著者
鍬塚 寿 中野 信吾 進藤 和彦 松尾 喜文 徳永 毅
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.924-938, 1969-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
58

1) A case of adrenal feminizing syndrome due to adrenocortical adenomatous hyperplasia in a 27-year-old man is reported. This case is regarded as the first case caused by adenomatous hyperplasia in the world.2) The symptom was associated with gynecomastia, hypoplastic genitalia and hypertension. Enlargement of the right adrenal gland was proved by the tomography with pneumoretro-peritoneum.3) The urinary 17-KS and 17-OHCS excretion level reviewed within normal range and/or slightly lower than the normal. Androsterone was significantly decreased and dehydroepiandrosterone was increased out of fractions of urinary 17KS. Estrogen and pregnanediol were elevated. Among the fractions of urinary estrogen, estriol was increased. Urinary 17KS, 17-OHCS and estrogen excretions did dnot respond to ACTH-test, dexamethasone-test, metopirone-test or HCG-test, suggesting that secretionn of the adrenocortical hormone in this case is independent of the hypophysis.4) The right adrenalectomy was carried out and the removed specimen measured 3.0×2.5×2.0 cm and weighed 18 g. The histological diagnosis was adenomatous hyperplasia of the adrenal cortex and no sign of malignancy was detected.5) Postoperatively, the urinary 17-KS, 17-OHCS and the fractions of 17-KS were unchanged, however estrogen returned to normal level and pregnanediol showed to be lower than the pre-operative level.6) No change of clinical symptoms was noticed after the adrenalectomy, but significant improvement appeared by androgen therapy. A plastic operation for hypospadias was carried out. The hypertension in this case was difficult to control by antihypertensive agents, however the blood pressure was, controlled by the drugs within normal range after adrenalectomy.7) It is suggested that the biosynthesis of adrenal androgen in this case may pass the way from pregnenolone to androstenedione via progesterone besides the way via dehydroepiandrosterone.8) Clinical symptoms, findings of X-ray films and results of hormonal examinations of the cases of carcinoma, adenoma and our case were reviewed. Differential diagnosis from the testicular feminization and the problem of hypospadias were discussed.
著者
石井 延久 藤岡 知昭 新藤 雅章 胡口 正秀 近田 龍一郎 前原 郁夫 千葉 隆一 亀井 重郎 常盤 峻士
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.484-489, 1984 (Released:2010-07-23)
参考文献数
9

従来より埋没陰茎 (buried penis) のはっきりした定義は余りなく, 潜在陰茎 (concealed penis) も埋没陰茎に含まれると考えられることが多かった. しかし, 埋没陰茎は陰茎皮膚外板が極端に不足しているために陰茎が皮下に埋没してみえる奇形であり, 真性包茎を伴っているのが普通である.一方, 潜在陰茎は陰茎の皮膚は十分あるが, 肥満やその他の理由により陰茎が周囲の脂肪内にかくれてしまう奇形である. この場合は包茎の有無と陰茎の埋没に直接関連性はない. また両奇形とも陰茎は正常に触知されることにより micropenis とは鑑別できる.今回, 我々は10例の埋没陰茎に対してZ形成術を利用して陰茎形成術を施行し, 良好な成績であったので報告する. 症例は1歳~12歳の児童で術後経過は1カ月~3年観察している. 術後の合併症では1例が約3カ月位まで一過性の浮腫がみられたが, 他の症例はいずれも変形や機能障害はみられず, 二次手術を必要とした症例は1例もない.本手術は背面切開手術に比較すると術後の変形はなく, 自然の陰茎の形態が保れ, 手術方法も極めて簡単である. さらにZ形成術は術後に直線状の瘢痕を形成することがないので陰茎の如き機能的な器官の手術には広く応用できると考えられる.
著者
和田 鉄郎
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.2065-2070, 1987-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

