著者
星野 義延 笠原 聡 奥富 清 亀井 裕幸
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-72, 1996-09-15 (Released:2017-04-03)
参考文献数
24
被引用文献数
4

建設残土によって造成された東京湾の臨海埋立地のひとつである大井埠頭の一角にある樹木侵入期の草原において,樹木の侵入と定着についての調査を1986年に行った。調査地はヨシ,セイタカアワダチソウ,チガヤ,オギなどの地下茎で繁殖する風散布型の多年生草本植物の優占する群落が形成されており,樹木はその中に点在していた。樹木個体の分布は電線の下や排水溝がある場所で多くなる傾向が認められ,これらの構造物の存在が調査地の樹木個体を多くしている要因と考えられた。樹高3m以上の樹木の位置は,調査地に設けられている排水溝の近くに分布する傾向が認められた。出現した樹木のほとんどはヤマザクラ,エノキ,マルバシャリンバイ,ネズミモチ,アカメガシワなどの動物被食散布型の樹木であり,調査地への樹木種子の供給は鳥散布によるものが多いと考えられた。電線は鳥類の休息場所となり,電線下は周辺の公園などの植栽樹の種子が多く供給されていた。このような種子供給は都市域の埋立地にみられる特徴と考えられる。また,排水溝の掘削は植物の生育に不適な埋立地の土壌の改良と,栄養繁殖によって広がる多年生草本植物群落の分布拡大を抑制し,樹木が定着し,生育できるサイトを提供するものと考えられた。埋立地に発達する初期の森林群落としては,エノキ林やアカメガシワ林が考えられた。
著者
齊藤 みづほ 星野 義延 吉川 正人 星野 順子
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-31, 2019 (Released:2019-07-30)
参考文献数
39

1. 沖縄県西表島の渓流辺植物群落(渓流帯に成立し,渓流沿い植物を主な構成種とする群落)の成立立地と冠水頻度の関係について,流積と集水域面積の2軸で冠水頻度を指標した渓流帯テンプレートを用いて明らかにすることを目的とした.2. 西表島の7河川において277の植生調査資料を収集した.また,河川横断面図の作成と冠水痕跡の調査から,平水位と年最高水位における流積を算出して渓流帯テンプレートを作成し,西表島の河川における渓流帯の範囲を推定した.3. 得られた植生調査資料から,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集,ヒナヨシ-シマミズ群集,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集の3群集を識別した.植分あたりの出現種に占める渓流沿い植物の割合は,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集,ヒナヨシ-シマミズ群集,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集の順で大きかった.4. 識別された3群集の分布を渓流帯テンプレート上にプロットした結果,ヒメタムラソウ-サイゴクホングウシダ群集とヒナヨシ-シマミズ群集は,年1回かそれ以上の頻度で冠水する立地に成立する渓流辺植物群落であると判断された.とくに前者は冠水頻度が高い立地にも成立していた.一方,マルヤマシュウカイドウ-イリオモテソウ群集は,年1回程度の増水では冠水しない立地に成立しており,渓流辺植物群落ではないと考えられた.5. 西表島の河川では,定期的な冠水による攪乱が,渓流辺での通常の陸上植物の生育を妨げ,冠水に適応した種からなる渓流辺植物群落を発達させていると考えられた.そのため,冠水頻度を低下させるような河川の人為的改変が行われた場合,渓流辺植物群落が衰退するおそれが高いことを指摘した.
著者
星野 義延
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.35-41, 1990-04-30
被引用文献数
1

The fruits of Zelkova serrata show no modification for dispersal and usually fall in autumn still attached to the fruiting shoot with several brown leaves. Observations on the fruit distribution on the ground beneath mature Z. serrata trees revealed over 65 percent of fruits to be still attached to the fruiting shoot and that almost all fruits lay at some distance from the mature trees. The fall velocities of fruits with and without shoot were measured at 1.51m・sec^<-1> and 5.36m・sec^<-1>, respectively. From these observations and data, it is concluded that the fruiting shoot acts as a winddispersed diaspore, assisting the fruit dispersal of Z. serrata. The detachment of the fruiting shoot is not incidental but is related to the abscission of Z. serrta.
著者
吉川 正人 星野 義延 大橋 春香 大志万 菜々子 長野 祈星
出版者
低温科学第80巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.491-505, 2022-03-31

