著者
山田 宏之
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.331-336, 1993-03-24
被引用文献数
4 7

利根川沿いに位置する小都市,埼玉県栗橋町を対象に,盛夏の14時,4時における気温分布の移動観測を自動車を用いて行った。測定結果から都市気温分布図を作成し,緑地の分布および緑地の種類による差異との関連,および大規模河川の都市気温分布に与える影響などについての考察を加えた。次に,測定範囲内から抽出した30地点を中心にした直径500m,250mの範囲内の樹林地率,草地率,水田率,裸地率,水面率を航空写真より読み取り,緑被率,緑地率を算出した。それらの値から回帰式を作成し,各緑地の被覆割合による気温の低減効果を判定した。これらの値を同様な解析を行った,東京都杉並区,長野県長野市,埼玉県庄和町の結果と比較,考察した。
著者
一ノ瀬 友博 森田 年則
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.501-506, 2002-03-30
被引用文献数
10 14

淡路島北淡町の農村地域のため池24ヶ所において, 2000年の6月から9月の間,トンボ類の分布を調査した。出現したトンボ類の種数とため池の水域面積の間には明らかな関係が見られなかった。TWINSPANによって,24ヶ所のため池は5つのタイプに分類された。ため池の環境についての変数を説明変数として,分類・回帰樹木を用いて分析を行った結果,ため池の区分には,ため池の位置する標高,隣接する樹林の存在,水域面積,水質が影響を及ぼしていることがわかった。特に,ため池の周囲の約半分以上で樹林と接していれば,林縁や暗い環境を好む種が出現することが明らかになった。
著者
臧 理 十代田 朗 渡辺 貴介
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.643-646, 1998-03-30
被引用文献数
1

1900〜1930年の間,中国国内には上海租界に在住した外国人たちの手でいくつかの避暑地が建設され,現在も国有財産として利用されている。これらの発展過程を検討しておくことは今後中国において新しくリゾートを造る場合への有益な示唆を得ると考えられる。そこで,本研究は,上海に租界があった時代を対象とし,まず,上海からでかける避暑地にはどのような所があったかを概略把握した上で,その中の代表的な高原避暑地である廬山について,外国人から中国人の避暑地への変貌過程,別荘地としての空間構成の特徴とその変容,及びそこでの避暑生活や行われたアクティビティ等を明らかにしている。
著者
岩村 高治 横張 真
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.735-738, 2002-03-30
被引用文献数
10 16

街区公園の計画策定時における住民参加が,開園後の地域住民による管理運営活動に与える影響を把握することを目的に,住民参加により計画策定された公園を対象に,計画策定方法および開園後の管理運営活動の実態を把握した。その結果,住民参加が図られた公園では,開園直後には維持管理・運営管理が活発に行われていたが,このうち,運営管理については一時的な活動に止まっていることが明らかになった。また,計画策定時の参加主体の違いが,開園後の管理運営活動の継続に違いをもたらしていることが明らかになった。これらの知見にもとづき,開園後の管理運営活動の促進に配慮した,計画策定段階の参加主体のあり方を提言した。
著者
野中 太郎 佐々田 道雄 畔柳 昭雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.659-664, 2001-03-30
被引用文献数
2 3

本研究では、年齢層と海浜公園で行われる活動内容及び動線の関係を明らかにすることを目的とし,お台場海浜公園の利用者を対象にアンケート調査を実施した。その結果より,海浜公園利用者の属性,利用形態の全般的傾向をつかみ,また,活動内容は親水性と目的性によって4つに分類され,年齢層や活動類型は活動場所の選択及び園路との関連性に影響があることが分かった。今後は,利用者の活動特性及び園路との関連づけを認識し,水辺の計画において親水性を得るためにオープンスペースを水際近傍に集めるだけでなく,利用者の多様な活動を許容する施設整備及び配置計画を行うことが重要であると考える。
著者
杉尾 邦江
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.91-96, 1992-03-31
被引用文献数
1 1

