著者
小澤 宏亮
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

天然歯とは異なり歯根膜,神経を欠くため緩圧作用がほとんどないインプラント治療は,わずかな咬合の不調和がトラブルの原因になると言われているが,適切な咬合を付与するためのガイドラインは未だに確立されていない.経過良好なインプラントの咬合状態を明らかにすることを目的に,1歯中間欠損部単独植立インプラントの各かみしめ強さでの咬合荷重量とその変化を検討した.さらに,三次元有限要素解析モデルにおけるインプラントと骨の接触状況の変化を,実物のインプラントと3種類の三次元有限要素解析モデルの被圧変位量と応力分布を比較検討した.これらのデータから開発した手法を応用して得られたインプラントの咬合間隙量についても検討を加えた.新たに開発した手法によりインプラントに付与された咬合間隙量を推定できる可能性が示唆された.インプラントと天然歯の間には様々な咬合状態があったが,経過良好なインプラントの咬合間隙量にはある程度の幅があることが明らかになった.これらのインプラントが十分に機能しているかどうかについてはさらなる長期の研究が必要であろう.
著者
村上 明日香
出版者
昭和大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

チタンインプラント埋入後の創傷治癒における酸化ストレスは,骨結合を妨げる重要な因子であり,これを抑制することがひつようである.チタンは表面処理により骨との親和性を向上させることができる一方で,酸化ストレスの抑制については検討されていない.本研究では放電陽極酸化によって表面処理したチタンの骨芽細胞に対する酸化ストレス抑制効果を検討した.放電陽極酸化チタンでは骨芽細胞の石灰化関連遺伝子の上昇が見られた.また,表面に析出した骨様石灰化物の物理的性質が向上した.放電陽極酸化チタン表面から発生する活性酸素が分解され,接着細胞に対して酸素を持続的に徐放することにより,酸化ストレスを抑制することが可能になった.放電陽極酸化処理チタンは,骨結合能と創傷治癒の促進により,チタンインプラントの表面処理として有効であると考えられる.
著者
高橋 美紀
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、薬物依存症の当事者自身によって運営と入所者へのケアが行なわれている、民間薬物依存症リハビリ施設ダルクにおける薬物依存症者の回復過程を明らかにして、後に続く薬物依存症者が回復過程を歩んでいくための道標となりうる、回復過程に関する仮説、および仮説モデルを、調査による裏付けのもとに得ることを目的として実施したものである。研究対象者は、3箇所のダルクで施設の代表者、もしくはそれに代わるスタッフから紹介を受けた、施設内でスタッフ研修生(無給)ないしはスタッフの立場で、何らかの役割を担っている薬物依存症者であり、研究対象は対象者らが辿ってきている回復過程そのものである。23名の研究対象者に研究者自身が継続的に実施した面接の記録を分析対象として、これをもとに個別の回復過程の再構成を試みた。再構成した23名の個別の回復過程をもとに、仮説を得るための質的・帰納的分析を重ねた。得られた仮説のうち、いくつかのネーミングを下記に挙げておく。(1)すべてを失ったときが回復の好機(2)回復の目的は自分自身のためという原則の徹底保持(3)薬物使用につながったような出来事や状況に処していく力の涵養他、20仮説は略す
著者
片岡 有
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

in vitroの実験からインプラントの表面性状が細胞の分化に影響することを明らかにした.ワイヤ放電加工を用いナノ修飾した表面が機械研磨面よりも早期に細胞接着が生じ,骨芽細胞や骨髄間葉系細胞の分化に影響することを明らかにした.また,分化誘導培地で骨芽細胞様細胞を培養し,EDSurfaceの細胞分化に与える影響について検討できた.さらに,生体内でインプラント表面から骨形成が生じるContact osteogenesisが期待されているが,in vivoにおいてその可能性を示唆できた.
著者
平野 薫
出版者
昭和大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

