著者
呉 天基 王 一雄 陳 玉麟
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.195-200, 1991-05-20

室内実験において, 3種類のサトウキビ畑土壌中のイソウロンの分解は一次反応に従い, 各種条件下で半減期は42∿203日であった.分解速度と土壌の水分および温度との間に密接な関係がみられた.高圧殺菌土壌中の半減期(148∿203日)と非殺菌土壌中の半減期(58∿70日)から, 分解には土壌微生物が重要な役割を演じていることを示した.あるモデル圃場条件下で, 砂壌土中の半減期は約90日であった.オートラジオグラフとマススペクトルによって, 1種類の未知代謝物(VIII)のほかに, 6種類の分解生成物がそれぞれ3-(5-tert-butyl-3-isoxazolyl)-1-methylurea (II), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-isoxazolyl]-1, 1-dimethylurea (III), [3-(5-tert-butyl-3-isoxazolyl)] urea (IV), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)]-1-methylurea (V), 3-[5-(1, 1-dimethyl-2-hydroxyethyl)-3-isoxazolyl] urea (VI), および3-amino-5-tert-butylisoxazole (VII)であると同定された.
著者
渡辺 哲郎 五十嵐 弘 松本 邦臣 関 誠夫 間瀬 定明 関沢 泰治
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.291-296, 1977-08-20
被引用文献数
11

新規なタイプのイネいもち病防除剤につき研究したところ有効なプロベナゾール(オリゼメート^[○!R], 3-allyloxy-1, 2-benzisothiazole-1, 1-dioxide)を水銀, 燐, 塩素を含まない物質として見いだした.本物質は400ppm液としてイネに散布することにより予防的効力を発揮する.またイネの根を経由する適用法であるところの土壌処理, 土壌灌注, 薬液への浸根あるいは水面施用のいずれによっても有効であった.とくに興味あることは根を通じての施用法の場合に10アール当たり200g以下というかなり少ない薬量で十分な薬効を発揮することである.このことは本物質がこれらの施用法による利用にきわめて適しているものと考えられた.これに反し母核である1, 2-benzisothiazole-1, 1-dioxideは散布法あるいは灌注法においてプロベナゾールよりはるかに劣り, 誘導体としたことによる有利性が認められた.なお, プロベナゾールの数種作物の生育に対する悪影響は各種施用ルートにより試験されたが, 実用上の薬量ではまったく認められなかった.
著者
武居 三郎
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.84-85, 2000-02-20
著者
小林 裕子 俣野 修身 後藤 真康
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.p449-453, 1984
被引用文献数
2

酢酸グアザチンguazatine triacetate [1, 1′-iminodi-(octamethylene)diguanidinium triacetate]はアルカリ溶液中において, りんごおよびぶどう中の成分に結合しやすい.そこで, りんごおよびぶどう中のどの成分に結合するかを検討した.その結果, フルクトースがグアザチンに結合する要因物質の一つであることが判明した.また, フルクトースのどの位置がグアザチンとの反応に関与しているかを検討した結果, C_1位およびC_2位における水酸基およびカルボニル基が関与していると推定できた.
著者
坂田 五常 牧野 健二 河村 保夫 猪飼 隆
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.61-67, 1985-02-20
被引用文献数
1

Ethyl 2-[4-(6-chloro-2-quinoxalinyloxy) phenoxy]-propanoate (code No. NCI-96683)は, 現在日産化学工業(株)によって開発中の新しい選択性除草剤である.これまで数種のheterocyclicoxy phenoxy propanoic acid誘導体が選択性除草剤として知られていた.本研究においてヘテロ環としてさまざまなベンゼン縮合ヘテロ環を探索合成した結果, quinoxalinyloxy phenoxy propanoic acid誘導体, とくにNCI-96683がすぐれたイネ科雑草に対する除草活性と広葉作物選択性を示すことを見いだした.これらの誘導体は合成原料として2-chloroquinoxaline誘導体とhydroquinoneおよびα-halogenopropanoic acid誘導体を用いて合成した.NCI-96683は, 大豆, 棉, 甜菜, なたねなどの広葉作物に薬害を示すことなく, イヌビエ, メヒシバ, オヒシバ, エノコログサ, オオクサキビ, カラスムギおよびセイバンモロコシなどに卓効を示した.圃場試験においては, 一年生イネ科雑草に対し0.05-0.15 kg a.i./ha, 多年生イネ科雑草では0.11-0.22 kg a.i./haで十分な除草効果が得られた.
著者
清田 洋正 小池 貴徳 東 栄美 佐藤 靖 折谷 隆之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.96-99, 2001-02-20
被引用文献数
1

