著者
安西 智宏 仙石 慎太郎
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.210-225, 2013-04-25

Since governmental frameworks for competitive funding programmes initiated various large-scale research projects have been implemented at existing and newly established research institutes. However, a managerial formula for these trials has yet to be set out at a university or public research institution level, hence it is urgently necessary to maximise the value of the outcomes through a strategic, operational and organisational approaches. In this report we reviewed the current context from the viewpoints of enlarged large competitive funding, crossorganisational collaboration and interdisciplinary/fusion-scientific initiatives. Then we pointed out three existing issues, endorsing post-funding evaluation, reflecting the results to the practices and returning the outcomes to social innovation. Then we argued significance of socioscientific study, in particular, econometrics, organisational management and managerial administration, providing two research cases. Finally, we discussed future perspectives, outstanding challenges and required actions for Japanese universities and public research institutions for further improvement.
著者
加藤 毅
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.281-295, 1992-10-15

公的セクターが行う研究助成の代表的存在である文部省科研費は、規模では民間助成財団による研究助成を圧倒する。しかしながら助成財団は、「ノンプロフィットセクター」としての特性を生かすことで、助成の性格や助成対象などの点で科研費の持つ短所を補うべく、助成を行うことができる筈である。そこで本論文では、民間助成受領研究者の属性として、所属する大学、研究分野、職階および科研費受領状況という4項目のデータに基づき、特に科研費受領パターンとの対比において、民間助成の配分状況についての実証的分析を行った。結果の概要は次の通りである。民間助成は、助成件数、助成金額共に科研費と比べて極めて小さい規模にとどまっている。ノンプロフィットセクターとしての特徴を十分に生かすためにも、何より助成規模の量的拡大が今後の最大の課題である。民間助成は、科研費と同様、件数、金額共に、大学では旧帝大グループ、分野では自然科学、特に理学や医学分野に対して重点的に配分されている。また、職階では、特に医学分野などで教授に偏った配分が行われている。全般的な傾向としては、民間助成は科研費受領者に対して重点的に助成を行っており、特に自然科学分野では、科研費の補助的役割、それも量的には科研費の十分の一程度の追加的補助にとどまっているのである。しかしながら、民間助成全体の中では少数派である私立大学や人文社会科学分野の若手を対象とする助成では、科研費の受領経験を持たない研究者に対する配分も少なからず行われている。また、科研費受領者を避けるような助成配分も、リスクの小さいうちは、積極的に行われている。今後の課題としては、配分された助成の結果だけではなく審査、選考課程をとりあげ政策的観点からの検討を行うことや、助成終了後の研究成果に対する評価方法を確立することなどがあげられる。
著者
内田 信裕 小松 理 高橋 宏
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.210-213, 2006-10-21
参考文献数
10

NSFもNIHも機関としての独自のミッションを有している。また、独自の書類審査方法および書類審査基準を有している。今回、両機関のミッションと書類審査方法および書類審査基準とを検討したところ、両機関の「独自のミッション」と「独自の書類審査方法および書類審査基準」は密接に関連していると考えられた。
著者
安彦 元
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.98-105, 2012-09-20
参考文献数
12

先行技術調査の定量的価値をベイジアン決定理論を利用して分析するスキームを提案し,提案したスキームを通じて, 1)要素技術の戦略優位性や2)要素技術の特許性が不明確である場合の方が,先行技術調査の定量的価値が高くなることを検証した。
著者
辻 洋一郎
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.17-28, 2012-09-20
参考文献数
31

特許情報は技術開発の直接の成果物として,技術開発のプロセスを分厚く記述するための有望な情報源となり得る。本稿では,インクジェットプリンタ開発の事例を対象に,出願された特許の内容分析を行う。その結果,特許情報を補強することで,既存文献から得られる技術開発のプロセスを鮮明に彫琢できることを示す。最後に特許分析の有用性と限界について議論し,併せて分析の結果得られた発見事実について考察する。
著者
三森 八重子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.213-223, 2011-03-01

インドの製薬産業は1970年代から急速に発展を遂げ,現在では製薬生産量で世界第4位にまで成長した。ところが,この「製薬製造大国」とも言えるインドでは,2005年まで物質特許保護がなかった。本来産業育成を後押しすることを目的に導入される(物質)特許制度がない環境の下で,インドの製薬企業は,海外では特許保護の下にあるオンパテントの先発医薬品を,リバースエンジニアリングし,新たな製造方法を産み出し,インド国内で「ジェネリック医薬品」として製造し,インド内外で販売して,大きく成長を遂げた。ところが,1995年のTRIPS協定を受けてインドは,自国の特許法をTRIPS準拠の法律に改正する義務を負い,2005年に物質特許を導入した。インド大手の製薬企業は1990年代中葉から,2005年までの物質特許導入を見据えて,ビジネスモデルを大きく変えて,それまでのリバースエンジニアリング専業から,新薬開発も行う統合型ビジネスモデルに変更した。先行研究などから途上国に物質特許が導入されると,当該の国の産業育成が阻まれるとの指摘がある。しかし,インド大手の製薬企業の財務諸表などから,インドの大手企業の業績は2005年の物質特許導入を挟んで成長を続けており,インドの製薬企業では,ビジネスモデルの変更により,物質特許導入から受けることが見込まれた負のインパクトを回避して,成長を続けていることが示された。
著者
伏見 康治
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.200-201, 1992-10-15

Big science traces its origin to the military research that ensued the Manhattan Project. Numerous basic research projects performed to this date fail under this heading. The main am of most big science projects is to advance knowledge for its own sake, cost being a secondary issue. This, it is argued, should not be so since one big science project entails foregoing many smaller ones in other fields. Further thought should be given to reconciling the continuation of big science projects, including accelerators, nuclear fusion, and fast neutron breeder reactors, with the needs of various research fields.
著者
清水 勝彦
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.71-83, 2009-08-10