尾瀬ヶ原の湿原植生を構成する主要な群落について,構成種の種特性や食痕の確認頻度から,シカの採食圧に対する脆弱性の評価を行った.低層湿原や低木林・河畔林の群落は,シカの採食影響を受けやすい中・大型の広葉草本または低木を多く含み,食痕の確認頻度が高かったのもこれらの生活形をもつ種であった.このことは,低層湿原や低木林・河畔林で過去との種組成の違いが大きいという,既発表研究の結果と合致していた.また,構成種の積算優占度が大きい群落ほど食痕がみられた種数も多く,シカによく利用されていると推定された.これらのことから,尾瀬ヶ原においては低層湿原や低木林・河畔林の群落で保全対策の優先度が高いと判断された.
著者
大橋 春香 星野 義延 大野 啓一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-151, 2007
被引用文献数
12

&nbsp;&nbsp;1. 1990年代以降ニホンジカの生息密度が急激に増加した東京都奥多摩地域において,ニホンジカが増加する前の1980-1985年に植生調査が行われた77スタンドにおいて,1999-2OO4年に追跡調査を行い,植物群落の階層構造,種組成,植物体サイズ型の変化を比較した.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 調査地域の冷温帯上部から亜高山帯に成立するシラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計7タイプの植物群落を調査対象とした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 1980-1985年と1999-2004年における植物群落の各階層の高さおよび植被率を比較した結果,全ての植物群落で草本層の高さまたは植被率が減少していた.さらに,森林群落では低木層の植被率が減少する傾向がみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 1980-1985年と1999-2004年における総出現種数は471種から397種に減少し,奥多摩地域全体での植物種の多様性が低下していることが示唆された.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 1980-1985年から1999-2004年の間に,調査を行った全ての植物群落で種組成の変化が認められた.種組成の入れ替わりはミヤコザサ-シモツケ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集の順に高く,シラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集では低かった.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 各植物群落の構成種を植物体サイズによって類型化し,その増減傾向を比較した結果,中型・大型の草本種に減少種が多く,小型の草本種と大型の高木種には増減のない種が多い傾向が全ての植物群落に共通してみられた.<BR>&nbsp;&nbsp;7. スタンドあたりの出現種数はシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計5群落で減少していた.これらの群落では特に中型草本および大型草本のスタンドあたりの出現種数の減少が著しかった.また,森林群落のシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集ではスタンドあたりの低木の出現種数も減少していた.<BR>&nbsp;&nbsp;8. コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集ではスタンドあたりの出現種数に変化がみられなかった.これらの植物群落ではスズタケの優占度の減少量と調査スタンドに新たに加入した種数の間に相関がみられることから,摂食によって種数が減少する一方,スズタケの優占度の低下に伴って新たな種が加入することにより,種数の変化がなかったものと考えられた.
著者
鐵 慎太朗 星野 義延 吉川 正人
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.17-35, 2021 (Released:2021-07-06)
参考文献数
54

1. 神奈川県東部の三浦半島の9箇所の岩石海岸に成立する草本植生を対象に,① 植生を構成する群落の把握,② 各群落の立地条件の解明,③ 保全上重要な植物種と群落の関連の把握を行った.2. 調査地の植生はmodified TWINSPANにより11群落に区分され,第一分割では5群落 (A-E) を含むグループと6群落 (F-K) を含むグループに二分された.主に,前者は湿地生の植物で構成される群落,後者は海崖生の植物で構成される群落だった.3. 区分された11群落を調査地周辺の既存群集と比較すると,A-Eはイソヤマテンツキ群集やナガミノオニシバ群集,シオクグ群集といった塩沼地生の群集に,シバが優占するFとGはツボクサ-シバ群集などに,Hはハマホラシノブ-オニヤブソテツ群集に,I,J,Kはイソギク-ハチジョウススキ群集に相当,類似していた.4. A-Eの5群落は,主に低海抜で湿った平坦地の隆起海食台 (もしくは波食棚) 上に成立し,各群落は水文環境 (海水もしくは淡水の供給,滞水域の有無など) や水質 (塩分濃度 (EC) の違い) の違いに応じて成立していると考えられた.一方,F-Kの6群落は,主に相対的に高海抜で乾いた海食崖上に成立し,土壌硬度,傾斜角度や関東ローム層の有無などから推測される立地の物理的な安定性などが群落の差異に関わっていると考えられた.5. 調査スタンドでは保全上重要な植物種 (レッドリスト掲載種,地域固有分類群) が多種記録された.岩石海岸上の草本植生は,三浦半島において生物多様性の保全上重要な存在であるといえる.6. 保全上重要な植物種は特定の群落 (B,C,D,G,J,K) に偏在していた.これらの群落の多くは緩傾斜地に成立しており,岩石海岸において相対的に人為的影響 (踏圧など) を受けやすいと考えられた.岩石海岸における草本群落や植物種多様性の保全にあたっては,立地環境への人為影響の程度や人為改変に対するぜい弱性が群落間で異なることに留意する必要があるといえる.
著者
大橋 春香 星野 義延 大野 啓一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.123-151, 2007-12-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
60
被引用文献数
13

