著者
水野 愛子 牛田 洋一 児玉 真澄 星井 桜子 藤井 武夫 倉山 英昭 京谷 征三 細川 進一 浜口 武士
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.631-637, 1993

思春期の末期腎不全患者 (F群) 27例 (男19例, 女8例) について, 6か月以上入院中の腎疾患患者 (D群) 33例を対照としてその心理的問題点を検討した. F群の発病年齢は平均6.4±4.2歳でD群 (9.2±3.8歳) より有意に低く, 70%が3年以上の入院を経験し, 発育障害が著しく, 44%がステロイド剤投与を受けていた. 主治医による評価では, 体力低下は89%でD群 (45%) より多く, 気力低下・学業の遅れ・友人および家族関係の問題・自己管理不良はD群と同程度であった. YG性格検査で, 情緒不安定・社会的不適応因子が高く, 性格類型でD類が少なくB類とE類が多い特徴があり, D群もほぼ同様の傾向であった. MASでは, F群の32%が高不安例で, 透析導入2年未満症例の得点が高かった. 20答法では, 健常高校生と似た傾向であったが, 自己の帰属性・生活感情の記述が少なく, 身体イメージ・病気の記述が多かった. また, 陽性生活感情の記述が少なく, 陽性の希望や将来の夢を語る記述が多かった. F群の心理性格傾向はD群に共通していたが, より長期の経過と生活制限, 著しい発育障害と体力低下および透析療法などが偏りを強めていると思われる.
著者
梁間 真 川村 正喜 松岡 研 板垣 信生 児玉 光正 山手 貴詔 安達 高久 中西 淳 岸本 武利
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.1461-1466, 1993

今回, 当院腎センターにおいて長期透析患者しかも高齢初産婦の妊娠, 分娩を経験したので報告する.<br>症例は透析歴13年, 41歳, 月経周期は不規則であつたが, エリスロポエチン製剤投与開始され, 貧血が改善されるに伴い正常化し, 平成3年7月25月を最終月経として妊娠した. 妊娠10週にて, 人工流産を勧められたが, 本人が妊娠継続, 分娩を強く希望したため, 妊娠20週より産科に入院とし, 週3回各5時間の透析を施行した. BUN 60mg/d<i>l</i>以下, Cre 6.0mg/d<i>l</i>以下に維持するため, 妊娠24週からは週6回各4時間の透析を施行した. Htは25%以上に保ち, 透析施行中は収縮期血圧90mmHg以下に低下させないことを目標とした. 妊娠20-25週にかけて羊水過多が認められたが, 妊娠27週頃より次第に改善した. 胎児のBPD, FL, HL, FTA, EFBWは正常範囲に推移し, 超音波上, 明らかな奇形は認められなかつた. 妊娠32週2日, 全身麻酔下に帝王切開し, 体重1,462gの男児を娩出した.<br>Apgar scoreは8点であった. 分娩後, 母児とも順調な経過をたどり, 新生児は生後75日, 体重3,332gで退院した.<br>透析患者の妊娠では流早産が高頻度で起こるが, 流早産の原因である子宮内感染症, 羊水過多に注意を払い, 在胎週数がのばせれば, 生児を得ることも可能であると思われた.
著者
山川 真 山本 忠司 水谷 洋子 西谷 博 八星 元彦 平田 純生 堀内 延昭 清水 元一 山本 啓介 岸本 武利 前川 正信
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-127, 1982-03-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
55

