著者
山本 敦司 米田 渥 波多野 連平 浅田 三津男
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.493-501, 1995-11-20
被引用文献数
6

殺ダニ剤ヘキシチアゾクスを用いて, 静岡県榛原郡の日本曹達(株)榛原農業研究所内の柑橘園から採集したミカンハダニ(Panonychus citri McGREGOR)の抵抗性および感受性への室内淘汰を行なった.17回の圃場における淘汰後6回の抵抗性への室内淘汰で, 無淘汰系統および室内淘汰の親世代と比較しLC_<50>値の抵抗性比が, それぞれ23, 000および4450の非常に高いレベルの抵抗性が発達した.一方, 5回の感受性への淘汰で, LC_<50>値の感受性比が0.59の, 淘汰前よりも感受性が高い集団が得られた.抵抗性系統では, すべての発育ステージおよび雌成虫に対する不妊活性において, ヘキシチアゾクス抵抗性のレベルが高かった.抵抗性系統に対し, ヘキシチアゾクスにピペロニルブトキサイドを混用し, 殺卵活性と不妊活性を調べたが, 協力作用は認められなかった.20種類の殺ダニ剤に関してヘキシチアゾクス抵抗性系統に対する効力を検討したところ, クロフェンテジン, フルフェノクスロンおよびフルサイクロクスロンの効力が低かった.
著者
シダラマパァ R. チロール A. 渡辺 巌
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.473-479, 1979-11-20

田面水あるいは湛水水田土壌の根のまわりに施したカルボフラン(2, 3-dihydro-2, 2-dimethyl-7-benzofuranyl methylcarbamate)の稲への吸収と体内移動および土壌中での残留について研究をおこなった.また, カルボフランの土壌中での分解におよぼす土壌の種類, 連続投与の影響も調べた.残留分析には気液クロマトグラフィ, 薄層クロマトグラフィ, および^<14>C同位元素法を用いた.田面水施用とくらべて, 根のまわりへのカルボフランの施用はカルボフランの土壌中での残留性をいちじるしく増した.田面水施用ではカルボフランはただちに稲植物体に吸収され, 地上部への移行がみられたが, 根のまわりに施すと, 稲への吸収・移行はゆっくりと進行した.稲に吸収されたカルボフランは主として葉, とくに先端部分に集積することがオートラジオグラフィにより認められた.植物の茎部分のカルボフラン濃度は常に低かった.土壌でのカルボフランの分解はおもに微生物によるものと思われ, 土壌のpHが低いほど分解がおそかった.
著者
石田 泰雄 太田 一成 伊藤 滋之 中浜 龍夫 三木 秀樹 吉川 治利
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.175-182, 1993-05-20
被引用文献数
10

アリール部分を種々の縮合複素環で置き換えた新系統のスルホニル尿素類を合成し, 除草活性をしらべた.その結果, イミダゾ[1, 2-a]ピリジン環を導入した化合物の多くが高い除草活性を示すこと, その中で2位にメチル, 塩素, 臭素またはトリフルオロメチルなどの置換基を有するイミダゾ[1, 2-a]ピリジン-3-イルスルホニル尿素類がイネに対しすぐれた選択性を有することを見いだした.その中から, 1-(2-chloroimidazo[1, 2-a]pyridin-3-ylsulfonyl)-3-(4, 6-dimethoxypyrimidin-2-yl)urea(Code No.TH-913)を選抜し水田用除草剤として開発中である.このものはイネに対する安全性が高く, 0.5&acd;1.0g/aの薬量で難防除雑草として知られるミズガヤツリやクログアイを含む高範囲の雑草に卓効を示した.
著者
小畑 登紀夫 藤井 勝利 舩城 衛介 堤内 清志 大岡 朗 水津 真 金築 祐
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.33-37, 1999-02-20

ピラゾール環を骨格とする新しい系統の化合物を合成し, その殺ダニ活性と魚毒性を調べた.N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)に, ナミハダニに対する高い活性が認められた.しかしながら, メダカに対する毒性も高いレベルにあった.そこでN-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(III)を基にして, ハダニと魚間の活性選択性を得るために, N-アシル-N-フェノキシエチルピラゾール-5-カルボキサミド誘導体(IV)へと導いた.生物試験の結果, N-アシル化誘導体(IV)のいくつかの化合物に, 高い殺ダニ活性を維持しながら, 魚毒性の低い化合物を見出した.この選択活性は, N-アシル化誘導体(IV)のなかでピラゾール環の4位が無置換で, 3位にtert-ブチル基が導入された時, 最も大きかった.
著者
利部 伸三 酒向 美紗 岩屋 和子 桐山 和久
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.393-398, 2001-11-20