ジャスモン酸メチルは植物の成長抑制に働くアブシジン酸様の植物ホルモン様物質である.その代謝不活性化は, 11位或いは12位の水酸化から始まると推定されている.実際, 単離或いは合成された11-(或いは12-)水酸化体は不活性である.この代謝をブロックし, より高活性なアナログを開発する目的で, 11位のモノフルオロ置換体を設計した.合成(ラセミ体)は, 既に報告した12-OH体の合成経路に準じ, ノルボルネンを出発原料として用いて行った.鍵段階のフッ素化反応にはDASTを用いた.イネ芽生えの第二葉鞘伸長阻害試験では, このアナログはジャスモン酸メチルの約10分の1の活性であった.ハツカダイコン芽生えの根伸長阻害試験でも活性は弱かったが, 低濃度では逆に伸長を促進した.12-OH体も同様の効果を示すことが知られている.これらの結果から, 導入したC-F結合は, 望むC-H結合のミミックではなく, C-OH結合のミミックとして働き, 活性が低下したものと考えた.
著者
吉原 照彦
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.542-546, 2010-11-20

セオブロキシドは植物ホルモンであるジャスモン酸を生成するため,その活性は多岐に亘る.活性を有するか否かについては,セオブロキシド投与後のLOX活性とLOXタンパク質の変化を調べる.LOX活性は反応生成物をUV測定することにより,LOXタンパク質はウエスタンブロット法により可能である.サツマイモ(ベニアズマ,ベニサツマ),東洋蘭[春蘭, 鉄骨素心],キク(寒桜),イチゴ(宝交早生)についてLOX活性がみられたことから,セオブロキシド処理により何らかの効果が見られると忠われる.
著者
杉浦 広幸 藤田 政良
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.433-438, 2003
被引用文献数
1

エテフォン散布が、露地栽培での夏秋ギクの伸長生長における影響、花芽分化や葉色との関係について調査した。供試したいずれの品種もエテフォン散布区の伸長生長は、散布を受ける期間中は抑制され、その後時間が経過して花芽分化が総包りん片形成期から小花形成期となる時期に速く進み、開花が近くなると停止した。花芽分化抑制のためエテフォン200mg/lの3回散布後1000mg/lを散布したところ、'精雲'と'サマーイエロー'は高所ロゼットになり、その後節間伸長が回復してエテフォン200mg/lの3回散布区と同じ高さに伸長した。摘心とエテフォン散布による伸長生長への影響を調査したところ、無摘心のエテフォン散布区と摘心のエテフォン散布区の生長を比較すると、前者は後者に比べて前半の伸長生長が遅れ、その後短時間で進み草丈は追いついた。また、後者の上部展開葉の葉色が明緑色から濃緑色に変化する時期が、前者に比べて遅延した。以上より夏秋ギクにエテフォンを散布処理すると、散布後直ちに花芽分化、伸長生長および上部葉の濃緑色化を抑制するが、時間経過とともに伸長生長抑制活性は低下し、最終的には草丈の伸長生長を促進した。
著者
杉浦 広幸 藤田 政良
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌(Journal of Pesticide Science) (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.433-438, 2003
被引用文献数
1

エテフォン散布が、露地栽培での夏秋ギクの伸長生長における影響、花芽分化や葉色との関係について調査した。供試したいずれの品種もエテフォン散布区の伸長生長は、散布を受ける期間中は抑制され、その後時間が経過して花芽分化が総包りん片形成期から小花形成期となる時期に速く進み、開花が近くなると停止した。花芽分化抑制のためエテフォン200mg/lの3回散布後1000mg/lを散布したところ、'精雲'と'サマーイエロー'は高所ロゼットになり、その後節間伸長が回復してエテフォン200mg/lの3回散布区と同じ高さに伸長した。摘心とエテフォン散布による伸長生長への影響を調査したところ、無摘心のエテフォン散布区と摘心のエテフォン散布区の生長を比較すると、前者は後者に比べて前半の伸長生長が遅れ、その後短時間で進み草丈は追いついた。また、後者の上部展開葉の葉色が明緑色から濃緑色に変化する時期が、前者に比べて遅延した。以上より夏秋ギクにエテフォンを散布処理すると、散布後直ちに花芽分化、伸長生長および上部葉の濃緑色化を抑制するが、時間経過とともに伸長生長抑制活性は低下し、最終的には草丈の伸長生長を促進した。
著者
岡田 至 奥井 周子 関根 真波 高橋 洋治 福地 俊樹
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.69-73, 1992-02-20
被引用文献数
6