炭酸塩の析出という重曹透析液の欠点は, 酢酸ソーダを緩衝剤として用いることによって解決されたが, 透析法の発達によって新たに酢酸透析の問題点が指摘されるようになった. まず, dialyzerの効率の上昇に伴って, 透析液から生体に負荷されるacetate量がその代謝能を超える可能性があることと, 患者の中にはacetateの代謝能が低いものがあることがわかった. またacetateの大量負荷が生体のTCA-cycleに影響を及ぼすことが明らかにされた. 第2は, 酢酸透析では, dialyzerを通して血液から失われるHCO3-とCO2が大きいため, 適正な酸塩基平衡の是正が行われないこと, またCO2の低下から生ずるPO2の低下も考えられた. 第3はacetateの心機能抑制作用と, 未梢血管拡張作用が, 透析に不利に働いて, 透析中の不快症状の原因になっていることが示唆された. 第4はacetateの代謝経路から考えて, 長期には脂質代謝に何等かの影響が及ぶことが推測される. 第5は, まだ知見は少ないが, 重曹透析がCa代謝に有利に働くことが期待される.実際, 酢酸透析を重曹透析に移行することによって, 透析中の不快症状の発現が激減し, 種々の検査成績も改善することが示された. 重曹透析はすべての透析患者にとって有利な透析を提供すると考えられるが, 特に酢酸不耐症、 重症合併症、 心循環系合併症, 導入期, 大面積短時間透析等の症例に有効である. 重曹透析液は炭酸塩の沈澱を防止することが最大の課題であるが, そのためには, 液のpHの安定化をはからねばならない. このことはとりもなおさず, 液のPCO2の安定化に他ならない. 現在では, 重曹透析液は2原液法によって作製されるが, 安定した組成の液とその混合供給装置が開発され実用化している. 重曹透析は生理的で有用であるが, その取扱いはやや煩雑で、 高価になるので, 今後これらの点の改良が望まれる.
著者
藤見 惺
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.205-210, 1992-03-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
7
著者
遠藤 裕子 斉藤 洋子 新山 泰子 吉田 ふみ子 新井 せつ子 久富 恵子 元村 千佳 西川 久美子 藤倉 良裕 宍戸 洋 吉田 太一 関野 宏 浅木 茂
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.115-121, 1984-04-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
3

便秘は精神的, 肉体的に不快なものである. 食生活を制限されている透析患者では, 従来より便秘を訴えることが多く下剤服用者も多い. 私達は当院患者124名 (男70名, 女54名) を対象とし, 排便の状況, 下剤の使用状況などについて調査を行い, 「透析患者と便秘-現状と対策-」について検討した.下剤服用者と排便困難者を併せて便秘群とすると, 便秘群は52名 (男23名, 女29名) で全体の42%を占めた. 透析導入とともに便秘に陥った患者が多く, 水分制限, 除水等の影響が大きいものと思われる. 下剤は刺激性下剤の服用者が多く, 実際効果的であった. 下剤使用が常用量を越す人に対して, 偽薬を処方することにより服薬量の減量が可能であった. また, 便秘解消法のパンフレットを作成し, 社会活動の勧め, 生活指導, 腹部マッサージや指圧, 繊維性食品の食事指導などを行った. その結果, 下剤服薬が必要でなくなった人が13名, 減量できた人が21名みられた. 透析患者の便秘には除水, 水分制限, 消化管運動機能低下, 薬物および精神的要因など複合的成因の関与が考えられる.
著者
石本 朗 菊池 健次郎 浦 信行 岩田 至博 買手 順一 曳田 信一 椎木 衛 和田 篤志 飯村 攻
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.77-82, 1993

成人型溶血性尿毒症症候群の発症3か月後に血漿交換を施行し, 血液透析を離脱し得た1例を経験した. 症例は31歳男性. 22歳時健診で高血圧 (140/100mH) と診断されたが, 特に自覚症状もないため放置していた. 平成2年8月下旬より全身倦怠感, 息切れが出現し, 某病院にて重症高血圧, 溶血性貧血, 腎機能不全を指摘され入院加療を受けるも改善せず, 9月21日当科へ転入院となった. 入院時の検査で血小板減少, 微小血管障害性溶血性貧血を伴う急性腎不全を認めたため, 成人型溶血性尿毒症症候群と診断し, 直ちに降圧療法, 抗血小板療法, 抗凝固療法, 新鮮凍結血漿輸血と共に血液透析を開始した. その結果, 血小板減少, 溶血性貧血は間もなく改善したが腎機能不全は治療抵抗性で, 発症約2か月後にはほぼ無尿状態となった. 病態の改善を目指し, 発症約3か月後より週1回の血漿交換を併用したところ, 1日尿量は漸増して血漿交換開始2か月後には1,500m<i>l</i>以上に増加, Ccrも15.0m<i>l</i>/minまで改善し, 血漿交換中止後も同程度の腎機能が保持された. さらに発症約7か月後には血液透析を離脱し, 外来通院が可能となった. 成人型溶血性尿毒症症候群は, 幼児や学童にみられる典型例に比し重篤であり, 救命し得てもその約80%が慢性血液透析に移行するとされている. 一方近年, 発症早期からの血液透析の導入, 血漿交換療法, 新鮮凍結血漿輸血, 抗血小板療法, 抗凝固療法などの施行により, 腎機能不全が寛解した例も少なからず報告されている. 本症に対する血漿交換療法の有用性についての評価はいまだ確定していないが, 少なくとも本例ではその臨床上の有効性が示された. 殊に本例では, 発症後3か月以上を経た時期の血漿交換療法が腎機能の改善, 血液透析の離脱に大きく寄与したと考えられ, かかる報告例は未だみず, 貴重な1例と思われ報告した.
著者
菅本 英雄 大塚 玲子 小川 きみ代
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.525-529, 1987