前立腺癌の初期像を検討することを目的に下記について検討を行った.1983年から1985年までに東京慈恵会医科大学で行われた解剖症例の前立腺283例を対象に前立腺潜伏癌の発生率, 年齢分布, 前立腺内での発生部位, 病理組織について Step-section 法を用いて検討した.潜伏癌は62例に認められ, 40歳以上の男性の24.2%に発見された. 年齢階層別に比較すると, 高齢者になるほど発生率は増加し80歳以上の症例では, 50.0%に認められた.発生部位は外側1/2の領域に多く, また前方側にも約50%の発生を認めた. 上下方向の分布では, 精丘付近に多く発生していた.病理組織学的には臨床的前立腺癌に比べて高分化型腺癌が多く認められた.今回の検討で前立腺潜伏癌は特別な種類の癌ではなく, 生前には発見されにくかった癌であると考えられた.
著者
井口 正典 辻橋 宏典 永井 信夫 片岡 喜代徳 加藤 良成 郡 健二郎 栗田 孝 八竹 直
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.293-302, 1985
被引用文献数
1

食事が尿中排泄物質 (とくに蓚酸) に及ばす影響について検討した.<br>1) 健康成人男子9名に16時間の絶食の後普通食を与えると, Ca排泄量は食後2~4時間目にピークをしめし, 蓚酸は食後4~6時間目にはじめて有意に増加した. 食事負荷による食後6時間の増加分は, Ca 38.4%, 蓚酸11.8%, 尿酸7.1%, Mg 27.8%で, 普通食が尿中蓚酸排泄量に及ぼす影響はCaに比べてはるかに少なかった.<br>2) 健康成人男子11名に一定の朝食と, 昼食として標準食, 高蓚酸食 (標準食+ホウレンソウの油イタメ150g), 高蓚酸高蛋白食を負荷した. 高蓚酸食負荷により蓚酸排泄量は標準食の約2倍増加したが, 逆にCa, Mg排泄量は標準食の約半分に減少した. 高蓚酸高蛋白質食を負荷すると, 高蓚酸食負荷時に比べてCa排泄量は有意に増加し, 逆に蓚酸排泄量は有意に減少した.<br>3) 上記と同じ高蓚酸高蛋白食を absorptive hypercalciuria と診断した男子結石患者13名に負荷したところ, Ca排泄量は対照群より著明に増加していたが, 蓚酸排泄量には差がなかった.<br>以上の結果ならびに既報の結石患者の食生活調査成績 (日本栄養・食糧学会誌37:1~7, 1984) をもとに, 再発予防法としての食事指導の実際について具体的に述べた.
著者
高坂 哲 宮崎 一興
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.824-831, 1988-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
21

脊髄損傷患者114例を対象に, それらを第9胸髄-第10胸髄を境に上位一下位, および麻痺の程度により完全麻痺-不全麻痺で分け上位完全麻痺, 下位完全麻痺, 上位不全麻痺, 下位不全麻痺の4群で性機能について問診および勃起力に関して陰部皮膚温度から検討した. 症例は16歳から58歳 (平均34.2歳), 罹患期間は平均3年4カ月. 問診結果は, 上位完全麻痺群で反射性勃起90.1%, 性交可能72.5%, 下位完全麻痺群では, 射精可能15.3%と良好であったが, 精神性勃起, 極致感はいずれも10%以下であった. 性的刺激 (視覚的性的刺激, V. S. Sと略す. および機械的陰茎刺激P. M. Sと略す) に対する陰部皮膚温度曲線は, 5つのパターンすなわち, 正常型 (Normo-response), 反射型 (Reflex-response), 低反応型 (Hypo-response), 混合型 (Mixed-response), 無反応型 (Non-response) に分類して検討した. 上位完全麻痺群では, 反射型88.2%, 上位不全麻痺群で混合型40%, 正常型33.3%, 下位完全麻痺群で無反応型38.4%, 低反応型30.7%, 下位不全麻痺群では正常型63.6%という結果であった.また, 各群での陰部反応皮膚温度と勃起の程度は良く相関していたが, 下位不全麻痺群の5例 (22.7%) に皮膚温上昇を認めるにもかかわらず, 勃起が認められなかった. このことは, 勃起現象が血流のみではないことを示唆するものと考えられた.
著者
青木 光 高金 弘 萬谷 嘉明 藤岡 知昭 久保 隆 大堀 勉
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.1503-1512, 1987-09-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
17