新規の1-アリールメチル-2-アリールイミダゾリジンを2種の方法, 即ち, 2-アリールイミダゾリジンの1-位の窒素原子へのハロゲン化アリールメチルの塩基存在のもとでの求電子置換反応あるいはN-アリールメチルエチレンジアミンとベンズイミデートとのイミダゾリジン環化反応によって合成した.生成物の構造はNMR, MSやIRスペクトルなどで確認した.MSスペクトルでは2-置換イミダゾリジン構造に特徴的な解裂パタンが見られた.殺ダニ活性はアリールメチルに関してはパラ位のクロロ, t-ブチル, フェニル置換体, 2-アリールに関してはオルト位のジフルオロ体に見られ, その中で, 1-(p-クロロベンジル)-2-フェニルイミダゾリジンと1-ベンジル-2-(2, 6-ジフルオロフェニル)イミダゾリジンに50ppmで強い活性が見られた.1位の(クロル置換)ピリジルメチルや2位のピリジン誘導体は弱い活性しか示さなかった.
著者
上田 隆之 中西 逸朗 飛塚 淳三 半沢 卓 遠藤 利光 富田 和男 青木 篤
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.65-69, 1987-02-20

N-(2, 6-ジアルキルフェニル)-4(または3)-カルボキシフタルイミドおよび関連化合物を合成し, アブラナ科野菜根こぶ病防除活性を検討した.フタル酸部の4位にカルボキシ基を導入したN-(2, 6-ジイソプロピルフェニル)-およびN-(2-s-ブチル-6-エチルフェニル)-4-カルボキシフタルイミド類は強い防除活性を示したが, エステル類の活性はアルコール部位の疎水性の違いにより変動した.アミド類は一般に効力が低かったが, 活性はアミン部位の疎水性に支配されていることが示唆された.これらの誘導体はいずれもカルボン酸に加水分解された後効力を発現しているものと推定した.フタル酸部の3位にカルボキシ基を導入した化合物には活性は認められなかった.
著者
本山 直樹
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.523-526, 1984-08-20

1983年夏, 栃木県益子の豚舎において, ペルメトリン空間噴霧によるイエバエ防除効果が劣化してきたという報告を受け, 同年9月に確認のための現地試験を行なった.薬剤処理前と後において, 各種方法によりイエバエ成虫数の推移ならびにノックダウン状態からの蘇生率を調査して比較したところ, 明らかに防除効果が著しく低いことがわかった.このハエを実験室に持ち帰り, 増殖後そのまま, または薬剤で2, 3回淘汰後, 各種ピレスロイド剤, p, p'-DDTおよび有機リン剤に対する感受性を局所施用法でしらべた.対象には標準的感受性系統の高槻系を供試した.その結果, LD_<50>値でみても, 抵抗性比でみても, わが国で過去に例をみないほど強力なピレスロイド抵抗性が発達していることがわかった.このハエは有機リン剤にも交差抵抗性を示したが, P, P'-DDTに対しては高槻系と差がなかった.供試したすべての殺虫剤のLD_<50>値は, ピペロニルブトキシドを前処理することによって著しく低下したので, このハエのピレスロイド抵抗性のメカニズムとしては, よく知られているkdrまたはsuper-kdr geneによる神経の感受性の低下ではなく, 薬物酸化酵素系による解毒能力の増大が主要因である可能性を示唆した.
著者
上山 純 斎藤 勲 上島 通浩
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.87-98, 2010

現在、ヒトにおける低用量のピレスロイド系殺虫剤曝露に関するリスク評価は、一般には食事からの残留農薬摂取量評価により行われている。ヒトを対象とした研究から得た個人曝露レベルに関する情報は少ないが、それはピレスロイド曝露の生物学的モニタリングが容易でないことに理由の一端がある。この障壁は近年、分析化学の進歩により克服されるようになった。高速液体クロマトグラフ質量分析計やガスクロマトグラフ質量分析計を用いることにより、ピレスロイド系殺虫剤の尿中代謝物の分離及び高感度の定性・定量を、今日では確実に行うことができる。本総説では、尿中ピレスロイド代謝物の生物学的モニタリングについて全体像を提示するとともに、一般生活者集団における尿中代謝物量に関する報告を整理する。そして、環境衛生学領域におけるこのモニタリング研究の将来展望について述べる。
著者
Ching Yu Lin Mark R. Viant Ronald S. Tjeerdema
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.245-251, 2006 (Released:2006-08-24)
参考文献数
67
被引用文献数
62 156

Environmental metabolomics is an emerging approach for examining metabolic fingerprints, or profiles, in biological systems exposed to environmental stress. In conjunction with other “omics” techniques, such as genomics, transcriptomics, and proteomics, it has been used to study the biochemical impacts of xenobiotics and disease. The approach analyzes changes in the concentrations of metabolites, which are the precursors and products of enzymatic activity, and then attempts to associate these changes with biological function and/or regulation. Environmental scientists have recently applied such techniques to suggest biomarkers for the risk assessment of chemicals and for diagnosing diseases in wild animals. Furthermore, this approach can in principle allow scientists to better understand the underlying mechanisms of action of toxic compounds in the environment. In this review the methodologies used in metabolomics are briefly discussed along with several examples from the environmental sciences, including biomarker development and risk assessment of toxicant exposure, metabolic responses to environmental stressors, and disease diagnosis and monitoring.
著者
渡辺 貞夫 渡辺 重信 伊藤 和敏
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-53, 1983-02-20
被引用文献数
1

