著者
山戸 美智子 服部 保 稲垣 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.561-564, 2001-03-30
被引用文献数
3 1

岩湧山,和泉葛城山,大和葛城山の半自然草原において,面積,管理方法,種多様性の調査を行った。3調査地とも数十年におよぶ草原管理の放棄や面積の縮小化によって,過去の出現種の80%(岩湧山),59%(和泉葛城山),60%(大和葛城山)しか現在出現していない。欠落種には絶滅・絶滅危惧種が目立つが,普通種も多く見られた。岩湧山で草原生植物種(75種)が最も多いのは,面積が最も広いことや草原管理の再開が影響していると思われた。しかし,岩湧山でも3」地域全体の種数(104種)は保持しておらず,本地域の種多様性を維持するためには3草原全体を保全することが必要と思われた。
著者
夏原 由博 三好 文 森本 幸裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.523-526, 2002-03-30
被引用文献数
4 7

開発や保護がカスミサンショウウオの絶滅確率におよぼす影響について,メタ個体群存続可能性分析によるシナリオ分析を行った。調査地は滋賀県南部の面積約200haの孤立した丘陵で,かつては全ての谷が水田であったが,現在では大部分が耕作されていない。1歳到達仔数および上陸後の生存率と移動率を変化させ,土地利用のシナリオを変えてシミュレーションをおこなった。その結果,全面開発された場合,小規模な保護区を設けても絶滅リスクは緩和できないこと,部分開発でも絶滅リスクは増加することが示唆された。また,現状維持でも孤立したパッチには個体群が回復しないこと,耕作放棄の影響は部分開発よりも大きいという結果が得られた。
著者
上原 厳
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.493-496, 2001-03-30
被引用文献数
1 1

ドイツ国内には,クナイプ療法地という自然保養地が多数存在するが,本論では,そのクナイプ療法の発祥地であるバイエルン州バート・ウェーリスホーフェン市がどのように保養地として発展したのか,その特徴を明らかにすることを目的とした。調査の結果から,同市は前身が農村田園地帯であり,自然保養地としての基盤条件を備えていたこと,中世にカトリック教会が待ちの造成基盤をなし,19世紀中頃に同教会修道院にセバスチャン・クナイプ司祭が赴任して自らのクナイプ療法を同地に伝えたことにより保養客が増加し村の施策転換をもたらしたこと,そしてその後の各施設建設と行政による環境整備が保養地形成を進めてきたことなどが明らかになった。
著者
李 龍太 恒川 篤史
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.737-740, 1999-03-30
被引用文献数
3 4

都市内に残っている民有樹林地を保全していくためには,地権者の協力が不可欠である。したがって,樹林地保全制度の効率的な運営のためには,各保全制度に対する地権者の意識を把握することが重要であると考えられる。本研究では,練馬区に樹林を提供している土地所有者を対象に,アンケート調査により意識傾向を調べた。その結果,相続税の納付と樹林地の管理がかなり負担になっており,「市民緑地」制度における相続税の減免幅とその契約期間の長さについて不満を持っていることが分かった。この結果から,今後相続税の評価減の拡大など制度を改善し,樹林の買取り要請に対する財源確保プログラムを樹立する必要があると考えられた。
著者
金子 九郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.6-10, 1959-12-31
著者
浅井 俊光 宮本 れい 水庭 千鶴子 近藤 三雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.451-454, 2006-03-27
被引用文献数
2 1

Recently the lower criterion on cadmium (Cd) concentrations for polished rice was suggested in CODEX. It is urgently necessary to find out the most effective phytoremediator to remove Cd from rice fields. We have selected Iris pseudoacorus L. and Iris ensata Thunb. for our study from the following reasons; Iris pseudoacorus L. is known for its high biomass and strong resistance to environmental impacts: Iris ensata Thunb. have been often planted in the rice field in fallow. Both species are recognized by their beautiful flowers, commonness, the low prices and the easiness of planting. This experiment is aimed to evaluate these two species as phytoremediators to remove Cd. These plants are planted into 1ppm, 10ppm, 100ppm Cd hydroponics for 7 days. In general, Cd uptake by plants increases according to the Cd level of the hydroponics. The Cd removal rates of Iris pseudoacorus L. are between 0.64 and 2.00% (g/DW), while those of Iris ensata Thunb. are between 0.48 and 4.33%. Iris ensata Thunb. showed the higher efficiency in the low Cd concentration, whereas Iris pseudoacorus L. indicated an advantage under the high Cd concentration. Both Iris pseudoacorus L. and Iris ensata Thunb. indicate high Cd concentration in their roots but low in their shoots.
著者
澤木 昌典 上甫木 昭春
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.133-136, 1995-03-31
被引用文献数
7 8