嚥下運動(飲み込むこと)時の大脳皮質の脳血流変化について、嚥下障害の改善に有効とされる嚥下法施行時および嚥下誘発手技施行時の大脳皮質の脳血流変化について調査を行い、それぞれの脳活動部位の傾向が明らかとなった。また、側頭筋の受動的・能動的筋活動が近赤外線分光法データへ与える影響について検討し、いくつかの知見を得た。
著者
宮崎 章 渡部 琢也 平野 勉 七里 眞義
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高脂肪食を負荷したアポE欠損マウスに、強力な血管収縮作用をもつ血管作動性物質であるウロテンシンIIを持続皮下注すると、動脈硬化病変は8倍に増加した。ウロテンシンII投与マウスから得た腹腔マクロファージの酸化LDLによるコレステロールエステル蓄積(泡沫化)は、対照群の7倍に増加していた。同一の前駆体から派生する新規血管作動性物質として同定されたサリューシンα、βをアポE欠損マウスに持続皮下注すると、動脈硬化病変形成はサリューシンαにより54%抑制され、サリューシンβにより2.6倍促進した。腹腔マクロファージの泡沫化は、サリューシンα投与マウス由来の細胞で68%抑制され、サリューシンβ投与マウス由来の細胞で2.6倍に増加した。ウロテンシンIIやサリューシンは動脈硬化治療のあらたな標的分子として注目される。
著者
澁谷 誠二 若山 吉弘
出版者
昭和大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

平成16年度・17年度進行状況と本年度(平成18年度)成果平成16年度はMDXマウスへのゲンタマイシン薬物治療単独で、平成17年度はMDXマウスへの正常マウス臍帯血移植とG-CSF投与正常末梢血輸血を施行した。これらでは、治療群MDXマウスにおいて、一般筋病理組織像の変化はみられず、また、免疫染色標本による骨格筋ジストロフィン発現の解析においても、対照マウスと比較して明らかな変化はみいだせなかった。平成18年度は、ゲンタマイシン薬物治療と正常マウス臍帯血移植の併用療法を中心に、特に、マウス骨格筋のジストロフィン陽性線維の割合を治療群マウスと未治療群マウスにおいて統計的に比較検討した。生後1ヶ月および2ヶ月のmdxマウス各々6匹ずつにゲンタマイシンを投与し、投与終了4週後に免疫抑制剤(サンデユミン)で前処理した後、正常マウス臍帯血を尾静脈に静注し、静注後4週後の筋組織を解析した。その結果、治療群のmdxマウスでは未治療群のmdxマウスと比較して、その一般筋病理組織像に変化はみられなかった。一方、ジストロフィン免疫染色による解析において、未治療群のマウスでは1%以下のrevertant線維(ジストロフィン発現が明瞭な線維)が認められ、治療群のmdxマウスでの発現増加を期待したが未治療群のmdxマウスと違いは見られなかった(p>0.1、T検定)。ジストロフィン発現が明瞭な線維以外の筋線維のジストロフィン発現状態も観察したが、平成16年度と平成17年度の結果とどうように、ジストロフィンがごくわずかに発現していると思われる筋線維は治療群のmdxマウスで多いように思われたが、明らかな違いはみられなかった。
著者
田中 玲奈
出版者
昭和大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,エナメル質初期脱灰病変に対して人工材料のみを添加するのではなく,潜在的な石灰化能を向上させることにより本来の歯質を回復することである.石灰化処理を行ったエナメル質は,その耐酸性と物理的強度が重要である.齲蝕や欠損のない健全な天然歯エナメル質試料に35%過酸化水素とハロゲンランプ照射によるIn-office Power Bleachを行い,人工唾液を作用させた後,脱灰液に2週間浸漬し,エナメル質の溶解性を評価した.溶解性は,デスクトップ型のマイクロCTを利用した非破壊検査により,1つの抜去歯から任意のボリュームで複数の仮想サンプルを抜き出すことができるため,エナメル質に物理化学的な変化を加えずに,ミネラル体積の変化や結晶度を経時的に測定することができる.また仮想サンプルは数値上全く同一形状であり,機械的に作成したものよりも精度が高く,データの信頼性や再現性も確保することができる.未処理のエナメル質(Control),人工唾液を作用させながらHome Bleach(HB)した後脱灰したエナメル質,In-Office Power Bleach(OB)した後脱灰したエナメル質をマイクロCTによって分析し,病変部のミネラル分布の変化を測定し比較した.HB試料とControlにおいて脱灰によるミネラル体積の減少が顕著であったのに対し,OB試料では脱灰後のミネラル体積が増加した.エナメル質の密度は,表面からエナメル象牙境に向かって傾斜的に低下する.高濃度の過酸化水素は硬組織に対しての浸透性が高く,エナメル深部の低密度層で相対的に濃度が上昇する.深部に貯留した過酸化水素はハロゲンランプ照射によりラジカルを発生し,深部から表層にかけて電気勾配が発生すると考えられる.低密度層で電荷が生じることにより,人工唾液中でエナメル深部の選択的石灰化が,はじめて可能になった.さらに本研究から,石灰化処理を行ったエナメル質の耐酸性が明らかになった.
著者
久光 久 真鍋 厚史 山田 嘉重 木下 潤一朗
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

