著者
杉森 伸吉 北山 忍
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近年の文化社会心理学が示してきたところを加味した本研究仮説によると、日本人の場合は所属集団の持つ集団基準から見て恥ずかしくないところに、自己を定位することに動機づけられているため、失敗したときには、自尊心回復よりも集団内の高地位に再定位するように、自己改善の動機が喚起されるため、比較対象として選ぶのは、自分より下位のものではなく、むしろ最高位の他者が選ばれやすくなること、そして自分の努力不足に原因が帰属されやすくなることを確認した。さらに、自己不確実感が高い個人ほど、こうした傾向が強いことも示された。また、選択行動の直後に、親しい他者が異なる選択をしたことを知ると、自己不確実感が高まり、不協和低減行動が生じた。以上の諸結果から、研究3についても、選択後の認知的不協和について、他者との関係性の観点から、検討を加えた。研究1における自己不確実感と成功・失敗の原因帰属および社会的比較の関連と、研究2の選択後の自己不確実感について検討した。従来の欧米の理論では、人間は自尊心維持に動機づけられており、失敗した場合は自己防衛の動機が高められて、失敗の原因を課題の困難さなどの外部要因に帰属することで、自尊心が傷つかないようにしたり、自分より成績の悪かったものと社会的比較をおこなうことにより、自尊心をあげるように試みたりすることが指摘された。他者の選択情報を与えた結果、自分の選んだ商品の魅力が増し、自分の選ばなかった商品の魅力が減少するという「認知的不協和」現象は、日本においては後者の条件においてのみ見られるだろう。ここでの研究仮説を検証し、仮説を支持する結果が得られれば、集団よりも個人を社会の一次的ユニットと見なす欧米における研究では説明できなかった重要な過程に光を当てることができ、実験社会心理学の研究はもとより、教育心理学、臨床心理学に対しても有意義な貢献ができるであろう。
著者
佐々木 棟明
出版者
東京学芸大学
雑誌
研究紀要/東京学芸大学教育学部附属竹早中学校
巻号頁・発行日
no.34, pp.51-66, 1996-03

はじめに/I 表現構造/1 表層構造としての「表現」/2 表現の基本的機能/3 表現システム/II 表現形式の典型とその特徴/1 言語的表現/2 非言語的表現/3 表現と鑑賞/おわりに
著者
前田 稔
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

病院患者図書館および公立図書館の質的調査、全国の病院患者図書館の訪問調査、海外の病院患者図書館の訪問調査、児童養護施設の読書環境調査を通じて、健康に関する情報提供と市 民生活との関連について、各方面から積極的な活動が展開されている現状が明らかになるとと もに、専門的な情報の提供の際には、病院側と市民側との相互協力が課題となることが明らか になった。
著者
山田 昌弘 須長 史生 谷本 奈穂 施 利平 羽渕 一代 土屋 葉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、現代日本社会での夫婦関係のあり方を分析するために、離婚研究者に対するインタビュー調査、及び、30才から59才までを対象とする質問紙調査を東京と大阪で実施した。質問紙調査では、離婚対象者のみの質問を質問票に組み込むことによって、離婚対象者に対するランダムサンプリングデータを得た。分析による知見は、主に三つにまとめられる。一つは、日本の夫婦関係の現状に関してのものである。日本の夫婦関係において、40年前の調査結果と比較しても、一緒に出かけるなど共同行動は相変わらず低調である。これは、セクシュアリティーに関してもいえる。しかし、共同行動が少なく、セックスレスだからといって、夫婦の関係性が希薄だと結論づけることはできない。日常会話や困ったときに助け合うなど、愛情を直接表現し合うこととは別の形での愛情関係が維持されうることが分かった。次に、恋愛感情と結婚生活における愛情が分離している様相が観察された。意識において、恋愛感情と結婚を別立と意識している傾向が強まることが分かった。行動においても、カップルを壊すことなくカップル外の親密関係を作るケースが相当数いることがわかる。以上のように、近年の離婚急増を、「夫婦の愛情関係が変化した」という点に求めるという仮説は成り立たないように見える。むしろ、離婚や結婚をめぐる環境の変化によってもたらされた可能性が高い。データ分析を行うと、離婚経験者には、配偶者への愛情表現や経済力(女性のみ)への高い期待が見られた。つまり、相手が提供できうる能力以上のものを相手に求めることが離婚につながる大きな原因となっている。愛情表現に関しては、その基準が高まったという仮説も成り立ち、今後の検証にまたねばならない。一方、経済力に関しては、近年の男性の雇用の不安定化によって、男性の経済力が落ちている。離婚相手の経済力に不満があったという女性の割合が高いことによっても裏付けられる。近年の離婚急増の一因は、経済状況の変化によってもたらされたものであり、少子化の原因とも重なるものであると結論できる。