18歳~21歳 (平均19.8歳) の健康成人男子ボランティア5名により, 勃起時に露出型関電極酸素電極法による静脈洞内脱分極電流値変動と陰茎周径変化を同時記録し, 勃起各相における両者の関係を確認した後, 以下の2つのイヌ実験モデルを用いた検討をおこなった.第1番目のイヌ実験モデルでは, 静脈洞内に各種注入速度で血液を灌流し, この際に生じる脱分極電流値変動を露出型関電極 (八木式) で記録し, 脱分極電流値が, 静脈洞内へ流入する動脈血の流入速度に対応した変動を示すことを確認した. 次いで, 第2番目のイヌ実験モデルでは, 陰茎モデルを作製し, ヒト陰茎において確認された勃起各相の静脈洞内脱分極電流値変動と陰茎周径変化の関係を陰茎モデルにて再現した. これら, 再現時の陰茎モデル血液流出路および血液流入路の状態は, ヒト陰茎における勃起各相の血流動態に一致すると考えられ, 以下の結果が得られた.1) 弛緩状態にあるヒト陰茎海綿体静脈洞内には, 少量の血液が流入しているにすぎなかった.2) ヒト陰茎勃起 tumescence phase では, 陰茎海綿体静脈洞への流入血液量が急激増加した. またこの phase では, 流入血液量の増加にともない, 静脈洞からの流出血液量も増加した.3) ヒト陰茎勃起 erection phase では, 血液流出路の受動的閉塞による流入血液量への抵抗が静脈洞への流入血液量を徐々に減少させた. しかし流入血液量と流出血液量が等しくなった時点で安定し, この値は非勃起時よりも高値であった.4) ヒト陰茎勃起 detumescence phase は, 陰茎海綿体静脈洞への流入血液量の減少が生じるとともに, 血液流出路に生じた閉塞が解除され, 流出血液量が増加した.
著者
三木 恒治 黒田 昌男 清原 久和 宇佐美 道之 中村 隆幸 古武 敏彦
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.264-272, 1980

61歳男子の前立腺原発カルチノイドの1例を報告した. 主訴は排尿困難と肛門部疼痛であつた. またカルチノイド症候群は示さなかつた. 膀胱尿道造影, 直腸指診より前立腺癌と診断したが, 経直腸的前立腺生検による診断はカルチノイドであつた. しかし, 胸部ならびに胃腸レントゲン検査, 直腸鏡にて異常は認めなかつた. その他血清セロトニン値が345μg/lとやや高値を示した他血液学的検査で異常を認めなかつた. 患者は1976年11月11日直腸膀胱前立腺全摘, 回腸導管造設人工肛門造設術を施行した. また右腸骨リンパ腺に転移を認めた. 摘除標本は肉眼的には充実性腫瘍で前立腺部に相当する位置に存在し, 正常前立腺組織は殆んど認めなかつた.<br>組織学的には, 腫瘍は, 胞巣形成, ロゼット形成を示し, 組織化学的にはグリメリウス染色陽性で, マッソニフォンタナ染色陰性であり, 電子顕微鏡的には特徴的な分泌顆粒を認めた. 以上の所見より前立腺原発カルチノイドと診断した.<br>患者は術後1カ月5-FUの静注を行なつたが, 徐々に全身衰弱, 腰痛を来し, 術後4カ月後に死亡した. 剖検は施行されなかつた.
著者
青木 光
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.206-217, 1983 (Released:2010-07-23)
参考文献数
39

