著者
加藤 純一
出版者
目白大学
雑誌
目白大学人文学研究 (ISSN:13495186)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.15-28, 2005

本稿では、柳生宗矩著『兵法家伝書』の「殺人刀 上巻」に「右之両条は兵法の病気をさると云心特にあて用る事也」とコメントが付されている「僧問吉徳如何是道。古徳答日平常心是道」と「木人如對花鳥」の2つの話頭、並びにその上位概念に位置付けられる「中峯和尚云、具放心心」について論述する。先の2つの話順には「病気をさると云心特にあて用る」とあることからも、「着した心」を払拭し常なる心でいることの重要性が説かれたものと言え、後者は武芸者が求道した究極の心のあり方を表したものとして把握できる。そこで、本稿では宗矩が説く「具放心心(放心心を具せよ)」に至るための心の在り方を段階的に考察し、宗矩が把捉した兵法者の心のあり方について明確にしようとした。特に、「具放心心」の読解においては、柳生宗矩が「法の師」と仰いだ沢庵の『不動智神妙録』に展開する「求其放心」「心要放」「覓放心」といった用語との比較を通して、段階的に展開する兵法者の心の有り様を明らかにした。生命の危機を常に背負っていた武士だからこそ、実戦より導き出された己れの心法輪が展開でき、それをまた技法と融合させることにより更なる深化をはかることができたと考えられる。本稿が対象とした宗矩の心身(身心)観は、この「殺人刀 上巻」を総括する役割を果たしていると同時に、後段の「活人剣 下唇」や、それに併設されている「無刀之巻」への布石とも理解できる。つまり、『兵法家伝書』における柳生宗矩の心身(身心)観を論じる上で、非常に重要な役割を担う個所であり、その意味においても本稿における心の分析は重要な意味を持つと考える。本稿で用いたテキストは、天理大学図書館所蔵の『兵法家伝書』が掲載されている加藤純一『兵法家伝書に学ぶ』(日本武道館)である。同類の書では渡辺一郎校注『兵法家伝書』(岩波文庫)があるが、その凡例にもあるように、手軽で読みやすく修正がなされたものとして加筆されている。また、同氏には日本思想大系『近世芸道論』(岩波書店)所収『兵法家伝書』もあるが、こちらは「江戸柳生家本(東京都柳生宗久氏蔵)をできるだけもとの姿を残すように翻刻した」ものであり、現在、原本と整合することのできない資料となっている。以上により、本稿においては小城鍋島家本(天理図書館蔵)を翻刻、それを掲載した『兵法家伝書に学ぶ』を用いることにした。なお、本稿で引用した個所は筆者の判断により忠実にハングルに翻訳した。また、その個所が明らかになるよう引用頁を明記した。本来であれば引用した原文を注に記載すべきであるが、今回は頁数の関係でそれを省略したことを付言しておく。
著者
宇野 耕司
出版者
目白大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では第Ⅰフェーズから第Ⅴフェーズの5段階で計画し,平成29(2017)年度は第Ⅴフェーズ:「新米ママと赤ちゃんの会」実施者研修体制開発を行った。具体的には,「① 研修実施体制の構築」として,以下に述べる報告会及び養成講座に関する準備委員会を組織化した。準備委員会では実践現場の創意・工夫・改善点を盛り込む形で検討し,実施者の養成と研修のあり方を明らかにした。同時に「② 既存関連有効モデルの分析」として先行研究レビューを行った。特にインストラクショナルデザインに関する知見を検討した。既存関連有効モデルの分析として,既存の類似したグッドプラクティスプログラム(ノーバディズパーフェクトプログラムやコモンセンス・ペアレンティング)の研修方法についての現状把握や研修プログラムの課題を明確にしようとしたが,研修は組織の保有する知財に関係することでありアプローチが困難であった。そこで,先に研修プログラムを開発し,それに対してグッドプラクティスプログラムの指導者的立場の人から助言指導を受けることで,研修プログラムの課題を明らかにする方法に切り替えた。しかし,研修プログラムの完成版に関する助言指導を受けるまでに到達できなかった。「③ 研修の実施と試行的効果評価」を行った。まずプログラムの概要と実績およびアウトカム評価の成果報告として,プログラム報告会の企画・運営を行った。報告会の参加者は子ども家庭福祉と母子保健領域の行政職員,市議会議員,子育て支援の実践家,助産師,保健師などが参加した。報告会に続いて,ファシリテーター養成講座の企画・運営を行った。形成的評価として試行的に1回実施した。実施前後の研修効果の評価(レベル1とレベル2)を行った。本プログラムの基本的な考え方や進行内容について理解できる研修となった。
著者
村上 詠子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学短期大学部研究紀要 (ISSN:13462210)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.A1-A26, 2011
著者
石井 貫太郎
出版者
目白大学
雑誌
目白大学人文学研究 (ISSN:13495186)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.33-45, 2006
著者
井上 綾野
出版者
目白大学
雑誌
目白大学経営学研究 (ISSN:13485776)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.63-74, 2007-03