本研究では,今後のニュータウン開発において重要な課題となる生物の生息にも配慮した緑地保全に際して,生物と共生しつつ快適で魅力ある居住環境形成のための緑地保全の方向をさぐることを目的として,兵庫県三田市の神戸三田国際公園都市フラワータウン地区及び周辺居住者に対して意識調査を実施した。その結果,生物の生息範囲についての願望による居住者の類型化を通じて,生物との共生に好意的な人・嫌いな生物への疎遠化傾向の強い人などの存在が明らかになり,今後のニュータウン開発での緑地保全に関して,生態学的調査・検討に基づく生物との共生に配慮した土地利用ゾーニング,居住者の生物嗜好による住み分け等の検討の必要性を論じた。
著者
鈴木 誠 栗田 和弥 麻生 恵
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.5-8, 1995-03-31
被引用文献数
3 3

日本人と結婚し在日する知日家欧米人とその伴侶の日本庭園に対する認識・イメージをアンケート調査し比較考察した。その結果、彼等の日本庭園の体験度、理解度は日本人と大差はな<、日本庭園に対する感覚的イメージもほば同様であった。日本庭園関連用語などはむしろよく理解していると自認し、外国人にも日本庭園は理解できると彼我共に認めていた。彼我で異なるのは、借景の意味内容や枯山水の認識、わび・さびについての理解がやや低くなることであった。また、「日本庭園」から日本人が具体的庭園要素を連想イメージするのに対し、欧米人は静寂、緑、平和などの印象を多くあげ感性的に庭の雰囲気を享受する姿勢をもつことが認められた。
著者
小野 佐和子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.1-6, 1983-03-31
被引用文献数
1

藩主により造成され領民に解放された園地は,領国の再生と統合をはかる場であったと考えられる。領国の再生と統合は,両義的なシンボリズムを有する花のもとで,集団の歌舞飲食を通じてなされた。その時花は,領主の威光と善政を印象づける都市的華やかさと豊さを表現するとともに,宇宙の死と再生を象徴していた。
著者
西田 政善
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.52-55, 1961-03-31

Bei den Betrachtungen iiber die Verbesserung des Schulgartens habe ich zuerst die Bedeutung, den Charakter und den Zweck des Schulgartens wiedergepriift. 1. Weil der Ausdruck "Schulgarten" in der weiteren und in der engeren, also in zweierlei Bedeutungen aufgefasst wird und es dafur keine bestimmte Bedeutung gibt, muss er unter eine weitere Auffassung, die das ganze Schulgrundstiick fiir den Schulgarte halt, vereinigt werden. 2. Die Auffassung sowie die Behandlungsweise des Lehrstof fgartens, des Schulklassengartens, in dem eigentlicd der Hauptteil des Schulgartens besteht, sind auch nicht einheitlich, aber die Ansicht des Verfassers ist wie folgt : (1) Der Lehrstof fgarten ist das Grundstiick, das die ganzen Schuljahre sowie die ganzen Schulklassen gemeinsam verwalten, und sein Hauptzweck besteht darin, dass man bei jedem Lehrfach auf Grund der Erziehungsplane jeder Schule fiir ihn die notigen Sachen als Lehrstoff arrangiert und ihn nutzbar macht. (2) Der Klassengarten ist das Grundstiick, dsssen bestimmte Platze man auf jede Klasse verteilt, dessen Teil man jede Klssse iibernehmen lasst, und auf solche Weise verwaltet.Sein Hauptzweck ist,dass alle Mitg-lieder der Schulklassen auf Grund dea Plane der Pflanzung und Aiifzucht nach den Schljahr-Bildungs-plan die Proben und die Ubungen der folgerichtigen Pflanzung, von der Bodenbearbeiting und vom Saen bis zum Fruchttragen und zur-Ernte, ausuben und auch die Tiere ziichten. Es ist je nach der Volksschule oder der Mittelschule verschieden, wo oder vieviel man auf den Wert Gewicht legen soil. (3) Die Einrichtungen des Schulgartens konnen in viele eingeteilt werden, aber sie miissen im ganzen die Vereinigung haben, indem sie jede fiir sich ihre Eigenschsft deweisen. (4) Die-Einrichtungen des Schulgartens miissen sich den geistigen sowie den Korperlichen Entwickelungs-stufen der Schulkinder sowie der Schuler anpassen uridihrem Interesse und Anspruch nachkommen. (5) Allgemeine Zwecke des Schulgartens sinb von manchen Vorgangern schon fast restlos offentlich erortert worden, infolgedessen ware es nicht mehr nbtwending, noch viele Worter dariiber zu verlieren.
著者
中村 雅彦 進士 五十八
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.123-131, 1991-10-31