国内で広範囲に多用されている水田除草剤(CNP, クロメトキシニル, ベンチオカーブ, モリネート)の汚染実態調査を, 相模川(神奈川県)で採取した淡水魚について実施した.これら除草剤の水田への使用は, 田植時期に限定されるため, 調査を7月に行ない, 他の時期の汚染レベルと比較した.昭和55年7月に採取した4魚種(オイカワ, カマツカ, コイ, フナ)すべてからCNPが, また2魚種からベンチオカープが検出された.CNPの残留レベルは0.055ppmから0.61ppmの範囲で, ベンチオカーブは0.02ppmおよび0.10ppmであった.昭和56年7月採取した4魚種(オイカワ, アユ, フナ, ブラックバス)に, CNPが0.046ppmから0.88ppm, ベンチオカーブは0.04ppmから0.11ppmの範囲で検出され, 昭和56年の調査結果とほぼ同程度であった.しかし, 昭和56年9月採取した魚には, これら除草剤はいずれも不検出あるいは微量しか検出されなかった.今回の調査結果から, CNPの生物濃縮係数は420&acd;8, 000, ベンチオカーブは20&acd;100と想定された.しかし, これら除草剤の淡水魚への蓄積残留は比較的短期間であると考えられた.クロメトキシニルおよびモリネートは, いずれの検体からも検出されなかった.
著者
加納 大聖 芳賀 実 関沢 泰治
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.325-332, 1993-11-20
被引用文献数
5

前報に続き, イネ葉身細胞の膜情報伝達系に共役するO_2^^.^-生成酸素系およびホスホリパーゼA_2(本研究における二つの指標)の活性化反応に係わる細胞内情報伝達系を探査した.分子プローブとしてW-7, オフィオボリンA, TPA, H-7, およびスタウロスポリンなどを用い, 前報と同様の計画の下で探査を行ない, Ca^<2+>調節タンパク質(CaMあるいはCDPK)が両指標の活性化反応に重要な役割を果たすこと, プロテインキナーゼが関与するならCa^<2+>-CaM依存性プロテインキナーゼあるいはCa^<2+>CDPKによるものと推定した.なお, ホスホリパーゼA_2の活性化反応の制御には未知の制御経路が介在している可能性を推考した.1, 2-ベンツイソチアゾール-3(2H)-オン1, 1-ジオキシドは早期相においてO_2^^.^-生成を高進させ, α-リノレン酸放出を後期相で著しく高進させた.プロベナゾールがプライミング効果剤として付与する全身獲得抵抗性での両指標が, エリシター刺激のみによる型と異なることが注目された.同様の機能を有するNCIはPIターンオーバを加速することが最近報告されたので, 前報および本報による知見とともに, 総合考察し, この種の非殺菌性防除剤の作用部位はイネ葉身細胞の膜情報伝達系(ホスホリパーゼC系)に存在すると推定された.
著者
Masahiro Nishiyama Yusuke Suzuki Toshiyuki Katagi
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.447-455, 2010-11-25 (Released:2010-11-24)
参考文献数
20
被引用文献数
5 7

Metofluthrin [I, 2,3,5,6-tetrafluoro-4-(methoxymethyl)benzyl (EZ)-(1R,3R)-2,2-dimethyl-3-(prop-1-enyl)cyclopropanecarboxylate] was resistant to hydrolysis at pH 4 and 7 but moderately hydrolyzed with a half-life of 36.8 days at pH 9 and 25°C to form the corresponding acid and alcohol via ester cleavage. The activation energy was estimated to be 105 kJ mol−1 based on the hydrolysis rates at 25–50oC. By continuous exposure to light at >290 nm from a Xenon arc lamp at hydrolytically stable pH 4 and 25°C, I was rapidly photodegraded with half-lives of 1.1–3.4 days, mainly via ester cleavage and successive oxidation followed by mineralization to carbon dioxide. Spectroscopic analyses together with co-chromatography with authentic standards showed that the major degradates having an ester linkage were the aldehyde and carboxylic acid derivatives formed via oxidative cleavage of the prop-1-enyl group together with the diol formed possibly through an oxidative intermediate, such as an epoxide.
著者
大井 正典 本山 直樹
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.475-480, 1991-08-20

殺虫剤の相乗作用の大きさはおのおのの薬剤の解毒酵素に対する親和性, 解毒速度および解毒酵素の存在下での作用点阻害のI_<50>値によって予測できるという理論的解析の結果を証明するために, in vitro実験を行なった.単一の酵素(ブタ肝カルボキシルエステラーゼ)(CE)による解毒と作用点(電気うなぎAChE)阻害のみが含まれる単純なモデルを用いて, 相乗作用の予測に必要な各パラメータを求めたところ, マラオクソンとパラオクソンおよびマラオクソンとジクロルボスの組合せが最も相乗作用の条件を満たしていた.各種組合せによるAChE阻害のI_<50>を比較したところ, 上記の組合せは実際に高い相乗作用を示し, また, 相乗作用の最も大きくなる混合比は薬剤単独でのI_<50>の比に等しかった.以上の結果はコンピュータシミュレーションによる理論的解析の結果を支持した.