In a highly uncertain and changing environment, the capability to identify major changes in the external environment, quickly commit resources to new courses of action in response to those changes, and recognize and act promptly when it is time to halt or reverse existing resource commitments is critical yet difficult. The challenge results from the substantial uncertainties inherent in making strategic decisions as well as from psychological and organizational biases that affect the attention, assessments, and actions of decision-makers in ways that prevent them from recognizing problems and acting in a timely fashion. Being careful and rational is important but not sufficient. I show that managers may become unconsciously trapped in a vicious cycle of insensitivity, self-serving interpretation, and inaction. I recommend five practical steps for avoiding such problems. I stress that managers and organizations should be prepared and proactive to overcome the biases, to avoid becoming trapped in the vicious cycle of rigidity, and to cope effectively with the uncertainties of a dynamic environment.
著者
平澤 〓
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.128-141, 2004-07-10
被引用文献数
2

Research evaluation in the Japanese science and technology field is discussed from the author's point of view on avoidance of possible confusion due to early legislation, prevention of barren formality, and improvement of efficacy. Aspects of research evaluation are categorized into basics and more specific issues : the former includes the framework and structure of the evaluation system, related issues, scientific basis of evaluation, and the management of evaluation in the scientific community ; the latter is concerned to further development of evaluation theory, finding the outcomes, improvement in survey and analysis techniques, difficulties associated with exante evaluation, and the evaluation of the evaluation policy itself. These problems are reviewed in the perspective of the present situation in Japan.
著者
田中 敦子 松田 聡 大谷 加津代 戸田 賢二 澤田 美智子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.107-120, 2010-12-28

文部科学省科学技術振興調整費(女性研究者支援モデル育成)事業の一部として, 独立行政法人産業技術総合研究所では「女性研究者グローバルエンカレッジング」課題を2007年7月より3年度の計画で実施中である。意欲触発と実践の両面からの女性研究者支援を意図した本課題の, 初年度終了後の浸透度の確認と, より効果的な支援のための支援対象の分析とニーズの把握を目的として, 4300名の男女研究職員を対象に2008年5月に筆者らはアンケート調査を実施し, 有効回収率14%に相当する回答を得た。アンケート結果の分析から, 支援事業の浸透度および支援対象の研究職員に関する次の傾向が明らかになった。1)任期のない職員と, 任期のある職員とでは, 研究業務上の不満の重心が2極化している。2)40歳以下の女性研究職員の研究マネジメント(管理職)志向が, その上の世代や男性に比較して高い。3)常勤研究職員の有配偶者率は, 31〜40歳の層では男性は70%台, 女性は50%台と差がある。アンケート結果の分析から, 次の具体的な支援ニーズが明らかになった。1)研修に対する支援2)キャリアパス形成に対する支援3)男女研究職員のワークライフバランスに関連する支援4)女性の少ない職場であることに関連する女性研究者支援
著者
KODAMA Fumio HONDA Yuikichi
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.65-74, 1986
被引用文献数
1

研究開発活動のダイナミックスに関する数学的モデルを構築し,産業毎の数学モデルの統計学的検定を行った.その結果,いわゆる,ハイテク産業の研究開発のダイナミックスは他の産業と,統計学的に区別できることが判明した.研究開発活動のダイナミックスを探索段階から開発段階への移行課程として把握する.探索段階の研究投資額は小さく,開発段階の投資額は大きいので,研究開発活動の動きを研究投資額の動きで表現することができる.一方,研究が失敗する確率を考えれば,探索段階の失敗率は高く,開発段階のそれは低い.研究開発が失敗した場合には,研究投資は放棄されるので,研究投資は失敗が明らかにならない限りは増加する.そこで,探索段階の研究で成功の見通しがたったものだけが,研究投資の増加を続け開発段階に移行していくと仮定することにより,一種の生存モデルを基にして,研究開発活動のダイナミックスを,研究開発投資額と投資破棄額との関数関係として数学的に定式化できる.1970年から1982年までの総理府統計局「科学技術研究調査報告書」所載の「産業,製品分野別社内使用研究費」をデータとして用い,主力製品分野以外の各製品分野の研究投資額の頻度分布を計算した結果,指数が多分布であることが明らかになった.そこで,上記のモデルを,非線形最小自乗法を用いて,統計学的にあてはめることにより,産業毎に,研究開発投資額と投資破棄率との関数関係を推定した.この結果,産業毎の研究開発の構造上の相違が明らかになり,「医薬品」,「機会」,「電気機械」,「通信・電子」,「精密機械」の5 つの産業がほかの産業と統計学的に区別することが可能となった.この研究開発の構造を,ハイテク産業の定義として採用することにより,いくつかの政策論を展開した.
著者
青島 矢一
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.16-34, 2009-08-10

Advances in the semiconductor and digital technologies urge the electronics industry to introduce modular structures of the products and correspondingly assume decentralized industry structure. This means for individual businesses a major shift in corporate strategy, which is vital, in theory, for attaining or maintaining their competitive positions in the market. However, the analysis of the Japanese digital still camera (DSC) industry made in the present work showed that the leading companies have maintained their competitive edge without radical strategy shift. This was probably because high pixel counts, regarded as the principal measure of image quality, remained as the focus of competition, which favored companies with their own distinctive and integrated design solutions. The importance of technical features of the products and demand situations in the evolution of product architecture and industrial structure cannot be denied, but actual courses of evolution are under strong influence of the shared beliefs about the value of products or functions, corporate strategies, and their interaction, as demonstrated by the present work.