒穂病菌(Ustilago maydis)を用いて検討した.本菌を液体培地で振とう培養すると小生子の状態で増殖するが, S-3308(2ppm)含有培地で培養すると小生子数および菌体乾重の増加は強く抑制され, 分岐やくびれなどの特有の形態変化が認められた.これらの形態異常は, 本菌にトリアリモールを処理したときのものと酷似していた.ところで本剤は, タンパク質および核酸の生合成にはほとんど影響を与えなかったが, 100ppm処理によって呼吸阻害を引き起こした.しかし本剤の抗菌活性は, 呼吸阻害が認められない低濃度区においても認められたことから, 呼吸阻害作用のみで本剤の抗菌性を説明することは困難と考えられた.一方本剤は, 2ppmで本菌のエルゴステロール生合成を強く阻害した.すなわち, 本剤処理によってエルゴステロールの相対量が低下し, その前駆体で14位にメチル基を有する24-メチレンジヒドロラノステロール, 14α-メチル-&lrtri;^<8, 24(28)>-エルゴスタジェノールおよびオブツシホリオールの蓄積が認められた.また, ^<14>C-アセテートの脂質画分への取込み実験においても, 同様の結果が得られたことから, 本剤の抗菌活性は, エルゴステロール生合成系における14位の脱メチル化反応の阻害に起因するものと考えられた.
著者
片岡 良太 高木 和広 榊原 風太
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.326-332, 2010
被引用文献数
1

好気的にエンドスルファンを分解するMortierella sp.W8とCml-45の2株を有機塩素系殺虫剤が残留している土壌から単離した。接合菌によるエンドスルファンの分解はこれまでに報告がない。本研究で単離した菌株は、25℃で28日間培養することにより、α-エンドスルファンを70%以上、β-エンドスルファンを50%以上分解した。毒性代謝物であるエンドスルファンスルフェートの発生は少量に抑えられ、エンドスルファンジオールの生成が確認された。さらに、エンドスルファンエーテル、エンドスルファンラクトンが代謝物として検出された。エンドスルファンスルフェートを初期基質にした分解試験を行ったところ、スルフェート体は分解できないことが確認された。また、本菌は土壌洗浄法を用いて単離された菌株であり、土壌中で菌糸体として存在していたことが示唆された。そのため、今後、エンドスルファン残留土壌のバイオレメディエーションに有望な菌株であると考えられる。
著者
内田 又左衛門 笠井 勉
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.553-558, 1980-11-20

殺菌剤ジアルキルジチオールアニリデンマロナート類の大阪(河内長野)土壌に対する25℃での吸着定数(K)は, メチル体の2.7からへプチル体の605まで変化した.アルキル鎖が長くなるにつれて, Kの値が増加した.そして, log K値は疎水性パラメータであるlog P(Pは1-オクタノール・水系での分配係数)と非常によく相関するので, これらの化合物の土壌への吸着過程は, 疎水的相互作用といえよう.土壌カラム中でのこれら化合物の移行性もアルキル鎖の変化に伴い, 規則的に増減した.そして, 土壌への吸着定数との間には, 非常に良好な負の相関性がみられ, 吸着性の著しい化合物の移行性は低かった.
著者
橘 邦隆 金子 邦夫
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.297-304, 1986-05-20
被引用文献数
1 3

Bialaphos, L-2-amino-4-[(hydroxy)(methyl) phosphinoyl] butyryl-L-alanyl-L-alanine, is a metabolite of Streptomyces hygroscopicus and the first herbicide produced by fermentation. Bialaphos acted on foliage and was effective against a wide range of weeds including perennials. Bialaphos was slower acting than paraquat, but faster than glyphosate. It controlled the regrowth of weeds longer than paraquat but shorter than glyphosate. Translocation of radioactivity in Rumex obtusifolius treated with ^<14>C-bialaphos was observed autoradiographically. Bialaphos did not affect emergence nor growth of crops through soil. Therefore, bialaphos is expected to be used widely for arable land including nontillage cultivation. Growth inhibition of pollen tube of Camellia japonica was recovered by the addition of glutamine. The result suggested that glutamine synthetase (L-glutamine : ammonia ligase (ADP), EC 6.3.1.2, GS) was inhibited in the pollen. Decrease of GS activity was observed in shoots of Echinochloa utilis OHWI treated with bialaphos. Decrease in glutamine content was observed in plant leaf treated with bialaphos, but it did not appear that the decrease was a main factor for the herbicidal activity. Ammonia content in plant leaf was observed to increase in four hr after the treatment and reached about 30 to 100 times higher than the control in 24 to 48 hr. The accumulation was not momentary, but maintained until the death of the plant. The high correlation between free ammonia content and herbicidal activity indicated that the toxicity of accumulated ammonia is the primary factor of herbicidal activity of bialaphos. The ammonia accumulation is considered to be a particular action of bialaphos in plants. More extensive use of microbial metabolites is expected by the fact that bialaphos was developed as a herbicide.