オーストラリア,ニュジーランドの植民地は,世界にさきがけて公園概念を取り入れた公園帯を創設した。これは近代的なグリーンベルトの歴史的発生であり,これまで発想者とその起源は謎とされていたが,造園雑誌53(5)311-316,1990で筆者が明らかにしたところである。本論は更に,計画思想と原理に影響を与えたと思われる知見を補足検証すると共に計画原理について考察を行った結果,創設者のE.G.クエイクフィールドの植民地政策的課題から考案されたとみる事ができた。また公園帯成立の歴史的発展課程の中で,クライストチャーチは公園帯に代わり,ハワードの田園都市のグリーンベルト則ちルーラルベルトの原型を生み出した。これらの公園帯は,今日でも健全に存続,機能している実態を明らかにした。
著者
杉尾 邦江
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.311-316, 1990-03-30
被引用文献数
2

オーストラリア,ニュージーランドにおける公園緑地帯(パークベルト及びタウンベルト)の発想の起源を文献等による検証によって明らかにすると共に,これらの公園緑地帯の意義,特質,機能及び形成過程と実態の一部を明らかにした。また,タウンベルトの形成に失敗したクライストチャーチ市で計画されたグリーンベルトの発想は,ハワードの田園都市構想の原型である事等を示した。
著者
飛田 範夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.413-416, 1999-03-30
被引用文献数
2 5

『万葉集』によると奈良時代頃からウツギの生垣が作られ,絵巻物を見る限りでは平安・鎌倉時代には,下枝を切り落とした生きた樹木を植え並べた生垣が主流になっている。この生垣は枯れ枝や割り板を立てた垣根の代わりに,腐らない垣として作られたものと思われる。鎌倉時代頃から防犯のためにカラタチ・クコ・ウコギなどの刺がある樹木を使った生垣が現れ始め,室町時代から江戸時代前期にかけて流行している。北村援琴著『築山庭造伝』(1735年)の図に生垣的な刈り込みが描かれていることからすると,今日見られる刈り込み生垣は江戸中期頃から始まったものらしく,両手で使う刈込み鋏が出現したこととの関連性が考えられる。
著者
平松 玲治
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.729-732, 2003-03-31
被引用文献数
1 4

Based on the statistical data of 'Kokuei Koen Kanri-no-Gaiyo' , the annual report on the performance of park management in National Government Parks (NGPs), this study shows that events in Showa Kinen NGP were related to park development, the number of park visitors and social phenomenon. Events that met needs for park visitors were effective on the promotion of utilization both qualitatively and quantitatively. The quantitative promotion of utilization is to increase park visitors. The qualitative promotion of utilization helps to diversify how to use the park and to improve use of park facilities. Especially, it is confirmed that events contributing to the qualitative promotion of utilization are increasing after introducing in 1996 new project, "Yume Plan" . It was the project for making people's dreams come true supported by park managers m NGPs, such as individual event, workshop in relation to the park and citizen participation activity.
著者
木村 三郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.37-41, 1991-03-30
被引用文献数
1

我国で世界に誇りうる風景観と云えば第一に富士山,その第二に瀬戸内海をあげることが出来る。そこで富士山については既に本機関誌『造園雑誌』第54巻1号(1990)に於いてその文化的価値を中心にその歴史的な考察を行ってきた。そこでその第二のステップとして,ここに瀬戸内海についても同様な観点から究明して見たい。即ち富士山が孤高の山景美とすれば正に瀬戸内海は白砂青松の海景美と云える。このような伝統美が欧米化の風潮の波に圧倒されて兎角忘れ勝ちになっていることに反発を禁じ得ないし,又その保全の手段方法についても一考して見たい。
著者
外村 中
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.258-271, 1994-02-28
被引用文献数
1

大仙院の庭園を代表とするいわゆる枯山水は,はたして,本当に,日本独自の庭園様式なのであろうか。本稿は,日本において枯山水が成立したと考えられる時代に,日本とほぼ同様の庭園趣味が,韓国にもあったらしいことを紹介し,枯山水の新たな解釈の方向性を示すものである。
著者
下村 泰彦 増田 昇 山本 聡 安部 大就 酒井 毅
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.173-176, 1996-03-29
被引用文献数
2 1

本研究では,都市河川空間をシークエンシャルな景観として捉えるために,CGによるアニメーションモデル画像を橋上,水上,水際の3視点場について作成した。これらの画像を刺激媒体とした心理実験を通じて,今後のスーパー堤防化を想定した空間整備に関する課題と方向性を探ることを目的とした。その結果,視点場の違いにより景観性の評価は異なり,橋上景観ではマクロな,水上景観ではシークエンシャルな,水際景観ではミクロな景観構造が重要であること。都市の魅力や活気性といった観点からは階段護岸形態が望ましいこと。安らぎや潤い性といった観点からは緩傾斜護岸形態に低木等の自然要素の導入が望ましいこと等が明らかとなった。
著者
高橋 理喜男
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.413-416, 1997-03-28
被引用文献数
3