われわれは先にN-(4-tert-ブチルベンジル)-4-クロロ-3-エチル-1-メチルピラゾール-5-カルボキサミド(tebufenpyrad, Code No. MK-239, Pyranica^[○!R])が, 高い殺ダニ活性を有することを報告した.さらに高活性な化合物を目標に, 26種の二環式ピラゾール誘導体(IV)を合成し殺ダニ活性を試験したところ, シクロペンタン環を有する化合物が高活性であることを見いだした.その中で, N-(4-tert-ブチルベンジル)-2, 6-ジメチル-2, 4, 5, 6-テトラヒドロシクロペンタピラゾール-3-カルボキサミド(21)が最も高い活性を示し, テトラニカス属やパノニカス属のダニに対してMK-239に匹敵する活性を示した.
著者
関沢 純 大竹 千代子
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.295-300, 1992-11-20

農薬による人の健康と環境へのリスクを正しく評価することは重要である.問題の所在を知る上で, 農薬の永年にわたる使用量の変化, 現行の規制内容, 国際機関によるリスク評価の現況を知ることは大きな参考となる.著者の開発したデータベースを用いて国内で1975年から1990年(農薬年)において使用量の多かった41農薬について, 使用量の推移, 国際機関によるリスク評価の結果(FAO/WHO合同残留農薬委員会による一日許容摂取量の評価の概要など)と国内の規制状況(残留基準の有無など)を検討し, 今後必要と思われるリスク評価のニーズを指摘した.一例としてはDichloropropene, Chloropicrin, Methyl bromideなどくん蒸剤の使用量が増加しつつあり, 使用者への健康影響および生態系への影響の評価と管理が課題と考えられた.
著者
宮原 佳彦
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:21870365)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.218-223, 2013-08-20 (Released:2014-03-01)
参考文献数
6
著者
Masahiro Haramoto Homare Yamanaka Hiroyasu Hosokawa Hiroshi Sano Shinsuke Sano Hiroshi Otani
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.116-122, 2006 (Released:2006-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 11

The control efficacy of a novel fungicide, cyflufenamid, (Z)-N-[α-(cyclopropylmethoxyimino)-2,3-difluoro-6-(trifluoromethyl) benzyl]-2-phenylacetamide was studied. In field trials, a low dosage (25 ppm) of cyflufenamid (10%WG) showed excellent efficacy in almost all plants against powdery mildew caused by various pathogens in agricultural production. Cyflufenamid also had high efficacy against brown rot in stone fruits caused by Monilinia fructicola. The fungicidal properties of cyflufenamid were investigated to elucidate the high performance of the compound in the field. Pot tests against cucumber powdery mildew indicated that cyflufenamid has excellent preventive, curative, long residual, translaminar and vapor phase activities at low concentrations. © Pesticide Science Society of Japan
著者
濱田 崇宏 麻薙 峰子 里沢 智美 安楽城 夏子 番場 伸一 東村 紀一 明瀬 智久 平瀬 寒月
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.152-158, 2014-08-20 (Released:2014-08-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2 27

The target site of tolprocarb, a novel systemic fungicide used for controlling rice blast, was investigated. Tolprocarb decolorized the mycelia of Magnaporthe grisea; the decolorization was reversed by adding scytalone or 1,3,6,8-tetrahydroxynaphthalene (1,3,6,8-THN). This result suggested that the target site of tolprocarb was polyketide synthase (PKS), which regulated polyketide synthesis and pentaketide cyclization in melanin biosynthesis. Further, we produced a transgenic Aspergillus oryzae, which possessed the PKS gene of M. grisea, and performed in vitro assays of PKS using membrane fractions from the transgenic A. oryzae. Compared with some conventional melanin biosynthesis inhibitors (cMBIs), tolprocarb only inhibited PKS activity in vitro. These results indicated that tolprocarb’s target protein in M. grisea was PKS, which differentiates this fungicide from other cMBIs.
著者
篠原 信
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.90-94, 2008-02-20 (Released:2013-12-07)
参考文献数
19
被引用文献数
1
著者
協和醗酵工業株式会社バイオケミカル事業本部バイオケミカル営業部農薬学術担当
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.201-205, 1998-05-20
被引用文献数
1

