- 著者
-
渡邉 正樹
- 出版者
- 東京学芸大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1997
本研究の目的は,学校を中心とした効果的な歯科健康教育プログラムの開発を目指して、子どもたちの口腔保健行動の実態を明らかにし,家庭や地域との連携のありかたを検討することにある。まず最初に,現在の日本における学校歯科健康教育の実態を総括し,問題点を明らかにした.つづいて,小学生の口腔保健行動の特徴と関連要因に関する調査結果について報告した.その概要は次のとおりである.口腔保健行動には,歯口清掃行動,摂食行動,受診受療行動があり,それらには性差と共に学年ごとの特徴ある変化があるため,それぞれ別々に考えていく必要がある.歯口清掃行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれるようになる.摂食行動と受診受療行動は,学年が上がるにつれ,適切な行動がとれなくなってくる.口腔保健行動は,男子より女子の方が適切な行動がとれるという傾向がある.また口腔保健に関する自己効力・態度・意欲からも女子の方が積極性に取り組もうとする傾向がみられる.ここではさらに学年に応じた歯科健康教育の達成課題についても明らかにした.その次に養護教諭を対象とした歯科保健指導の問題点に関する調査の結果について報告した.その中で,地域・家庭・学校との連携が不可欠であること,しかし実際には多くの障害があることなどを明らかにした。特に家庭との連携の困難さは深刻であった.これらの結果に基づいて最後に,米国の包括的学校保健プログラムを参考に,新たな包括的学校歯科健康教育プログラムの提示を試みた。