著者
真鍋 立夫 尾崎 昭弘
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.498-509, 2003-08-01 (Released:2011-08-17)

高齢化社会にまっしぐらの日本です、これからは、ますます鍼灸療法のニーズがたかまって行くことでしょう。そこで、鍼灸療法が真に国民に愛されるようになるためには、「どこに行ってだれに治療してもらっても、一定の水準の鍼灸療法を、あたりまえに受けることができる。」これを目標に、個々の鍼灸師が自らの資質と技術の向上につとめなければなりません。それにもまして、まず「痛く無いバリ」をさせてもらうことをこころがけ、国民の鍼治療に対する不安感、恐怖感を取り去り、患者さんの皆さんが、安心して喜んで、気持ち良く治療を受けてもらえるように、我々全員が努力しなければなりません。そのためには、伝統的日本風の細い針による繊細な鍼灸療法の技術を研鑛し、鍼灸療法を単なる刺激療法に終らせること無く、真の鍼灸療法とは、経絡、経穴を通して体表に補潟というテクニックを行って、体内の生命維持システムに呼びかける体表情報操作医療であるということを、「鍼灸のグローバルスタンダード」として、いまこそ、日本から世界に向けて発信しなければならないのではないでしょうか。私は、長年の鍼灸臨床経験を通して、身体に全く鍼を刺さなくても、臨床効果を得ることが出来ることを知りました。また、それをバイデジタルオーリングテスト (以後BDORTと記す) によって証明することも出来ました。私は体表に鍼を刺すのでは無く、一定の方向に鍼を貼付することによって臨床効果を出すことに成功しました。鍼を刺さないために、全く痛く無いその鍼灸療法のテクニックを「方向鍼」と呼び、そのために用いる独自のアイテムである鍼を、Vector Effect Needle [VEN] (方向針) と命名して、このたびの講演を機会に皆様に紹介したいと思います。
著者
山下 仁 江川 雅人 楳田 高士 宮本 俊和 石崎 直人 形井 秀一
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.55-64, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
72
被引用文献数
1 3

鍼灸に関連して発生したとされる有害事象の情報を更新した。1998年から2002年にかけて発表された症例報告について、医中誌WebとPubMedを用いて検索した。鍼施術に関連する有害事象36症例 (感染』3例、皮膚疾患11例、臓器損傷または異物6例、神経傷害5例ほか) と灸施術に関連する有害事象9症例 (皮膚疾患6例ほか) が収集された。ほとんどの症例は現代西洋医学系学術雑誌に掲載されており、開業鍼灸師の目の届かないところで発表されている。したがって、安全性に関する情報を収集して鍼灸師にフィードバックする作業を本委員会が継続的に行う必要があると考えている。2003年6月6日に開催された本委員会のワークショップにおいては、感染制御の観点から見て適切な刺鍼法のあり方が議論の中心となった。適正な刺鍼マニュアルが作成されるためには、安全な刺鍼に関するエビデンスを集めることがさらに必要である

1 0 0 0 OA 報告

出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.195-206, 2001-05-01 (Released:2011-03-18)
著者
木村 研一 矢野 忠 山田 伸之 今井 賢治 廣 正基 渡辺 一平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.279-291, 1998-09-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
46

皮膚交感神経機能に及ぼす鍼刺激の効果を検討するためにSSR (sympathetic skin response) 、SFR (sympathetic flow response) 及び手掌部の精神性発汗量を指標に検討すると同時に各指標間の関連性についても併せて検討した。被験者は健康成人男性10名、平均年齢24.7±3.1歳 (mean±SD) とした。実験は無刺激対照群 (以降、対照群) と鍼刺激群を設定し、同一被験者を対象とした。SSRは記録電極を左手掌部中央に、基準電極を同側中指爪上部に貼付し、SFRはレーザードップラー血流計のプローブを左示指指腹に装着した。精神性発汗波はハイドログラフを用い、右手掌部に1cm2のカプセルを装着した。各指標は同時測定し、電気刺激は前額部正中線上に刺激間隔および刺激強度をランダムに変更して行い、各反応を誘発し。記録した。尚、対照群は安静負荷前後、鍼刺激群は鍼刺激前後で測定を行った。鍼刺激は右側の合谷穴にステンレス鍼 (セイリン化成) を刺入し、鍼響を得た後1Hzの雀啄刺激を1分間行った後に、10分置鍼した。結果は以下の通りであった。 (1) SSR、SFR及び手掌部の精神性発汗波はHabituationを起こすことなく記録できたが、各々の相関関係は小さかった。 (2) SSR及び精神性発汗量は鍼刺激後有意に抑制されたが、SFRは無刺激及び鍼刺激の両方で抑制された。以上のことから鍼刺激は皮膚交感神経機能を抑制する作用があることが示唆された。
著者
森下 敬一 越智 久男
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.588-600, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)