体重管理不良な症例の心理社会的問題について検討した. 維持透析患者のうち平均体重増加率が6%以上の患者6名を体重管理不良群 (不良群) とし, この不良群と同じ透析条件でかつ平均増加率が4%以下の患者14名を体重管理良好群 (良好群) とした. 平均透析期間, 平均年齢に差はなく, 生化学値にも顕著な差はなかった.<br>50項目からなる調査紙を用いて社会的環境状態, 透析に対する理解度を測定し, 心理的状態の測定にはY-G検査, 内田クレペリン検査, CAS検査 (一部下位尺度) を用いて両群を比較検討した.<br>結果は, 1) 不良群は社会的役割, 家族関係ともに満たされた状態にはなく, とくに家族関係は良好群より有意に不良と考えられた. 2) 透析に対する理解力は不良群において良好群より劣っていた. 3) Y-G検査分類では不良群と良好群において特異な分類上の傾向はなかった. 4) 内田クレペリン検査では不良群の平均作業量は良好群より有意に少なく (不良群=D段階), 知的能力の問題を示唆された. また両群とも初頭努力がやや少なくとっつきの悪さが考えられた. 5) CAS心理検査では, 不良群は自己規制しにくく, フラストレーション耐性が弱いことが示唆された.<br>以上より, 体重管理不良な症例では, これら心理社会的要因が相乗し, 積極的な透析生活への適応力が弱められていると考えられた.
著者
瀬川 智一 松川 晃 佐多 和子 稲本 元
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.325-330, 1983-10-31 (Released:2010-03-16)
参考文献数
26

細胞培養法を用い, 医療用プラスチックの水溶性および脂溶性抽出物質の細胞に及ぼす影響を検討した.ethylene-vinylacetate copolymerならびに可塑剤無添加および添加のpolyvinyl chlorideのエタノールあるいは血清抽出液は, 蒸留水あるいは生理食塩水抽出液と異なり, いずれもマウス由来L-929細胞の増殖を濃度依存性に抑制し, 形態学的な変化も惹起した. 一方, polyethyleneの抽出液はいずれも培養細胞に影響を及ぼさなかった.現在の溶出物に関する安全性試験では主に蒸留水および生理食塩水を抽出溶媒としているが, 直接血液と接触する器材に対しては水溶性のみならず脂溶性物質の溶出にも十分注意を払うべきであろう.

1 0 0 0 OA 生体適合性

著者
秋沢 忠男
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.433-438, 1991-04-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1
著者
成田 一衛 瀬賀 弘行 下条 文武 荒川 正昭
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.1317-1321, 1990

著しい高ナトリウム (Na) 血症によるrhabdomyolysisから急性腎不全を発症し, 血液透析により改善した1例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.<br>症例は58歳男性. 2度の脳出血の既往がある. 昭和63年8月中旬頃から食欲不振を訴え, 肺炎と消化管出血を合併し, 9月17日無尿となって入院した. 血清Naが191mEq/<i>l</i>と著しい高値を示し, CPK, LDH, GOT, アルドラーゼ, ミオグロビン等の骨格筋由来の酵素および蛋白も上昇し, また血漿浸透圧は461mOsm/kgH<sub>2</sub>O, 尿浸透圧も462mOsm/kgH<sub>2</sub>Oと上昇していた. 高張性脱水による高Na血症とrhabdomyolysisによるミオグロビン尿性急性腎不全と診断し, 高Na透析を連日短時間行った. 入院4日日, 3回の透析後から血清Na濃度は正常化し, 計12回の透析治療の後, 離脱し, 11月1日退院した.<br>高Na血症によるミオグロビン尿性急性腎不全の報告は稀で, 本例は7例目である. これらの報告例の基礎疾患をみると, 明らかな内分泌異常を有していたのは尿崩症の1例のみで, 他は高度の高張性脱水が持続したことが高Na血症の原因と考えられた. いずれも血清Na 180mEq/<i>l</i>以上の著しい高Na血症を呈していたが, 予後は全例良好であった. 一般に, 急性の高Na血症の予後は不良で, 165mEq/<i>l</i>を超える場合の致死率は75%といわれており, 骨格筋の壊死を起こすほどの高度の高Na血症は, 徐々に進行する高張性脱水が原因であることが多いと考えられた.<br>治療については, 血液透析が有効であるが, 急激な血漿浸透圧の低下による脳浮腫を防ぐために短時間の高Na透析を頻回に行うことが必要であると考えられた.
著者
児玉 敏宏 池田 拓洋 法岡 貴子 湯川 彰英 雑賀 博子 高橋 敏夫 北 裕次 前田 明文 阿部 富彌
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.143-146, 1993