ヒト陰茎循環動態を観察する目的で, 酸素電極法を用い, ヒト陰茎海綿体組織, 陰茎皮下組織および大腿皮下組織の酸素分圧を, 非勃起時および勃起時について連続測定した.対象は20歳~26歳, 平均20.5歳の健康成人男性16名である.非勃起時, 陰茎海綿体組織酸素分圧は60±30μv (平均±SD) で勃起開始と同時に棘波状の酸素分圧上昇を認め494±218μv (平均±SD) となつた. 勃起継続期には, 253±116μv (平均±SD) まで徐々に下降を認め, そのまま高いレベルで安定した推移を示した. 勃起弛緩時には, 401±274μv (平均±SD) と一過性に上昇し, その後, 非勃起時のレベルに下降した.陰茎皮下組織酸素分圧は, 非勃起時191±86μv (平均±SD) であつたものが勃起時145±105μv (平均ャSD) と下降を認めた.その結果, 陰茎勃起は陰茎海綿体組織への急激な血液流入によつて起こり, 勃起持続中は血液の流入および流出が持続していることがわかつた. すなわち, 陰茎海綿体の輸出静脈系の閉鎖機構が働かなくても勃起がおこることを示している.勃起安定時には, 流入血液量が勃起開始時に比し減少する結果が得られ, これは, 陰茎体積が一定となつた時点での陰茎流出路を含めた陰茎海綿体に発生する抵抗によるものと考えられた.また, 勃起時, 陰茎海線体組織とは逆に, 陰茎皮下組織では血流が減少することを確認した.勃起陰茎弛緩に際しては, 流入血液量の減少もさることながら, 陰茎海綿体内の動脈血液を駆出させるため陰茎海綿体内筋組織が収縮を起こしている可能性が推察された.

1 0 0 0 OA 射精の研究

著者
木村 行雄
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.363-366, 1977 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Recently, 16 cases with ejaculatory disturbance were treated medically in our department and the following results were obtained.1) COMT inhibitor, L-dopa and antiserotonergic drugs were effective for the cases whose ejaculatory disturbance was supposed to be due to dysfunction of the higher center of ejaculation.2) COMT inhibitor and antihistaminergic drugs were effective in some cases of retrograde ejacula-tion.3) COMT inhibitor and L-dopa were effective for the cases who had no orgasm during ejaculation.4) These medical treatments were effective in 11 of 16 cases treated.
著者
平井 正孝 中野 優 牛山 知己 増田 宏昭 太田 信隆 田島 惇 河邊 香月 阿曽 佳郎
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1761-1764, 1988-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

7例の再燃前立腺癌症例に対し, 13.56MHzの Radio Frequency 波 (RF波) による温熱療法と, VP-16, peplomycin による化学療法を行った.その結果, 4例で前立腺腫瘍内温度が42℃以上に到達したことを確認できた.腫瘍の縮小は, 7例中6例で認められた.副作用は, 火傷が1例, 食欲不振が1例, 下痢が3例に出現した.以上より, 本療法は, ホルモン抵抗性となった前立腺癌に対して有効であると考えられた.
著者
河野 南雄 佐々木 則子 棚橋 豊子 村岡 祝子 東 ちえ子
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.742-752, 1975

There are many reports on the relationship among malignant tumors, blood clotting and fibrinolytic enzyme system. The present report describes the fibrinolytic enzyme system in plasma of rats with experimental urinary bladder tumor. The plasma was separated into three fractions with lysinesepharose affinity chromatography. The materials were Wistar-Imamichi strain male rats which had been administered a dose of 0.02mg/head/day of N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)-nitrosamine (BBN) from 8 weeks old to 16 weeks old and then sacrified at 28 weeks old. Fraction-I did not contain either plasmin (PL) or plasminogen activator (PLg-act). Though the normal rat plasma sometimes has a slight antiplasmic action, the plasma of rats which had been administered BBN had a marked antiplasmic action. However, the action did not correspond with bladder tumor and hyperplasia. The rat plasma had an antiurokinase activity irrespective of BBN-administration. Sometimes fraction-II had also PLg-act irrespective of BBN-administration. On the rats which had been administered BBN, the activity of PLg-act in the bladder tumor-group and in the hyperplasia-group had an increasing tendency which was more marked than that in the unchanged group. Fraction-III revealed mainly the PL-activity. Normal rats had no activated PL, but the animals administered BBN revealed PL-activity. The PL-activity in the unchanged group had a more marked increasing tendency that in the bladder tumor group and hyperplasia group.
著者
森山 正敏 寺島 和光 福嶋 義光 黒木 良和
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.591-593, 1984 (Released:2010-07-23)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