1. 1990年代以降ニホンジカの生息密度が急激に増加した東京都奥多摩地域において,ニホンジカが増加する前の1980-1985年に植生調査が行われた77スタンドにおいて,1999-2OO4年に追跡調査を行い,植物群落の階層構造,種組成,植物体サイズ型の変化を比較した.  2. 調査地域の冷温帯上部から亜高山帯に成立するシラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計7タイプの植物群落を調査対象とした.  3. 1980-1985年と1999-2004年における植物群落の各階層の高さおよび植被率を比較した結果,全ての植物群落で草本層の高さまたは植被率が減少していた.さらに,森林群落では低木層の植被率が減少する傾向がみられた.  4. 1980-1985年と1999-2004年における総出現種数は471種から397種に減少し,奥多摩地域全体での植物種の多様性が低下していることが示唆された.  5. 1980-1985年から1999-2004年の間に,調査を行った全ての植物群落で種組成の変化が認められた.種組成の入れ替わりはミヤコザサ-シモツケ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集の順に高く,シラビソ-オオシラビソ群集,コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集では低かった.  6. 各植物群落の構成種を植物体サイズによって類型化し,その増減傾向を比較した結果,中型・大型の草本種に減少種が多く,小型の草本種と大型の高木種には増減のない種が多い傾向が全ての植物群落に共通してみられた.  7. スタンドあたりの出現種数はシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集,ススキ-ヤマトラノオ群集,ミヤコザサ-シモツケ群集の計5群落で減少していた.これらの群落では特に中型草本および大型草本のスタンドあたりの出現種数の減少が著しかった.また,森林群落のシラビソ-オオシラビソ群集,シオジ-ミヤマクマワラビ群集,ミズナラ-クリ群集ではスタンドあたりの低木の出現種数も減少していた.  8. コメツガ-ウラジロモミ群落,ブナ-ツクバネウツギ群集ではスタンドあたりの出現種数に変化がみられなかった.これらの植物群落ではスズタケの優占度の減少量と調査スタンドに新たに加入した種数の間に相関がみられることから,摂食によって種数が減少する一方,スズタケの優占度の低下に伴って新たな種が加入することにより,種数の変化がなかったものと考えられた.
著者
矢口 瞳 星野 義延
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.2039, 2021-08-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
72