代々木公園,砧公園,駒沢オリンピック公園,神代植物公園の4公園内に設置された計12売店における売上げ高と(1)公園人口からの距離(2)周辺空間特性(3)売店の見える範囲の大小(4)設備の質(5)新旧感(6)建物の広さの6因子との相関関係を分析した。売上げ高は「売上げ日報」,分析は数量化I類等によった。その結果次の点が明らかになった。売上げへの影響因子は大きいものから(1),(2),(3),(4),(5),(6)の順となっており,売店の売上げは売店そのものの形態よりもその立地に大きく影響されることがわかる。なお休,平日それぞれの平均売上げ高比較は凡そ休日:平日=5:1であり,天候による平均売上げ高比較は凡そ晴天:曇天:雨天=5:2:1である。
著者
田中 章
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.282-285, 2002-03-28
被引用文献数
4 2 14

Currently, ecological restoration activities including "biotope creation/restoration projects," "compensatory mitigation projects" have been popular in Japan. However, success criteria on these activities were not clearly defined. Ecological restoration activities must have clear success criteria that directly relates to their goals/objectives. This paper reviewed mechanisms of Habitat Evaluation Procedures (HEP) that are very popular in the U.S. to identify possible success criteria on ecological restoration projects. The study showed there were three basic parameters such as "quality," "space, "time," that were used in HEP, In conclusion, such basic ideas of HEP will fit for ecological restoration projects to establish their goals/success criteria as well as to evaluate impacts on ecosystems both of development site and of compensatory mitigation site in Japan.
著者
西田 正憲
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.17-20, 1996-03-29
被引用文献数
1 1

中世末から近世にかけて,瀬戸内海は多彩な異人たちが航行し,航海,寄港地等について多くの記述を残した。16〜17世紀のキリシタン宣教師,17〜18世紀の朝鮮通信使,17〜19世紀のオランダ商館員と,瀬戸内海はこれら異人たちの布教や江戸入府の海の道となっていた。19世紀にわが国を訪れた近代の欧米人は瀬戸内海の風景を絶賛したが,これに先行するこれら異人たちは瀬戸内海の風景をどのように見ていたのであろうか。これら異人たちの瀬戸内海の風景とは何であったのか,16世紀半ばから19世紀初めにかけての彼らの紀行文,報告,日記等の文献から,瀬戸内海の風景の記述を分析することにより,考察を行うものである。
著者
内田 和伸
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.459-464, 1998-03-30
被引用文献数
1

近世城郭・陣屋・要害から社寺に移築され現存する城郭建築遺構(以下,社寺移築遺構と呼ぶ)161件について,その種類や来歴,所有者の保存意識等に関する調査を全国的に行った。その結果,社寺移築遺構の入手方法は社寺による購入だけでなく旧藩主からの寄贈が多く見られ,社寺移築遺構を当該社寺で保存する意向の社寺が多かった。今後の社寺移築遺構の調査では建築構造や意匠だけでなく,来歴や移築された意味,現在の環境,利用状況を評価し,移築を文化として捉える視点が必要になろう。また,社寺での保存のためには登録文化財制度の活用や指定文化財では修理時の補助率の引き上げが望まれる。
著者
西村 公宏
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.429-434, 1999-03-30
被引用文献数
1 1

明治初期における開成学校(1868-1876)等のランドスケープデザインの特色について,図版(写真,図面),回想・記録等の史資料から考察を行った。その結果,老マツ等の既存植栽の一部は保存がなされたこと,擬洋風庭園については,開成所の時点で,すでに成立していたこと,大学南校でも,植栽の一部が保存された可能性が強いこと,開成学校においては,洋風のイメージに基づき前庭,側庭,後庭が整備され,特に前庭は,建物から独立した逍遙空間としても位置付けられていたこと,東京大学になってからは,建物との一体性が強められるが,大学の威信を表現する装置としても機能していたことを明らかにした。
著者
柴田 祐 田原 直樹 薄井 謙一 福田 忠昭
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.233-236, 1996-03-29

本論文では,急激な都市の近代化が進むインドネシアの都市居住のあるべき姿を明らかにするため,計画的住宅地内の戸建て住宅の庭に着目して,その空間利用の実態を把握するとともに,都市居住に占める位置について考察することを目的としている。スマトラ島メダンを事例として,タイプの違う3つの戸建て住宅地において観察およびヒアリング調査を行い,住宅と庭の関係,庭の使われ方の2つの点に着目して考察を行った。その結果,庭が住居の前後に分節化されていること,前庭と後庭では住宅との空間的関係に応じて異なった役割を持つこと,前庭は公的で見せる性格が強く,後庭は私的で実用的な性格を持つことがわかった。
著者
青木 陽二
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.108-111, 1986-12-15
被引用文献数
8 2

公園緑地の快適な利用密度を利用者の心理的反応から明らかにするために,小石川後楽園の同時在園者数と来園者の混雑感の関連を分析した。混雑感が同時在園者数と関連することを明らかにし,また混雑感が在園者の増加にともなってゆっくり上昇するのに対し,在園者の減少は急激に下がることを明らかにした。