Sotos 症候群患者8名に対して外性器の診察および排泄性腎盂造影, 膀胱尿道造影を施行して尿路性器異常の有無を検討した.性器異常としては停留睾丸・移動性睾丸・尿道下裂などが認められた. 尿路異常としては膀胱尿管逆流が最も多く認められ, 水腎症や萎縮腎なども認められた. 何らかの尿路性器異常は8例中7例 (88%) に認められ, 特に膀胱尿管逆流は8例中6例 (75%) と高率に認められた. 今後は先天奇形症候群においては泌尿器科医による尿路性器の精査を含めた全身的な検索が必要である.
著者
大島 博幸 酒井 邦彦 高木 健太郎 池上 茂
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.732-740, 1974-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
44

Eleven cases of true hermaphrodites were investigated with special reference to the relationship between differentiation of gonads and development of sexual duct systems. On most of them were performed studies of the sex chromatin, fluorescent body and chromosomal analysis. Also, reported cases in Japan as well as in foreign countries were collected and reviewed.Chromosomal analysis on 9 cases revealed chromosomal constitutions of 46, XX in 3 cases, 46, XY in 4 and 46, XX/46, XY in 2.Four cases out of 5 patients with a testis at one side and an ovary at the opposite showed Y-bearing chromosomal constitutions. Most of reported cases with a similar type of gonadal developement as the above mentioned were proved to have Y chromosome in their stem cells.Analysis of chromosomes in myelocytes and lymphocytes from a patient with 46, XX/46, XY revealed an interesting result. Twenty-one myelocytes out of 24 had chromosomal constitution of 46, XY and only 3 had 46, XX, whereas almost all of lymphocytes investigated after culture of peripheral blood had 46, XX constitution. It may be suggested from the above finding that cell populations are different from one tissue to another and may influence the differentiation of the primordial gonad toward a testis or ovary. It was another interesting finding that the fluorescent body was observed in 19% of lymphocytes from the patient mentioned above. The observation indicates the importance of examining Barr body as well as fluorescent body on more than two kinds of tissues, because native cells without cell-culture can be utilized for the examinations.Six true hermaphrodites investigated for both Barr and fluorescent bodies consisted of two of 46, XX, 46, XY and 46, XX/46, XY, respectively. Both bodies were positive in each case with mosaicism 46, XX/ 46, XY, although their frequencies were at lower percentage than normal female or male. On the other hand, only a few Barr or fluorescent bodies were recognized in each case of 46, XY or 46, XX, respectively. It is difficult to decide whether the above results were caused by an unrecognized mosaicism or not.From the observations of true hermaphrodites and XX-males, there has been raised an assumption that a sex-determining factor may locate on one of autosomes to which Y chromosome may affect as a regulating factor. This assumption, however, appears not sufficient to explain the differentiation of the ovarian tissue in the case of 46, XY.Testes in the foetus stimulate the differentiation and development of the Wolflian duct and suppress the Mullerian duct. The former function appears to be controlled by one of androgens secreted from the foetal testis. From the observation of clinical cases and animal experiments, the latter function seems to be closely related to the chromosomal constitution of cells composing the ductal tissue, while this function must be mediated by a chemical messenger produced from the foetal testis.
著者
前林 浩次 今川 章夫
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.1390-1397, 1980-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
14