ホルクロルフェニュロンの安全性を評価するため, 各種毒性試験を実施した.急性毒性は原体, 製剤とも低く普通物相当であった.眼一次刺激性試験の結果, 原体に刺激性がみられたが, 洗眼により刺激は消失した.一方, 製剤では副成分中の有機溶媒によるものと考えられる強い刺激性が認められたが, これも洗眼することで大幅に刺激を軽減することができた.皮膚刺激については製剤で軽度の刺激がみられた程度で, 皮膚感作性は原体, 製剤とも陰性であった.亜急性毒性, 慢性毒性及び発がん性試験においてマウスの10, 000ppmの高用量群で, 腎臓毒性の持続による尿細管上皮の再生性増殖性病変が増加した.ラット及びイヌに腎臓障害は認められなかった.ラットによる繁殖試験及びラット, ウサギの催奇形性試験では特に異常はみられなかった.変異原性試験において染色体異常試験の代謝活性化法で0.4mM以上の濃度に染色体異常誘発性が認められたが, 復帰変異, DNA損傷試験及び小核試験ではすべて陰性で変異原性の誘起性はないものと推察された.薬理試験においてホルクロルフェニュロンの大量投与により, 中枢神経系及び消化器等に対して抑制的な作用がみられたが, きわめて大量投与による非特異的作用と考えられ, 通常の使用では本剤による中毒は発現しないと判断された.ホルクロルフェニュロンについては, 平成7年8月29日の残留農薬安全性評価委員会において, ADIが0.093mg/kgと設定された.
著者
Zhai Jing Robinson William H.
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.157-162, 1994-08-20
被引用文献数
1

雄のチャバネゴキブリを用い, 殺虫剤処理面から脚のふ節盤を通して致死量の薬剤を取り入れるのに要する時間と噴霧薬液滴の大きさ, 密度および薬剤の濃度の関係について調べた.ふ節盤への直接処理とガラス板に処理した薬液残渣の上を歩かせる間接処理を行なった.ふ節盤のガラス面への接触面積とガラス盤上でのゴキブリの移動速度を測定した.薬剤処理ガラス板からふ節への薬剤の移行量をゴキブリの1分間の移動距離, ふ節の接触面積, 平方センチメートル当りの薬剤量から計算で求めた.直接処理の結果から計算すると, 0.1%のcypermethrinを噴霧した場合, 50%のゴキブリが致死するためには感受性のVPI系で33滴, 抵抗性のRHA系で3174滴の残渣に触れなければならない.10μg/cm^2のcypermethrinを処理したガラス面でのKT_<50>はVPI系で5.4分, RHA系で15.6分であった.0.049μg/cm^2の処理面でのKT_<50>はVPI系では8.4分であったが, RHA系では24時間以上になった.
著者
大塚薬品工業株式会社開発研究部
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.S319-S321, 1992-11-20

ダイファシノン原体の急性毒性, 亜急性毒性は比較的高いが, 製剤は0.005%と非常に低い濃度であり, 急性経口LD_<50>はマウス, ラットとも5000mg/kg以上, ラットの急性経皮LD_<50>は2000mg/kg以上であることから, 人畜に急性毒性中毒の起こる危険性はきわめて低い.ダイファシノン0.1%中間体の眼刺激性はきわめて軽度で, 0.005%製剤の皮膚一次刺激性, 皮膚感作性ともに陰性であった.変異原性に関しては復帰変異原性試験, DNA修復試験ともに陰性であった.ダイファシノンは抗血液凝固剤であり, 0.005%というきわめて低濃度で使用され, 連日摂取することにより毒性が発現すること, さらにビタミンK_1という解毒剤が確立していることから, 定められた使用基準を遵守すれば安全性を確保できる有用な殺そ剤であるといえる.
著者
大内新興化学工業株式会社
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.507-510, 1990-08-20
被引用文献数
1

チウラムの安全性評価を行なうための各種毒性試験を実施した.その結果, 本剤は急性毒性が低く, 皮膚に対する刺激性はなく, 感作性も軽微であった.また, 眼刺激性が原体に観察されたが, 実際の使用時の製剤には認められなかった.慢性毒性試験ではビーグル犬の高用量群において重篤な毒性症状が発現し雌雄の全例が死亡したものの, ラットでは一部の臨床病理学的検査に異常を認めたにすぎず催腫瘍性も認められなかった.また, マウスにおいても催腫瘍性はみられなかった.催奇形性はなく繁殖能力に悪影響を及ぼさなかった.変異原性試験ではDNA修復試験および復帰変異原性試験で弱陽性を示したが, 小核試験および染色体異常誘発性試験は陰性であった.チウラムはチウラム・ジラムの混合剤として昭和53年2月に農薬登録を取得したが, 昭和63年10月にチウラムおよびジラムの分離評価が実施された.現在の登録保留基準値はリンゴ1.0 ppm, ナシ0.5 ppm, モモ0.5 ppmおよび柿0.5 ppmと設定された.チウラムは定められた使用基準を遵守すれば, 安全性が高い薬剤であり, 農業資材として有用であると考えられる.