茶褐色の鶏卵面に過酸化尿素を主成分とした漂白剤(ナイトホワイトエクセル)および、過酸化水素を主成分とした漂白剤(ピレーネ)を用いて漂白を行った。漂白に対して実験1ではハロゲン光(PENCURE)とKTPレーザーをそれぞれ別々に使用し、実験2では併用使用をおこなった。実験条件は、3Wの出力KTPレーザーをそれぞれの漂白剤塗後に1分30秒、3分、5分、10分間照射した。ハロゲン光でも同様に、1分30秒、3分、5分、10分間照射し、37℃で半日保存した後、測色をおこなった。結果として、単独使用の実験1ではKTPレーザー照射クループで、ナイトエクセル漂白剤使用の場合に3分以上の照射において漂白効果が確認された。一方ピレーネを使用した場合、5分以上のKTPレーザー照射にて漂白効果が認められた。ハロゲン光照射においては、ナイトエクセル、ピレーネのどちらを使用した場合においても1分30秒照射から漂白効果が確認された。一方実験2の結果では、ナイトホワイトエクセル、ピレーネ共に1分30秒で全ての試料に漂白効果が認められた。この効果はハロゲン光とKTPレーザーの照射順序の違いには影響せず、ハロゲン光とレーザーのどちらを先に照射しても明確な違いは認められなかった。
著者
小澤 浩之
出版者
昭和大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

【目的】強制的歯牙移動時の疼痛により、プロトオンコジンのひとつであるFos陽性細胞が脳に発現することが中枢神経における可塑性、持続性疼痛と関連が深い現象として注目されているが、そのメカニズム解明の第一歩として今回は動物実験におけるFos陽性細胞出現の推移と、アンケート調査により実施した矯正治療中の患者の傷み感覚の推移について比較検討することとした。【動物実験の方法】Urethane,α-chloralose麻酔下で、Wistar ratをindomethacin投与群、非投与群に分けそれぞれ200gで上顎切歯を離開する矯正刺激を加えた。各群とも刺激直後、2時間後、12時間後に4%paraformaldehyde溶液で灌流固定し脳幹部の凍結切片作成後、抗c-foc抗体を用いたABCによりSP5CにおけるFOS陽性細胞を免疫組織学的に検索した。また、矯正刺激を24時間経験させたラットに1週間後同様の手順で刺激し経時変化を調べた(矯正刺激経験群)。【結果および考察】動物実験における経時変化では、2時間後をピークとして陽性細胞が認められた。indomethacin投与群においては反応が見らなかった。一方患者の痛み反応としては、2時間後より痛み反応が出現し、48時間をピークとして減少した。また矯正治療直後にロキソニン(三共)60mgを経口投与した場合、痛み減少傾向を示した。したがって、Fos陽性細胞の出現は、実際の痛み感覚よりもかなり早く出現し、そそ消失後も実際の痛みは長く継続する性質があり、それにプロスタグランディンが関与していることが示唆された。また、痛み刺激経験群においては、動物実験においてはFos発現細胞数が減少し、患者においては痛み反応が低下した。したがって、間欠的に繰り返される痛み刺激に対して、受容系が寛容状態になることが示唆された。
著者
長谷川 紘司 加藤 伊八 池田 克己 高江洲 義矩 末高 武彦 加藤 熈
出版者
昭和大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