生理的な勃起現象の神経学的な検討はまだ充分になされていないが, 逆説睡眠時の勃起現象の観察(REM-P, 第1報参照) において勃起が観察される場合には少なくとも脳幹部以下の勃起に関する神経系および血管系に異常はみられないと考えている.頭部外傷後の後遺症発現に脳幹部障害が関与しているとの報告もあり, 勃起を伴う性行動の大部分は辺縁系と視床下部にて調節されており, 視床下部-脳幹系の障害による勃起不全も存在すると考えられる. このような考えのもとに, 36症例の勃起不全患者に対し, REM-Pおよび視床下部―脳幹系の検討(test of Brainstem-Function 以下BSF) を行い視床下部―脳幹系と勃起不全との関連性について検討した. なおBSFは, 視性眼振検査, 視標追跡検査および Adrenalin 負荷テストにて行つた.その結果, 36例中26例にBSF異常例がみられ, 器質的症例では機能的症例にくらべ, BSF異常群が高率に出現した. また機能的症例のうち, 完全型勃起を呈する症例群では不完全型のものに比較し, BSF異常例の出現が少い傾向にあつた.以上の結果より, 視床下部―脳幹系の異常の存在は勃起不全を形成しやすい準備状態の一つと考えられた.
著者
村上 光右 山口 邦雄 森偉 久夫 内藤 仁 宮内 大成 伊藤 晴夫 島崎 淳
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.1395-1401, 1982-11-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
25

尿路結石症の再発防止, あるいは今後の治療方針の手がかりを得るため, 千葉大学医学部泌尿器科において診療した過去16年間の尿路結石症を集計し検討を加えた.1) 尿石症は新患総数の5.3%を占めた. このうち再発結石が12.6%を占めた.2) 男女比は2.1対1で, 好発年齢は上部尿路結石は30歳代, 20歳代, 次いで40歳代に多く, 再発結石においてはピークが10歳高年齢にずれていた. 下部尿路結石は60歳代にこピークがあつた.3) 結石成分は蓚酸Ca+燐酸Ca結石が最も多く, 次いで蓚酸Ca結石であつた(両者で71%). 女性は燐酸塩系結石が多かつた(47%).4) 自然排石については9×6mm以下のものでは4カ月以内に自然排石する可能性が大である.
著者
小田 完五 小野 利彦 高橋 徹
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.632-636, 1967 (Released:2010-07-23)
参考文献数
17

A case of myeloic leukemic infiltration of prostate was reported.A 81-years-old man was admitted to our hospital with dysuria and nycturia. Blood examination and sternal bone marrow aspiration revealed acute myeloic leukemia.Transurethral biopsy was performed for diagnosis and treatment.This was the 18th known case of leukemic infiltration of the prostate causing obstructive uropathy and the first case in Japan.The literatures were briefly reviewed and the experiences of other authors with this entity were discussed.

1 0 0 0 OA 射精の研究

著者
木村 行雄 安達 国昭 木崎 徳 伊勢 和久
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.218-228, 1974 (Released:2010-07-23)
参考文献数
22
被引用文献数
1