武蔵野台地コナラ二次林において、植生管理や管理放棄による植物と昆虫の機能群ごとの種数への影響を把握するため調査を行った。更新伐採、下刈り・落葉掻き、常緑樹の除伐といった管理が行われた林分と放棄された林分で植生調査、昆虫のルートセンサス調査とピットフォールトラップ調査を行った。植生調査で 175種の植物が確認され、ルートセンサス調査で 243種、ピットフォールトラップ調査で 56種の昆虫が確認された。植物の機能特性としてラウンケアの休眠型、葉の生存季節、生育型、地下器官型、花粉媒介様式、開花・結実季節、種子散布型、種子重を、昆虫の機能特性として幼虫と成虫の食性、成虫の出現季節、成虫の体長を文献で調べた。機能特性データを用いて、クラスター解析により機能群に分類した結果、植物は 8つの機能群( PFG)、昆虫は 6つの機能群(IFG)に分類された。 PFGの分類には種子散布型と結実季節が大きく影響し、管理されたコナラ二次林に典型的な草本種や埼玉県レッドデータブック掲載種を含む機能群、コナラ二次林に典型的な木本種を含む機能群、遷移の進行を指標する常緑植物を含む機能群などに分けられた。 IFGの分類には食性と体サイズが大きく影響し、小型・中型・大型別の植食昆虫機能群、肉食昆虫を含む機能群、糞食・腐肉食昆虫を含む機能群に分けられた。植物の種ごとの被度と昆虫の種ごと出現回数を標準化して統合し、 CCAによる調査区と種の序列を得た。また PFG種数と IFG種数を統合し、 RDAによる調査区と機能群の序列を得た。植物の種と機能群は落葉掻きや下刈りなどによる土壌硬度や堆積落葉枚数の変化と関連がみられ、昆虫の種と機能群は伐採や常緑樹の除伐による樹冠開空度の変化と関連がみられた。植物機能群は伐採と下刈り・落葉掻きによりコナラ二次林に典型的な草本種を含む機能群の種数が増加し、管理放棄により常緑植物を含む機能群の種数が増加した。昆虫機能群はすべての管理により小型植食昆虫機能群の種数が増加し、伐採により大型植食昆虫機能群の種数が増加した。以上より、林床の管理が植物の、高木層や低木層の管理が昆虫の機能群構成に大きく影響していた。本研究の植物と昆虫の機能群の分類はコナラ二次林での伐採や下刈り・落葉掻き、常緑樹の除伐といった植生管理の種多様性保全効果の指標として有効と言える。
著者
斉藤 修 星野 義延 辻 誠治 菅野 昭
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-96, 2004
被引用文献数
7

&nbsp;&nbsp;1.関東地方のコナラ二次林を対象として,20-26年前に植物社会学的方法で植生調査を行った113プロットの追跡調査を行い,その残存状況,種多様性及び種組成の変化の実態把握と要因解析を行った.<BR>&nbsp;&nbsp;2.追跡調査で残存していたのは113プロット中75プロット(残存率66.4%)であり,コナラ-クヌギ群集39プロット(同60.0%),コナラ-クリ群集36プロット(同75.0%)であった.<BR>&nbsp;&nbsp;3.時間経過に伴う出現種数の変化は両群集とも認められなかったが,管理プロットでは平均出現種数が増加し,非管理プロットでは逆に減少する傾向がみられた.出現種数の変化の要因としては,人為管理の有無及びそれに関連するササ類や常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;4.種組成変化の度合いを示す共通係数は,コナラ-クリ群集の方がコナラ-クヌギ群集よりも有意に高かった.また,管理プロットの方が非管理プロットよりも共通係数が高かった.種組成変化に影響する要因としては,コナラ-クヌギ群集ではプロットが位置する市町村の林野率の変化が,コナラ-クリ群集ではプロットの斜面傾斜角,リター被覆率,常緑木本被度の変化が重要であった.<BR>&nbsp;&nbsp;5.減少が顕著であった種群には風散布植物が,増加が顕著であった種群には動物散布植物がそれぞれ多く含まれていた.また,主に鳥散布によって周辺から新規加入してきたと考えられる緑化・園芸種が両群集とも有意に増加していた.これらはプロット周辺地域の人口密度の増加が著しいほど,その増加が顕著であった.<BR>&nbsp;&nbsp;6.コナラ二次林の管理にあたっては,地域スケールでの林の立地特性を考慮しつつ,種多様性と種組成変化の長期的なモニタリングを行なっていくことが重要である.
著者
鈴木 晴美 吉川 正人 星野 義延
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.95-103, 2014-06-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

1.多摩川扇状地の農業水路における水生植物の分布の現状を知るため,多摩川水系から取水している12水系で調査をおこない,分布図を作成した.2.調査の結果,外来種3種を含む15種の水生植物が記録された.うち9種は,国または都のレッドリストに掲載された保全上重要な種であった.3.那須扇状地と同程度の種数が生育していたことから,都市化が進んだ多摩川扇状地においても,農業水路は地域の水生植物相の維持に大きく寄与していると考えられた.4.分布パターンは種によって異なり,その違いには,栄養繁殖様式の違い,水系間の散布制限,湧水への依存度などが関係していると考えられた.
著者
大橋 春香 野場 啓 齊藤 正恵 角田 裕志 桑原 考史 閻 美芳 加藤 恵里 小池 伸介 星野 義延 戸田 浩人 梶 光一
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.37-49, 2013-06-25 (Released:2017-01-06)
参考文献数
26
被引用文献数
3

