著者
澤木 昌典 桑江 利彦
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.841-844, 2002-03-30
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

大阪府北部の豊中・池田・箕面市3市で保護樹木に指定された樹木は延べ446本にのぼるが,約25年間で36.1%が指定解除されている。本研究では,市街地における巨樹等の緑の保護に有用な知見を得ることを目的に,これら解除された樹木の元所有者を対象にアンケート調査を実施した。その結果,指定解除に至った2大要因は樹木の枯死と開発(賃貸住宅や自宅,駐車場など)である一方で,道路側に立地する樹木では落ち葉や枝の張り出しについての心配や近隣住民からの苦情などの精神的負担も大きかった。地域資源である保護樹木の減少を防ぐには,所有者・近隣住民の相互理解に基づく協同での維持管理活動や利用の仕組みの構築が課題となろう。
著者
山田 真紀子 加我 宏之 下村 泰彦 増田 昇
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.753-758, 2002-03-30
参考文献数
15
被引用文献数
3 1

市街地において宅地内の緑は地域の貴重な緑であるが,住宅の更新に伴い喪失あるいは更新されることが多い。本研究では大災害時の大量の住宅更新時における緑の継承に向け,阪神・淡路大震災後の更新時における緑の継承に及ぼす影響要因について現地踏査及び図面調査により把握した。その結果,昭和以降の区画整理によって開発された本山中町地区の調査対象住宅では多くの住宅敷地の接道幅が狭いことにより施工時の重機の搬入等が強く影響していることがわかった。一方旧集落である深江地区の調査対象住宅では接道幅の広さや多様な敷地形態により施工上の制約は少なく,居住形態の変化による庭の駐車場化や建物配置の変更が要因として強かった。
著者
大山 陽生
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.221-226, 1987-03-31

わが国の演能空間は近代以後において、建物の中におさめられる傾向が現れたか、かつては屋外でおこなわれた。舞台、橋掛り、楽屋が完備したものでも観客は屋外で観賞した。一方、ヨーロッパでは今世紀に入って演劇、オペラの屋外上演志向が強まってきた。日本の代表的な演能空間6つを選び詳細な調査を行って、ヨーロッパの野外劇場や野外劇が行われる広場と比較しながら、新しい空間創造のための資料つくりを行った。
著者
井手 久登
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.18-24, 1965-08-30

(1) 初年度においては樹種別にみて生育状況のよかつたものは、改良ポプラ、クロマツ、スズカケノキであつたが、2年目に入りスズカケノキの成績が悪くなり生長のよかつたものは改良ポプラ、クロマツのみであつた。3年日になると各樹種とも樹勢を盛り返し、ハルニレを除いて生長率は急界しはじめた。<BR>(2) 改良ボブラ、ハルニレを除いて客土効果が認められるが、客土量による差は3年日の段階ではまだ明らかでない。<BR>(3) 施肥効果は各樹種、各区ともにおいて認められない<BR>(4) ヘドロ区では最も枯損率が高い。<BR>(5) ヘドロ区で生育のよいものは改良ポプラ、クロマツニセアカシアの順である。<BR>(6) 総台的にみて、干拓上壌で生育状況のよかつたのは改良ボブラ、クロマツであるが、ウロマツはまだ試験樹が小きいので今後検討の余地がある。ケヤキ、スズカケノキ、ニセアカシア、スギも30cm以上の客土を行えば生育は良好である。
著者
細野 哲央
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.465-470, 2006-03-27
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

This research aimed at clarifying proper management of planting demanded from a legal viewpoint. First, Article 2 of State Redress Law and Article 717 of Civil Code were set as keywords, and the judicial precedent was searched, using the Internet database "law information database LEX/DB Internet". And the examples in connection with the accident that the falling trunk or branch of the tree hits victims directly were taken up out of the searched examples. And then, the other judicial precedent was supplemented by obtaining it from the court. Finally, six examples were summarized in the table, observing the regarded fact in the decision. As a result, the relation between the legal responsibility for manager and the contents of planting management on the judicial precedent for the accident that the falling trunk or branch of the tree hits victims directly could be clarified.
著者
杉山 義命
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.14-18, 1968-08-29

The origin of garden space in Japan -A case study at Kasori shell mounds- 1. The approach to this problem 2. Constitution of settlement and common field (1) On Kasori shell mounds and Pattern of settement (2) Their life and something needed by theirgroup (3) Origin of landownship and enclosure 3. Conclusion Regarding the garden and common field in settlement constitution as parts of social vesseles to put in their behaviores, this report tries to understand following problemes which are how consciously site-planning of settlement was carried out and the origin of Garden space in Japan, during physical pattern of settlement.
著者
日置 佳之 百瀬 浩 水谷 義昭 松林 健一 鈴木 明子 太田 望洋
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.759-764, 2000-03-30
被引用文献数
7 6