明治初年に計画された札幌は,格子状の街区パターンをもち,その中に広幅員の大通(火防線)を設定した。それが現在の大通公園である。この大通計画の目的は二つあった。市街地を大きく官地と民地に分け,両者の空間的分離を図ること。同時に,民地から頻発する火災による官地への延焼防止の役割を担わせることにあった。この大通火防縮の計画は,都市火災の予防という観点から,近代的都市計画としての評価を受けてきたけれども,支配,被支配の構造が色濃くあらわれている近世城下町的な都市計画の論理を踏襲していることは,角館や大野の事例からも明らかである。
著者
中尾 裕介
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.379-384, 2001-03-30
被引用文献数
1

東アジア原産のツタは現在では西洋に広く普及している為,西洋的なイメージを持つに至り,日本的なイメージはやや希薄になっている。本稿では,ツタが日本では古来がどのように観賞されてきたのかを明らかにすることにより,その来歴に応じた重層的な,豊かなイメージの形成に資することを目的として,古典和歌に詠まれたツタが,どの様な視点から観賞されているかを分析した。その結果,植物自体の特性を観賞する視点,他の植物と対比して観賞する視点,植物の繁茂している場に関連した観賞の視点,特定の土地と関連した観賞の視点という4つの類型について,観賞の視点を明らかにすることが出来た。
著者
長友 大幸 丸田 頼一 近江 慶光 柳井 重人 松原 秀也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.265-268, 1995-03-31
被引用文献数
7 3

都市における巨樹の保護のあり方を検討することを目的に,個人所有の巨樹を取り上げ,研究を行った。調査地は,東京都区部にあり,住居系の土地利用が多く,個人所有の巨樹が残存する民有地数が多いということから,世田谷,杉並,練馬および板橋区を選定した。巨樹の所有者にアンケートにより,その意識を調べた結果,所有者は落葉による季節感や木陰を巨樹の利点としてとらえ,先祖代々受け継がれてきた地域の共有財産として保護していきたいと考えていた。しかし,落葉の処理および枝の剪定などの維持管理上の負担が問題点となっており,これらの問題点に対する実際的な労力の提供を,区が積極的に行っていく必要があるものと考えられた。
著者
中間 大維 熊谷 洋一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.771-774, 2003-03-31
被引用文献数
1

This study aims at clarifying how the plunder of marine resources occurs in the Galapagos Islands, where recently, the plunder by local fishermen has become a big problem. It also tries to gain knowledge of what sustainable ecotourism should be like, for the benefit of future development of this type of tourism. The result from the questionnaire and interviews to the local and selected people show that, even though a large number of people immigrated to the Islands expecting to get a job in the tourism industry, in reality they only found the weak linkage between the tourism and the local, which does not supply them with much opportunity to work in the tourism industry. Thus, they had no choice but to become fishermen, which causes the plunder of marine resources. In contrast, other 3 sites chosen for comparison show the strong social and economical relationships between the sites and the locals and no signs of plunder. From this study, it is clear that in order to make ecotourism sustainable, it is essential not only to control the environment and nature strictly, but also to build strong social and economical linkage between the local and the tourism industry.
著者
小野 佐和子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.361-366, 2000-03-30
被引用文献数
1

大和郡山藩主柳沢信鴻が致仕の後記した『宴遊日記』をもとに,安永・天明期の六義園での庭見物の様相を明らかにする。六義園では,家臣とその家族,奉公人とその親族,信鴻と交友関係にある者,さらには信鴻と直接関係のない部外者の庭見物が認められる。部外者は,藩の関係者を仲介に庭を見物し,その数は,安永9年(1780)以降著しく増加する。その理由としては信鴻が菊花壇を設けて見物を誘ったことと,当時の郊外の遊覧の盛況が考えられる。様々な人が見物に訪れる庭は,外部に閉じた構造をもつ大名屋敷が,外部の人々を導きいれ,外部社会と交わる装置の役割を果たしたと考えられる。