1. 栃木県南西部に位置する佐野市氷室地区において,耕作放棄地に成立する植物群落の違いに着目して集落周辺の環境を区分し,イノシシの生息痕跡の分布との関係を明らかにすることを目的とした. 2. 調査地域における86地点の耕作放棄地において植生調査を実施し,クラスター解析によって種組成を類型化したうえで,各類型を反映させた環境区分図を作成した.さらに,調査地域において約1km^2の調査区を設置し,2010年11月,2011年2月,5月,8月にイノシシの生息痕跡調査を実施した. 3. クラスター解析の結果,調査地域の耕作放棄地に成立する植物群落は管理の状態や土壌の乾湿を反映し,メヒシバ-オヒシバ群落(C1a),アキノエノコログサ-ハルジオン群落(C1b),イヌビエ-コブナグサ群落(C2),ヨモギ-ヘビイチゴ群落(C3a),ススキ-セイタカアワダチソウ群落(C3b),アズマネザサ群落(C4)の6つの類型に区分された. 4. イノシシの採餌痕跡は,C3a,C3b,C4において年間を通じて最も多く確認された.また,秋から冬にかけてはC1aおよびC1b,庭,果樹園において春から夏にかけてはC2,竹林,河川においてそれぞれイノシシの採餌痕跡が多く確認された.イノシシの休息痕跡は8月にC3bとC4で多く確認された. 5. 耕作放棄地に成立する植物群落のなかでも,遷移の進行したC3bやC4における刈り取りなどの植生管理はイノシシによる被害を抑制するうえでもっとも重要であると考えられた.
著者
星野 義延 笠原 聡 奥富 清 亀井 裕幸
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.62-72, 1996
参考文献数
24
被引用文献数
1

建設残土によって造成された東京湾の臨海埋立地のひとつである大井埠頭の一角にある樹木侵入期の草原において,樹木の侵入と定着についての調査を1986年に行った。調査地はヨシ,セイタカアワダチソウ,チガヤ,オギなどの地下茎で繁殖する風散布型の多年生草本植物の優占する群落が形成されており,樹木はその中に点在していた。樹木個体の分布は電線の下や排水溝がある場所で多くなる傾向が認められ,これらの構造物の存在が調査地の樹木個体を多くしている要因と考えられた。樹高3m以上の樹木の位置は,調査地に設けられている排水溝の近くに分布する傾向が認められた。出現した樹木のほとんどはヤマザクラ,エノキ,マルバシャリンバイ,ネズミモチ,アカメガシワなどの動物被食散布型の樹木であり,調査地への樹木種子の供給は鳥散布によるものが多いと考えられた。電線は鳥類の休息場所となり,電線下は周辺の公園などの植栽樹の種子が多く供給されていた。このような種子供給は都市域の埋立地にみられる特徴と考えられる。また,排水溝の掘削は植物の生育に不適な埋立地の土壌の改良と,栄養繁殖によって広がる多年生草本植物群落の分布拡大を抑制し,樹木が定着し,生育できるサイトを提供するものと考えられた。埋立地に発達する初期の森林群落としては,エノキ林やアカメガシワ林が考えられた。
著者
星野 義延
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.20, 2004 (Released:2004-07-30)