鳥類の生息環境保全の観点を取り入れた湿地植生計画の立案手法を開発する目的で,国営みちのく杜の湖畔公園のダム湖畔湿地(面積約38ha)において鳥類の潜在的生息地の図化とそれに基づくシナリオ分析を行った。まず,鳥類の分布と現存植生の関係をGISによって分析し,類似の植生を選好する鳥類のグループ(ギルド)を,サンプルエリア内の植生の面積を説明変数とするクラスター分析で抽出した。次に,植生の面積を用いた正準判別分析により,各ギルドが選好する植生の組合せを求め,ギルドの分布予測モデルを構築した。3番目にこれを適用して調査地全域における鳥類の生息地タイプ図を作成した。最後に,人為的に植生を変化させる2種類のシナリオによって,潜在的生息地がどう変化するか予測し,これを基に植生計画を検討した。
著者
杉田 早苗 土肥 真人 松井 啓之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.621-626, 1998-03-30
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

本研究は,利用者の行動によって生起すると考えられる空間の分節を,公共空間を対象として考察することを目的とする。対象地を日比谷公園噴水広場に設定し,利用者の行動観察を行なった。観察の結果明らかになった事象に関して,従来の行動観察で用いられている定性的な分析を行ない,特に移動者と滞留者それぞれに見られる空間分節の特徴を明らかにした。次に,定性的な分析の結果について,GISを用いた定量的な分析方法による検証と考察を加え,移動者,滞留者それぞれのパーソナルスペースを数値として示し,その特性を明らかにした。また,人間の行動による空間の分節の定量的な分析方法についても,検討を加えた。
著者
三好 文 夏原 由博
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.617-620, 2003-03-31
参考文献数
17
被引用文献数
2 7

The clouded salamander, Hynobius neblosus is widely distributed around west Japan, but it is endangered to extinction in Osaka and Kyoto Prefectures. We evaluated environment on habitat of this salamander in Osaka and Shiga Prefectures, because H. neblosus is endangered to extinction in Osaka Prefecture but more abundant in Shiga Prefecture than Osaka, Using field census data and Geographic Information Systems, we estimated habitat suitability and made maps of the potential habitat of H. neblosus of 250 m grid by using dataset of average elevation, average slope, percentage of land use and valley(presence or not). We found that incidence of spawn in local habitat is lower in smaller habitats than larger ones, and average habitat area is smaller in Osaka than Shiga. So that we think this is one of reasons why density of H. nebulosus is lower in Osaka Prefecture.
著者
根本 淳 中島 敦司 中尾 史郎 山田 宏之 養父 志乃夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.559-562, 2004-03-31
被引用文献数
1 2

In order to evaluate the effect of site protection for restoration of uncovered stand floor vegetation due to trampling, we carried out the restoration experiment at three secondary stands of Quercus serrata from June 1998 to October 2002. The restoration experiment was carried out with the cultivating surface soil both in the protection site and in the opened site, at each stand. As results, only in the largest stand with nine hectors width, the coverage and the numbers of species of herb layer were increased more in the protected site than in the opened site. Also, the percentage of the species, which are characteristic in the secondary stands of Quercus serrata, was increased at the protected site only in the largest stand. Thus, the site protection is concluded as effective for applying larger stands than nine hectors width to restore stand floor vegetation due to trampling.
著者
沈 悦 下村 彰男 竹田 直樹
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.389-392, 2000-03-30
参考文献数
36

本研究は,中国明・清時代における平地作庭の「石組」に着目し,その造景手法について考察することを目的とした。研究の方法は関連する歴史文献,実測図等により,石組の発達史を踏まえながら,図面データ及び現地調査による定量分析を行った。その結果,中国明・清時代における石組の特徴を明らかにするとともに造景手法との関係についても明らかにした。特に石組における配石構成の特置及び仮山は,造景手法に広く関係し,平地作庭の造景に重要な役割を果たしていることがわかった。
著者
アリフィン ヌルハヤティH.S. 増田 拓朗
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.315-323, 1997-03-28
被引用文献数
1 2

栗林公園は代表的な回遊式庭園であり,特別名勝に指定されている。しかし,近年,周辺地域の建築物の高層化に伴い,庭園景観が損なわれるようになってきた。本研究では,メインルートに沿って代表的な鑑賞地点12ケ所を選び,各地点から見える建築物の仰角および水平角を測定し,建築物の視覚的侵入の程度を調査した。調査結果に基づき,本来の庭園景観を損なわないような形での高木植栽あるいは築山居造成して高木植栽を行う可能性を検討した。この方法で,ある程度,建築物を遮蔽することは可能であるが,新たにさらに高い建築物が建設された場合にはその効果は失われる。根本的な解決のためには,周辺地域を風致地区あるいは景観保全地区として,建築物の高さ制限をすることが望まれる。調査結果に基づいて,その地域区分と高さ制限を提案した。
著者
下村 彰男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.241-246, 1993-03-24
被引用文献数
2 4