腎性骨異栄養症の補助診断およびその病態の評価をする目的で, 維持透析患者43例に対し2年間にわたり定期的身長測定を実施し, その身長変化と種々の臨床検査, 骨塩量, ビタミンD<sub>3</sub>投与量との比較検討を行った.<br>身長は3か月毎に測定したが, 今回は1988年1月から1990年1月までの2年間における身長の変化を観察し, その身長変化と年齢, 透析歴, 血清Ca, P, ALP, C-PTH, AI, BMG, カルシトニン (CT) 等の血液検査との比較検討を行った.<br>また, Digitallmage Processing Methodにて骨塩量 (ΣGS/D) を測定し, 身長変化と比較した. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長変化との関係も合わせて検討した.<br>身長縮小値と透析歴との間にr=0.307の正の相関傾向が, 血清Ca値との間にr=0.345の正の相関傾向が認められた. 身長縮小値と血清ALP値との間にr=0.670, p<0.01と正の相関が, 血青C-PTH値との間にr=0.701, p<0.01と正の相関が見られた. ΣGS/Dと身長縮小値, 血清ALP, C-PTH値との間に負の相関が認められた. ビタミンD<sub>3</sub>投与量と身長縮小値との間には相関は見られなかった.<br>2年間に2cm以上の身長縮小をみた5症例中4症例に, 血清C-PTH値の異常高値が認められた.
著者
佐藤 博司 川島 洋一郎 久保 和雄 鈴木 利昭 佐中 孜 太田 和夫 杉野 信博
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.97-102, 1984-04-30 (Released:2010-03-16)
参考文献数
10

1971年4月から1983年4月までに当センターおよび関連施設において経験された慢性血液透析患者の不明熱28症例の臨床的検討を行った. 原因疾患は感染症が20例 (71%), 薬剤性2 (7%), 膠原病1 (4%), 不明5 (18%) で悪性腫瘍によるものはなかった. 特に感染症の中では結核症が13例 (46%) と最も頻度が高く, このうち肺外性結核が11例とそのほとんどを占めていた. その他, 尿路感染症は3例にみられ, 移植血管感染例も1例に認められた.発熱の特徴としては, 最高体温の平均が39℃で, 熱型は弛張熱あるいは間歇熱を呈するものが多く, 透析中または透析直後に発熱しやすい傾向にあった. 診断に関しては, 非結核性のものは比較的高い確診率を得ているが, 結核症では生前確定診断ができたものは3例 (21%) にすぎなかった. 結核症のうち3例でCTスキャン, 超音波検査で, 腹部リンパ節腫大を認め, また治療により消失し, 診断の一助となった. 感染症例のうち, Gaシンチで陽性所見を示したのは1例もなかった. 予後および転帰であるが, 死亡は6例 (21%) でこのうち5例 (83%) は結核症である. これらはその大部分が未治療または治療開始時期の遅れがみられ, 発症より2ヵ月以内に死亡した例である.以上より透析患者の不明熱に対しては常に結核症の可能性を考え, 早期治療を行う必要がある.
著者
横井 徹 和田 淳 森信 暁雄 全 勝弘 関川 孝司 川野 示真子 永山 恵子 池田 弘 浅野 健一郎 福島 正樹 山本 博 土居 偉瑳雄 日下 昌平
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.1463-1469, 1991-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
25

1989年7月から1990年9月までの15か月間に経験したパラコート中毒例6例に対し, 胃洗浄, 血液吸着 (DNP), 強制利尿に加えて, ポリエチレングリコール含有電解質溶液Golytelyを用いた72-96時間の連続的な腸洗浄を行い5例を救命した. 救命例5例では, 治療開始後比較的短時間で尿中パラコート定性反応は陰性化し, 全例後遺症なく1か月後に退院した. 死亡例1例は大量服用例で, 尿中パラコート定性反応は陰性化せず, 多臓器不全に陥った.パラコート中毒治療の要点は本剤の体外への速やかな排泄である. 現在治療は腸管洗浄と血液浄化, 強制利尿を組み合わせて行われているが, 腸洗浄は電解質異常などをきたすため強力に行うことは難しい. Golytelyはこの欠点を補い, パラコートが腸管から体内へ吸収される前に速やかに排泄することによって本症を効果的に治療しうると考えられる. しかし本症のように腸管に広範囲の粘膜欠損を生じる場合は, 体内への多量の水分貯留をきたす場合があるので循環動態に注意が必要と考えられた.
著者
窪田 理裕 久島 貞一 伊藤 勇市 中條 拓 川村 幸次郎
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.927-930, 1987-12-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
14