For the past 4 years and half 39 cases with ejaculatory disturbance were experienced in our clinic.1) Age and Incidence. The incidence of ejaculatory disturbance was 0.5% of the whole outpatients of our clinic. The age of the patients ranged between 17 to 40 years with the highest incidence in the thirties.2) Classification of ejaculatory disturbance. In this report ejaculatory disturbance was classified into 4 groups: Group A; the patients who complained of abscence of both ejaculation and orgasm; Group B, the patients who complained of absence of ejaculation but maintained orgasm; Group C, the patients who maintained both ejaculation and orgasm; Group D, the patients who maintained ejaculation but complained of loss of orgasm. The incidence of these 4 groups were as follows: Group A, 15 cases (38%); Group B, 8 cases (21%); Group C, 13 cases (33%); and Group D, 3 cases (8%).3) Past history. In Group A, 6 cases had past history of mental diseases; 1 case, polyomyelitis; and 1 case, stomach ulcer. In these cases ejaculatory disturbance occurred during the medication for the diseases. Therefore, these diseases or the medication for them were suspected to be the causative factors of ejaculatory disturbance. No specific history which was suspected of relation to ejaculatory disturbance was found in Group B, C, and D.4) Physical examinations. No remarkable findings were obtained in the physical examinations throughout the groups.5) X-ray examinations. Plain films of lumbo-pelvic region. Spina bifida occulta was seen in 4 cases of 39 cases with ejaculatory disturbance; abnormal enlargement of the intravertebral space, in 1 case; and deformity in the lumbar vertebra, in 1 case. The relation between these anomalies and ejaculatory disturbance could not be clarified.Cystography. No remarkable finding was seen in Group A, C, and D. In Group B patency of the internal urethral orifice was seen in 7 cases. In 6 of these 7 cases the internal urethral orifice opened slightly by abdominal straining and in 1 case the orifice was seen patent without the straining. In one case irregularity of the internal urethral orifice was seen. Retrograde ejaculation occurred by masturbation in these cases. Therefore, cystography was found to be effective in diagnosis of retrograde ejaculation.Urethro-vesicography. In 1 case of Group B patency of the internal urethral orifice was seen and in 1 case irregularity of the posterior urethra was seen. In Groups A, C, and D no remarkable finding was seen.6) Reflexes and sensory and motor disturbances. Some cases of ejaculatory disturbance showed abnormality in reflexes, sensory and/or motor disturbances. However, the relation between these disturbances and ejaculatory disturbance was not clarified.7) Cystometrogram. In 13 of 15 cases of Group A some abnormalities were suspected in the higher center of the urinary bladder. The cystometrogram in these cases was hypotonic without micturition contraction. Both the effect of nitrazepam administration and respiratory effect on the cystometrogram were clearly seen. Two of 15 cases showed disturbance of the peripheral nerves in addition to them. In Group B there was no case which showed abnormal cystometrogram except for a case in which the lesion was suspected in the lower region of the spinal cord. In Group C and D there was no case which showed abnormal cystometrogram.8) Treatment. In Group A vitamin B1, vitamin E, androgen, tranquilizers and imipramine hydrochloride were administered, but no remarkable effect was obtained by them. However, trihydroxpropiophenone, a COMT inhibitor, showed marked effect on 2 cases of Group A. In Group B the internal urethral orifice was narrowed by plastic operation. After the operation ejaculation became normal with normal orgasm. In the cases of Group C and D, the same drugs as in the Group A were used. But no remarkable effect was obtained by these drugs except for a case of Group C
著者
福井 準之助
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.707-710, 1986-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
8
被引用文献数
1

18歳から88歳までの952名の健康女性に対し, 尿失禁についてのアンケートを配布した. 分析の結果, 32%の女性に尿失禁が認められ, 未産婦では19%, 経産婦では41%に尿失禁が存在した. 40歳以後の経産婦では, 尿失禁の発現頻度が40歳未満の女性より有意に高率であった. 閉経, 夜尿の既往, 尿路感染の既往, 排尿症状等の有無と尿失禁との関係を調べたが有意差がなかった. 尿失禁の発生機序はほとんどが腹圧性尿失禁と考えられた.
著者
松田 忠久 斉藤 雅人 阿部 昌弘 橋本 哲也 小林 裕之 渡辺 泱
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.78, no.8, pp.1417-1422, 1987-08-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
12
被引用文献数
2

1982年6月から1985年10月までに, 京都府立医科大学泌尿器科学教室を受診した腎腫瘤症例で, 腹部CT, 腎超音波検査, 腎血管造影などにて診断が確定し得なかった10例に対して, 選択的腎生検を施行した.選択的腎生検にて得られた組織診断は, 腎細胞癌6例, 乳頭状腎細胞癌1例, 移行上皮癌1例, 血管筋脂肪腫1例, 膜性増殖性糸球体腎炎1例で, それにより各々の症例の治療のために極めて重要な情報が得られた. また生検を契機とした腫瘍細胞の播種をはじめとした合併症は, 認められなかった.よって腎腫瘍に対する選択的腎生検は, 従来の諸検査では診断できなかった腎腫瘍の診断に非常に有用であると思われた.