著者
大澤 啓志 勝野 武彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.513-516, 2002-03-30
被引用文献数
6 6

アカガエル類2種の生息数(概数)を規定する環境要因について解析するため,多摩丘陵中南部〜三浦丘陵北部に点在する7箇所の公園・保全緑地を対象に, 1999年〜2001年にアカガエル類の卵塊数調査を実施した。7地点での3年間の卵塊数の平均はニホンアカガエルが13〜2250卵塊,ヤマアカガエルが15〜165卵塊であった。ニホンアカガエルの卵塊数は過湿田と休耕過湿田の両方の面積(rs=1.00)との,またヤマアカガエルの生息数は耕作されている水田ではなく休耕田の湿地面積(rs=0.94)との関係が強くなっていた。このように両種の卵塊数は,繁殖に使われる植生区分の面積や管理状態により規定されていた。対照に非繁殖期の植生区分は両種の卵塊数との間に関係は見られなかった。
著者
宮本 克己
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.229-232, 1995-03-31
被引用文献数
2 2

東京緑地計画(1939)に端を発するわが国緑地帯構想は,その後,防空空地帯,緑地地域を経て,首都建設計画,首都圏整備計画における近郊地帯へとその形を変え受継がれ,今日まで東京の発展に多大な影響を与え続けている。この間,経済復興にともなう東京への集中が激化する中,緑地帯の実現への努力が種々なされるが,構想に反し地価低廉な緑地帯への分散が進み,諸施策の進捗状況もおもわしくなく,ついに近郊整備地帯へと衣替えすることとなった。本稿は,旧くから特に首都圏において議論されてきた緑地帯構想に関し,それを担保すべく諸制度の,特にその実効性に焦点を当て検討し問題点を指摘したものである。
著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.79-84, 1985-03-30

摘要 筆者は昨年本學會誌第47巻第4号に「作庭記新考」と題してその特有の語句を幾つか摘出してその成立時代の推定を行った。そこでよく知られる『山水〓野形図』についても同じ方法を重視するとともに更に『作庭記』の一般論に対し,『野形図』の専ら配石排植論に終始したその補完的な後〓本としての評価を行ってみた。同時に天地人(三才)用語の使用から同時代の諸芸能における同種の用法の動向と対比してその成立時代性をも追究しその時代を14世紀後半乃至15世紀前半と推定したのである。
著者
近藤 哲也 山口 真有美
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.507-510, 1999-03-30
被引用文献数
11 11

海浜植物の保全と海浜地域での景観への利用を目的としてハマエンドウの種子発芽特性を明らかにした。ハマエンドウの種子は硬実種子であることが確認された。濃硫酸に浸漬することで種皮に穴と亀裂を生じ,それによって硬実を打破できた。40分間硫酸処理された種子は10〜20℃の温度範囲で90%以上の発芽率を得ることができた。しかし,25,30℃では発芽率が低下し,発芽速度は遅くなった。硫酸処理後の種子は,乾燥3℃,無乾燥3℃,無乾燥室温のいずれの条件下で貯蔵しても,少なくとも1年間は処理直後の発芽力を維持できた。また,自生地の砂を覆土した実験では,6cmの覆土でも25日目には80%の発芽を見た。
著者
米森 由佳 倉本 宣
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.527-530, 2000-03-30
被引用文献数
7 7

多摩川中流域の河川改修後の低水路護岸3箇所において,1998年8月の増水によって堆積した土砂と植物遺体に含まれる種子を実生発生法により同定したところ,61種の実生が確認され,そのうち28種46%は帰化植物であった。 1999年5月と8月に行った群落調査においても出現種の多くが帰化植物であった。河川改修時の低水路護岸の緑化は,人工的に植栽をしなくても増水時の種子供給により可能であるが,帰化植物の扱いについての十分な検討が必要であることが示唆された。
著者
一ノ瀬 友博 加藤 和弘
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.73-76, 1996-03-29
被引用文献数
19 10

孤立樹林地内部の植生構造が鳥類の分布にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするために,埼玉県所沢市の比較的面積の大きな孤立樹林地において鳥類の分布と植生構造の対応関係を調査した。樹林地を植生によっていくつかの林分に分け,それぞれの林分において点センサス法による鳥類群集調査を行った。既往の研究の多くは鳥類の繁殖期に調査を行っているが,本研究では越冬期に調査を行った。植生構造は各階層の植物体量と胸高断面積によって把握した。その結果,越冬期においても鳥類の種数は植物体量と有意な相関が見られた。鳥類の分布は,全階層の植物体量と低木・草本層の植物体量,枯れ木の胸高断面積と関係があることがわかった。
著者
西嶋 啓一郎 仲間 浩一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.569-572, 2000-03-30
被引用文献数
2 2

景観研究にとって,特定の意味づけが風景イメーシとして実景に投影される過程を明らかにすることは,風景生成の内容を理解する鍵になる。本論では,歴代の通信使の紀行文と漢詩集をテキストにし,瀬戸内海鞆浦での風景生成を考察した。その結果,通信使の風景記述方法には,次のパターン化された図式が確認された。通信使は,過去の通信使の風景記述を受け継ぎ,洞庭湖や瀟湘八景の風景イメージを実景に投影するため,鞆浦の空間の実体的な要件を確認した。そして,その認識により主体の内面に特定の意味づけが行われた結果,「日東第一形勝」という風景が生成された。このことにより,通信使による鞆浦での風景の生成と定着が明らかになった。
著者
西田 正憲
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.407-410, 2005-03-31
被引用文献数
3

The paper considers characteristics of mountain representation that people captured in the gaze upon mountains, through analyses of the descriptions of the travel accounts and so on, in the Edo Era. It surveys first characteristics of mountain representation from ancient times to medieval times, in order to point out characteristics of the Edo Era more clearly. The analyses are done to the next by extracting the descriptions of 5 mountains, Mt. Tateyama, Mt. Daisen, Mt. Unzendake, Mt. Asozan, and Mt. Kirishimayama, from 6 travel accounts and so on, in the Edo Era, and by judging the descriptions from 4 standards of religious representation, historical representation, literary representation, and landscape representation. In consequence of these analyses, the paper shows, as characteristics of mountain representation of the travel accounts and so on in the Edo Era, that sense representation which consisted of religious and historical representation became more than a half, that landscape representation of the Edo Era increased considerably as compared with ancient and medieval times, and that literary representation of the mountains decreased extremely as compared with plain parts and seashore parts.
著者
白井 彦衛
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.30-35, 1980-08-25

このたび,『都市の緑地保全思潮に関する研究』により,1980年度の日本造園学会賞を授与され,また所見を述べる機会を与えられたので,ここに,筆者の研究の経過と論文の要旨をしめし,先達の叱咤を受けるとともに,後続の若人に何等かの刺激を与えることができれば幸いに思う。なお論文の前半はすでに造園雑誌に発表した。