症例は45歳, 女性. 昭和51年4月より慢性糸球体腎炎による腎不全にて, 週3回の安定した血液透析を通院にて受けていた. 昭和60年3月, 半昏睡, 全身痙攣によって当科入院となった. 約9年間の透析歴, 言語障害, 脳波所見, 血清アルミニウム (Al) 濃度の高値, CTによる脳内他病変の否定等により臨床的にAl蓄積による透析脳症を疑い, deferoxamine (DFO): 1,000mg/day, 血液透析 (HD): 5時間/day, 血漿交換 (PE): 2,600ml/dayの三者を組合せて1度の治療とし隔日に施行してみたところ, 計3回終了時点で, 痙攣発作は消失し, 意識状態の回復傾向が見られた. その後1年9カ月経過した現在, 通常の血液透析 (透析液は逆浸透処理) にて良好に経過している. 同症例の治療経過と臨床症状, 血清Al濃度, 脳波所見の推移を報告しDFO投与と体内Alの動態に関し若干の文献的考察を加えるとともに, 同剤投与により増加する血中Alの除去手段として透析分画, 非透析分画の両者ともに除去可能な血漿交換を治療初期に組合せたことが, このように短期間に臨床効果の得られた所以であろうと推論した.
著者
大地 信彰 稲永 隆 平方 秀樹 名西 史夫 小野山 薫 藤島 正敏 王 幸則 三井島 千秋 藤見 惺
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.1069-1074, 1986-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
26

蛋白同化ステロイド剤の1つであるmepitiostaneを貧血治療薬として, 33例の安定透析例を対象に使用した. 本剤投与前6ヵ月間におけるHt値の自然変動を各症例毎に調べ, その平均値および標準偏差値SDを求めた. 本剤投与前のHt値より, 投与後4 S D以上Htの上昇を認めた症例を有効群, それ以外を無効群とし, 各群間におけるBUN, 血清鉄等各パラメーターの経時的推移を比較検討した. さらに, 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, その造血効果に及ぼす影響について検討を加えた. mepitiostaneは10mgないし20mgを朝, 夕の分服とし, 4ヵ月間連日経口投与した.結果: 1. 有効群ではHt値は投与1ヵ月後より有意に上昇し, 平均で4.6%増加した. 同時に血清Creat値の上昇, BUN値の低下等蛋白同化作用に基づくと考えられる変化がより強くみられた. 2. 有効群では貧血改善に伴い血清鉄が有意に低下した. これは鉄利用亢進に基づく変化と考えられ, 鉄剤の併用で本剤の貧血改善効果がより増大する可能性が示唆された. 3. 透析患者にみられる続発性副甲状腺機能亢進症が, 本剤の造血効果を抑制している可能性が示唆された.
著者
頼岡 徳在 小川 貴彦 金原 幸司 小田 弘明 浜口 直樹 高杉 敬久 重本 憲一郎 有田 美智子 原田 知
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.319-322, 1990-03-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性血液透析 (HD) 患者30例 (男性20例, 女性10例, 平均年齢31.8±6.1歳) および健常者50例 (男性31例, 女性19例, 平均年齢32.4±5.9歳) の血中可溶性インターロイキン2レセプター (IL-2R) をELISA法を用い測定した.その結果, HD患者においては, 1. 血中可溶性IL-2Rは1,349.2±497.9U/mlであり, 健常者の157.4±46.5U/mlに比し, 有意の高値が認められた. 2. 血中可溶性IL-2RとCD3との間には有意の正の相関が認められた. 3. 排尿が全くみられない群では排尿がみられる群に比し, 血中可溶性IL-2Rの高値の傾向が認められた. 4. 血中可溶性IL-2Rとβ2-microglobulinとの間には有意の正の相関が認められた.以上より, HD患者の血中可溶性IL-2Rの高値の機序として免疫異常, 尿中排泄低下等が示唆された.