ミズナラはモンゴナラの亜種とされ、北海道から九州までの冷温帯域に分布する。また、サハリンや中国東北部にも分布するとされている。 ミズナラ林は日本の冷温帯域に広くみられ、二次林としての広がりも大きい。日本において最も広範囲に分布する森林型である。ブナの北限である北海道の黒松内低地以北では気候的極相としてのミズナラ林の存在が知られている。年平均降水量が少なく、冷涼な本州中部の内陸域や東北地方の北上高地ではブナの勢力が弱く、ミズナラの卓越する領域が認められる。また、地形的には尾根筋や河畔近くの露岩のある立地に土地的極相とみなせるようなミズナラ林の発達をみる。 本州中部で発達した森林を調べるとブナとミズナラは南斜面と北斜面とで分布量が異なり、南斜面ではミズナラが、北斜面ではブナが卓越した森林が形成される傾向がみられ、少なくとも本州中部以北のやや内陸の地域では自然林として一定の領域を占めていると考えられる。 ブナ林とミズナラ林の種組成を比較すると、ブナ林は日本固有種で中国大陸の中南部に分布する植物と類縁性のある種群で特徴づけられるのに対して、ミズナラ林を特徴づける種群は東北アジアに分布する植物群で構成される点に特徴がみられ、日本のミズナラ林は組成的には東アジアのモンゴリナラ林や針広混交林との類似性が高い。 東日本のミズナラ林を特徴づける種群は、種の分布範囲からみると日本全土に分布するものが多く、ミズナラ林での高常在度出現域と種の分布域には違いがみられる。このような種は、西日本では草原や渓谷林などの構成種となっていて、森林群落にはあまり出現しない。 ミズナラ林は種組成から地理的に比較的明瞭な分布域を持つ、いくつかの群集に分けられる。これらの群集標徴種には地域固有の植物群が含まれており、これらにはトウヒレン属、ツツジ属ミツバツツジ列、イタヤカエデの亜種や変種など分化の程度の低いものが多い。
著者
浦口 晋平 渡邉 泉 久野 勝治 星野 義延 藤井 義晴
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.117-129, 2003-10-10
被引用文献数
3 11

外来種の侵入,河原固有の在来種の衰退が顕著な多摩川中流域の河川敷から,56種の葉部を採取し,サンドイッチ法により他感作用活性を検定した。ハリエンジュ,アレチウリ,オオブタクサのように大きな群落を形成する外来種や,クズ,ススキ,イヌコリヤナギなど安定的な植生を形成する在来植物がレタスの幼根伸長を強く阻害した。また,絶滅が危惧されるカワラノギクとその周辺に多く生育する植物10種を砂耕栽培し,サンドイッチ法,プラントボックス法により他感作用活性を検定した。オニウシノケグサなどカワラノギク周辺の外来種は葉部,根部ともにレタスの幼根伸長を著しく阻害し,強い他感作用活性が示唆された。これらの結果は,多くの外来種の侵入と優占に他感作用が関与している可能性を示唆した。また,カワラノギクの葉部,根部にも強い他感作用活性が示唆され,成立から10年ほどで衰退・消失するというカワラノギク個体群の特性の原因として,他感作用の自家中毒的作用の関与が示唆された。カワラヨモギなど,他の河原固有種は強い活性を示さなかった。また,河川敷植生構成種の他感作用は,生育段階および,環境条件により変動する可能性が推察された。
著者
酒井 憲司 星野 義延 神崎 伸夫 笹尾 彰 渋沢 栄 岡本 博史 田村 仁 浅田 真一
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

研究背景:本研究のモチベーションは農林地の時空間変動を引き起こすメカニズムの究明に必要な方法の探索である。即ち、耕地、果樹園、森林の各種属性パラメータの時空間変動が内在的な決定論的ダイナミクス、確率過程、環境外乱の何れによるものか、もしくはそれらの貢献度を定量化したいということである。そこで、本研究では、耕地、果樹園、森林、草地など生物生産の場における時空間変動メカニズムの解明のための技術として、カオス時空間解析手法を開発し,耕地、果樹園、森林における時空間変動データに対して当該解析手法を応用して変動メカニズムの解明を行い、その有用性を実証することを目的とした。農林生態系を対象として工学的なアプローチを実施しようとした場合、(1)データサイズ問題、(2)オブザベーション問題、(3)マニピュレーション問題、の3課題を克服しなくてはならない。データサイズ問題とは、農林生態系の諸現象においては年に1点というようなスケールでしか時系列データが得られない場合も多く、非線形時系列解析などが数千点以上のデータサイズを要求するのに対して極めてデータサイズが小さい。この極めて短い時系列データを如何にして非線形時系列解析の枠組みに適用させるかという問題がデータサイズ問題である。これについては、第1部で扱った。ここでは、データサイズ問題をアンサンブル時系列によるダイナミクスの再構成として課題化した。大域的線形・局所線形ダイナミクスの再構成を試み、1年先の収量予測によって手法の妥当性を示した.第2部ではオブザベーション問題を扱った.特に,航空ハイパースペクトル画像,マルチスペクトル画像を用いて温州みかんおよびコナラの個体レベルでの収量推定の可能性を明らかにした.