・1975以降、森下世界的長寿郷調査団は、毎年2~3回の頻度で「世界三大長寿郷 (コーカサス、フンザ及び南米・ビルカバンバ) 」の実地調査を実施してきた。・1984年-新彊ウイグル特に南彊が「第四の世界的長寿郷」であることを認定した。・1987年-コーカサス、中央アジア、パミール高原周辺 (フンザを含む) 及び南彊の北緯40度前後、東西8000kmに及ぶベルト地帯を「絲綱之路・長寿郷」と命名し、第16回・自然医学・国際シンポジウムに於いて研究発表を行った。・1991年-広西壮族自治区・巴馬の実地調査を試み、是が「第五の世界的長寿郷」である事を認定した。世界の百歳長寿者達は、シルクロード沿いのベルト状地帯に多く存在し、幾つかの共通項があることが判明した。主食が挽きぐるみの未精白穀物であり、竈に貼り付けて焼くこと。生まれた土地を離れず、その土地で収穫できる作物を食していること。文明の侵襲を受けていない長寿郷では、土壌→食物→身体の生命エネルギーが循環していた。
著者
金子 佳平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.135-136, 1986-06-01 (Released:2011-05-30)

帯状疱疹は, 始め激痛で, 次第に慢性化し, 発疹と痛みが残るし又長いというのが実情のようであります。そして神経ブロックが行われるようであります。私の経験から見ると, 急性を治し損なうから, 慢性になるものと考えます。急性症には多少の相違はあっても, 初期から治療したものに慢性になったものはありません。大腸経の鍼灸治療程優れたものはないと思います。慢性化したものは多少時日を要します。要するに, 発病初期に治すことが必要条件と考えます。
著者
田辺 成蹊 柴 紘次
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.383-387, 1984-03-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

帯状疱疹は, 急性期には激痛を伴い, 疱疹が治癒した後も帯状疱疹後神経痛へと移行して, 長期間にわたって患者を苦しめる。この帯状疱疹痛に対する治療として, 各種の神経ブロックがさかんに行われており, 新鮮例においては有効であるという報告がみられるが, 帯状疱疹後神経痛では, 治癒率は著しく低下している。また, これらの神経ブロックには, 持続時間や合併症等に問題点を含んでいる。今回われわれが行った華佗夾脊穴を主穴とする鍼治療では, 41症例中, 新鮮例については, 著効69%, 有効, やや有効とも15%, 無効0, 帯状疱疹後神経痛では, 著効14%, 有効43%, やや有効, 無効とも21%であった。今後, 帯状疱疹痛の治療として, 鍼治療を積極的に取り入れることにより, 期待出来る成績を上げ得るものと考える。
著者
亀井 順二 北出 利勝 豊田 住江 河内 明 兵頭 正義 中野 良信 小野 克己 細谷 英吉
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.136-139, 1981-11-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
4

ハリの鎮痛効果を増強する物質とされるD-フェニルアラニン (D-phenylalanine) を, 抜歯術に前投薬として応用し, その効果を検討した。方法はハリ麻酔単独で行った対照群31例と, ハリ麻酔30分前にD-フェニルアラニンを, 前投薬した試験群9例の抜歯術におけるハリ麻酔効果を比較することにより行った。対照群, 試験群ともに, 抜去歯に合わせて選穴したツボに, 中国針を刺針してハリ麻酔器に接続し, 約30分の誘導時間を経て抜歯術を行った。そしてそのハリ麻酔効果を2群間で比較した。効果判定はスコア1から5に分類し, それを著効・有効・やや有効・無効に判定した。その結果, 対照群のハリ麻酔成功率32%に対し, D-フェニルアラニンを前投薬した試験群の方が, 78%とハリ麻酔効果がより優れていた。

1 0 0 0 OA 特別演題抄録

出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.329-401, 2006-05-10 (Released:2011-03-18)
著者
松平 浩 井上 基浩 粕谷 大智 伊藤 和憲 三浦 洋
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-16, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
47

腰痛症に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 はじめに西洋医学的な立場から特異的腰痛や非特異的腰痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 腰痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 様々な腰痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は様々な腰痛に対して臨床効果が報告されているが、 特に非特異的な腰痛に対して有効である可能性が示唆された。
著者
北小路 博司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.29-37, 2012-02-01
参考文献数
10