歯周炎予防プログラム作成に当たり最も重要な基礎的知見はその自然史である。岡本、長谷川は各々異なる特性集団にて、同一個体の経年的調査を行った。長谷川の調査ではポケットの変化よりもアタッチメントレベルの変化が大きく、年齢とともに増加し、特に25才以降で顕著であった。またポケットが深い方が浅い方よりもアッタチメントロスがおきやすかった。岡本の調査では、歯周病の進行は個人差、部位差が大きく、高齢者ほど進行が顕著であった。また歯肉炎から歯周炎への変遷を明解にし、若年者からの予防対策が必要である。この観点から、堀内、高江洲は若年者における歯周病変の実態とコホート調査および予防処置の効果について検索した。同時にCPITNの問題点の指摘も行われるとともに、被予防処置群では全体的には指標の改善が見られたことが報告されている。末高、加藤熈は成人の多数集団についてCPITNの調査を行った。その結果、年齢階級が高まるにつれて最大値が高くなり、さらに口腔清掃状態との関連についてその強い相関を報告している。高齢者における歯科的所見について中垣はケースコントロールスタディーで面接法にて報告している。その結果、残存歯は前歯部が、欠損歯は臼歯部に多く、8020達成者においては、若い時期における甘味に対する依存度や間食傾向がその残存歯数に大きく影響していることが示された。岩山は咬合回復可能年齢を検討した結果、50才前半で治療を行うことが安定した臼歯部の咬合支持を維持するのに必要だと示唆した。歯科保健状況については地域差が極めて大きい。これについては加藤伊八が高齢化地区でかつ常勤歯科医師の存在しない離島にて調査し、残存歯が歯科疾患実態調査と比べ著しく悪いことを報告し、現在は口腔衛生指導実施による改善程度について検索している。池田は歯周炎患者の生活習慣・環境と病変の進行程度との関連を調査し、環境要因としては、居住地域、職業、喫煙、飲酒、歯磨き習慣や歯磨き時の出血、宿主要因としては性別、全身健康総合判定などが、歯周病の進展程度と強く関連していることを示唆している。集団保健指導のあり方は、個別指導と異なる点が多くその有効性からの検討が渡邊により実施された。その結果、歯科保健指導は毎月一回、三回行うことが有効であった。宮武は歯科疾患実態調査、国民生活基礎調査、患者調査などの結果を分析し、有所見者率が高率であるにも関わらず、有訴者率が低率であることを指摘した。しかし近年歯周病の有訴者のうち、受療者は43.1%(1986)から59.0%(1992)と増加していた。これは歯科保健事業の拡大の結果とも考えられ、今後さらに進展が期待される。歯周病に対する行動科学的状況について、岩本は自己記入式質問紙(デンタルチェッカー(R))の結果と歯周病の状況に高い関連性を認め、また集団への利用により歯周病の自己確認や予防プログラムの確立への可能性を示唆した。以上の結果より、歯周病予防を行う上では比較的若年者を対象とした方が予防効果が高いと思われた。また歯周病の自己認識も乏しいことから集団を対象とした質問用紙などの利用により、疾病の自己認識を高めていくことも予防を行う上で重要であると思われる。
著者
道 健一 山下 夕香里 片岡 竜太 中村 篤 高橋 浩二 斎藤 健一 IMAI Satoko 山下 夕香理 今井 智子
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1988

臨床応用可能な開鼻声の定量的評価法を確立するために、口蓋裂あるいは先天性鼻咽腔閉鎖不全症による開鼻声患者18例と健常人17例の発声した母音/i/にケプストラム分析を行い、得られたスペクトルエンベロ-プに1/3オクタ-ブ分析を加え、開鼻声の周波数特性を求めた。次に20人の聴取者による開鼻声の聴覚心理実験を行い、得られた主観評価量と周波数特性を表わす物理量の関連を検討したところ次の結果が得られた。1 健常音声と比較した開鼻声のスペクトルエンベロ-プの特徴は第1、第2フォルマント間のレベルの上昇と、第2、第3フォルマントを含む帯域のレベルの低下であった。2 開鼻声の聴覚心理実験を行い得られた5段階評価値を因子分析したところ、開鼻声を表現する2次元心理空間上に2つの因子が存在し、第1因子は全聴取者に共通した聴覚心理上の因子であり、第2因子は聴取者間の個人差を表わす因子であると考えられた。そのうち第1因子を主観評価量とした。3 開鼻声の主観評価量とスペクトルエンベロ-プの1/3オクタ-ブ分析から得られた物理量の相関を検討したところ、第1フォルマントの含まれる帯域から2/3〜4/3オクタ-ブ帯域の平均レベル(物理評価量L1)および9/3〜11/3オクタ-ブの帯域の平均レベル(物理評価量L2)と主観評価量に高い相関が認められた。