本稿は,消費者情報処理モデルに代表される功利的買物行動と対極にある快楽的買物行動の基本的視座を快楽消費との関連で提示する理論的研究と,特定の店舗における快楽的買物動機と支出行動の関連を示す実証的研究から成り立っている。快楽的買物行動は,「快楽消費」から派生した概念でありながら,快楽消費と同一のものとは言い難い。また,功利的買物行動との関連で快楽的買物行動の理論的枠組みを提示する必要がある。さらに,快楽的買物行動の本質に迫るために,どのような楽しさを追求しているのかを知る必要がある。そのために必要とされるのが,買物動機研究の系譜を辿ることである。次に,理論的研究に基づいて実証的研究を行う。その手順は以下のとおりである。第一に,快楽的買物行動における快楽的買物動機を因子分析によって確認する。第二に,店舗別(駅前商店街・コンビニエンスストア・スーパーマーケット・百貨店)にデータを分割し,各店舗における快楽的買物動機とその店舗における支出金額との関係性を,共分散構造分析によって検証する。最後に,その結果に基づいて各店舗における戦略を提案する。
著者
土田 恭史
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-73, 2008

本研究は,長期の自己コントロールにともなうストレスと対処行動におけるセルフモニタリングの役割について,長期にセルフケアを続けなければならない慢性疾患患者を対象としてセルフモニタリングの認知面・行動面の違いによる影響について検討した。対象者を4つのセルフモニタリング型に分類し,セルフモニタリングの違いと,セルフケア維持に伴う心理的ストレス(抑うつ)及び対処法略との関連を検討した。その結果,高セルフモニタリング群では心理的負担感や抑うつ傾向が低いことが見出された。また,モニタリングに対する認知水準が高い群では病気との折り合いが高かったことから,セルフモニタリングによる自我関与の高まりが病気との折り合いを形成することを促進し,心理的負担感を緩和すると考えられた。
著者
土田 恭史 福島 脩美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.25-33, 2006

本研究の目的は慢性疾患患者の「病気との折り合い」の構造とその影響について検討することである。糖尿病(以下DM)患者を対象に、患者にとっての病気との折り合いがどのような構造をもち、それが病気に対してどのような影響をもつのかを検討した。総合病院内科を受診したII型DM患者99名(男性59名、女性40名)に対し、TEG、CMI、筆者と臨床心理士によって作成した「糖尿病に関する意識調査」による質問紙調査を実施した。身体的変数(血糖状態)、精神症状的問題、性格、病気に対する態度、生活習慣・生活状態を説明変数とし、「病気との折り合い」を従属変数とするステップワイズの重回帰分析を行った結果、「DM安定感」、「自己管理傾向」、「治療満足度」、「罹患期間」が有意な正の説明変数として得られた。血糖状態は有意な説明変数とならなかった。慢性疾患患者にとっては、主観レベルで病気を苦痛と感じないですむことは、QOL向上につながる可能性がある。また、患者が主体的に自分自身の治療に関与することは、客観的な体調の良さに劣らず、患者に病気との折り合いを導き出すと考えられた。
著者
福島 脩美 高橋 由利子 松本 千恵 土田 恭史 中村 幸世
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-12, 2005

カウンセリング研修における、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究1では、小集団で話し手・聴き手演習を実施し、実施前後に感情気分評定を、体験後に感想を自由記述で求め、話し手・聴き手演習の効果について検討した。研究2では、1群に2者間相互話し手・聴き手演習を、もう1群に想定書簡法を実施し、実施前後に感情気分評定を求め、話し手・聴き手演習と想定書簡法の効果について比較検討した。その結果、話し手・聴き手演習による、肯定的感情気分の促進効果と否定的感情気分の低減効果がみられ、話し手・聴き手演習は、想定書簡法に比べて、実施前の感情気分状態が実施後の肯定的な感情効果と有意に関連していることが示唆された。また、本研究では、感情気分評定20の効果測定ツールとしての有効性が認められた。
著者
早川 雅子
出版者
目白大学
雑誌
目白大学総合科学研究 (ISSN:1349709X)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.41-53, 2014
著者
福島 脩美 土田 恭史 森 美保子 松本 千恵 鈴木 明美
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.63-75, 2007

カウンセリング研修参加者間の話し手・聴き手役割演習(模擬カウンセリング)において,まず個別方式(2人の間で相互に話し手と聴き手を交代)で実施し,次に集団(井戸端会議)方式(小集団内で1人の話し手に他の参加者が共同の聴き手になって順次全員が話し手となる方式)で実施し,最後に一人で想定書簡によって経験の整理を行うという3つの演習をセットにしたプログラムを開発し,その効果を体験振り返り評定と感情気分評定によって検討した。体験振り返り評定は,先行研究の参加者体験報告(自由記述)をもとに項目化し,専門家の点検と因子分析を経て,クライエント体験評定については2因子(関係性因子と効果性因子),カウンセラー体験評定については1因子(共感的傾聴成分)が同定され,3つの尺度が作成された。そして事前の感情気分評定の後,研修プログラムを構成する各方式の直後に感情気分評定とクライエント/カウンセラー体験の評定を求めた。その結果,感情効果(肯定的感情の促進と否定的感情の緩和)においても,クライエント体験(関係性と効果性)評定とカウンセラー体験(共感的傾聴)評定においても,個別方式の効果をその後の集団(井戸端会議)方式がさらに促進すること,そして想定書簡の後には幾分か低下することが認められた。この結果から,それぞれの方式の特徴と意義について考察した。
著者
山口 晋
出版者
目白大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,①地方都市の若者文化,とりわけ音楽文化と地域社会との関係,②大都市周辺地域における若者の転出入行動を場所感覚の観点から探求した。①については,フリーの野外音楽フェスティバルでは,日本最大規模の「上田ジョイント」の盛衰について,「上田ジョイント」の制度化と,オーガナイザーの「サブカルチャーからの卒業」をキー概念に分析した。②については,埼玉県戸田市における,転出入者の行動を調査票調査から明らかにした。その際には,転出入行動が顕著であったのが若年層であり,転出入先が戸田市に隣接する市に多いことが明らかになった。