明治以降の鍼灸に関する医療制度・教育・研究の三分野について歴史的経過を俯瞰し、 日本鍼灸の特質を検証することとした。 <BR> 鍼灸に関する医療制度と鍼灸教育は、 明治維新を契機として西洋化による富国強兵の施策のもとに制定されたものであった。 すなわち、 西洋医学を日本の正統医学としたことから、 伝統医学である鍼灸は医療制度外に位置づけられる一方、 鍼灸教育においては西洋医学を基盤とすることが義務付けられた。 こうした制度上の矛盾を抱えたまま現代に至っているが、 教育においては、 西洋医学を基盤としたことから東西医学両医学による鍼灸教育が展開され、 このことが多様性を特質とする独自な日本鍼灸の形成をはかる土壌となった。 <BR> 鍼灸研究は、 鍼麻酔以降飛躍的に活発化し、 特に機序解明に向けた基礎的研究は大きく進展した。 加えて大凡20年前から教育研究、 調査研究、 東洋医学に関する研究も増え、 鍼灸に関する広い分野にわたり学術研究は確実に進展している。 こうした鍼灸学研究の進展は、 鍼灸高等教育化、 鍼灸のグローバル化等の要因によるものであるが、 学会の学術活動の牽引も強く寄与したと思われた。 <BR> 日本鍼灸の特質を更に向上させ、 発展させるには、 今一度、 鍼灸の歴史的変遷を俯瞰し、 長所と短所を明らかにし、 将来に向けた課題を明確化し、 すべての鍼灸師が共有することこそが、 新たな第一歩を踏み出すことに繋がるものと確信する。
著者
高澤 直美
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.87-92, 2008 (Released:2008-05-27)
参考文献数
3
被引用文献数
1

「NIH鍼のコンセンサス形成会議10周年記念SAR (Society for acupuncture Research) 学術集会2007」 が、 2007年11月9日から11日まで、 アメリカ合衆国のメリーランド州ボルチモアのメリーランド大学で開催された。 また、 8日には会議前ワークショップも開催された。 この会議はSAR (Society for Acupuncture Research)、 統合医療センター (Center for Integrative Medicine: CIM)、 メリーランド大学の共催で行なわれた。 テーマは 「鍼研究の現状と未来:NIH鍼のコンセンサス形成会議後の10年」 で、 22の国と地域 {アメリカ (179名)、 中国 (49名)、 韓国 (25名)、 日本 (16名)、 イギリス (13名) など} から、 計324名が参加登録していた。 会議では、 鍼研究に対するNIHの助成額が増加するなかで研究対象が様々に変化してきた過程、 研究の現状、 エビデンスのために解決するべき問題が明らかにされるとともに、 今後の鍼研究への提言が行なわれた。
著者
佐藤 裕 四戸 豊 佐藤 健一 坂本 望 今井 康雄 城 茂治
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-30, 2007-02-01 (Released:2008-05-23)
参考文献数
15

68歳女性の顔面神経麻痺患者に星状神経節ブロック、薬物治療、経皮的神経刺激通電療法による治療を開始した。初診から1カ月後、十分な改善を認めず難治例とも思われたが、その後鍼治療を取り入れたところ症状は徐々に改善し、初診から10カ月後、麻痺症状は消失した。49歳女性の三叉神経麻痺患者に星状神経節ブロック、薬物治療、経皮的神経刺激通電療法などにより治療を行っていたが、症状は改善せず、麻痺に神経痛様疼痛を伴うようにもなり治療に苦慮していた。鍼治療を取り入れたところ症状の軽減を認め治療を継続している。これら神経麻痺2症例に対し、鍼治療が有効な治療手段であった。神経ブロック、薬物治療に鍼治療を併用することは極めて有用と考えられる。
著者
藤本 英樹 片山 憲史 林 知也 木村 啓作 矢野 忠
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.203-212, 2008 (Released:2008-09-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1 1

(目的)酸化ストレスの評価は、スポーツ選手のコンディショニングに重要である。そこで、運動誘発性の酸化ストレスに対する鍼通電刺激の影響について検討した。(方法)対象は健常成人男性10名で、鍼通電(EA)群と無刺激対照(CONT)群を設け、低周波鍼通電を両内側広筋へ行った。漸増運動負荷はエルゴメーターを用い、負荷中の呼吸代謝を記録した。酸化ストレスの評価はFRAS4により行った。(結果)CONT群に比し、EA群ではRCポイントの有意な延長を認めた。CONT群で酸化ストレス度は負荷前と比し運動により有意に上昇したが、抗酸化力ではその上昇は認められなかった。EA群で酸化ストレス度は運動により有意な上昇を認めず、抗酸化力では有意に上昇した。(結論)鍼通電刺激は呼吸代謝に影響を与え、酸化ストレス度を抑制し、抗酸化力を高める可能性が示唆され、鍼通電刺激はスポーツ選手のコンディショニングに有用であると考えた。