明治以降の近代観光の展開の中で,温泉地の滞在空間としての魅力低下の原因の一つとして,温泉地空間の構造性の弱化があげられる。本報では,近世において形成された温泉地空間の構造性が,交通機関や土木・建築技術の進展,観光の大衆化(大量化)などの影響を受けて,徐々に損なわれてゆくプロセスを明らかにすることを目的とする。対象地として,空間構造の変容程度に差異のある熱海(大),伊香保・草津(中),城崎(小)を取り上げ,空間構成(要素+構造)の変遷を調査し,分析を行った。その結果,温泉地が近世の湯治場から明治・大正の保養温泉地,そして昭和の温泉観光地へと展関する過程で,その空間構成は,開放系化,集合体化,均質空間化か徐々に進み,これら各ベクトルが複合して,構造性の弱化が進んだことが明らかとなった。
著者
金 恩一 藤井 英二郎 安藤 敏夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.139-144, 1994-03-31
被引用文献数
3 6

緑地の視覚心理的効果を明らかにするため,植物の視覚的要素の一つである色彩に着目し,それと眼球運動,脳波との関係について検討した。視覚対象としては,ペチュニアの6品種(紫,赤,ピンク,サーモンピンク,黄,白)と花のないペチュニアそれぞれを面的に広がる形で被験者の前に提示し,そのときの眼球運動をトークアイで,脳波を脳波計によって測定した。その結果,眼球運動と脳波の間にある種の関連性をみることができた。また,既報の色布を用いた実験と比較した結果,男女差については緑色を除いて他の色では類似した傾向を得ることができた。
著者
金 恩一 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.141-144, 1995-03-31
被引用文献数
4 6

植物の色彩が人間に与える生理・心理的効果を検討するため,ペチュニアの6品種(紫,赤,ピンク,サーモンピンク,黄,白)と花のないペチュニアを対象に脳波,血圧を測定した。さらに,それらとアンケート調査結果との関連性を検討した。また,これとほぼ同じ被験者によって進めているスギ林と満開状態のソメイヨシノ林(花の色はピンク)における同様の検討との比較も行った。その結果,ペチュニアの緑とピンクにおいてみられた結果と,スギ林とソメイヨシノ林の間でみられた結果には,類似した傾向がみられたことから,それらに対する印象評価とβ波が多く発生する部位との間には関連性があるものと考えられる。
著者
愛甲 哲也 淺川 昭一郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.515-518, 2007-03-30
被引用文献数
4 3

Recreational use of dog walkers in urban open space is one of the concerned issues by managers. There are complains from other visitors, such as unpicked feces, unleashed dogs, or threatening children. In this study, three different types of urban open space were chosen, then dog walkers' behaviors and their attitudes were surveyed. In the public park, dog walkers and other visitors were sharing same space and time. In the dog run, dog walkers took their dogs a few times a week, and let them run freely. In the exterior of one public facility, dog walkers took their dogs frequently to let them run freely. Consequently, this public space was used as if a dog run. To prevent the conflict between dog walkers and other visitors, manner training and some rules are needed, and besides various types of open spaces should be offered.
著者
和田 尚子 鈴木 雅和 横張 真
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.689-694, 2007-03-30
参考文献数
14
被引用文献数
1 7

This study aims to discuss issues and future directions in the conservation of the landscape of Gokayama Ainokura Village by identifying physical and human resources needed to maintain thatched roofs, which characterize the landscape of the village. Both bio-physical and socio-cultural data have been collected by conducting photo-interpretation of aero-photographs and interview surveys to local residents. The study identified that the lack of materials and labor, as well as alternation in the groups responsible for the maintenance, have inevitably resulted in (a) deterioration in the quality of thatched roofs, and (b) wider gaps between concerned groups in their consciousness to maintain the quality of the roofs. It has also been identified that the legislative measures taken by the local government were insufficient to reinforce deteriorating maintenance schemes. The study concludes that the value of the landscape characterized by thatched roofs should be shared by stakeholders including residents, concerned groups and the local government, and that sound environment which all stakeholders may fully perform their roles should be maintained.
著者
前中 久行
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.205-210, 1985-03-30

摘要 草地に加わるレクリエーション利用圧は延へ滞在時間・人て表現するのか最も良いか,これは最大滞在者数と「平均利用時間」の積として求めることもでき,この関係を用いると調査の能率を上けることかてきる。各地の公園利用調査をもとに検討した結果,平均利用時間は近郊地の園地ては42〜50時間,都市基幹公園内ては54〜64時間,住区基幹公園内では70〜89時間の値か得られた。